ホルムストロームの補題
単一財オークション環境において非外部性、準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定が成り立つものとします。つまり、入札者\(i\in I\)が状態\(\theta_{I}\in \Theta _{I}\)において結果\(\left(a_{I},t_{I}\right) \in A\times \mathbb{R} ^{n}\)から得る利得が、\begin{equation*}u_{i}\left( a_{I},t_{I},\theta _{I}\right) =a_{i}\cdot \theta _{i}-t_{i}
\end{equation*}であるということです。加えて、それぞれの入札者\(i\)のタイプ集合\(\Theta _{i}\)は連続型であり、具体的には以下のような有界閉区間\begin{equation*}\Theta _{i}=\left[ \underline{\theta }_{i},\overline{\theta }_{i}\right]
\subset \mathbb{R} \end{equation*}であるものとします。
以上のモデルにおける耐戦略的なメカニズム\(\left( a,t\right) \)が与えられたとき、その均衡である正直戦略の組において入札者たちが直面する利得は以下のような積分形式で表すことができます。これをホルムストロームの補題(Holmstr\”{o}m’s lemma)と呼びます。証明では積分形式の包絡面定理を利用します。
\end{equation*}となる。
入札者たちの利得関数に関して非外部性、準線型性、リスク中立性、私的価値の仮定が成り立つ場合、耐戦略メカニズムのもとでは、状態が\(\theta _{I}\)である場合、均衡である正直戦略の組において入札者\(i\)が直面する利得は、\begin{equation*}a_{i}\left( \underline{\theta }_{i},\theta _{-i}\right) \cdot \underline{\theta }_{i}-t_{i}\left( \underline{\theta }_{i},\theta _{-i}\right) +\int_{\underline{\theta }_{i}}^{\theta _{i}}a_{i}\left( u,\theta _{-i}\right) du
\end{equation*}という形で表現されることが明らかになりました。つまり、自身のタイプが\(\underline{\theta }_{i}\)である場合の利得\(a_{i}\left( \underline{\theta }_{i},\theta _{-i}\right) \cdot \underline{\theta }_{i}-t_{i}\left( \underline{\theta }_{i},\theta _{-i}\right) \)と、自身のタイプが\(u\)である場合の配分\(a_{i}\left(u,\theta _{-i}\right) \)を\(\underline{\theta }_{i}\)から\(\theta _{i}\)まで積分して得られる値の和をとれば、状態が\(\theta _{I}\)である場合に均衡において入札者\(i\)が得る利得が得られるということです。
グリーン=ラフォン=ホルムストロームの定理
ホルムストロームの補題を用いると以下を示すことができます。これをグリーン=ラフォン=ホルムストロームの定理(Green-Laffont-Holmstrom theorem)と呼びます。
次回はVCGオークションと呼ばれるグローヴィスメカニズムについて解説します。
プレミアム会員専用コンテンツです
【ログイン】【会員登録】