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支配純粋戦略均衡

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純粋戦略どうしの支配関係

問題としている戦略的状況が完備状況の静学ゲームであり、それが戦略型ゲーム\(G=\left( I,\left\{ S_{i}\right\} _{i\in I},\left\{ u_{i}\right\} _{i\in I}\right) \)として表現されているものとします。ゲームの静学性より、プレイヤー\(i\in I\)は意思決定を行う時点において、他のプレイヤーたちが実際に選ぶ純粋戦略の組\(s_{-i}\in S_{-i}\)を事前に観察することはできません。ただ、ゲームの完備性より、プレイヤー\(i\)は他のプレイヤーたちが選択し得る純粋戦略の組からなる集合\(S_{-i}\)を把握しているため、その要素であるそれぞれの組\(s_{-i}\)に対して、自分が純粋戦略\(s_{i}\in S_{i}\)を選んだときに得られる利得\(u_{i}\left(s_{i},s_{-i}\right) \)を把握しています。

以上を踏まえた上で、プレイヤー\(i\in I\)が選択可能な2つの異なる純粋戦略\(s_{i},s_{i}^{\prime }\in S_{i}\)に注目したとき、他のプレイヤーたちがどのような純粋戦略の組\(s_{-i}\in S_{-i}\)を選ぶ場合においても、プレイヤー\(i\)が\(s_{i}\)を選んだときに得る利得\(u_{i}\left( s_{i},s_{-i}\right) \)が\(s_{i}^{\prime }\)を選んだときに得る利得\(u_{i}\left( s_{i}^{\prime},s_{-i}\right) \)以上であるとともに、他のプレイヤーたちの少なくとも1つの純戦略の組\(s_{-i}^{\prime }\in S_{-i}\)について、プレイヤー\(i\)が\(s_{i}\)を選んだときに得る利得\(u_{i}\left(s_{i},s_{-i}^{\prime }\right) \)が\(s_{i}^{\prime }\)を選んだときに得る利得\(u_{i}\left( s_{i}^{\prime },s_{-i}^{\prime }\right) \)よりも大きい場合には、すなわち、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall s_{-i}\in S_{-i}:u_{i}\left( s_{i},s_{-i}\right)
\geq u_{i}\left( s_{i}^{\prime },s_{-i}\right) \\
&&\left( b\right) \ \exists s_{-i}^{\prime }\in S_{-i}:u_{i}\left(
s_{i},s_{-i}^{\prime }\right) >u_{i}\left( s_{i}^{\prime },s_{-i}^{\prime
}\right)
\end{eqnarray*}がともに成り立つのであれば、\(s_{i}\)は\(s_{i}^{\prime }\)を支配する(dominate)や弱支配する(weaklydominate)するなどと言います。同じことを、\(s_{i}^{\prime }\)は\(s_{i}\)に支配される(dominated)や弱支配される(weakly dominated)などと言うこともできます。

例(支配)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて考えます。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 5,5 & 2,8 \\ \hline
D & 8,2 & 2,2 \\ \hline
\end{array}$$

表:支配

プレイヤー\(1\)については、\begin{eqnarray*}u_{1}\left( D,L\right) &=&8>5=u_{1}\left( U,L\right) \\
u_{1}\left( D,R\right) &=&2=2=u_{1}\left( U,R\right)
\end{eqnarray*}が成り立つため、\(D\)は\(U\)を支配します。プレイヤー\(2\)については、\begin{eqnarray*}u_{2}\left( U,R\right) &=&8>5=u_{2}\left( U,L\right) \\
u_{2}\left( D,R\right) &=&2=2=u_{2}\left( D,L\right)
\end{eqnarray*}が成り立つため、\(R\)は\(L\)を支配します。

 

支配する純粋戦略は存在するとは限らない

以下の例が示唆するように、それぞれのプレイヤーは、自分の他の戦略を支配する戦略を持つとは限りません。言い換えると、自分の他の戦略によって支配される戦略を持つとは限りません。

例(支配)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて考えます。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 1,-1 & -1,1 \\ \hline
D & -1,1 & 1,-1 \\ \hline
\end{array}$$

表:支配

プレイヤー\(1\)については、\begin{eqnarray*}u_{1}\left( U,L\right) &=&1>-1=u_{1}\left( D,L\right) \\
u_{1}\left( D,R\right) &=&1>-1=u_{1}\left( U,R\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。つまり、相手が\(L\)を選ぶ場合には自分は\(U\)を選んだ方が良く、相手が\(R\)を選ぶ場合には自分が\(D\)を選んだ方が良いため、\(U\)は\(D\)を支配しませんし、逆に\(D\)は\(U\)を支配しません。プレイヤー\(2\)についても同様です。\(L\)は\(R\)を支配せず、\(R\)は\(L\)を支配しません。

 

強支配と支配の関係

プレイヤー\(i\)の純粋戦略\(s_{i}\)が自分の他の純粋戦略\(s_{i}^{\prime }\)を強支配するものとします。つまり、\begin{equation*}\forall s_{-i}\in S_{-i}:u_{i}\left( s_{i},s_{-i}\right) >u_{i}\left(
s_{i}^{\prime },s_{-i}\right)
\end{equation*}が成り立つということです。このとき、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \forall s_{-i}\in S_{-i}:u_{i}\left( s_{i},s_{-i}\right)
\geq u_{i}\left( s_{i}^{\prime },s_{-i}\right) \\
&&\left( b\right) \ \exists s_{-i}^{\prime }\in S_{-i}:u_{i}\left(
s_{i},s_{-i}^{\prime }\right) >u_{i}\left( s_{i}^{\prime },s_{-i}^{\prime
}\right)
\end{eqnarray*}はともに成り立つため、\(s_{i}\)は\(s_{i}^{\prime }\)を支配します。

命題(強支配と支配)
戦略型ゲーム\(G\)においてプレイヤー\(i\in I\)の純粋戦略\(s_{i}\in S_{i}\)が純粋戦略\(s_{i}^{\prime }\in S_{i}\)を強支配するならば、\(s_{i}\)は\(s_{i}^{\prime }\)を支配する。

上の命題の逆は成り立つとは限りません。つまり、\(s_{i}\)が\(s_{i}^{\prime }\)を支配するとき、\(s_{i}\)は\(s_{i}^{\prime }\)を強支配するとは限りません。これは以下の例からも明らかです。

例(強支配と支配)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて考えます。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 5,5 & 2,8 \\ \hline
D & 8,2 & 2,2 \\ \hline
\end{array}$$

表:強支配と支配

プレイヤー\(1\)については、\begin{eqnarray*}u_{1}\left( D,L\right) &=&8>5=u_{1}\left( U,L\right) \\
u_{1}\left( D,R\right) &=&2=2=u_{1}\left( U,R\right)
\end{eqnarray*}が成り立つため、\(D\)は\(U\)を強支配する一方、弱支配はしません。

 

支配される純粋戦略が選ばれない理由

復習になりますが、合理的なプレイヤーが「強支配」される純粋戦略を選ぶ可能性はありません。他方で、合理的なプレイヤーが「支配」される純粋戦略を選ぶ可能性を完全に排除することはできません。支配される純粋戦略が選ばれないことを保証するためには、合理性の仮定だけでは不十分であるということです。その理由を解説するために、以下の利得行列によって表されるゲームについて考えます。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1/2 & L & R \\ \hline
U & 5,1 & 4,0 \\ \hline
M & 6,0 & 3,1 \\ \hline
D & 6,4 & 4,4 \\ \hline
\end{array}$$

表:支配

プレイヤー\(1\)の純粋戦略\(U,M\)はともに純粋戦略\(D\)によって支配されますが、合理性を仮定したとき、プレイヤー\(1\)が\(U\)や\(M\)を選ぶ可能性を確実に排除できるでしょうか。合理的なプレイヤー\(1\)が\(U\)や\(M\)を選ぶ可能性を排除できないことを示すために、合理性とは別にプレイヤーの「注意深さ」をモデル化します。ただし、プレイヤーの注意深さとは、ゲームにおいてあらゆる不測の事態が起こり得ることをプレイヤーが想定できることを意味します。より正確には、ゲームにおいて起こり得るすべての結果に対して、それぞれが実際に起こる確率を正と評価するということです。このような仮定を警戒心(caution)の仮定と呼びます。先のゲームにおいて、プレイヤー\(1\)は相手プレイヤーが\(L\)を選ぶ確率を\(p\)と予想し、\(R\)を選ぶ確率を\(1-p\)と予想しているものとします。\(0\leq p\leq 1\)です。ただ、プレイヤー\(1\)が注意深い人物であれば、相手プレイヤーが\(L\)や\(R\)を選ぶ確率を\(0\)とは断定しないため、彼の予想は\(0<p<1\)を満たすはずです。

仮に、プレイヤー\(1\)にとって\(D\)が\(U,M\)を「強支配」するのであれば、予想\(p\)の内容とは関係なく、プレイヤー\(1\)が合理的である限りにおいて\(D\)を選ぶことが最適になるため、この場合にはプレイヤー\(1\)の警戒心は問題になりません。一方、現在考えている例のように、\(D\)が\(U,D\)を強支配するのではなく「支配」する場合には、プレイヤー\(1\)の警戒心の有無が意味を持ちます。順番に解説します。

まず、プレイヤー\(1\)が合理的である一方、十分な警戒心を持たない場合について考えます。この場合、彼の予想として\(p=0\)や\(p=1\)などが起こり得ます。\(p=0\)の場合、すなわちプレイヤー\(1\)は相手が\(R\)を選ぶものと断定してしまっている場合、自身にとって\(U\)と\(D\)は無差別になるため、彼が\(U\)を選ぶ可能性を排除できません。また、\(p=1\)の場合、すなわちプレイヤー\(1\)は相手が\(L\)を選ぶものと断定してしまっている場合、自身にとって\(M\)と\(D\)は無差別になるため、彼が\(M\)を選ぶ可能性を排除できません。つまり、たとえプレイヤーが合理的であっても、十分な警戒心を持たない場合には、支配される戦略を選ぶ可能性を排除できないということです。

では、プレイヤー\(1\)が合理的であるとともに十分な警戒心を持つ場合、すなわち彼の予想が\(0<p<1\)を満たす場合にはどうでしょうか。この場合、プレイヤー\(1\)は相手が\(L\)や\(R\)を選ぶ確率をそれぞれ正と予想しています。相手が\(L\)を選ぶ状況において自身は\(U\)よりも\(D\)を選んだ方がよく、相手が\(R\)を選ぶ状況において自身は\(M\)よりも\(D\)を選んだ方がよいため、この場合には彼が\(U\)や\(M\)を選ぶ可能性を排除できます。つまり、プレイヤーが合理的であるとともに警戒心を持つ場合には、支配される戦略を選ぶ可能性を排除できるということです。

命題(支配される戦略が選ばれない理由)
戦略型ゲーム\(G\)において、プレイヤー\(i\in I\)の純粋戦略\(s_{i}\in S_{i}\)が自身の他の純粋戦略によって支配される場合、合理性と警戒心の仮定のもとでは、プレイヤー\(i\)は\(s_{i}\)を選択しない。

 

支配純粋戦略

プレイヤー\(i\in I\)のある純粋戦略\(s_{i}\in S_{i}\)が自身の他の任意の純粋戦略を支配する場合には、すなわち、任意の\(s_{i}^{\prime }\in S_{i}\backslash \left\{ s_{i}\right\} \)に対して、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall s_{-i}\in S_{-i}:u_{i}\left( s_{i},s_{-i}\right)
\geq u_{i}\left( s_{i}^{\prime },s_{-i}\right) \\
&&\left( b\right) \ \exists s_{-i}^{\prime }\in S_{-i}:u_{i}\left(
s_{i},s_{-i}^{\prime }\right) >u_{i}\left( s_{i}^{\prime },s_{-i}^{\prime
}\right)
\end{eqnarray*}がとも成り立つ場合には、\(s_{i}\)をプレイヤー\(i\)の支配純粋戦略(dominant pure strategy)や弱支配純粋戦略(weakly dominant purestrategy)などと呼びます。

例(支配純粋戦略)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて再び考えます。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 5,5 & 2,8 \\ \hline
D & 8,2 & 2,2 \\ \hline
\end{array}$$

表:支配戦略

プレイヤー\(1\)については、\(D\)が\(U\)を支配します。さらに、プレイヤー\(1\)の純粋戦略は\(U,D\)の2つだけであるため、\(D\)はプレイヤー\(1\)の支配戦略です。プレイヤー\(2\)については、\(R\)が\(L\)を支配します。さらに、プレイヤー\(2\)の純粋戦略は\(L,R\)の2つだけであるため、\(R\)はプレイヤー\(2\)の支配戦略です。

 

支配純粋戦略は存在するとは限らない

繰り返しになりますが、それぞれのプレイヤーは自分の他の戦略を支配する戦略を持つとは限りません。したがって、プレイヤーは支配戦略を持つとは限らないということになります。

例(支配純粋戦略)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて再び考えます。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 1,-1 & -1,1 \\ \hline
D & -1,1 & 1,-1 \\ \hline
\end{array}$$

表:支配戦略

プレイヤー\(1\)については、\(U\)は\(D\)を支配せず、逆に\(D\)は\(U\)を支配しないため、支配戦略は存在しません。プレイヤー\(2\)については、\(L\)は\(R\)を支配せず、逆に\(R\)は\(L\)を支配しないため、支配戦略は存在しません。

 

支配純粋戦略は一意的

プレイヤーは支配戦略を持つとは限りませんが、支配戦略が存在する場合、それは一意的です。実際、プレイヤー\(i\)が異なる2つの支配戦略\(s_{i},s_{i}^{\prime }\)を持つものと仮定すると、\(s_{i}\)は\(s_{i}^{\prime }\)を支配するため、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall s_{-i}\in S_{-i}:u_{i}\left( s_{i},s_{-i}\right)
\geq u_{i}\left( s_{i}^{\prime },s_{-i}\right) \\
&&\left( b\right) \ \exists s_{-i}^{\prime }\in S_{-i}:u_{i}\left(
s_{i},s_{-i}^{\prime }\right) >u_{i}\left( s_{i}^{\prime },s_{-i}^{\prime
}\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちますが、\(\left( b\right) \)より、\(s_{i}^{\prime }\)は\(s_{i}\)を支配しないため、これは\(s_{i}^{\prime }\)が支配戦略であることと矛盾です。

命題(支配純粋戦略の一意性)
戦略型ゲーム\(G\)において、プレイヤーが弱支配純粋戦略を持つ場合、それは一意的である。

 

強支配純粋戦略と支配純粋戦略の関係

プレイヤー\(i\)の純粋戦略\(s_{i}\)が強支配戦略であるものとします。つまり、\(s_{i}\)はプレイヤー\(i\)の他のすべての純粋戦略を強支配しますが、強支配は支配を含意するため、\(s_{i}\)は支配戦略でもあります。

命題(強支配戦略と支配戦略)
戦略型ゲーム\(G\)においてプレイヤー\(i\in I\)の純粋戦略\(s_{i}\in S_{i}\)が強支配戦略ならば、\(s_{i}\)は支配戦略でもある。

上の命題の逆は成り立つとは限りません。実際、\(s_{i}\)が支配戦略であるとき、\(s_{i}\)はプレイヤー\(i\)の他のすべての純粋戦略を支配しますが、支配は必ずしも強支配を意味しないため、\(s_{i}\)は強支配戦略であるとは限りません。これは以下の例からも明らかです。

例(強支配戦略と支配戦略)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて考えます。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 5,5 & 2,8 \\ \hline
D & 8,2 & 2,2 \\ \hline
\end{array}$$

表:強支配戦略と支配戦略

プレイヤー\(1\)について、\(D\)は支配戦略ですが強支配戦略ではありません。

 

支配純粋戦略が選ばれる理由

合理性と警戒心の仮定のもとでは、プレイヤーが支配される戦略を選ぶ可能性は排除されます。プレイヤー\(i\)が支配戦略\(s_{i}\)を持つとき、プレイヤー\(i\)の他のすべての純粋戦略は\(s_{i}\)によって支配されるため、それらの純粋戦略が選ばれることはなく、プレイヤー\(i\)は\(s_{i}\)を選びます。言い換えると、仮にプレイヤー\(i\)が支配戦略\(s_{i}\)を選ばないのであれば、それは合理性や警戒心の仮定と矛盾します。

命題(支配純粋戦略が選ばれる根拠)
戦略型ゲーム\(G\)において、プレイヤー\(i\in I\)の純粋戦略\(s_{i}\in S_{i}\)が支配戦略である場合、合理性と警戒心の仮定のもとでは、プレイヤー\(i\)は\(s_{i}\)を選択する。

 

支配純粋戦略均衡

繰り返しになりますが、戦略型ゲーム\(G\)においてプレイヤー\(i\in I\)の純粋戦略\(s_{i}^{\ast }\in S_{i}\)が支配純粋戦略であることとは、任意の\(s_{i}\in S_{i}\backslash \left\{ s_{i}^{\ast }\right\} \)に対して、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall s_{-i}\in S_{-i}:u_{i}\left( s_{i}^{\ast
},s_{-i}\right) \geq u_{i}\left( s_{i},s_{-i}\right) \\
&&\left( b\right) \ \exists s_{-i}^{\prime }\in S_{-i}:u_{i}\left(
s_{i}^{\ast },s_{-i}^{\prime }\right) >u_{i}\left( s_{i},s_{-i}^{\prime
}\right)
\end{eqnarray*}が成り立つことを意味します。さて、プレイヤーたちの純粋戦略の組\(s_{I}^{\ast }=\left( s_{i}^{\ast }\right)_{i\in I}\)において、任意のプレイヤー\(i\)の純粋戦略\(s_{i}^{\ast }\)が支配純粋戦略になっているならば、\(s_{I}^{\ast }\)を\(G\)の支配純粋戦略均衡(dominant purestrategy equilibrium)や弱支配純粋戦略均衡(weakly dominant pure strategy equilibrium)などと呼びます。

例(支配純粋戦略均衡)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて再び考えます。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 5,5 & 2,8 \\ \hline
D & 8,2 & 2,2 \\ \hline
\end{array}$$

表:支配戦略均衡

プレイヤー\(1\)にとって\(D\)は支配戦略であり、プレイヤー\(2\)にとって\(R\)は支配戦略です。したがって、\(\left( D,R\right) \)は支配戦略の組であるため、これはゲームの支配戦略均衡です。

 

支配純粋戦略均衡は存在するとは限らない

繰り返しになりますが、それぞれのプレイヤーは支配戦略を持つとは限りません。したがって、ゲームには支配戦略均衡は存在するとは限らないということになります。

例(支配純粋戦略均衡)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて再び考えます。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 1,-1 & -1,1 \\ \hline
D & -1,1 & 1,-1 \\ \hline
\end{array}$$

表:支配戦略均衡

プレイヤー\(1,2\)はともに支配戦略を持たないため、このゲームには支配戦略は存在しません。

 

支配戦略均衡は一意的

繰り返しになりますが、プレイヤーが支配戦略を持つ場合、それは一意的です。したがって、ゲームに支配戦略均衡が存在する場合、それは一意的です。

命題(支配純粋戦略均衡の一意性)
戦略型ゲーム\(G\)において、支配純粋戦略均衡が存在する場合、それは一意的である。

 

強支配戦略均衡と支配戦略均衡の関係

戦略型ゲーム\(G\)に強支配戦略均衡\(s_{I}^{\ast }=\left( s_{i}^{\ast}\right) _{i\in I}\)が存在する場合、それぞれのプレイヤー\(i\)の均衡戦略\(s_{i}^{\ast }\)は強支配戦略です。強支配戦略は支配戦略でもあるため、\(s_{I}^{\ast}\)は支配戦略均衡でもあります。

命題(強支配戦略均衡と支配戦略均衡)
戦略型ゲーム\(G\)に強支配戦略均衡\(s_{I}^{\ast }\in S_{I}\)が存在するとき、\(s_{I}^{\ast }\)はこのゲーム\(G\)の支配戦略均衡である。

上の命題の逆は成り立つとは限りません。実際、\(s_{I}^{\ast }\)が支配戦略均衡であるとき、それぞれのプレイヤー\(i\)の均衡戦略\(s_{i}^{\ast }\)は支配戦略ですが、支配戦略は強支配戦略であるとは限らないため、\(s_{I}^{\ast }\)は強支配戦略均衡であるとは限りません。これは以下の例からも明らかです。

例(強支配戦略均衡と支配戦略均衡)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて考えます。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 5,5 & 2,8 \\ \hline
D & 8,2 & 2,2 \\ \hline
\end{array}$$

表:強支配戦略均衡と支配戦略均衡

純粋戦略の組\(\left( D,R\right) \)は支配戦略均衡ですが、強支配戦略均衡ではありません。

 

支配戦略均衡がプレーされる理由

戦略型ゲーム\(G\)に支配戦略均衡\(s_{I}^{\ast }\)が存在する場合、それぞれのプレイヤー\(i\)は自身の均衡戦略である支配戦略\(s_{i}^{\ast }\)を選べば、他のプレイヤーたちがどのような戦略の組\(s_{-i}\)を選ぶかに関わらず、他の純粋戦略\(s_{i}^{\prime }\)を選ぶ場合以上もしくはそれよりも大きな利得を得ることができます。したがって、ゲームに支配戦略均衡が存在する場合、それぞれのプレイヤーは他のプレイヤーたちの行動について考える必要がなく、他のプレイヤーたちが合理的であるかどうかを考える必要もなく、自身の支配戦略\(s_{i}^{\ast }\)を選ぶことが常に最適になります。支配戦略均衡が存在するゲームでは、プレイヤーは他のプレイヤーたちの手を読んだり、相手の合理性を疑う必要がないということです。プレイヤーの合理性が相互知識もしくは共有知識であるという仮定は必要なく、それぞれのプレイヤーが合理的であるとともに不測の事態が起こり得ることを想定できるほど十分な警戒心を持っていれば、全員が均衡戦略である支配戦略を選び、その結果、均衡である支配戦略均衡が実現します。

命題(支配純粋戦略均衡が実現する根拠)
戦略型ゲーム\(G\)において、弱支配純粋戦略均衡\(s_{I}^{\ast }\in S_{I}\)が存在する場合、合理性と警戒心の仮定のもとでは、プレイヤーたちは\(s_{I}^{\ast }\)をプレーする。

 

演習問題

問題(支配戦略均衡)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて、強支配純粋戦略均衡や支配戦略均衡は存在しますか。議論してください。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 2,2 & 1,3 \\ \hline
D & 0,0 & 0,0 \\ \hline
\end{array}$$

表:戦略型ゲーム
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問題(支配戦略均衡)
以下の利得行列で表される戦略型ゲームについて、強支配純粋戦略均衡や支配戦略均衡は存在しますか。議論してください。

$$\begin{array}{|c|c|c|}\hline
1\diagdown 2 & L & R \\ \hline
U & 3,1 & 0,0 \\ \hline
D & 0,0 & 1,3 \\ \hline
\end{array}$$

表:戦略型ゲーム
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次回は強支配混合戦略均衡について解説します。

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