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【挑戦問題】イプシロン・デルタ論法を用いた「関数の連続性」の定義の妥当性

問題

問題
関数\(f:\mathbb{R}\supset X\rightarrow\mathbb{R}\)が定義域上の点\(a\in X\)において連続であることの意味は様々な形で表現されます。

最も基本的な定義は、「\(x\rightarrow a\)のときに\(f\)が有限な実数へ収束するとともに、その極限が\(f\left( a\right) \)と一致するならば、\(f\)は\(a\)において連続であると言う」という定義です。すなわち、\(a\in X\)に対して以下の2つの条件\begin{align*}
\left( a\right) \ \lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) & \in\mathbb{R}\\
\left( b\right) \ \lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) & =f\left(
a\right)
\end{align*}がともに成り立つ場合には\(f\)は\(a\)において連続であると言うということです。

これとは別に、イプシロンデルタ論法を用いた定義もあります。すなわち、「正の実数\(\varepsilon >0\)を任意に選んだときに、それに対してある正の実数\(\delta>0\)が存在して、\(\left\vert x-a\right\vert <\delta\)を満たす任意の\(x\in X\)に対して\(\left\vert f\left( x\right) -f\left( a\right) \right\vert <\varepsilon\)が成り立つならば、\(f\)は\(a\)において連続であると言う」という定義です。つまり、\(a\in X\)に対して以下の命題$$
\forall\varepsilon>0,\ \exists\delta>0,\ \forall x\in X:\left( \left\vert
x-a\right\vert <\delta\Rightarrow\left\vert f\left( x\right) -f\left(
a\right) \right\vert <\varepsilon\right)$$が成り立つ場合には\(f\)は\(a\)において連続であると言うということです。

以上の2つの定義は必要十分でしょうか?必要十分である場合にはそのことを証明し、そうではない場合には具体的な反例を挙げてください。

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結果

回答者 正解者
5名 3名

 

解答

解答の方針

関数\(f\)の定義域\(X\)上の点\(a\)において連続であることとは、\(x\rightarrow a\)のときに\(f\)が有限な実数に収束するとともに、その極限が\(f\left( a\right) \)と一致することを意味します。一方、\(a\)が\(X\)の孤立点である場合、\(f\)は\(a\)の周辺の任意の点において定義されていないため、\(x\rightarrow a\)のときの\(f\)の極限を考えることができません。したがって、\(f\)は孤立点\(a\)において連続ではありません。ただ、関数の連続性をイプシロン・デルタ論法を用いて定義した場合、関数\(f\)は定義域\(X\)上の孤立点\(a\)において連続になります。したがって、関数の連続性に関する2つの定義は必要十分ではないということになります。

孤立点について解説

関数\(f:\mathbb{R}\supset X\rightarrow \mathbb{R}\)の定義域上の点\(a\in X\)が\(X\)の孤立点であることとは、\(a\)以外の\(X\)の要素とは交わらないような点\(a\)の近傍が存在すること、すなわち、\begin{equation*}
\exists \delta >0:N_{\delta }\left( a\right) \cap A=\left\{ a\right\}
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。ただし、点\(a\)の近傍は、\begin{eqnarray*}
N_{\delta }\left( a\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R}\ |\ \left\vert x-a\right\vert <\delta \right\} \\
&=&\left( a-\delta ,a+\delta \right)
\end{eqnarray*}と定義されるため、先の定義を、\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0:\left( a-\delta ,a+\delta \right) \cap A=\left\{
a\right\}
\end{equation*}と言い換えることができます。つまり、上の開区間\(\left( a-\delta ,a+\delta \right) \)は\(a\)以外の\(A\)の要素を持たないため、関数\(f\)は孤立点\(a\)の周辺の任意の点において定義されていないことになります。

関数の連続性の本来の定義にもとづく議論

関数\(f:\mathbb{R}\supset X\rightarrow \mathbb{R}\)が定義域上の点\(a\in X\)において連続であることとは、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}
\left( a\right) \ \lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) &\in &\mathbb{R}\\
\left( b\right) \ \lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) &=&f\left( a\right)
\end{eqnarray*}がともに成り立つことを意味します。つまり、\(f\)が\(x\rightarrow a\)のときに有限な実数へ収束するとともに、その極限が\(f\left( a\right) \)に一致するということです。ただ、\(f\)の\(x\rightarrow a\)のときの極限について考える際には、そもそも\(f\)は\(a\)の周辺にある任意の点において定義されている必要があります。ただ、\(a\)が\(X\)の孤立点である場合、\(f\)は\(a\)の周辺の任意の点において定義されていないため、\(f\)の\(x\rightarrow a\)のときの極限を考えることができません。したがって、関数の連続性を上のように定義した場合、関数は定義域上の孤立点において連続ではないということになります。

関数の連続性をイプシロン・デルタ論法を用いて定義した場合の議論

一方、関数の連続性をイプシロン・デルタ論法を用いて定義した場合、\(f\)は孤立点\(a\in X\)において連続になります。つまり、\begin{equation}
\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall x\in X:\left(
\left\vert x-a\right\vert <\delta \Rightarrow \left\vert f\left( x\right)
-f\left( a\right) \right\vert <\varepsilon \right) \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つということです。以下ではこれを証明します。繰り返しになりますが、点\(a\in X\)が\(X\)の孤立点である場合には、\begin{equation}
\exists \delta >0:\left( a-\delta ,a+\delta \right) \cap A=\left\{ a\right\}
\quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます。\(\varepsilon >0\)を任意に選んだ上で、それに対して\(\left( 1\right) \)中の\(\delta >0\)を選ぶと、\(\left( 2\right) \)より、そもそも\(\left\vert x-a\right\vert <\delta \)を満たす\(X\)の点\(x\)は\(a\)だけであるため、\begin{eqnarray*}
\left\vert f\left( x\right) -f\left( a\right) \right\vert &=&\left\vert
f\left( a\right) -f\left( a\right) \right\vert \quad \because x=a \\
&=&0 \\
&<&\varepsilon
\end{eqnarray*}となります。したがって\(\left( 1\right) \)が成り立つことが証明されました。

以上の事情を踏まえた上で、通常、関数の定義域上に孤立点が存在する場合、その関数はその孤立点において連続であるものと定めます。

おまけ

関数\(f\)の\(x\rightarrow a\)のときの極限について考える際には、そもそも\(f\)は\(a\)の周辺にある任意の点において定義されている必要があるということですが、そのことの意味を関数の極限の定義にさかのぼって考えてみましょう。関数\(f:\mathbb{R}\supset X\rightarrow \mathbb{R}\)と点\(a\in \mathbb{R}\)が与えられたとき、\(x\rightarrow a\)のときに\(f\)が有限な実数\(b\in \mathbb{R}\)へ収束することとは、\begin{equation*}
\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall x\in X:\left(
0<\left\vert x-a\right\vert <\delta \Rightarrow \left\vert f\left( x\right)
-b\right\vert <\varepsilon \right)
\end{equation*}が成り立つことを意味します。今、点\(a\)が\(X\)の孤立点であるものとします。つまり、\(a\in X\)であるとともに、\begin{equation}
\exists \delta >0:\left( a-\delta ,a+\delta \right) \cap A=\left\{ a\right\}
\quad \cdots (3)
\end{equation}が成り立つということです。\(\varepsilon >0\)を任意に選んだ上で、それに対して\(\left( 3\right) \)中の\(\delta >0\)を選ぶと、\(\left( 3\right) \)より、そもそも\(0<\left\vert x-a\right\vert <\delta\)を満たす\(X\)の点は存在しないことになります。つまり、\begin{equation*}
0<\left\vert x-a\right\vert <\delta \Rightarrow \left\vert f\left( x\right)
-b\right\vert <\varepsilon
\end{equation*}という主張の前提\(0<\left\vert x-a\right\vert <\delta \)は偽であるため、上の主張は真になります。これは\(b\)としてどのような実数を選んだ場合にも同様です。つまり、イプシロン・デルタ論法による関数の極限を踏まえたとき、\(a\)が\(X\)の孤立点である場合には、\(x\rightarrow a\)のときに\(f\left( x\right) \)は任意の実数に限りなく近づくことになってしまいます。これでは関数の極限の定義として破綻しています。したがって、\(x\rightarrow a\)のときに\(f\)が有限の実数へ収束するかどうかを検討する際には、\(a\)が\(f\)の定義域の孤立点である状況をあらかじめ排除しておく必要があります。

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