クールノー競争における純戦略ナッシュ均衡をクールノー均衡と呼びます。ここでは標準的なクールノー競争におけるクールノー均衡を導出します。

2018年5月23日:公開

クールノー均衡

復習になりますが、クールノー競争は以下の戦略型ゲーム\(G\)として記述される完備情報の静学ゲームです。まず、ゲーム\(G\)のプレイヤー集合は\(I=\{1,2\}\)です。ただし、\(i\in I\)は複占企業\(i\)を表します。また、企業\(i\)の純戦略集合を\(S_{i}=\mathbb{R} _{+}\)と定めます。つまり、それぞれの企業\(i\)は商品の供給量として任意の非負の実数\(q_{i}\geq 0\)を選択できます。プレイヤー\(i\)の利得関数\(u_{i}\left( q_{1},q_{2}\right) \)としては様々な可能性がありますが、典型的なものは利潤を利得と同一視するというものです。この場合、\begin{eqnarray*}
u_{1}\left( q_{1},q_{2}\right) &=&p\left( q_{1}+q_{2}\right) \cdot q_{1}-c_{1}\left( q_{1}\right) \\
u_{2}\left( q_{1},q_{2}\right) &=&p\left( q_{1}+q_{2}\right) \cdot q_{2}-c_{2}\left( q_{2}\right)
\end{eqnarray*}となります。ただし、\(p:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は市場の逆需要関数であり、\(c_{i}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は企業\(i\)の費用関数です。

クールノー競争について復習する

市場の逆需要関数と企業の費用関数に関する標準的な仮定のもとで、クールノー競争の純ナッシュ均衡を求めます。これをクールノー均衡(Cournot Equilibrium)と呼びます。

命題(クールノー競争の純ナッシュ均衡)
クールノー競争を表す戦略型ゲーム\(G\)において、市場の逆需要関数\(p:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は、\begin{eqnarray*}
&&\left( A_{1}\right) \ \exists \overline{q}\in \left( 0,\infty \right) ,\ \forall q\in \mathbb{R} _{+}:\left[ q\geq \overline{q}\ \Rightarrow \ p\left( q\right) =0\right] \\
&&\left( A_{2}\right) \ \exists \overline{p}\in \left( 0,\infty \right) :p\left( 0\right) =\overline{p} \\
&&\left( A_{3}\right) \ p\text{は}\left[ 0,\overline{q}\right] \text{において連続微分可能} \\
&&\left( A_{4}\right) \ \forall q\in \left[ 0,\overline{q}\right] :p^{\prime }\left( q\right) <0 \end{eqnarray*}を満たすとともに、それぞれの企業\(i=1,2\)の費用関数を\(c_{i}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は、\begin{equation*} \left( A_{5}\right) \ \exists c>0,\ \forall q_{i}\geq 0:c_{i}\left( q_{i}\right) =c\cdot q_{i}
\end{equation*}を満たすものとする。さらに、逆需要関数と両企業に共通する限界費用の間には、\begin{equation*}
\left( A_{6}\right) \ \exists q^{\circ }\in \left( 0,\infty \right) :p\left( q^{\circ }\right) =c
\end{equation*}が成り立つものとする。このとき、このゲーム\(G\)には純ナッシュ均衡\(\left( q_{1}^{\ast },q_{2}^{\ast }\right) \)が存在し、それは以下の条件を満たす。\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ q_{1}^{\ast },q_{2}^{\ast }>0 \\
&&\left( b\right) \ p^{\prime }\left( q_{1}^{\ast }+q_{2}^{\ast }\right) \left( \frac{q_{1}^{\ast }+q_{2}^{\ast }}{2}\right) +p\left( q_{1}^{\ast }+q_{2}^{\ast }\right) =c
\end{eqnarray*}
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条件\(\left( a\right) \)は、クールノー競争の純ナッシュ均衡において両企業が財を供給することを意味します。条件\(\left( b\right) \)は、クールノー競争の純ナッシュ均衡における均衡価格が競争均衡価格や独占価格と比べてどの程度の水準であるかを評価する際に活用します。詳しい議論は後述します。

例(クールノー均衡)
クールノー競争を表す戦略型ゲーム\(G\)において、市場の逆需要関数\(p:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)が任意の生産量\(q\geq 0\)に対して、\begin{equation*}
p\left( q\right) =a-bq
\end{equation*}という均衡価格を定めるものとします。ただし\(a,b>0\)であり、両企業に共通する限界費用\(c>0\)との間に、\begin{equation*}
p\left( 0\right) =a>c
\end{equation*}という関係が成り立つものとします。このとき、企業の利得関数は、\begin{eqnarray*}
u_{1}\left( q_{1},q_{2}\right) &=&\left[ a-b\left( q_{1}+q_{2}\right) -c\right] \cdot q_{1} \\
u_{2}\left( q_{1},q_{2}\right) &=&\left[ a-b\left( q_{1}+q_{2}\right) -c\right] \cdot q_{2}
\end{eqnarray*}となります。企業\(2\)の生産量\(q_{2}\)を所与とするとき、それに対する企業\(1\)の純最適反応は、パラメータ\(q_{2}\)の水準を所与としたときの以下の最大化問題\begin{equation*}
\max_{q_{1}\in \mathbb{R} _{+}}u_{1}\left( q_{1},q_{2}\right) =\max_{q_{1}\in \mathbb{R} _{+}}\left[ a-b\left( q_{1}+q_{2}\right) -c\right] \cdot q_{1}
\end{equation*}の解です。目的関数を変数\(q_{1}\)について整理すると、\begin{equation*}
u_{1}\left( q_{1},q_{2}\right) =-bq_{1}^{2}+\left( a-bq_{2}-c\right) q_{1}
\end{equation*}となります。このとき、\begin{align*}
& \frac{\partial u_{1}\left( q_{1},q_{2}\right) }{\partial q_{1}}=-2bq_{1}+a-bq_{2}-c \\
& \frac{\partial ^{2}u_{2}\left( q_{1},q_{2}\right) }{\partial q_{1}^{2}}=-2b<0
\end{align*}となるため、\(u_{1}\left( q_{1},q_{2}\right) \)は\(q_{1}\)に関する狭義凹関数です。ゆえに\(u_{1}\left( q_{1},q_{2}\right) \)は\(q_{1}\)に関する狭義凹関数ですので、大域的最適のための十分条件より、\begin{equation*}
\frac{\partial u_{1}\left( q_{1},q_{2}\right) }{\partial q_{1}}=0
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
-2bq_{1}+a-bq_{2}-c=0
\end{equation*}すなわち、\begin{equation}
q_{1}=\frac{a-bq_{2}-c}{2b} \tag{1}
\end{equation}が先の最大化問題の一意的な解ですので、これが\(q_{2}\)に対するプレイヤー\(1\)の一意的な純最適反応となります。同様に考えると、\(q_{1}\)に対するプレイヤー\(2\)の一意的な純最適反応は、\begin{equation}
q_{2}=\frac{a-bq_{1}-c}{2b} \tag{2}
\end{equation}となります。純戦略の組\(\left( q_{1}^{\ast },q_{2}^{\ast }\right) \)が純ナッシュ均衡であるならば、\(\left( 1\right) ,\left( 2\right) \)よりこの純戦略の組は、\begin{eqnarray*}
q_{1}^{\ast } &=&\frac{a-bq_{2}^{\ast }-c}{2b} \\
q_{2}^{\ast } &=&\frac{a-bq_{1}^{\ast }-c}{2b}
\end{eqnarray*}を満たします。そしてこれらを解くと、\begin{equation*}
q_{1}^{\ast }=q_{2}^{\ast }=\frac{a-c}{3b}
\end{equation*}を得ます。

 

クールノー競争における戦略の逐次消去

先の例で考察したクールノー競争について再考します。クールノー競争を表す戦略型ゲーム\(G\)において、市場の逆需要関数\(p:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)が任意の生産量\(q\geq 0\)に対して、\begin{equation*}
p\left( q\right) =a-bq
\end{equation*}という均衡価格を定めるものとします。ただし\(a,b>0\)であり、両企業に共通する限界費用\(c>0\)との間に、\begin{equation*}
p\left( 0\right) =a>c
\end{equation*}という関係が成り立つものとします。このゲーム\(G\)には純ナッシュ均衡\(\left( q_{1}^{\ast },q_{2}^{\ast }\right) \)が存在し、それは、\begin{equation*}
q_{1}^{\ast }=q_{2}^{\ast }=\frac{a-c}{3b}
\end{equation*}であることを先に示しました。

実は、このゲーム\(G\)は強支配される戦略の逐次消去によって解くこともできます。プレイヤー\(2\)のそれぞれの生産量\(q_{2}\)に対するプレイヤー\(1\)の純最適反応を\(b_{1}\left( q_{2}\right) \)で表すとき、先の例中の議論より、これは、\begin{equation*}
b_{1}\left( q_{2}\right) =\frac{a-bq_{2}-c}{2b}
\end{equation*}となります。また、プレイヤー\(1\)のそれぞれの生産量\(q_{1}\)に対するプレイヤー\(2\)の純最適反応を\(b_{2}\left( q_{1}\right) \)は、\begin{equation*}
b_{2}\left( q_{1}\right) =\frac{a-bq_{1}-c}{2b}
\end{equation*}
となります。これらを描いたものが以下の図です。

図:純最適反応関数
図:純最適反応関数

上図より、\(q_{2}\)が変化するときに\(b_{1}\left( q_{2}\right) \)が取り得る値の範囲は\(\left[ 0,\frac{a-c}{2b}\right] \)ですので、\(q_{1}=\frac{a-c}{2b}\)はそれより大きい任意の数量を強支配します。したがってプレイヤー\(1\)の純戦略集合から\(\frac{a-c}{2b}\)より大きい任意の値を消去できます。プレイヤー\(2\)についても同様に考えると、プレイヤー\(2\)の純戦略集合から\(\frac{a-c}{2b}\)より大きい任意の値を消去できます。消去後に残った 2 人の純戦略の組が上図のグレーの領域で表されています。

図:純最適反応関数
図:純最適反応関数

新たな得られたゲームにおいて、\(q_{2}\)が変化するときに\(b_{1}\left( q_{2}\right) \)が取り得る値の範囲は\(\left[ \frac{a-c}{4b},\frac{a-c}{2b}\right] \)ですので、\(q_{1}=\frac{a-c}{4b}\)はそれより小さい任意の数量を強支配します。したがってプレイヤー\(1\)の純戦略集合から\(\frac{a-c}{4b}\)より小さい任意の値を消去できます。プレイヤー\(2\)についても同様に考えると、プレイヤー\(2\)の純戦略集合から\(\frac{a-c}{4b}\)より小さい任意の値を消去できます。消去後に残った 2 人の純戦略の組が上図のグレーの領域で表されています。

同様のプロセスを繰り返すと、最終的に両者には純戦略\(\frac{a-c}{3b}\)だけが残ります。したがってこのゲーム\(G\)は強支配される戦略の逐次消去によって解くことができて、最終的に得られる解は\(q_{1}=q_{2}=\frac{a-c}{3b}\)を満たす純戦略の組\(\left( q_{1},q_{2}\right) \)であり、これは先に求めたクールノー均衡\(\left( q_{1}^{\ast },q_{2}^{\ast }\right) \)と一致します。

次回はクールノー均衡がどのような性質を持つのか、その均衡分析を行います。

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