1生産物モデルにおける効率生産集合

生産計画どうしの広義支配・狭義支配の概念をもとに、狭義効率生産集合、広義効率生産集合および生産フロンティアとの関係について具体例を交えながら解説します。

狭義の効率生産集合

ここまで、生産計画、生産集合、技術、短期と長期など、生産者理論の基礎となる概念について学びました。簡単に復習すると、\(N\)生産要素\(1\)生産物モデルにおける生産ベクトルは投入ベクトルと産出量の組\begin{equation*}\left( \boldsymbol{x},y\right) =\left( x_{1},\cdots ,x_{N},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{N+1}
\end{equation*}として表現されます。生産者が技術的に選択可能な生産ベクトルからなる集合は生産集合\begin{equation*}
Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}
\end{equation*}として表現されます。とは言え、生産者理論の目的は、生産集合そのものを調べることではありません。生産集合は、生産者が実現可能な生産計画を表したものにすぎません。生産者が与えられたとしても、その中には無数の生産計画が含まれています。実際の企業は、それらすべてを実行するわけではなく、その中から1つの生産計画を選択します。では、どのような指標をもとに生産ベクトルどうしを比較すればよいでしょうか。利潤の大きさを基準に比較するためには価格が必要ですが、現段階において価格をモデルに導入していないため、まずは効率性の観点だけから生産ベクトルどうしを比較します。つまり、より少ない投入でより多くを生産できるのであればより望ましいという考え方です。効率性の概念を以下で定式化します。

生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)に属する2つの生産ベクトル\(\left( \boldsymbol{x},y\right) ,\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \in \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)を任意に選んだとき、両者の間に以下の関係\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ y\geq y^{\prime }\wedge \forall n\in \left\{ 1,\cdots
,N\right\} :x_{n}^{\prime }\geq x_{n} \\
&&\left( b\right) \ y>y^{\prime }\vee \exists n\in \left\{ 1,\cdots
,N\right\} :x_{n}^{\prime }>x_{n}
\end{eqnarray*}がともに成り立つ場合には、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \)を広義に支配する(weakly dominate)とか支配する(dominate)などと言います。

\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)が\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime},y^{\prime }\right) \)を広義に支配することとは、生産者が\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \)から\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)へ移行することにより、生産物の産出量を減らすことなく(\(y\geq y^{\prime }\))、なおかつ任意の生産要素の投入量を増やすことなく(\(x_{n}^{\prime }\geq x_{n}\))、なおかつ生産物の生産量を増やすことができるか(\(y>y^{\prime }\))、または何らかの生産要素の投入量を減らすことができる(\(x_{n}^{\prime }>x_{n}\))ことを意味します。したがって、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \)よりも効率的な生産ベクトルであると言えます。

例(生産ベクトルどうしの広義支配関係)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。以下の3つの生産ベクトル\begin{eqnarray*}
\left( 2,2\right) &\in &Y \\
\left( 3,2\right) &\in &Y \\
\left( 2,1\right) &\in &Y
\end{eqnarray*}に注目します。\(\left( 2,2\right) \)と\(\left( 3,2\right) \)を比べると、\(\left( 2,2\right) \)では\(\left( 3,2\right) \)よりも少ない投入\(2\)で同量の産出\(2\)を実現しているため、\(\left( 2,2\right) \)は\(\left(3,2\right) \)を広義支配しています。\(\left( 2,2\right) \)と\(\left( 2,1\right) \)を比べると、\(\left( 2,2\right) \)では\(\left( 2,1\right) \)と同量の投入\(2\)でより多くの産出\(2\)を実現しているため、\(\left( 2,2\right) \)は\(\left( 2,1\right) \)を広義支配しています。\(\left(3,2\right) \)と\(\left( 2,1\right) \)の間には広義の支配関係は成立していません。

生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)に属するある生産ベクトル\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \in Y\)に対して、それを広義支配する生産ベクトルが\(Y\)の中に存在しない場合には、すなわち、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ y^{\prime }\geq y\wedge \forall n\in \left\{ 1,\cdots
,N\right\} :x_{n}\geq x_{n}^{\prime } \\
&&\left( b\right) \ y^{\prime }>y\vee \exists n\in \left\{ 1,\cdots
,N\right\} :x_{n}>x_{n}^{\prime }
\end{eqnarray*}をともに満たす\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \in Y\)が存在しない場合には、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は狭義効率的(strictly efficient)であるとか効率的(efficient)であるなどと言います。

広義支配されないことを狭義効率性と呼ぶことは一見すると誤りのように思われますが、これは支配関係の強弱と、それを排除する条件の強弱が逆転していることに由来します。

生産ベクトル\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \in Y\)が狭義効率的であるものとします。これに対して、\begin{equation*}y^{\prime }>y\vee \exists n\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\}
:x_{n}>x_{n}^{\prime }
\end{equation*}を満たす生産ベクトル\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \in Y\)を任意に選びます。つまり、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)を基準に、産出量を増やすか、もしくは何らかの生産要素の投入量を減らすことで得られる生産ベクトルが\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \)です。ただ、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は狭義効率的であるため、\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \)は\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)を広義支配しません。したがって、\begin{equation*}y^{\prime }\geq y\wedge \forall n\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\} :x_{n}\geq
x_{n}^{\prime }
\end{equation*}は成り立たず、その否定に相当する、\begin{equation*}
y^{\prime }<y\vee \exists n\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\}
:x_{n}<x_{n}^{\prime }
\end{equation*}が成り立つことが保証されます。つまり、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)から\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \)へ移行すると、産出量が減少するか、もしくは何らかの生産要素の投入量が増加してしまいます。つまり、ある生産ベクトルが狭義効率的であることとは、そこを出発点に産出量を増やそうとすると何らかの生産要素の投入量が増加してしまうか、何らかの生産要素の投入量を減らそうとすると産出量が減少してしまうことを意味します。

生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)に属する生産ベクトルの中でも狭義効率的なものだけを集めることにより得られる集合を狭義効率生産集合(strictly efficientproduction set)や効率生産集合(efficient production set)などと呼び、これを、\begin{equation*}
Y^{\ast }
\end{equation*}で表記します。明らかに\(Y^{\ast }\subset Y\)が成り立ちます。

例(狭義効率生産集合)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします(下図)。

図:生産集合
図:生産集合

狭義効率生産集合は、\begin{equation*}
Y^{\ast }=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y=x\right\}
\end{equation*}です(演習問題)。

例(狭義効率生産集合)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x^{\frac{1}{2}}\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします(下図)。

図:生産集合
図:生産集合

狭義効率生産集合は、\begin{equation*}
Y^{\ast }=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y=x^{\frac{1}{2}}\right\}
\end{equation*}です(演習問題)。

例(狭義効率生産集合)
2生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y\leq \min \left\{ x_{1},\frac{x_{2}}{2}\right\} \right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。狭義効率生産集合は、\begin{equation*}
Y^{\ast }=\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y=x_{1}=\frac{x_{2}}{2}\right\}
\end{equation*}です(演習問題)。

 

広義の効率生産集合

生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)に属する2つの生産ベクトル\(\left( \boldsymbol{x},y\right) ,\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \in \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)を任意に選んだとき、両者の間に以下の関係\begin{equation*}y>y^{\prime }\wedge \forall n\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\} :x_{n}^{\prime
}>x_{n}
\end{equation*}がともに成り立つ場合には、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \)を狭義に支配する(strictly dominate)と言います。

\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)が\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime},y^{\prime }\right) \)を狭義に支配することとは、生産者が\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \)から\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)へ移行することにより、生産物の産出量が増えるとともに(\(y>y^{\prime }\))、任意の生産要素の投入量が減少すること(\(x_{n}^{\prime }>x_{n}\))を意味します。したがって、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime},y^{\prime }\right) \)よりも効率的な生産ベクトルであると言えます。

例(生産ベクトルどうしの狭義支配関係)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。明らかに、以下の2つの生産ベクトル\begin{eqnarray*}
\left( 2,2\right) &\in &Y \\
\left( 3,1\right) &\in &Y \\
\left( 4,1\right) &\in &Y
\end{eqnarray*}に注目します。\(\left( 2,2\right) \)と\(\left( 3,1\right) \)を比べると、\(\left( 2,2\right) \)ではより少ない投入\(2\)でより多くの産出\(2\)を実現しているため、\(\left( 2,2\right) \)は\(\left( 3,1\right) \)を狭義支配しています。同様の理由により、\(\left( 2,2\right) \)は\(\left( 4,1\right) \)を狭義支配しています。その一方で、\(\left( 3,1\right) \)と\(\left( 4,1\right) \)の間には狭義の支配関係は成立していません。

生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)に属するある生産ベクトル\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \in Y\)に対して、それを狭義支配する生産ベクトルが\(Y\)の中に存在しない場合には、すなわち、以下の条件\begin{equation*}y^{\prime }>y\wedge \forall n\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\}
:x_{n}>x_{n}^{\prime }
\end{equation*}を満たす\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime}\right) \in Y\)が存在しない場合には、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は広義効率的(weakly efficient)であると言います。

狭義支配されないことを広義効率性と呼ぶことは一見すると誤りのように思われますが、これは支配関係の強弱と、それを排除する条件の強弱が逆転していることに由来します。

生産ベクトル\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \in Y\)が広義効率的であるものとします。これに対して、\begin{equation*}y^{\prime }>y\vee \exists n\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\}
:x_{n}>x_{n}^{\prime }
\end{equation*}を満たす生産ベクトル\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \in Y\)を任意に選びます。つまり、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)を基準に、産出量を増やすか、もしくは何らかの生産要素の投入量を減らすことで得られる生産ベクトルが\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \)です。ただ、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は広義効率的であるため、\(\left( \boldsymbol{x}^{\prime },y^{\prime }\right) \)は\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)を狭義支配しません。したがって、\begin{equation*}y^{\prime }>y\wedge \forall n\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\}
:x_{n}>x_{n}^{\prime }
\end{equation*}は成り立たず、その否定に相当する、\begin{equation*}
y\geq y^{\prime }\vee \exists n\in \left\{ 1,\cdots ,N\right\}
:x_{n}^{\prime }\geq x_{n}
\end{equation*}が成り立つことが保証されます。つまり、ある生産ベクトルが広義効率的であることとは、そこを出発点に産出量を増やしたり何らかの生産要素の投入量を減らそうとすると、何らかの生産要素の投入量は減らず(増加することもある)、もしくは産出量は増加しません(減少することもある)。

生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)に属する生産ベクトルの中でも広義効率的なものだけを集めることにより得られる集合を広義効率生産集合(weakly efficient production set)と呼び、これを、\begin{equation*}
Y^{\ast \ast }
\end{equation*}で表記します。明らかに\(Y^{\ast \ast }\subset Y\)が成り立ちます。

例(広義効率生産集合)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします(下図)。

図:生産集合
図:生産集合

広義効率生産集合は、\begin{equation*}
Y^{\ast \ast }=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y=x\right\}
\end{equation*}です(演習問題)。

例(広義効率生産集合)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x^{\frac{1}{2}}\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします(下図)。

図:生産集合
図:生産集合

広義効率生産集合は、\begin{equation*}
Y^{\ast \ast }=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y=x^{\frac{1}{2}}\right\}
\end{equation*}です(演習問題)。

例(広義効率生産集合)
2生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y\leq \min \left\{ x_{1},\frac{x_{2}}{2}\right\} \right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。広義効率生産集合は、\begin{eqnarray*}
Y^{\ast \ast } &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y=\min \left\{ x_{1},\frac{x_{2}}{2}\right\} \right\} \\
&=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y=x_{1}\leq \frac{x_{2}}{2}\right\} \cup \left\{ \left(
x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y=\frac{x_{2}}{2}\leq x_{1}\right\}
\end{eqnarray*}です(演習問題)。

 

狭義効率性と広義効率性の関係

狭義効率的な生産ベクトルは広義効率的でもあるため以下を得ます。

命題(狭義効率性と広義効率性の関係)
\(N\)生産要素\(1\)生産物モデルにおいて生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)が与えられたとき、生産ベクトル\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \in Y\)が狭義効率的であるならば、\(\left( \boldsymbol{x},y\right) \)は広義効率的である。したがって、\begin{equation*}Y^{\ast }\subset Y^{\ast \ast }
\end{equation*}が成り立つ。ただし、\(Y^{\ast }\)は狭義効率生産集合であり、\(Y^{\ast \ast }\)は広義効率生産集合である。
証明

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先の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、広義効率的な生産ベクトルは狭義効率的であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(狭義効率性と広義効率性の関係)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ 0\leq x\leq 5\wedge y\leq x\right\} \cup \left\{ \left(
x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ x\geq 5\wedge y\leq 5\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。生産ベクトル\begin{equation*}
\left( 6,5\right) \in Y
\end{equation*}を狭義支配する生産ベクトルは\(Y\)の中に存在しない一方で、これは以下の生産ベクトル\begin{equation*}\left( 5,5\right) \in Y
\end{equation*}によって広義支配されます。したがって\(\left( 6,5\right) \)は広義効率的である一方、狭義効率的ではありません。

 

効率生産集合と生産フロンティアの関係

生産集合\(Y\)の境界\(Y^{f}\)を生産フロンティアと呼びます。狭義効率生産集合\(Y^{\ast }\)や広義効率生産集合\(Y^{\ast \ast }\)は明らかに生産集合\(Y\)の部分集合ですが、これらは生産フロンティア\(Y^{f}\)の部分集合でもあります。つまり、効率的な生産ベクトルは生産集合の境界点であるということです。

命題(効率的な生産ベクトルは生産集合の境界点)
\(N\)生産要素\(1\)生産物モデルにおいて生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)について、\begin{equation*}Y^{\ast }\subset Y^{\ast \ast }\subset Y\cap Y^{f}
\end{equation*}が成り立つ。ただし、\(Y^{\ast }\)は狭義効率生産集合であり、\(Y^{\ast \ast }\)は広義効率生産集合であり、\(Y^{f}\)は\(Y\)の境界である。
証明

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生産集合\(Y\)が\(\mathbb{R} _{+}^{N+1}\)上の閉集合でない場合、\(Y\)の境界点は\(Y\)に含まれるとは限りません。仮に\(Y\)のすべての境界点が\(Y\)の要素でない場合には\(Y\cap Y^{f}=\phi \)となりますが、すると先の命題より、\begin{equation*}Y^{\ast }=Y^{\ast \ast }=\phi
\end{equation*}となり、効率的な生産ベクトルが存在しないことになってしまいます。一方、生産集合\(Y\)が\(\mathbb{R} _{+}^{N+1}\)上の閉集合である場合、これは\(Y^{f}\subset Y\)が成り立つことと必要十分であるため、先の命題より以下を得ます。

命題(効率生産集合と生産フロンティアの関係)
\(N\)生産要素\(1\)生産物モデルにおいて生産集合\(Y\subset \mathbb{R} _{+}^{N+1}\)が閉集合であるならば、\begin{equation*}Y^{\ast }\subset Y^{\ast \ast }\subset Y^{f}\subset Y
\end{equation*}が成り立つ。ただし、\(Y^{\ast }\)は狭義効率生産集合であり、\(Y^{\ast \ast }\)は広義効率生産集合であり、\(Y^{f}\)は\(Y\)の境界である。

効率的な生産ベクトルは生産集合の境界点であることが明らかになりましたが、逆は成立するとは限りません。生産集合の境界点は効率的であるとは限らないということです。以下の例より明らかです。

例(効率生産集合と生産フロンティアの関係)
1生産要素1生産物モデルにおいて生産集合\(Y\subset \mathbb{R} ^{2}\)が下図で与えられているものとします。境界\(Y^{f}\)が生産フロンティアです。

図:効率生産集合
図:効率生産集合

生産フロンティア上の生産ベクトル\(\left( 1,0\right)\in Y^{f}\)に注目したとき、これは生産ベクトル\(\left( 0,0\right) \in Y\)によって広義支配されるため、\(\left(1,0\right) \)は狭義効率的ではありません。

 

なぜ効率的ではない生産計画は採用されないのか

これまで、生産集合の中には効率的な生産ベクトルと効率的でない生産ベクトルが存在することを学びました。では、現実の企業は、効率的でない生産計画を採用することがあるのでしょうか。

一般に、生産者は限られた生産要素を用いてできるだけ多くの生産物を生産しようとします。そのため、同じ生産量をより少ない生産要素で実現できる、あるいは同じ生産要素でより多くの生産物を生産できるのであれば、後者の生産計画を選ぶ方が合理的です。

例えば、ある企業が100人の労働者を投入して80個の商品を生産しているとします。しかし、同じ100人の労働者で100個の商品を生産できるのであれば、80個しか生産しない計画を採用する理由はありません。また、100個の商品を80人の労働者で生産できるのであれば、100人の労働者を投入する必要もありません。

このような生産計画は、より優れた生産計画によって支配されているため、効率的ではありません。合理的な生産者であれば、わざわざ効率的でない生産計画を選択する理由はないと考えられます。

もちろん、現実には情報不足や設備の故障、労働者の熟練度の違いなどにより、一時的に効率的でない状態に陥ることもあります。しかし、生産者理論では、そのような一時的な事情は捨象し、生産者は利用可能な技術を十分に活用して合理的に行動すると仮定します。

このように考えると、生産者が実際に選択する可能性があるのは、生産集合全体ではなく、その中でも効率的な生産ベクトルに限られます。したがって、生産者の行動を分析する際には、生産集合全体を考えるのではなく、まず効率集合に注目すれば十分であることが分かります。

しかし、効率的な生産ベクトルは一般に1つではありません。生産者は依然として複数の効率的な生産計画の中から選択しなければなりません。どの効率的な生産計画を選択するかを決定するのが利潤最大化です。 効率集合を求めることは、生産者理論の最終的な目的ではなく、利潤最大化問題を考えるための準備段階です。

 

演習問題

問題(効率生産集合)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ y\leq x\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。以下の問いに答えてください。

  1. 狭義効率生産集合\(Y^{\ast }\)を求めてください。
  2. 広義効率生産集合\(Y^{\ast \ast }\)を求めてください。
  3. この生産技術において、狭義効率的な生産ベクトルではどのような関係が成立しているか説明してください。
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問題(効率生産集合)
2生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x_{1},x_{2},y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{3}\ |\ y\leq \min \left\{ x_{1},\frac{x_{2}}{2}\right\} \right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。以下の問いに答えてください。

  1. 狭義効率生産集合\(Y^{\ast }\)を求めてください。
  2. 広義効率生産集合\(Y^{\ast \ast }\)を求めてください。
  3. この生産技術において、狭義効率的な生産ベクトルではどのような関係が成立しているか説明してください。
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問題(効率生産集合)
1生産要素1生産物モデルにおける生産集合が、\begin{equation*}
Y=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ 0\leq x\leq 5\wedge y\leq x\right\} \cup \left\{ \left(
x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}^{2}\ |\ x\geq 5\wedge y\leq 5\right\}
\end{equation*}で与えられているものとします。以下の問いに答えてください。

  1. 狭義効率生産集合\(Y^{\ast }\)を求めてください。
  2. 広義効率生産集合\(Y^{\ast \ast }\)を求めてください。
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