ゲーム理論とは戦略的相互依存性が存在する状況について研究する学問です。戦略的相互依存性が存在する状況とは、複数の主体が関わり合う場面において、各々が最終的に直面する結果が自分の行動だけによって決まるのではなく、他の主体の行動にも依存するような状況のことです。

2018年11月13日:公開

戦略的相互依存性

ゲーム理論(game theory)とは戦略的相互依存性(strategic interdependence)が存在する状況について研究する学問です。戦略的相互依存性が存在する状況とは、複数の主体が関わり合う場面において、各々が最終的に直面する結果が自分の行動だけによって決まるのではなく、他の主体の行動にも依存するような状況のことです。

例えば、将棋など複数の人が対戦するゲームでは、それぞれのプレイヤーが採るべき戦略は相手の戦略に依存して変化するため、そこには戦略的相互依存関係が成立しています。したがって、将棋などはゲーム理論の対象です。一方、イカサマのないルーレットなど、外生的な確率のみによって結果が決まるゲームでは戦略的相互依存関係が成立していないため、これはゲーム理論の対象ではありません。

 

完全競争市場とゲーム理論

ゲーム理論はミクロ経済学(microeconomics)の一分野として分類されることがあります。ミクロ経済学とは消費者や生産者など市場に参加する個々の主体による意思決定を分析する学問です。ゲーム理論もまた市場を全体として分析するのではなく市場の参加者である個々の主体による意思決定を分析対象とするため、ゲーム理論はミクロ経済学に分類されることがあります。

その一方で、ミクロ経済学の中でも家計(消費者)の意思決定を分析する消費者理論(consumer theory)や、企業(生産者)の意思決定を分析する生産者理論(producer theory)などの古典的な分野では戦略的相互依存性を明示的に考慮しないため、この点においてゲーム理論は古典的なミクロ経済学とは異なります。

古典的なミクロ経済学の中心分野である完全競争市場(perfectly competitive markets)の理論では、家計や企業などの個々の経済主体は外生的に与えられた条件(価格・所得・生産技術など)のもとで自身の満足度や利益を最大化するように意思決定するものと仮定します。つまり、家計は与えられた価格や所得のもとで自身の満足を最大化するように消費を行うものと仮定し、企業は与えられた価格や生産技術のもとで利潤を最大化するように生産を行うものと仮定する、ということです。さらに、完全競争市場の理論において家計や企業などの意思決定を分析する際には、他の主体による意思決定の影響を明示的に考慮しません。言い換えると、完全競争市場の理論では、それぞれの主体が自身の行動を通じて他人の行動に影響を与えることができる状況、すなわち戦略的相互依存性が明示的に考慮しないということです。したがって、完全競争市場はゲーム理論の対象ではありません。

 

寡占市場とゲーム理論

現実の経済において家計や企業などの主体が直面する問題は、完全競争市場の理論が想定する状況、すなわちそれぞれの主体は外生的に与えられた条件のもとで効用や利潤を最大化する、というモデルに落とし込むことができるとは限りません。

例えば、複占市場(duopoly market)において競争する 2 つの企業が自身の利益を最大化しようとするとき、彼らはお互いに競争相手の行動を外生的に与えられた条件とみなすことはできません。なぜなら、どちらの企業にとってもどのような行動が最適であるかは相手の行動に依存し、また、相手にとっての最適な行動もまた自分の行動に依存して変化するなど、両者は相互依存的な状況に直面しているからです。ですから、複占企業が直面する意思決定問題を完全競争市場のモデルとして記述したのでは現実を上手く描写できないことになります。

複占市場のように戦略的相互依存性が意思決定の重要な要因となる場を分析する際にはゲーム理論が役に立ちます。ゲーム理論を活用した複占市場の分析例としては、数量競争を念頭においたクールノーモデル(Cournot model)や、価格競争を念頭においたベルトランモデル(Bertrand model)などがあります。これらについてはいずれ詳しく学びます。

次回はゲーム理論においてゲームという概念をどのように定義するか、基本的なところを解説します。
次へ進む 演習問題(プレミアム会員限定)