効用関数
\(N\)種類の商品が存在する経済を想定した上で、消費者が直面する個々の選択肢を\(N\)次元ベクトル\begin{equation*} \boldsymbol{x}=\left( x_{1},\cdots ,x_{N}\right) \in \mathbb{R} ^{N}
\end{equation*}として表現します。ただし、このベクトル\(\boldsymbol{x}\)の第\(n\)成分\(x_{n}\)は商品\(n\)の消費量を表します。消費者が選択可能なすべてのベクトルからなる集合を消費集合\begin{equation*} X\subset \mathbb{R} ^{N}
\end{equation*}として表現します。消費集合の要素である個々のベクトル\(\boldsymbol{x}\in X\)を消費ベクトルと呼びます。
消費集合\(X\)に直面した消費者は、\(X\)の要素である消費ベクトルどうしを比較しながら自身にとって最も望ましい消費ベクトルを選択します。そこで、消費者が持つ好みの体系を\(X\)上の二項関係\(\succsim \)として定式化し、これを選好関係と呼びます。具体的には、2つの消費ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in X\)を任意に選んだときに、\begin{equation*} \boldsymbol{x}\succsim \boldsymbol{y}\Leftrightarrow \text{消費者は}\boldsymbol{x}\text{を}\boldsymbol{y}\text{以上に好む}
\end{equation*}を満たすものとして\(\succsim \)を定義します。つまり、比較対象として2つの消費ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)を提示されたとき、消費者が\(\boldsymbol{x}\)を\(\boldsymbol{y}\)以上に好むとき、そしてその場合にのみ、\(\boldsymbol{x}\succsim \boldsymbol{y}\)が成り立つものとして\(\succsim \)を定義するということです。
消費集合\(X\subset \mathbb{R} ^{N}\)上の選好関係\(\succsim \)が与えられたとき、ある関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)が存在して、任意の消費ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in X\)に対して以下の関係\begin{equation*} u\left( \boldsymbol{x}\right) \geq u\left( \boldsymbol{y}\right)
\Leftrightarrow \boldsymbol{x}\succsim \boldsymbol{y}
\end{equation*}が成り立つ場合には、この関数\(u\)を選好関係\(\succsim \)を表現する効用関数(utility function)と呼びます。また、効用関数\(u\)が消費ベクトル\(\boldsymbol{x}\)に対して定める値\(u\left( \boldsymbol{x}\right) \)を\(\boldsymbol{x}\)の効用(utility)と呼びます。つまり、選好関係\(\succsim \)を表す効用関数\(u\)が存在する場合、消費ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\)について\(\boldsymbol{x}\)が\(\boldsymbol{y}\)以上に望ましいことと、\(\boldsymbol{x}\)の効用が\(\boldsymbol{y}\)の効用以上であることが必要十分になります。効用関数を用いれば、消費ベクトルの間の相対的な望ましさを、消費ベクトルがもたらす効用の大小関係として表現できるということです。
\end{equation*}を満たすものとして定義されているものとします。ただし、右側の\(\geq \)は実数どうしを比較する通常の大小関係です。つまり、上の選好関係\(\succsim \)は「消費量が多いほど望ましい」という評価体系を表現しています。関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*} u\left( x\right) =x
\end{equation*}を定めるものとします。つまり、商品の消費量をそのまま効用として採用するということです。消費ベクトル\(x,y\in \mathbb{R} _{+}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*} x\succsim y &\Leftrightarrow &x\geq y\quad \because \succsim \text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &u\left( x\right) \geq u\left( y\right) \quad \because u\text{の定義}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
x\succsim y\Leftrightarrow u\left( x\right) \geq u\left( y\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため、\(u\)は\(\succsim \)を表す効用関数であることが明らかになりました。
\wedge x_{2}\in \left\{ 0,1,2,\cdots ,10\right\} \right\}
\end{equation*}です。ある人はコーヒーを飲む際には必ず1杯につき角砂糖を2個入れるものとし、角砂糖を2個入れたコーヒーからのみ満足を得るものとします。また、この割合を超えて余ったコーヒーや砂糖からは追加的な満足を得ないものとします。具体例として、3つの消費ベクトル\(\left( 1,2\right) ,\left( 1,3\right) ,\left( 2,3\right) \in X\)に注目します。\(\left( 1,2\right) \)からは角砂糖を2個入れたコーヒーを1杯飲むことができます。\(\left( 1,3\right) \)でも同様のコーヒーを1杯飲むことができますが、角砂糖が1個余ります。\(\left( 2,3\right) \)でも同様のコーヒーを1杯飲むことができますが、1杯のコーヒーと1個の角砂糖が余ります。したがて、この消費者にとって、\begin{equation*} \left( 1,2\right) \sim \left( 1,3\right) \sim \left( 2,3\right)
\end{equation*}であり、これらの消費ベクトルには同一の効用を割り当てることができます。では、一般の消費ベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X\)から、角砂糖を2個入れたコーヒーを何杯作ることができるでしょうか。コーヒーだけに注目すれば最大で\(x_{1}\)杯作ることができます。一方、角砂糖は1杯につき2個必要であるため、\(x_{2}\)個の角砂糖からは最大で\(\left\lfloor \frac{x_{2}}{2}\right\rfloor \)杯のコーヒーを作ることができます。ただし、\(\left\lfloor \cdot \right\rfloor \)は床関数であり、\(\left\lfloor x\right\rfloor \)は\(x\)以下の最大の整数です。したがって、\(\left( x_{1},x_{2}\right) \)から実際に作れる「角砂糖を2個入れたコーヒー」の杯数は、これら2つのうち小さいほうであるため、\begin{equation*} \min \left\{ x_{1},\left\lfloor \frac{x_{2}}{2}\right\rfloor \right\}
\end{equation*}となります。そこで、それぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X\)に対して、\begin{equation*} u\left( x_{1},x_{2}\right) =\min \left\{ x_{1},\left\lfloor \frac{x_{2}}{2}\right\rfloor \right\}
\end{equation*}を定める関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)を考えれば、この効用関数によって消費者の選好を表現できます。この例では、コーヒーだけを増やしても、それと組み合わせるために必要な角砂糖が不足していれば効用は増加しません。同様に、角砂糖だけを増やしても、それと組み合わせるコーヒーが不足していれば効用は増加しません。このように、一定の割合で組み合わせて消費することによって価値を持ち、一方だけを余分に増やしても追加的な効用をもたらさない2つの商品を完全補完財(perfect complements)と呼びます。
0,1,2,3,4,5\right\} \wedge x_{2}\in \left\{ 0,1,2,3,4,5\right\} \right\}
\end{equation*}です。ある人にとって重要なことは得られる金額だけであり、硬貨と紙幣の違いは重要ではないものとします。この人の選好\(\succsim \)をどのような効用関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)として表現できるでしょうか。この人にとって金額の大きさだけが問題であるため、消費ベクトルから得られる合計金額をそのまま効用とみなすことができます。つまり、それぞれの消費ベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X\)に対して、\begin{equation*} u\left( x_{1},x_{2}\right) =500x_{1}+1000x_{2}
\end{equation*}を定める関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)をとれば、これは\(\succsim \)を表す効用関数になります。ちなみに、この人にとっての500円硬貨と1000円紙幣のように、完全に交換可能であるような2つ商品を完全代替財(perfect substitutes)と呼びます。
X=\left\{ 0,1,2,3,4,5\right\} \times \left\{ 0,1,2,3,4,5\right\}
\end{equation*}であるものとします。つまり、問題としているのは2種類の商品であり、それぞれの消費ベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X\)において商品\(i\ \left( =1,2\right) \)の消費量\(x_{i}\)は\(0desu.\)以上\(5\)以下の整数です。\(X\)上の選好関係\(\succsim \)を、\begin{equation*} \left( x_{1},x_{2}\right) \succsim \left( y_{1},y_{2}\right) \Leftrightarrow
x_{1}>y_{1}\vee \left( x_{1}=y_{1}\wedge x_{2}\geq y_{2}\right)
\end{equation*}を満たすものとして定義します。つまり、上の選好関係\(\succsim \)は「商品\(1\)の消費量がより多い消費ベクトルは無条件でより望ましく、商品\(1\)の消費量が等しい消費ベクトルどうしについては、商品\(2\)の消費量が多い方がより望ましい」という評価体系を反映したものになっています。関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X\)に対して、\begin{equation*} u\left( x_{1},x_{2}\right) =6x_{1}+x_{2}
\end{equation*}を定めるものとします。これは\(\succsim \)を表す効用関数です。一方、関数\(v:X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X\)に対して、\begin{equation*} v\left( x_{1},x_{2}\right) =5x_{1}+x_{2}
\end{equation*}を定めるものとすると、これは\(\succsim \)を表す効用関数ではありません(演習問題)。
効用関数は存在するとは限らない
選好関係を表現する効用関数は存在するとは限りません。以下の例より明らかです。
x_{1},x_{2}\right) \Leftrightarrow \left( x_{1}^{\prime }\geq x_{1}\wedge
x_{2}^{\prime }\geq x_{2}\right)
\end{equation*}を満たすものとして定義されているものとします。ただし、\(\geq \)は実数どうしを比較する大小関係です。つまり、上の選好関係\(\succsim \)は「2つの商品の消費量は多いほど望ましい」という評価体系を反映しています。以上の選好関係\(\succsim \)を表す効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)は存在しません(演習問題)。
選好関係を表現する効用関数が存在することを保証する上で必要な条件については様々なものが知られています。効用関数の存在条件については場を改めて詳しく解説します。
効用関数の特徴づけ
消費集合\(X\subset \mathbb{R} ^{N}\)上の選好関係\(\succsim \)を表現する効用関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)が存在するものとします。このとき、狭義選好関係\(\succ \)および効用関数\(u\)の定義を踏まえると、消費ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in X\)を任意に選んだときに、\begin{equation*} \boldsymbol{x}\succ \boldsymbol{y}\Leftrightarrow u(\boldsymbol{x})>u(\boldsymbol{y})
\end{equation*}という関係が成り立つことが示されます(演習問題)。つまり、消費者にとって\(\boldsymbol{x}\)が\(\boldsymbol{y}\)よりも望ましいことと、\(\boldsymbol{x}\)の効用が\(\boldsymbol{y}\)の効用よりも大きいことは必要十分です。
同様に、無差別関係\(\sim \)および効用関数\(u\)の定義を踏まえると、消費ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in X\)を任意に選んだときに、\begin{equation*} \boldsymbol{x}\sim \boldsymbol{y}\Leftrightarrow u(\boldsymbol{x})=u(\boldsymbol{y})
\end{equation*}という関係が成り立つことが示されます(演習問題)。つまり、消費者にとって\(\boldsymbol{x}\)と\(\boldsymbol{y}\)が同じ程度望ましいことと、\(\boldsymbol{x}\)の効用と\(\boldsymbol{y}\)の効用が等しいことは必要十分です。
\left( b\right) \ \boldsymbol{x} &\sim &\boldsymbol{y}\Leftrightarrow u(\boldsymbol{x})=u(\boldsymbol{y})
\end{eqnarray*}がともに成り立つ。
上の命題の逆もまた成立します。つまり、消費集合\(X\)上に定義された関数\(u\)が先の2つの条件\(\left( a\right) ,\left( b\right) \)を満たす場合、この関数\(u\)は\(\succsim \)を表す効用関数であることが保証されます。つまり、任意の消費ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in X\)について、\begin{equation*} \boldsymbol{x}\succsim \boldsymbol{y}\Leftrightarrow u\left( \boldsymbol{x}\right) \geq u\left( \boldsymbol{y}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つことが示されます(演習問題)。
\left( b\right) \ \boldsymbol{x} &\sim &\boldsymbol{y}\Leftrightarrow u(\boldsymbol{x})=u(\boldsymbol{y})
\end{eqnarray*}をともに満たすならば、この関数\(u\)は\(\succsim \)を表す効用関数である。
以上の2つの命題より以下が導かれます。
\left( b\right) \ \boldsymbol{x} &\sim &\boldsymbol{y}\Leftrightarrow u(\boldsymbol{x})=u(\boldsymbol{y})
\end{eqnarray*}をともに満たすことは、この関数\(u\)が\(\succsim \)を表す効用関数であるための必要十分条件である。
これまでの話の流れを振り返ると、最初に選好関係\(\succsim \)を定義し、そこから派生的に狭義選好関係\(\succ \)や無差別関係\(\sim \)を定義し、さらに、\begin{equation} \boldsymbol{x}\succsim \boldsymbol{y}\Leftrightarrow u\left( \boldsymbol{x}\right) \geq u\left( \boldsymbol{y}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}を満たすものとして効用関数\(u\)を定義した場合、\(\succ \)や\(\sim \)に関して、\begin{eqnarray} \boldsymbol{x} &\succ &\boldsymbol{y}\Leftrightarrow u(\boldsymbol{x})>u(\boldsymbol{y}) \quad \cdots (2) \\
\boldsymbol{x} &\sim &\boldsymbol{y}\Leftrightarrow u(\boldsymbol{x})=u(\boldsymbol{y}) \quad \cdots (3)
\end{eqnarray}が成り立つことを明らかにしました。上の命題によると、そのような話の流れとは逆に、最初に\(\succ \)と\(\sim \)を定義し、そこから派生的に\(\succsim \)を定義し、さらに\(\left( 2\right) ,\left( 3\right) \)を満たすものとして\(u\)を定義したとき、\(\succsim \)に関して\(\left( 1\right) \)が成り立つことを示すことができます。つまり、消費者の選好を定式化する際には、\(\succsim \)を出発点にしても、\(\succ \)と\(\sim \)のペアを出発点にしても本質的には同じであるということです。
効用関数の狭義単調増加変換
消費集合\(X\subset \mathbb{R} ^{N}\)上の選好関係\(\succsim \)を表す効用関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)が存在するとき、狭義単調増加関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で合成関数\(f\circ u:X\rightarrow \mathbb{R} \)を作成します。ただし、\(f\)が狭義単調増加であることは、\begin{equation*} \forall a,b\in \mathbb{R} :\left[ a>b\Rightarrow f\left( a\right) >f\left( b\right) \right]
\end{equation*}が成り立つことを意味します。合成関数の定義より、合成関数\(f\circ u\)がそれぞれの\(\boldsymbol{x}\in X\)に対して定める値は、\begin{equation*} \left( f\circ u\right) \left( \boldsymbol{x}\right) =f\left( u\left(
\boldsymbol{x}\right) \right)
\end{equation*}です。このような合成関数を生成する操作を\(u\)の狭義単調増加変換(strictly increasing transformation)と呼びます。
選好関係\(\succsim \)を表す効用関数\(u\)が与えられたとき、それを任意の形で狭義単調増加変換することにより得られる関数\(f\circ u\)もまた\(\succsim \)を表す効用関数です。
先の命題の主張は\(f\)が狭義単調増加ではなく単調増加である場合には成り立ちません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を満たす消費ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in X\)が存在するものとします。関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は任意の\(a\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*} f\left( a\right) =0
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は定数関数であるため単調増加ですが狭義単調増加ではありません。この場合、\begin{equation*} \left( f\circ u\right) \left( \boldsymbol{x}\right) =\left( f\circ u\right)
\left( \boldsymbol{y}\right) =0
\end{equation*}となるため、\(f\circ u\)は\(\succsim \)を表現する効用関数ではありません。
\end{equation*}を満たすものとして定義されているものとします。ただし、\(\geq \)は実数どうしを比較する大小関係です。\(\mathbb{R} _{+}\)上に定義された関数\(u:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}\)に対して、\begin{equation*} u\left( x\right) =4x^{4}
\end{equation*}を定めるものとします。この\(u\)は\(\succsim \)を表す効用関数です。さらに、\(u\)に対して様々な狭義単調増加変換を行うことで得られる関数\(g,h,i:X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}\)に対して、\begin{eqnarray*} g\left( x\right) &=&\left[ u\left( x\right) \right] ^{2}=\left[ 4x^{4}\right] ^{2} \\
h\left( x\right) &=&10\ln \left( 1+u\left( x\right) \right) =10\ln \left(
1+4x^{4}\right) \\
i\left( x\right) &=&\sqrt{u\left( x\right) }=\sqrt{4x^{4}}
\end{eqnarray*}を定めるものとします。先の命題より\(g,h,i\)もまた\(u\)と同様に\(\succsim \)を表現する効用関数です。消費量\(x=1,2,3\cdots \)の効用をそれぞれ計算すると、$$\begin{array}{ccccc} \hline
x & u(x) & g(x) & h(x) & i(x) \\ \hline 1 & 4 & 16 & 16.09 & 2 \\ \hline 2 & 16 & 256 & 41.74 & 4 \\ \hline 3 & 36 & 1296 & 57.84 & 6 \\ \hline \vdots & \vdots & \vdots & \vdots & \vdots \\ \hline 10 & 400 & 160000 & 105.97 & 20 \\ \hline \end{array}$$ となります。消費量\(x\)が同じでも、\(u,g,h,i\)の中のどれを採用するかによって効用の水準が変わり得ることが上の表から確認できます。一方、\(u,g,h,i\)の中のどれを採用する場合でも、消費量\(x\)が増えるほど効用が増えるという点では共通しています。
基数的効用と序数的効用
効用関数の狭義単調増加変換に関する先の命題や例が示唆するように、消費者の選好関係\(\succsim \)が与えられたとき、それを表現する効用関数は一意的には定まりません。実際、狭義単調増加関数は無数に存在するため、\(\succsim \)を表す効用関数\(u\)が与えられたとき、それは無数の形で狭義単調増加変換が可能であり、そうして得られる無数の関数はいずれも同一の選好関係\(\succsim \)を表現する効用関数となります。つまり、その中のどの効用関数を採用しても一般性は失われないということです。
消費ベクトル\(\boldsymbol{x}\)が与えられたとき、そこから得られる効用の絶対的な水準は採用する効用関数に依存して変化します。絶対的な水準に注目した場合の効用を基数的効用(cardinal utility)と呼びます。先の例においても、関数\(u,g,h,i\)はいずれも同一の選好\(\succsim \)を表す効用関数であるためどれを採用しても良いのですが、それぞれの消費ベクトル\(\boldsymbol{x}\)の基数的効用は採用する効用関数に依存して変化します。採用する効用関数に依存して基数的効用が変化してしまうということは、基数的効用はそれほど重要ではないことを意味します。
選好関係\(\succsim \)を表現する効用関数\(u\)と、それを任意の形で狭義単調増加変換することにより得られる効用関数\(f\circ u\)が与えられたとき、任意の消費ベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in X\)に対して,\begin{equation*} u(\boldsymbol{x})\geq u(\boldsymbol{y})\Leftrightarrow (f\circ u)(\boldsymbol{x})\geq (f\circ u)(\boldsymbol{y})
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、それぞれの消費ベクトルに対して割り当てられる効用の相対的な大小関係は、どの効用関数を採用した場合でも一定であるため、効用の相対的な大小関係には重要な意味があります。相対的な大小に注目した場合の効用を序数的効用(ordinal utility)と呼びます。
選好関係\(\succsim \)を表現する効用関数\(u\)が与えられたとき、消費ベクトル\(\boldsymbol{x}\)の効用\(u\left( \boldsymbol{x}\right) \)が消費ベクトル\(\boldsymbol{y}\)の効用\(u\left( \boldsymbol{y}\right) \)の\(k\)倍の大きさであっても、消費者は\(\boldsymbol{x}\)を\(\boldsymbol{y}\)よりも\(k\)倍好ましいと考えているとは言えません。なぜなら、\(u\)を狭義単調増加変換して得られる関数\(f\circ u\)もまた\(\succsim \)を表現する効用関数であるにも関わらず、\((f\circ u)(\boldsymbol{x})\)の大きさは\((f\circ u)(\boldsymbol{y})\)の大きさの\(k\)倍であるとは限らないからです。基数的効用は重要ではありません。その一方で、\(u\)と\(f\circ u\)のどちらの効用関数を採用した場合においても、\(\boldsymbol{x}\)の効用が\(\boldsymbol{y}\)の効用よりも大きいという事実は不変です。通常の消費者理論では効用は序数的に解釈され、効用の絶対的な水準や差には意味を持たせません。ただし、期待効用理論などでは効用の数値的な差にも一定の意味を持たせるため、基数的な効用概念が重要になります。
同一の選好を表す効用関数の関係
同一の選好を表す2つの効用関数は、効用値の範囲上では狭義単調増加変換によって結びつけることができます。
\end{equation*}が成り立つ。しかも、このような関数\(f\)は一意である。
この命題は、序数的効用の意味をより明確にしています。序数的効用では、各消費ベクトルに割り当てられた効用の数値そのものではなく、それらの大小関係だけが重要です。実際、同じ選好関係を表現する2つの効用関数\(u,v \)は、効用値の範囲上で狭義単調増加変換によって結びついています。したがって、\(u\)と\(v\)が各消費ベクトルにまったく異なる数値を割り当てていたとしても、それらが表す選好順位は完全に一致します。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(u\)は\(\succsim \)を表現する効用関数であることを示してください。
\begin{array}{cc}
x_{2} & \left( if\ x_{1}=x_{2}\right) \\
-\frac{1}{1+x_{2}} & \left( if\ x_{1}\not=x_{2}\right)\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(u\)は\(\succsim \)を表現する効用関数であることを示してください。
X=\left\{ 0,1,2,3,4,5\right\} \times \left\{ 0,1,2,3,4,5\right\}
\end{equation*}であるものとします。つまり、問題としているのは2種類の商品であり、それぞれの消費ベクトル\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X\)において、それぞれの商品\(i\ \left( =1,2\right) \)の消費量\(x_{i}\)は\(1\)以上\(5\)以下の整数です。\(X\)上の選好関係\(\succsim \)を、\begin{equation*} \left( x_{1},x_{2}\right) \succsim \left( y_{1},y_{2}\right) \Leftrightarrow
x_{1}>y_{1}\vee \left( x_{1}=y_{1}\wedge x_{2}\geq y_{2}\right)
\end{equation*}を満たすものとして定義します。
- 関数\(u:X\rightarrow \mathbb{R} \)をそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X\)に対して、\begin{equation*} u\left( x_{1},x_{2}\right) =6x_{1}+x_{2}
\end{equation*}を定めるものと定義すると、これは\(\succsim \)を表す効用関数であることを証明してください。 - 関数\(v:X\rightarrow \mathbb{R} \)をそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X\)に対して、\begin{equation*} v\left( x_{1},x_{2}\right) =5x_{1}+x_{2}
\end{equation*}を定めるものと定義すると、これは\(\succsim \)を表す効用関数ではないことを証明してください。
x_{1},x_{2}\right) \Leftrightarrow \left( x_{1}^{\prime }\geq x_{1}\wedge
x_{2}^{\prime }\geq x_{2}\right)
\end{equation*}を満たすものとして定義されているものとします。ただし、\(\geq \)は実数どうしを比較する大小関係です。つまり、上の選好関係\(\succsim \)は「2つの商品の消費量は多いほど望ましい」という評価体系を反映しています。以上の選好関係\(\succsim \)を表す効用関数\(u:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)は存在しないことを示してください。
\end{equation*}を定めるものとします。関数\(f,g,h,i:\mathbb{R} _{+}^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*} f\left( x_{1},x_{2}\right) &=&x_{1}^{2}x_{2}^{2} \\
g\left( x_{1},x_{2}\right) &=&7x_{1}x_{2} \\
h\left( x_{1},x_{2}\right) &=&7x_{1}x_{2}+8 \\
i\left( x_{1},x_{2}\right) &=&\ln \left( 1+x_{1}x_{2}\right)
\end{eqnarray*}を定めるものとします。これらもまた\(\succsim \)を表す効用関数であることを示してください。
\end{equation*}であるものとします。この主催者はどのような選好を持っているか説明してください。
