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1変数関数の微分

関数の定数倍の微分(定数倍の法則)

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微分可能な関数の定数倍の微分

実数\(c\in \mathbb{R} \)と関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( cf\right) \left( x\right) =cf\left( x\right)
\end{equation*}を値として定める関数\begin{equation*}
cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。

定義域の内点\(a\in X^{i}\)を選んだとき、関数\(f\)が点\(a\)において微分可能ならば、関数\(cf\)もまた点\(a\)において微分可能であることが保証されるとともに、両者の微分係数の間には以下の関係\begin{equation*}(cf)^{\prime }\left( a\right) =cf^{\prime }\left( a\right)
\end{equation*}が成立します。

したがって、何らかの関数\(f\)の定数倍の形をしている関数\(cf\)の微分可能性を検討する際には、関数の微分の定義にさかのぼって考える前に、まずは\(c\)と\(f\)を分けた上で、\(f\)が微分可能であることを確認すればよいということになります。さらに、関数\(f\)が微分可能である場合、\(f\)の微分係数\(f^{\prime}\left( a\right) \)の定数\(c\)倍をとれば、関数\(cf\)の微分係数が得られます。

命題(微分可能な関数の定数倍の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と実数\(c\in \mathbb{R} \)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこから関数\(cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(f\)が定義域の内点\(a\in X^{i}\)において微分可能であるならば、関数\(cf\)もまた点\(a\)において微分可能であり、そこでの微分係数は、\begin{equation*}(cf)^{\prime }\left( a\right) =cf^{\prime }\left( a\right)
\end{equation*}を満たす。

証明

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例(微分可能な関数の定数倍の導関数)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と実数\(c\in \mathbb{R} \)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこから関数\(cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。\(f\)が定義域\(X\)上の任意の点において微分可能であるものとします。つまり、導関数\begin{equation*}f^{\prime }:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が存在するということです。すると先の命題より関数\(cf\)もまた定義域\(X\)上の任意の点において微分可能です。つまり、導関数\begin{equation*}\left( cf\right) ^{\prime }:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が存在することが保証されます。しかも、これらの導関数の間には以下の関係\begin{equation*}
\forall x\in X:\left( cf\right) ^{\prime }\left( x\right) =cf^{\prime
}\left( x\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
cf^{\prime }=\left( cf\right) ^{\prime }
\end{equation*}が成り立ちます。

例(微分可能な関数の定数倍の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =-x
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は恒等関数\(x\)の定数倍(\(-1\)倍)として定義されています。恒等関数は\(\mathbb{R} \)上で微分可能であるため、先の命題より\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( x\right) &=&\left( -x\right) ^{\prime }\quad \because f\text{の定義} \\
&=&-\left( x\right) ^{\prime }\quad \because \text{微分可能な関数の定数倍の微分} \\
&=&-1\quad \because \text{恒等関数の微分}
\end{eqnarray*}を定めます。

例(等速直線運動する物体の瞬間速度)
数直線上を移動する点を観察し、経過時間\(t\)と数直線上の点の位置を表す座標\(x\left( t\right) \)の関係を関数\begin{equation*}x:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}として整理したところ、それぞれの時点\(t\in \mathbb{R} _{+}\)において、\begin{equation*}x\left( t\right) =ct
\end{equation*}であることが明らかになりました。ただし、\(c\)は正の定数です。任意の時点\(t\in \mathbb{R} _{++}\)において、\begin{eqnarray*}x^{\prime }\left( t\right) &=&\frac{d}{dt}\left( ct\right) \quad \because x\text{の定義} \\
&=&c\frac{d}{dt}t\quad \because \text{微分可能な関数の定数倍} \\
&=&c\cdot 1 \\
&=&c
\end{eqnarray*}が成り立ちますが、以上の事実は、任意の時点\(t\)において、この物体の瞬間速度が\(c\)であることを意味します。つまり、この物体は等速直線運動をしています。
例(等加速運動をしている物体の瞬間加速度)
数直線上を移動する点を観察し、経過時間\(t\)と物体の瞬間速度\(v\left( t\right) \)の関係を関数\begin{equation*}v:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}として整理したところ、それぞれの時点\(t\in \mathbb{R} _{+}\)において、\begin{equation*}v\left( t\right) =ct
\end{equation*}であることが明らかになりました。ただし、\(c\)は正の定数です。任意の時点\(t\in \mathbb{R} _{++}\)において、\begin{eqnarray*}v^{\prime }\left( t\right) &=&\frac{d}{dt}\left( ct\right) \quad \because x\text{の定義} \\
&=&c\frac{d}{dt}t\quad \because \text{微分可能な関数の定数倍} \\
&=&c\cdot 1 \\
&=&c
\end{eqnarray*}が成り立ちますが、以上の事実は、任意の時点において、この物体の瞬間加速度が\(c\)であることを意味します。つまり、この物体は等加速直線運動をしています。

 

片側微分可能な関数の定数倍の片側微分

片側微分可能性についても同様の命題が成り立ちます。具体的には以下の通りです。

実数\(c\in \mathbb{R} \)と関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、そこから関数\(cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。

右側微分をとるために、以下の条件\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0:\left[ a,a+\varepsilon \right] \subset X
\end{equation*}を満たす定義域上の点\(a\in X\)を選びます。関数\(f\)が点\(a\)において右側微分可能ならば、関数\(cf\)もまた点\(a\)において右側微分可能であることが保証されるとともに、両者の右側微分係数の間には以下の関係\begin{equation*}(cf)^{\prime }\left( a+0\right) =cf^{\prime }\left( a+0\right)
\end{equation*}が成立します。

左側微分をとるために、以下の条件\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0:\left[ a-\varepsilon ,a\right] \subset X
\end{equation*}を満たす定義域上の点\(a\in X\)を選びます。関数\(f\)が点\(a\)において左側微分可能ならば、関数\(cf\)もまた点\(a\)において左側微分可能であることが保証されるとともに、両者の左側微分係数の間には以下の関係\begin{equation*}(cf)^{\prime }\left( a-0\right) =cf^{\prime }\left( a-0\right)
\end{equation*}が成立します。

命題(片側微分可能な関数の定数倍の片側微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と実数\(c\in \mathbb{R} \)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこから関数\(cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。以下が成り立つ。

  1. 点\(a\in X\)に対して、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0:\left[ a,a+\varepsilon \right] \subset X\end{equation*}が成り立つものとする。関数\(f\)が点\(a\)において右側微分可能であるならば、関数\(cf\)もまた点\(a\)において右側微分可能であり、そこでの右側微分係数は、\begin{equation*}(cf)^{\prime }\left( a+0\right) =cf^{\prime }\left( a+0\right)
    \end{equation*}を満たす。
  2. 点\(a\in X\)に対して、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0:\left[ a-\varepsilon ,a\right] \subset X\end{equation*}が成り立つものとする。関数\(f\)が点\(a\)において左側微分可能であるならば、関数\(cf\)もまた点\(a\)において左側微分可能であり、そこでの左側微分係数は、\begin{equation*}(cf)^{\prime }\left( a+0\right) =cf^{\prime }\left( a+0\right)
    \end{equation*}を満たす。
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例(微分可能な関数の定数倍の片側導関数)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と実数\(c\in \mathbb{R} \)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこから関数\(cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。\(f\)が定義域\(X\)上の任意の点において右側微分可能であるものとします。つまり、右側導関数\begin{equation*}f_{+}^{\prime }:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が存在するということです。すると先の命題より関数\(cf\)もまた定義域\(X\)上の任意の点において右側微分可能です。つまり、右側導関数\begin{equation*}\left( cf\right) _{+}^{\prime }:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が存在することが保証されます。しかも、これらの右側導関数の間には以下の関係\begin{equation*}
\forall x\in X:\left( cf\right) _{+}^{\prime }\left( x\right)
=cf_{+}^{\prime }\left( x\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
cf_{+}^{\prime }=\left( cf\right) _{+}^{\prime }
\end{equation*}が成り立ちます。また、\(f\)が定義域\(X\)上の任意の点において左側微分可能であるものとします。つまり、左側導関数\begin{equation*}f_{-}^{\prime }:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が存在するということです。すると先の命題より関数\(cf\)もまた定義域\(X\)上の任意の点において左側微分可能です。つまり、左側導関数\begin{equation*}\left( cf\right) _{-}^{\prime }:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が存在することが保証されます。しかも、これらの左側導関数の間には以下の関係\begin{equation*}
\forall x\in X:\left( cf\right) _{-}^{\prime }\left( x\right)
=cf_{-}^{\prime }\left( x\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
cf_{-}^{\prime }=\left( cf\right) _{-}^{\prime }
\end{equation*}が成り立ちます。

例(等速直線運動する物体の瞬間速度)
数直線上を移動する点を観察し、経過時間\(t\)と数直線上の点の位置を表す座標\(x\left( t\right) \)の関係を関数\begin{equation*}x:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}として整理したところ、それぞれの時点\(t\in \mathbb{R} _{+}\)において、\begin{equation*}x\left( t\right) =ct
\end{equation*}であることが明らかになりました。ただし、\(c\)は正の定数です。初期時点\(0\)において、\begin{eqnarray*}x^{\prime }\left( 0+0\right) &=&\left. \left( ct\right) _{+}^{\prime
}\right\vert _{t=0}\quad \because x\text{の定義} \\
&=&\left. c\cdot t_{+}^{\prime }\right\vert _{t=0}\quad \because \text{右側微分可能な関数の定数倍} \\
&=&\left. c\cdot 1\right\vert _{t=0} \\
&=&c
\end{eqnarray*}が成り立ちますが、以上の事実は、時点\(0\)において、この物体の瞬間速度が\(c\)であることを意味します。
例(等加速運動をしている物体の瞬間加速度)
数直線上を移動する点を観察し、経過時間\(t\)と物体の瞬間速度\(v\left( t\right) \)の関係を関数\begin{equation*}v:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}として整理したところ、それぞれの時点\(t\in \mathbb{R} _{+}\)において、\begin{equation*}v\left( t\right) =ct
\end{equation*}であることが明らかになりました。ただし、\(c\)は正の定数です。初期時点\(0\)において、\begin{eqnarray*}v^{\prime }\left( 0+0\right) &=&\left. \left( ct\right) _{+}^{\prime
}\right\vert _{t=0}\quad \because x\text{の定義} \\
&=&\left. c\cdot t_{+}^{\prime }\right\vert _{t=0}\quad \because \text{右側微分可能な関数の定数倍} \\
&=&\left. c\cdot 1\right\vert _{t=0} \\
&=&c
\end{eqnarray*}が成り立ちますが、以上の事実は、時点\(0\)において、この物体の瞬間加速度が\(c\)であることを意味します。
例(片側微分可能な関数の定数倍の片側微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
-x & \left( if\ x\geq 0\right) \\
x & \left( if\ x<0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(a>0\)を満たす点\(a\in \mathbb{R} \)を選んだとき、その周辺の任意の点\(x\)において\(f\left( x\right) =-x\)であるため、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\left. \left( -x\right) ^{\prime }\right\vert
_{x=a}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. -\left( x\right) ^{\prime }\right\vert _{x=a}\quad \because \text{微分可能な関数の定数倍} \\
&=&\left. -1\right\vert _{x=a} \\
&=&-1
\end{eqnarray*}となります。点\(0\)以上の周辺の任意の点\(x\)において\(f\left( x\right) =-x\)であるため、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( 0+0\right) &=&\left. \left( -x\right) _{+}^{\prime
}\right\vert _{x=0}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. -\left( x\right) _{+}^{\prime }\right\vert _{x=0}\quad \because
\text{右側微分可能な関数の定数倍} \\
&=&\left. -1\right\vert _{x=0} \\
&=&-1
\end{eqnarray*}となります。点\(0\)以下の周辺の\(x\)については\(x\)の値によって\(f\left( x\right) \)の形状が変化するため、定義にもとづいて左側微分係数を求めると、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( 0-0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left(
0+h\right) -f\left( 0\right) }{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{\left( 0+h\right) -0}{h}\quad \because h<0 \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0-}1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。したがって、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( 0+0\right) \not=f^{\prime }\left( 0-0\right)
\end{equation*}であるため、\(f\)は点\(0\)において微分可能ではありません。\(a<0\)を満たす点\(a\in \mathbb{R} \)を選んだとき、その周辺の任意の点\(x\)において\(f\left( x\right) =x\)であるため、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\left. \left( x\right) ^{\prime }\right\vert
_{x=a}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. 1\right\vert _{x=a} \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。以上より、関数\(f\)は\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
-1 & \left( if\ x>0\right) \\
1 & \left( if\ x<0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めることが明らかになりました。

 

演習問題

問題(関数の定数倍の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{ll}
\frac{1}{2}x & \left( if\ x\leq 1\right) \\
x & \left( if\ 1<x<2\right) \\
-\frac{1}{2}x & \left( if\ 2\leq x\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。関数\(f\)の導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
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問題(関数の定数倍の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset (-\infty ,1]\cup (2,+\infty )\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in (-\infty ,1]\cup(2,+\infty )\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
-x & \left( if\ x\leq 1\right) \\
x & \left( if\ x>2\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。関数\(f\)の導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
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