支出最小化問題の解において消費者は目標水準に等しい効用を得るとともに、少なくとも1つの商品の補償需要がゼロである場合、そのような解を端点解と呼びます。端点解において限界代替率と相対価格は一致するとは限りません。
支出最小化問題の解においてすべての商品の補償需要が正の実数であるとき、そのような解を内点解と呼びます。内点解において任意の2つの商品の間の限界代替率と相対価格は一致します。
クーンタッカー条件を満たす消費ベクトルが支出最小化問題の解であるための必要条件や十分条件を明らかにした上で、支出最小化問題の解を求める具体的な手順について解説します。
ヒックスの補償需要対応(補償需要関数)は価格ベクトルに関して0次同次です。つまり、すべての商品の価格を同じ割合で増加させても支出最小化問題の解集合は変化しません。
ベイジアンゲームにおいて事後均衡は支配戦略均衡でもありますが、その逆は成立するとは限りません。ただ、私的価値モデルにおいて事後均衡が一定の条件を満たす場合、それは支配戦略均衡になることが保証されます。
ベイジアンゲームにおいて他のプレイヤーたちの純粋戦略に直面したプレイヤーがある純粋戦略を選ぶ場合、自身のタイプや他のプレイヤーたちのタイプによらず利得を最大化できる場合、そのような純粋戦略を事後最適反応と呼びます。事後最適反応の組を事後均衡と呼びます。
ベイジアンゲームにおいてプレイヤーがある純粋戦略を選ぶとき、自身を含めた全員のタイプや他のプレイヤーたちの行動、信念に関わらず利得を常に最大化できるならば、そのような戦略を支配純粋戦略と呼びます。支配純粋戦略の組を支配純粋戦略均衡と呼びます。
不完備情報の静学ゲームを表現するベイジアンゲームに直面したそれぞれのプレイヤーは、自身のタイプと信念にもとづいて他のプレイヤーたちのタイプを予想し、その予想から算出される中間期待利得を最大化するような純粋戦略を採用するものと仮定します。
ベイジアンゲームにおいて不確実な状況下で意思決定を迫られるプレイヤーは、自身のそれぞれのタイプに対して、その場合に自分が直面し得る状態ゲームがそれぞれどの程度の確率で起こりえるか主観的に定めた上で、その予想にもとづいて意思決定を行うものとします。
不完備情報の静学ゲームをベイジアンゲームとして表現したとき、プレイヤーによる意思決定は純粋戦略と呼ばれる概念として定式化されます。プレイヤーの純粋戦略とは、自身のそれぞれのタイプに対して行動を1つずつ定める行動計画です。
不完備情報の静学ゲームをベイジアンゲームとして表現するとき、すべてのプレイヤーの利得関数が自身のタイプのみに依存し、他のプレイヤーのタイプに依存しないものと仮定する場合には、そのようなモデルを私的価値モデルと呼びます。
不完備情報の静学ゲームを記述するためにはプレイヤー、行動、情報、結果、利得などをそれぞれ具体的に特定する必要があります。それらの要素を記述する方法はいくつか存在しますが、ここではベイジアンゲームと呼ばれるモデルについて解説します。
効用関数が連続関数である場合、支出最小化問題の解において消費者は目標効用水準に等しい効用を得ることが保証されます。これは効用最大化問題におけるワルラスの法則に相当する条件です。
消費者が直面する支出最小化問題は価格ベクトルと目標となる効用水準に応じて変化します。そこで、価格ベクトルと目標効用水準のそれぞれの組に対して、そのときの支出最小化問題の解集合を定める対応をヒックスの補償需要対応(補償需要関数)と呼びます。
支出最小化問題にはそのままではベルジュの最大値定理を適用できないため、一般性を失わない形で、支出最小化問題をベルジュの最大値定理が適用可能な形へ変換します。
価格ベクトルと目標となる効用水準が与えられたとき、目標水準以上の効用をもたらす消費ベクトルの中から支出を最小化するようなものを特定する最適化問題を支出最小化問題と呼びます。
消費集合が凸集合であるようなユークリッド空間の部分集合であるとともに、選好関係が合理性(完備性および推移性)と連続性を満たす場合、その選好関係を表す効用関数が必ず存在します。これをドブリューの定理と呼びます。
消費集合が可算集合であり、なおかつ消費集合上に定義された選好関係が合理性の仮定(完備性および推移性)を満たす場合には、その選好関係を表す効用関数が存在するとともに、そのような関数を具体的に構成することができます。
消費集合が有限集合であり、なおかつ消費集合上に定義された選好関係が合理性の仮定(完備性および推移性)を満たす場合には、その選好関係を表す効用関数が存在するとともに、そのような関数を具体的に構成することができます。
すべての商品の価格と所得が同じ割合で変化する場合には、その変化の前後において、予算制約を満たす消費ベクトルからなる集合、すなわち予算集合は変化しません。予算対応が満たす以上の性質を0次同次性と呼びます。関連してニュメレール(価値尺度財)についても解説します。
予算対応が上半連続かつ下半連続である場合、すなわち連続対応である場合には、消費者が直面する最適化問題を解く際にベルジュの最大値定理を利用できるため、様々な望ましい性質を導くことができます。
消費者理論では予算集合がコンパクト集合であることを仮定することがあります。この仮定には、消費者が直面する最適化問題に解が存在することを保証する役割があります。
価格ベクトルと所得のそれぞれの組に対して、そこでの効用最大化問題の解に相当する消費ベクトルを1つずつ定める関数をワルラスの需要関数と呼びます。ここでは需要関数が存在するための条件を紹介します。
消費者は予算集合に属する消費ベクトルの中から、自身の選好(効用関数)に照らし合わせて最も望ましい消費ベクトルを選ぶものと仮定します。このような仮定のもとで、消費者が直面する最適化問題を選好最大化問題(効用最大化問題)と呼びます。
これまではプレイヤーたちが同一の利得関数を持つ囚人のジレンマについて考えてきましたが、状況を少し一般化して、プレイヤーたちが異なる利得関数を持つ場合の囚人のジレンマについて考えます。
非分割財の交換問題(シャプレー・スカーフの住宅市場)におけるメカニズムが与えられたとき、メカニズムの均衡において、メカニズムが定める配分が任意のプレイヤーにとって初期配分以上に望ましいことが保証されるならば、そのようなメカニズムは個人合理性を満たすと言います。
非分割財の交換問題(シャプレー・スカーフの住宅市場)におけるメカニズムのもとですべてのエージェントが自身の選好を正直に表明することが均衡になる場合、そのようなメカニズムは誘因両立性を満たすと言います。
商品を1つずつ所有している複数のプレイヤーが、何らかのルールにもとづいて商品を交換しようとしている状況を非分割財の交換問題と呼ばれるモデルとして定式化します。このような問題はシャプレー・スカーフ経済、住宅市場、住宅交換などとも呼ばれます。
戦略型ゲームの混合拡張においてプレイヤーたちの混合戦略の組に注目したときに、その組を構成する混合戦略がお互いに広義の最適反応になっているならば、その組を広義の混合戦略ナッシュ均衡と呼びます。
冷戦期に行われた米ソ間の軍拡競争は囚人のジレンマとしての側面を持っていることを解説した上で、そこでのナッシュ均衡を求めます。また、両国の軍事負担が過大である場合、軍拡競争を鹿狩りゲーム(stag hunt)と解釈することもできます。
プレイヤーたちが0から100までの実数を1つずつ投票し、全体の平均の2/3に最も近い数字を投票したプレイヤーが勝者として賞金を得るゲームを美人投票や平均の2/3の推測などと呼びます。美人投票をゲームとして定式化した上で、そのナッシュ均衡を求めます。
与えられたゲームにおいてそれぞれのプレイヤーが何らかの戦略によって狭義支配される純粋戦略を持つ場合、それをプレイヤーの純粋戦略集合から消去することを通じてプレイヤーたちが選択し得る戦略の組を絞り込む手法を狭義支配される戦略の逐次消去と呼びます。
戦略的相互依存関係が成立する状況をゲームと呼びます。ゲームを特徴づける要素をゲームのルールと呼びます。ゲームを記述するためには、そのゲームのルールを具体的に特定する必要があります。
効用最大化問題の解が与えられたとき、そこから所得を限界的に増やして何らかの商品の支出に振り分けたときに得られる効用の増分を所得の限界効用と呼びます。所得の限界効用は間接効用関数を所得について偏微分することによっても得られます。
効用最大化問題に解において消費者が所得をすべて使い切るとともに、少なくとも1つの商品の需要がゼロである場合、そのような解を端点解と呼びます。端点解において限界代替率と相対価格は一致するとは限りません。
効用最大化問題の解において消費者は所得をすべて使い切るとともに、すべての商品の消費量が正の実数であるとき、そのような解を内点解と呼びます。内点解において、任意の2つの商品の限界代替率と相対価格は一致します。
クーン・タッカーの定理を用いて、効用最大化問題の解が満たす条件を明らかにします。さらに、ラグランジュの未定乗数法を使って効用最大化問題の解を求める方法を解説します。
消費者の選好が局所非飽和性を満たすとき、効用最大化問題の解において消費者は所得をすべて使い切ります。これをワルラスの法則と呼びます。
すべての商品の価格と所得が同じ割合で変化する場合、その前後において効用最大化問題の解は変化しません。需要対応(需要関数)が満たす以上の性質を0次同次性と呼びます。0次同次性からはオイラーの定理を導くことができます。
ある消費ベクトルを出発点として、商品 i の消費量を 1 単位変化させてもなお、効用水準を保つために変化させる必要のある商品 j の量を、その消費ベクトルにおける商品 i の商品 j で測った限界代替率と呼びます。限界代替率は限界効用の比として表現できます。
ある消費ベクトルを出発点とし、そこからある商品の消費量だけを1単位変化させたときに発生する効用の変化量を限界効用と呼びます。限界効用を効用関数の偏微分係数として定義します。限界効用の絶対的な水準は重要ではありませんが限界効用の符号は重要です。
消費ベクトル x 以上に望ましい消費ベクトル y,z を任意に選んだとき、それらを任意の割合で混ぜることで得られる消費ベクトルもまた x 以上に望ましいことが保証されるのであれば、選好は凸性を満たすと言います。凸性を満たす選好は準凹な効用関数によって特徴づけられます。
ある消費ベクトルが任意の消費ベクトル以上に望ましい場合、それを飽和点と呼びます。選好関係が非飽和性や局所非飽和性を満たすこととは、消費集合の中に飽和点が存在しないことを意味します。
選好関係が単調性を満たすこととは、消費者はすべての商品をより多く消費することを好むことを意味します。選好を表す効用関数が存在するとき、選好関係が単調であることは効用関数が単調増加であることと必要十分です。
ある選好関係のもとで任意の消費ベクトルに関する狭義の上方位集合と狭義の下方位集合がともに消費集合上で開集合である場合、その選好関係は連続性を満たすと言います。連続性の仮定のもとでは消費者の選好が連続的に変化することが保証されます。また、連続な効用関数によって表現される選好は連続性を満たします。
完備性と推移性をともに満たす選好関係を合理的な選好関係や選好順序などと呼びます。合理性を満たす選好関係のもとではすべての消費ベクトルを最も望ましいものから最も望ましくないものまで順番に並べることができます。
3つの消費ベクトル x,y,z が任意に与えられたとき、消費者は x を y 以上に好みし、y を z 以上に好む場合、x を z 以上に好むことが保証される場合には、消費者の選好関係は推移性を満たすと言います。
2つの消費ベクトル x,y を任意に選んだとき、消費者は x を y 以上に選好するか、y を x 以上に選好するか、その少なくとも一方が成り立つ場合には、消費者の選好関係は完備性を満たすと言います。
消費者の選好関係が与えられたとき、消費ベクトルを任意に選ぶと、そこから上方位集合、下方位集合、無差別集合などの消費集合の部分集合が定義されます。
消費者による意思決定は、その人が持つ好みの体系によって左右されます。そこで、消費者理論では、消費者が持つ好みの体系を選好関係や狭義選好関係、無差別関係などの二項関係として定式化します。