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DIFFERENTIATION OF FUNCTIONS

恒等関数の微分

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恒等関数の微分

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)は恒等関数であるものとします。つまり、\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}が成り立つということです。\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)の周辺の任意の値において定義されているとき、\(f\)が点\(a\)において微分可能であるか否かを検討できますが、恒等関数\(f\)は点\(a\)において微分可能であり、そこでの微分係数が\(1\)になります。

命題(恒等関数の微分)

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}を定めるものとする。\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)の周辺の任意の値において定義されているならば、\(f\)は点\(a\)において微分可能であるとともに、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =1
\end{equation*}となる。

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例(恒等関数の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ x\leq 3\right) \\
x & \left( if\ x>3\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}であるものとします。\(a<3\)を満たす任意の点\(a\in \mathbb{R} \)については、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\left. \frac{d}{dx}f\left( x\right)
\right\vert _{x=a} \\
&=&\left. \frac{d}{dx}1\right\vert _{x=a}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. 0\right\vert _{x=a}\quad \because \text{定数関数の微分} \\
&=&0
\end{eqnarray*}となります。点\(3\)においては、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( 3-0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left(
3+h\right) -f\left( 3\right) }{h}=\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{1-1}{h}=\lim_{h\rightarrow 0-}0=0 \\
f^{\prime }\left( 3+0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left(
3+h\right) -f\left( 3\right) }{h}=\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{\left(
3+h\right) -3}{h}=\lim_{h\rightarrow 0+}1=1
\end{eqnarray*}となり両者は異なるため、\(f\)は点\(3\)において左右から微分可能である一方で微分可能ではありません。\(a>3\)を満たす任意の点\(a\in \mathbb{R} \)については、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\left. \frac{d}{dx}f\left( x\right)
\right\vert _{x=a} \\
&=&\left. \frac{d}{dx}x\right\vert _{x=a}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. 1\right\vert _{x=a}\quad \because \text{恒等関数の微分} \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。以上より、\(f\)の導関数\(f^{\prime }\)の定義域は\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 3\right\} \)であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 3\right\} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & \left( if\ x<3\right) \\
1 & \left( if\ x>3\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めることが明らかになりました。

 

恒等関数の片側微分

片側微分可能性に関しても同様の命題が成り立ちます(演習問題にします)。

命題(恒等関数の片側微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}を定めるものとする。\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)より大きい周辺の任意の点において定義されているならば、\(f\)は点\(a\)において右側微分可能であり、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a+0\right) =1
\end{equation*}となる。また、\(f\)が点\(a\)より小さい周辺の任意の点において定義されているならば\(f\)は点\(a\)において左側微分可能であり、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a-0\right) =1
\end{equation*}となる。
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例(恒等関数の片側微分可能性)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}を定めるものとします。定義域\(\left[ 0,1\right] \)の内部は\(\left( 0,1\right) \)です。内点\(a\in \left( 0,1\right) \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)の周辺の任意の点において定義されているため、\(f\)は点\(a\)において微分可能であり、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =1
\end{equation*}が成り立ちます。一方、\(f\)は定義域の境界点である\(0\)や\(1\)において通常の意味で微分可能ではありません。\(f\)は点\(0\)より大きい周辺の任意の点において定義されているため、\(f\)は点\(0\)において右側微分可能であり、\begin{equation*}f^{\prime }\left( 0+0\right) =1
\end{equation*}となります。また、\(f\)は点\(1\)より小さい周辺の任意の点において定義されているため、\(f\)は点\(1\)において左側微分可能であり、\begin{equation*}f^{\prime }\left( 1-0\right) =1
\end{equation*}となります。

 

恒等関数の微分可能性

以上の2つの命題より恒等関数は微分可能であることが明らかになりました。

命題(恒等関数は微分可能)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}であるものとする。\(f\)は微分可能であり、その導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x\right) =1
\end{equation*}を定める。
例(恒等関数は微分可能)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{ll}
1 & \left( if\ x\leq 1\right) \\
x & \left( if\ 1<x<2\right) \\
2 & \left( if\ 2\leq x\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(a<1\)を満たす任意の点\(a\in \mathbb{R} \)については、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\left. \frac{d}{dx}f\left( x\right)
\right\vert _{x=a} \\
&=&\left. \frac{d}{dx}1\right\vert _{x=a}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. 0\right\vert _{x=a}\quad \because \text{定数関数の微分} \\
&=&0
\end{eqnarray*}となります。点\(1\)においては、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( 1-0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left(
1+h\right) -f\left( 1\right) }{h}=\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{1-1}{h}=\lim_{h\rightarrow 0-}0=0 \\
f^{\prime }\left( 1+0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left(
1+h\right) -f\left( 1\right) }{h}=\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{\left(
1+h\right) -1}{h}=\lim_{h\rightarrow 0+}1=1
\end{eqnarray*}となり両者は異なるため、\(f\)は点\(1\)において左右から微分可能である一方で微分可能ではありません。\(1<a<1\)を満たす任意の点\(a\in \mathbb{R} \)については、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\left. \frac{d}{dx}f\left( x\right)
\right\vert _{x=a} \\
&=&\left. \frac{d}{dx}x\right\vert _{x=a}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. 1\right\vert _{x=a}\quad \because \text{恒等関数の微分} \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。点\(2\)においては、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( 2-0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{f\left(
2+h\right) -f\left( 2\right) }{h}=\lim_{h\rightarrow 0-}\frac{\left(
2+h\right) -2}{h}=\lim_{h\rightarrow 0-}1=1 \\
f^{\prime }\left( 2+0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{f\left(
2+h\right) -f\left( 2\right) }{h}=\lim_{h\rightarrow 0+}\frac{2-2}{h}=\lim_{h\rightarrow 0+}0=0
\end{eqnarray*}となり両者は異なるため、\(f\)は点\(2\)において左右から微分可能である一方で微分可能ではありません。\(a>2\)を満たす任意の点\(a\in \mathbb{R} \)については、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\left. \frac{d}{dx}f\left( x\right)
\right\vert _{x=a} \\
&=&\left. \frac{d}{dx}2\right\vert _{x=a}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. 0\right\vert _{x=a}\quad \because \text{定数関数の微分} \\
&=&0
\end{eqnarray*}となります。以上より、\(f\)の導関数\(f^{\prime }\)の定義域は\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 1,2\right\} \)であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 1,2\right\} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{ll}
0 & \left( if\ x<1\right) \\
1 & \left( if\ 1<x<2\right) \\
0 & \left( if\ x>2\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めることが明らかになりました。

 

演習問題

問題(定数関数の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset (-\infty ,1]\cup (2,+\infty )\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in (-\infty ,1]\cup(2,+\infty )\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
x & \left( if\ x\leq 1\right) \\
2 & \left( if\ x>2\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)の導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
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次回は微分可能な関数の定数倍として定義される関数もまた微分可能であることを示します。

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恒等関数は定義域上の任意の点において有限な実数へ収束する一方、正の無限大において正の無限大へ発散し、負の無限大において負の無限大に発散します。

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