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CHALLENGE PROBLEM

【挑戦問題】任意の正の実数は正の平方根を持つことの証明

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問題

問題
実数空間\(\mathbb{R}\)は実数の公理を満たすものとします。正の実数\(x\in \mathbb{R} _{++}\)を任意に選んだとき、それに対して、\begin{equation*}
y^{2}=x
\end{equation*}を満たす正の実数\(y\in \mathbb{R} _{++}\)が1つずつ存在することを証明してください。ただし、証明で利用できるのは実数の公理およびそこから導かれた命題のみです。

プレミアム会員の方は下部にあるメールフォーム(ログインすると表示されます)から答案を送ってください(手書きの答案を撮影した画像を送ることもできます)。答案の提出期限は2021年1月31です。答案の提出期限は過ぎましたが、引き続きコメント欄に答案などを投稿していただくことは可能です。

 

結果

回答者 正解者
3名 1名(Murakamiさん)

 

解答

【解答の方針】正の実数$x>0$に対して以下の集合\begin{equation*}
A=\left\{ z\in \mathbb{R}_{++}\ |\ z^{2}\leq x\right\}
\end{equation*}を定義します。$A$は空集合ではない上に有界な$\mathbb{R}$の部分集合であるため、実数の連続性(上限性質)より上限$\sup A$に相当する有限な実数が存在します。この上限こそが$x$の正の平方根の候補です。つまり、$\sup A>0$であるとともに、\begin{equation*}
\left( \sup A\right) ^{2}=x
\end{equation*}が成り立つということです。以上の方針を踏まえた上で以下で具体的に証明します。

【$A$が空集合ではないことの証明】上のように定義された集合$A$が空集合ではないことを証明します。まずは$x>1$の場合ですが、\begin{eqnarray*}
1^{2} &=&1 \\
&<&x\quad \because 1<x
\end{eqnarray*}となるため、$A$の定義より$1\in A$が成り立ちます。したがって$A$は空ではありません。続いて$x\leq 1$の場合ですが、\begin{eqnarray*}
x^{2} &\leq &x\cdot 1\quad \because x\leq 1 \\
&=&x
\end{eqnarray*}となるため、$A$の定義より$x\in A$が成り立ちます。したがって$A$は空ではありません。以上より$A$は空集合ではないことが示されました。

【$A$が上に有界であることの証明】$1+\frac{x}{2}$が$A$の上界であることを示すために、$1+\frac{x}{2}$が$A$の上界でないものと仮定して矛盾を導きます。$1+\frac{x}{2}$が$A$の上界でないこととは、$1+\frac{x}{2}$よりも大きな$A$の要素が存在すること、すなわち、\begin{equation}
\exists z\in A:1+\frac{x}{2}<z \tag{1}
\end{equation}が成り立つことを意味します。すると、\begin{eqnarray*}
x &\geq &z^{2}\quad \because z\in A\text{と}A\text{の定義} \\
&>&\left( 1+\frac{x}{2}\right) ^{2}\quad \because \left( 1\right) \text{と}x>0 \\
&=&1+x+\left( \frac{x}{2}\right) ^{2} \\
&>&x
\end{eqnarray*}すなわち$x>x$となり矛盾です。したがって$1+\frac{x}{2}$が$A$の上界であること、すなわち$A$が上に有界であることが示されました。

【$x$の正の平方根の候補】$A$は空集合ではない上に有界な$\mathbb{R}$の部分集合であることが示されたため、実数の連続性(上限性質)より、上限$\sup A$に相当する有限な実数が存在します。$A$の要素はいずれも正であるため、その上限である$\sup A$は正の実数です。そこで以降では、この$\sup A$こそが$x$の正の平方根であること、すなわち、\begin{equation*}
\left( \sup A\right) ^{2}=x
\end{equation*}が成り立つことを証明します。手順としては、$\left( \sup A\right) ^{2}\leq x$と$\left(
\sup A\right) ^{2}\geq x$が成り立つことをそれぞれ示します。

【$\left( \sup A\right) ^{2}\leq x$の証明】$\left( \sup A\right) ^{2}\leq x$が成り立つことを示すために、$\left( \sup A\right) ^{2}>x$が成り立つものと仮定して矛盾を導きます。便宜上、\begin{equation}
\alpha =\left( \sup A\right) ^{2}-x>0 \tag{2}
\end{equation}とおいた上で、さらに、\begin{equation}
\varepsilon =\frac{\alpha }{2\sup A}>0 \tag{3}
\end{equation}とおきます。また、$\sup A$は$A$の上限であるため、$\sup A$よりも小さい実数は$A$の上界ではないことから、正の実数$\varepsilon >0$に対して$\sup A-\varepsilon $は$A$の上界ではなく、$\sup A-\varepsilon $よりも大きい$A$の要素が必ず存在します。つまり、\begin{equation}
\exists z\in A:\sup A-\varepsilon <z \tag{4}
\end{equation}が成り立つということです。$z\in A$であることから、$A$の定義より、上の$z$は、\begin{equation}
z^{2}\leq x \tag{5}
\end{equation}を満たすことに注意してください。加えて、$\sup A$は$A$の上界であるため、$A$の要素である$z$との間には、\begin{equation}
z\leq \sup A \tag{6}
\end{equation}が成り立ちます。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}
\alpha &=&\left( \sup A\right) ^{2}-x\quad \because \left( 2\right) \\
&=&\left( \sup A\right) ^{2}-z^{2}+z^{2}-x \\
&\leq &\left( \sup A\right) ^{2}-z^{2}\quad \because \left( 5\right) \\
&=&\left( \sup A+z\right) \left( \sup A-z\right) \\
&<&\left( \sup A+z\right) \varepsilon \quad \because \left( 4\right) \\
&\leq &\left( \sup A+\sup A\right) \frac{\alpha }{2\sup A}\quad \because
\left( 3\right) ,\left( 6\right) \\
&=&2\sup A\frac{\alpha }{2\sup A} \\
&=&\alpha
\end{eqnarray*}すなわち$\alpha <\alpha $となり矛盾です。したがって背理法より$\left( \sup A\right)
^{2}\leq x$が成り立つことが示されました。

【$\left( \sup A\right) ^{2}\geq x$の証明】$\left( \sup A\right) ^{2}\geq x$が成り立つことを示すために、$\left( \sup A\right) ^{2}<x$が成り立つものと仮定して矛盾を導きます。便宜上、\begin{equation}
\varepsilon =x-\left( \sup A\right) ^{2}>0 \tag{7}
\end{equation}とおきます。$\sup A>0$かつ$\varepsilon >0$であることを踏まえると、\begin{eqnarray}
0 &<&\delta <\sup A \quad \cdots (8) \\
0 &<&\delta <\frac{\varepsilon }{3\sup A} \quad \cdots (9)
\end{eqnarray}をともに満たす正の実数$\delta $をとることができます。$\delta >0$であることと上限の定義より$\sup A+\delta $は$A$の要素ではありませんが、$A$の定義より、これは、\begin{equation}
\left( \sup A+\delta \right) ^{2}>x \tag{10}
\end{equation}が成り立つことを意味します。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}
\varepsilon &=&x-\left( \sup A\right) ^{2}\quad \because \left( 7\right) \\
&=&x-\left( \sup A+\delta \right) ^{2}+\left( \sup A+\delta \right)
^{2}-\left( \sup A\right) ^{2} \\
&<&\left( \sup A+\delta \right) ^{2}-\left( \sup A\right) ^{2}\quad \because
\left( 10\right) \\
&=&\left( \sup A+\delta +\sup A\right) \left( \sup A+\delta -\sup A\right)
\\
&=&\left( 2\sup A+\delta \right) \delta \\
&<&\left( 2\sup A+\sup A\right) \delta \quad \because \left( 8\right) \\
&=&\left( 3\sup A\right) \delta \\
&<&\frac{\varepsilon }{\delta }\delta \quad \because \left( 9\right) \\
&=&\varepsilon
\end{eqnarray*}すなわち$\varepsilon <\varepsilon $となり矛盾です。したがって背理法より$\left( \sup
A\right) ^{2}\geq x$が成り立つことが示されました。

【結論】$\left( \sup A\right) ^{2}\leq x$と$\left( \sup A\right) ^{2}\geq x$が示されましたが、これは$\left( \sup
A\right) ^{2}=x$であることを意味します。さらに先に示したように$\sup A$は有限な正の実数であるため、これは$x$の正の平方根であることが明らかになりました。任意の正の実数$x>0$について同様の議論が成立するため、任意の正の実数は正の平方根を持つことが明らかになりました。

【一意性の証明】正の実数$x>0$に対して、異なる2つの正の平方根$y_{1},y_{2}>0$が存在するものと仮定して矛盾を導きます。仮定より、$y_{1}\not=y_{2}$かつ$y_{1}^{2}=x$かつ$y_{2}^{2}=x$が成り立ちます。$y_{1}<y_{2}$の場合には$y_{1}^{2}<y_{2}^{2}$が成り立つため、\begin{equation*}
x=y_{1}^{2}<y_{2}^{2}=x
\end{equation*}すなわち$x<x$となり矛盾です。逆に$y_{2}<y_{1}$の場合には$y_{2}^{2}<y_{1}^{2}$が成り立つため、\begin{equation*}
x=y_{2}^{2}<y_{1}^{2}=x
\end{equation*}すなわち$x<x$となり矛盾です。したがって背理法より$x$の正の平方根は1つだけであることが明らかになりました。

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