ミクロ経済学の基本的な考え方
ミクロ経済学では、
- 消費者は自分にとって最も望ましい商品を選ぶ。
- 企業は利益を最大にするように生産する。
という意思決定を分析します。
例えば完全競争市場では、企業は市場価格を所与のものとして受け入れます。
つまり、
「価格は自分では決められない」
という前提で生産量を決定します。
このような分析は、多くの市場を理解するうえで非常に有効です。
他者の行動が結果を左右する場面
しかし、現実にはそうではない市場もあります。
例えば、二社しか存在しない市場を考えてみましょう。
一方の企業が価格を下げれば、もう一方の企業も値下げを検討するでしょう。
逆に、一方が新製品を発売すれば、競合企業も新たな戦略を考えます。
ここでは、自分の利益は、自分だけの行動では決まりません。
相手が何をするかによって大きく変わります。
つまり、意思決定が互いに結び付いているのです。
相手もまた考えている
ゲーム理論では、自分だけが考えるのではありません。
相手もまた、自分の行動を予想して意思決定を行っています。
例えば企業Aは、
「企業Bは価格を下げるだろうか。」
と考えます。
一方、企業Bも、
「企業Aはこちらの行動を予想しているはずだ。」
と考えます。
このように、お互いが互いの考えを予想しながら行動する状況を戦略的相互作用といいます。
この戦略的相互作用こそ、ゲーム理論が研究する中心的なテーマです。
ミクロ経済学とゲーム理論の違い
ミクロ経済学とゲーム理論は対立する理論ではありません。
ゲーム理論は、ミクロ経済学をさらに発展させた理論です。
ミクロ経済学では、
「他者の行動は与えられている」
と考える場面が多くあります。
ゲーム理論では、
「他者も合理的に行動し、自分の行動を予想している」
という前提を加えます。
つまり、一人で最適な選択を考える段階から、複数の主体が互いに影響し合う状況へと分析を広げたのがゲーム理論です。
現実社会ではゲーム理論が欠かせない
戦略的相互作用は、経済学だけでなく社会の様々な場面で見られます。
例えば、
- 企業同士の価格競争
- オークション
- 外交交渉
- 核抑止
- 選挙
- スポーツの戦術
- AIエージェント同士の協調
などです。
これらは、
「相手が何をするか」
を考えずには分析できません。
そのため現代経済学だけでなく、政治学や情報科学などでもゲーム理論が広く利用されています。
ゲーム理論は現代経済学の基礎となっている
現在の経済学では、ゲーム理論は特別な応用分野ではありません。
情報の経済学、契約理論、オークション理論、産業組織論など、多くの分野でゲーム理論が基礎となっています。
ミクロ経済学を理解した先には、自然な流れとしてゲーム理論が位置付けられているのです。
ゲーム理論が必要となる理由
ミクロ経済学は、個人や企業の意思決定を理解するための優れた理論です。
しかし、現実社会では、私たちの選択は他者の選択と切り離すことができません。
ゲーム理論は、このような戦略的相互作用を分析するために生まれました。
ミクロ経済学が「一人の合理的な選択」を分析する学問だとすれば、ゲーム理論は「複数の合理的な主体が互いを意識しながら行う選択」を分析する学問です。
ゲーム理論を学ぶことで、企業競争や国際交渉、協力や対立といった現実社会の複雑な意思決定を、より深く理解できるようになります。