教材一覧
教材一覧
教材検索
CONSUMER THEORY

ドブリューの定理(効用関数の存在条件)

目次

Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有

一般の消費集合上に定義された選好関係を表す効用関数の候補

消費集合が可算集合\(X=\left\{ x_{1},x_{2},x_{3},\cdots \right\} \subset \mathbb{R} ^{n}\)であるとともに\(X\)上の選好関係\(\succsim \)が合理性を満たす場合には、\(\succsim \)を表す効用関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)が存在することが明らかになりました。具体的には、それぞれの\(x_{n}\in \)に対して、\begin{equation}u\left( x_{n}\right) =\sum_{m\in \mathbb{N} \ \text{s.t.}\ x_{m}\in L\left( x_{n}\right) }\left( \frac{1}{2}\right) ^{m}
\quad \cdots (1)
\end{equation}を定める関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)はそのような関数の一例です。ただし、\(L\left( x_{n}\right) \)は消費ベクトル\(x_{n}\)の下方位集合であり、\begin{equation*}L\left( x_{n}\right) =\left\{ x\in X\ |\ x_{n}\succsim x\right\}
\end{equation*}と定義されます。つまり、消費ベクトル\(x_{n}\)と同等であるか\(x_{n}\)より望ましくない消費ベクトル\(x_{m}\)をすべて集めた上で、そのそれぞれの添字\(m\)に対して\(\left( \frac{1}{2}\right) ^{m}\)を計算した上で、それらの総和をとったものが\(u\left( x_{n}\right) \)です。では、可算集合とは限らない一般的な消費集合上に定義された選好関係についても、それを表現する効用関数が存在することを保証できるのでしょうか。

可算集合とは限らない消費集合\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)上に定義された合理的な選好関係\(\succsim \)が与えられたとき、\(X\)の可算な部分集合\(Y\)を任意にとれば、\(\succsim \)は\(Y\)上においても合理性を満たすため、\(Y\)上においてこの\(\succsim \)を表現する効用関数\(u:Y\rightarrow \mathbb{R} \)が存在します。具体的には\(\left( 1\right) \)がそのような関数の一例です。その上で、\(Y\)上に定義されたこの関数\(u\)の定義域を何らかの方法を通じて\(X\)へ拡張することにより\(X\)上の選好関係\(\succsim \)を表す効用関数を得られるのであれば目標は達成されます。以上の方針を踏まえた場合に問題になるのは以下の2点です。1つ目は\(X\)の可算な部分集合\(Y\)をどのように選ぶべきかという点であり、2つ目は\(Y\)上の効用関数の定義域をどのように\(X\)へ拡張すべきかという点です。

例(一般の集合上に定義された効用関数)
消費集合が\(\mathbb{R} \)上の有界な閉区間\(X=\left[0,1\right] \)であるものとします。つまり、1財モデルにおいて消費者はその商品を\(0\)以上\(1\)以下の任意の数量だけ消費できるということです。この消費集合\(\left[ 0,1\right] \)は明らかに可算集合ではありません。消費集合\(\left[ 0,1\right] \)の部分集合\begin{equation*}Y=\left\{ x_{n}=\frac{1}{n}\ |\ n\in \mathbb{N} \right\}
\end{equation*}に注目します。\(Y\)上の選好関係\(\succsim \)が合理性を満たすとともに、消費量がより多いほどより望ましいという好みの体系を表しているものとします。つまり、\begin{equation*}\forall n,m\in \mathbb{N} :\left( x_{n}\succsim x_{m}\Leftrightarrow x_{n}\geq x_{m}\right)
\end{equation*}が成り立つということです。\(Y\)は可算集合であるため、\(Y\)上の選好\(\succsim \)を表現する効用関数\(v:Y\rightarrow \mathbb{R} \)が存在し、これはそれぞれの\(x_{n}\in Y\)に対して、\begin{equation*}v\left( x_{n}\right) =\sum_{m\in \mathbb{N} \ \text{s.t.}\ x_{m}\in L\left( x_{n}\right) }\left( \frac{1}{2}\right) ^{m}=\frac{1}{2^{n-1}}
\end{equation*}を定めます。実際、消費ベクトル\(x_{n},x_{m}\in Y\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}x_{m}\succsim x_{n}\Leftrightarrow v\left( x_{n}\right) \geq v\left(
x_{m}\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます(演習問題)。この関数\(v\)の定義域を\(Y\)から\(X\)へ拡張したいところですが、どのように拡張するのが自然でしょうか。消費ベクトル\(x\in X\)が与えられたとき、\(x\)より望ましくない\(Y\)の要素をすべて特定できますが、\(v\)がそれらの\(Y\)の要素に対して定める効用の中での最大値を\(x\)の効用とするのは自然な考え方です。つまり、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\max \left\{ v\left( y\right) \ |\ y\in Y\wedge x\succ
y\right\}
\end{equation*}を定める関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)を導入するということです。この関数\(u\)は\(Y\)上の選好\(\succsim \)を表す効用関数であるため(演習問題)、\(u\)は\(v\)の拡張です。その一方、\(u\)は\(X\)上の選好\(\succsim \)を表す効用関数にはなっていません。実際、\(Y\)の定義より\(x_{1},x_{2}\in Y\)に関しては\(x_{1}\succ x_{2}\)が成り立ちますが、これに対して、\begin{equation*}x_{1}\succ x\succ x^{\prime }\succ x_{2}
\end{equation*}を満たす消費ベクトル\(x,x^{\prime }\in X\)をとることができる一方で、\(u\)の定義より、\begin{eqnarray*}u\left( x\right) &=&\max \left\{ v\left( y\right) \ |\ y\in Y\wedge x\succ
y\right\} =v\left( x_{2}\right) \\
u\left( x^{\prime }\right) &=&\max \left\{ v\left( y\right) \ |\ y\in
Y\wedge x^{\prime }\succ y\right\} =v\left( x_{2}\right)
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
u\left( x\right) =u\left( x^{\prime }\right)
\end{equation*}となりますが、これは\(x\succ x^{\prime }\)と整合的ではありません。したがって\(u\)は\(X\)上において効用関数ではありません。

可算集合\(Y\)上に定義された効用関数\(v\)の定義域を自然な形で一般の集合\(X\)上へ拡張したにも関わらず、そうして得られる関数\(u\)は必ずしも\(X\)上の効用関数にならないことを例を通じて確認しました。なぜこのような問題が生じるのでしょうか。仮に、上の例において、\begin{equation*}x_{1}\succ x\succ x_{i}\succ x^{\prime }\succ x_{2}
\end{equation*}を満たす\(x_{i}\in Y\)が存在する場合には、\(u\)の定義より、\begin{eqnarray*}u\left( x\right) &=&\max \left\{ v\left( y\right) \ |\ y\in Y\wedge x\succ
y\right\} =v\left( x_{i}\right) \\
u\left( x^{\prime }\right) &=&\max \left\{ v\left( y\right) \ |\ y\in
Y\wedge x^{\prime }\succ y\right\} =v\left( x_{2}\right)
\end{eqnarray*}となりますが、\(v\)は\(Y\)上の効用関数であるため、\(Y\)の要素である\(x_{i}\)と\(x_{2}\)について\(x_{i}\succ x_{2}\)であることは\(v\left( x_{i}\right)>v\left( x_{2}\right) \)と必要十分です。すると\(u\left( x\right) >u\left( x^{\prime}\right) \)が成り立ち、これは\(x\succ x^{\prime }\)であることと整合的です。以上の議論を踏まえると、\(x\succ x^{\prime }\)を満たす消費ベクトル\(x,x^{\prime }\in X\)を任意に選んだとき、それらに挟まれる\(Y\)の要素、すなわち\(x\succ y\succ x^{\prime }\)を満たす\(y\in Y\)が存在することを保証できれば先のような問題を回避できそうです。言い換えると、そのような性質を満たす\(X\)の可算部分集合\(Y\)をとることができれば、先のように定義された関数\(u\)が\(X\)上の効用関数になるという予想が立ちます。\(X\)の可算部分集合\(Y\)が満たすべきこのような性質は\(Y\)が\(X\)上で稠密であることと深い関係があります。以降では、\(X\)上で稠密な可算部分集合\(Y\)が必ず存在することを示した上で、\(Y\)上に定義された効用関数\(v\)の定義域を適切な形で\(X\)に拡張することにより、その新たな関数が\(X\)上の効用関数になることを示します。

 

消費集合上で稠密な可算部分集合

消費集合\(X\subset \mathbb{R} ^{N}\)の要素であるすべての消費ベクトルが無差別である場合、すなわち、\begin{equation*}\forall x,y\in X:x\sim y
\end{equation*}が成り立つ場合には、すべての消費ベクトルに対して同じ効用を割り当てる関数を導入すれば、すなわち、\begin{equation*}
\forall x,y\in X:u\left( x\right) =u\left( y\right)
\end{equation*}を満たす関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)を導入すれば、これは明らかに\(\succsim \)を表す効用関数になります。そこで以下では無差別ではない消費ベクトルを要素として持つ消費集合\(X\)を分析対象とします。まずは以下の補題を示します。

命題(消費集合の稠密な可算部分集合)
消費集合\(X\subset \mathbb{R} ^{N}\)上の選好関係\(\succsim \)が合理性と連続性を満たすとともに、\(X\)の中には\(\succsim \)のもとで無差別ではない複数の消費ベクトルが存在するものとする。この場合、\(X\)上で稠密であるとともに可算集合であるような\(X\)の部分集合が存在する。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

消費集合\(X\)上で稠密な\(X\)の可算部分集合\(Y\)が存在することを確認しましたが、先に例を通じて確認したように、\(Y\)上の効用関数\(u\)の定義域を\(X\)に拡張したときに\(u\)が\(X\)上の効用関数になるためには、\(x\succ x^{\prime }\)を満たす消費ベクトル\(x,x^{\prime }\in X\)を任意に選んだとき、それらに挟まれる\(Y\)の要素、すなわち\(x\succ y\succ x^{\prime }\)を満たす\(y\in Y\)が存在することを保証する必要があります。\(Y\)がこのような性質を満たすことを保証するためには、選好関係\(\succsim \)が合理性と連続性を満たすということに加えて、消費集合\(X\)が凸集合であることを仮定する必要があります。まずは以下の補題を示します。

命題(連結性の含意)
消費集合\(X\subset \mathbb{R} ^{N}\)が連結であり、選好関係\(\succsim \)が合理性と連続性を満たすとともに、\(X\)の中には\(\succsim \)のもとで無差別ではない複数の消費ベクトルが存在するものとする。このとき、\begin{equation*}\forall x,y\in X:\left( x\succ y\Rightarrow \exists z\in X:x\succ z\succ
y\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

以上の2つの命題より以下を得ます。

命題(凸性と稠密性の含意)
消費集合\(X\subset \mathbb{R} ^{N}\)が凸集合であり、選好関係\(\succsim \)が合理性と連続性を満たすとともに、\(X\)の中には\(\succsim \)のもとで無差別ではない複数の消費ベクトルが存在するものとする。このとき、\(X\)上で稠密であるとともに可算集合であるような\(X\)の部分集合\(Y\)が存在するとともに、\begin{equation*}\forall x,y\in X:\left( x\succ y\Rightarrow \exists z\in Y:x\succ z\succ
y\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

ドブリューの定理

以上を踏まえた上で、\(\succsim \)上の選好関係\(\succsim \)を表す効用関数の候補となるような関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)を以下のように定義します。消費集合\(X\subset \mathbb{R} ^{N}\)上の選好関係\(\succsim \)が合理性と連続性を満たすとともに、\(X\)の中には\(\succsim \)のもとで無差別ではない複数の消費ベクトルが存在するものとします。すると先の命題より、稠密かつ可算集合であるような\(X\)の部分集合\(Y\)が存在します。可算集合上に定義された選好関係が合理性を満たす場合にはその選好を表す効用関数が存在するため、可算集合\(Y\)上の選好\(\succsim \)を表す効用関数が存在します。具体的には、可算集合\(Y=\left\{ y_{1},y_{2},y_{3},\cdots \right\} \)のそれぞれの要素\(y_{n}\in Y\)に対して、\begin{equation*}v\left( y_{n}\right) =\sum_{m\in \mathbb{N} \ \text{s.t.}\ y_{m}\in L\left( y_{n}\right) }\left( \frac{1}{2}\right) ^{m}
\end{equation*}を定める関数\(v:Y\rightarrow \mathbb{R} \)はそのような関数です。以上を踏まえた上で、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =\sup \left\{ v\left( y\right) \ |\ y\in Y\wedge x\succ
y\right\}
\end{equation*}を定める関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。

先の例とは異なり、なぜここでは関数\(u\)を定義する際に最大値\(\max \)ではなく上限\(\sup \)を採用したのでしょうか。その理由を理解するために、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation}u\left( x\right) =\max \left\{ v\left( y\right) \ |\ y\in Y\wedge x\succ
y\right\} \quad \cdots (1)
\end{equation}を定めるものとして\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義した際に生じ得る問題について説明します。このような定義のもと、ある消費ベクトル\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}u\left( x\right) =v\left( y_{n}\right)
\end{equation*}と定まったものとします。\(y_{n}\in Y\)です。つまり、\(x\)より望ましくない\(Y\)上の消費ベクトルの中で最も望ましいものが\(y_{n}\)であるということです。すると先の命題より、この\(x\in X\)と\(y_{n}\in Y\)に対して\(x\succ y_{m}\succ y_{n}\)を満たす\(y_{m}\in Y\)が必ず存在します。\(v\)は\(Y\)上の効用関数であるためこのとき\(v\left( y_{m}\right)>v\left( y_{n}\right) \)が成り立ちます。つまり、\(x\)より望ましくなく、なおかつ\(y_{n}\)よりの望ましい\(Y\)上の消費ベクトル\(y_{m}\)が存在することになり矛盾です。つまり、\(Y\)が\(X\)上で稠密であることを踏まえると、関数\(u\)を最大値\(\max \)を用いて\(\left( 1\right) \)のように定義したのでは\(u\left( x\right) \)の値が存在しない状況が起こり得ます。一方、\(v\left( y\right) \)がとり得る値の範囲は有界であるため、\(u\)の定義として最大値\(\max \)ではなく上限\(\sup \)を採用すれば\(u\left( x\right) \)の値が常に存在することを保証できます。

以上の議論を踏まえた上で、以下の命題を示します。これをドブリューの定理(Debreu’s Theorem)と呼びます。

命題(ドブリューの定理)
消費集合\(X\subset \mathbb{R} ^{N}\)が凸集合であり、\(X\)上の選好関係\(\succsim \)が合理性と連続性を満たすならば、\(\succsim \)を表す効用関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)が存在する。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(ドブリューの定理)
非負の実数を成分とするベクトルからなる集合\(\mathbb{R} _{+}^{N}\)は\(\mathbb{R} ^{N}\)上の凸集合であるため、ドブリューの定理より、\(\mathbb{R} _{+}^{N}\)上の選好関係\(\succsim \)が合理性と連続性を満たすならば、\(\succsim \)を表す効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{N}\rightarrow \mathbb{R} \)が存在します。

次回から効用最大化問題について解説します。

Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有
DISCUSSION

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

RELATED KNOWLEDGE

関連知識

ドブリューの定理
効用関数

消費者の選好関係を表現する効用関数が存在する場合には、消費ベクトルの間の相対的な望ましさを、実数の大小関係として表現することができます。

ドブリューの定理
有限集合上の効用関数の存在条件

消費集合が有限集合であり、なおかつ消費集合上に定義された選好関係が合理性の仮定(完備性および推移性)を満たす場合には、その選好関係を表す効用関数が存在するとともに、そのような関数を具体的に構成することができます。

ドブリューの定理
可算集合上の効用関数の存在条件

消費集合が可算集合であり、なおかつ消費集合上に定義された選好関係が合理性の仮定(完備性および推移性)を満たす場合には、その選好関係を表す効用関数が存在するとともに、そのような関数を具体的に構成することができます。

消費者理論