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競り下げ式公開オークションと第一価格封印オークションの戦略同等性に関する実験

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競り下げ式公開オークションと第一価格封印オークションの戦略的同等性

復習になりますが、競り下げ式公開オークションと第一価格封印オークションは戦略的に同等です。つまり、これらのオークションはメカニズムとして等しく、なおかつ、これらのオークションにおいて入札者がアクセス可能な情報も実質的に同じであるため、どちらのオークションを採用した場合においても入札者たちは等しい戦略的状況に直面します。戦略的に同等であるならば、どちらのオークションにおいても入札者たちは同じように振る舞うため、得られる結果も同じになることが理論的には予測されます。ただ、様々な実験や観察を通じて、必ずしも理論通りに行くわけではないことが明らかになっています。つまり、競り上げ式公開オークションと第一価格オークションのどちらを採用するかによって、入札額に差が出てしまうような状況が発生し得るということです。

 

競り下げ式公開オークションのスリルがもたらす効用

Cox, Roberson, Smith(1982)の実験では、競り下げ式公開オークションにおける落札価格が、第一価格封印オークションにおける落札価格よりも大幅に低くなりました。これは2つのオークションが戦略的に同等であるという理論的な予測に反しています。そこで、被験者に聞き取り調査を行ったところ、競り下げ式公開オークションをプレーすることそのものに娯楽性を見出している被験者がいたことが明らかになりました。第一価格封印オークションは静学的なプロセスであるため、入札者たちが同時に入札を行い、それに対してオークションの主催者が落札者を決定します。一方、競り下げ式公開オークションは動学的なプロセスであり、主催者が最高値から価格を段階的に下げていき、最初に買い手がついた価格で売買が成立します。入札者はなるべく安く落札したいため入札のタイミングを遅らせたいのですが、遅すぎると他の入札者に落札されてしまいます。入札者たちがこの駆け引きそのものをスリルと感じるのであれば、彼らはゲームを長くプレーするほど追加的な利得を得られることになるため、その分だけ、理論が予測するタイミングよりも入札のタイミングが遅くなってしまいます。その結果、競り下げ式公開オークションにおける落札価格が、第一価格封印オークションにおける落札価格よりも低くなってしまいます。

ただ、後に行われた実験により、以上の仮説が必ずしも正しくないことが確認されています。他のすべての条件を同一にしたまま、商品を落札することで得られる利得がより大きくなるように実験を再設計します。つまり、競り下げ式公開オークションのスリルが入札者にもたらす利得を相対的に小さくするということです。仮に仮説が正しいのであれば、この新たな実験のもとでは、競り下げ式公開オークションにおける落札価格と、第一価格封印オークションにおける落札価格の差は小さくなるはずです。ただ、実験を行った結果、両者の差が小さくなるとは言えないという結論に至りました。

 

競り下げ式公開オークションにおいて入札者が陥る錯覚

Cox, Roberson, Smith(1982)は、競り下げ式公開オークションにおける落札価格が、第一価格封印オークションにおける落札価格よりも低くなることに関して、別の仮説も提示しています。

第一価格封印オークションは静学的なプロセスであるため、それぞれの入札者は他の入札者たちのタイプに関する情報を与えられないまま入札する必要があります。競り下げ式公開オークションにおいても同様です。なぜなら、競り下げ式公開オークションでは誰かが入札するまで誰も行動せず、なおかつ誰かが入札した時点においてオークションが終わってしまうため、他の入札者のタイプに関する情報を収集できる余地がないからです。ただ、1点だけ違いがあります。競り下げ式公開オークションでは、売買が成立する以前のそれぞれの時点において、入札者たちは「その時点においてまだ誰も入札していない」という追加的な情報を得ることはできます。先の理由により、本来、この情報に有用性はありません。しかし、現実の入札者は、他の入札者たちがまだ入札していないという安心感から、自分もまた入札を遅らせてもよいのだと錯覚に陥り、その分だけ、理論が予測するタイミングよりも入札のタイミングが遅くなってしまいます。その結果、競り下げ式公開オークションにおける落札価格が、第一価格封印オークションにおける落札価格よりも低くなってしまうというわけです。

 

競り下げ式公開オークションの進行速度が与える影響

Cox, Roberson, Smith(1982)以降、それとは逆に、競り下げ式公開オークションにおける落札価格が、第一価格封印オークションにおける落札価格を上回る事例や実験結果が報告されるようになりました(Lucking-Reiley, 1999 など)。新たな結果は「スリル説」や「錯覚説」では説明がつきません。競り下げ式公開オークションにおける入札額は他の要因によっても左右されるということになります。

Katok and Kwasnica(2008)は、競り下げ式公開オークションの進行速度、すなわちオークションの主催者が価格を下げていく速度が落札価格に影響を与えることを実験を通じて明らかにしました。具体的には、競り下げ式公開オークションの進行速度が早い場合には第一価格封印オークションよりも落札価格が低くなる(Cox, Roberson, Smith, 1982 と整合的)一方で、競り下げ式公開オークションの進行速度が遅い場合には第一価格封印オークションよりも落札価格が高くなる(Lucking-Reiley, 1999 と整合的)という結果を得ました。

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