関数の微分可能性は様々な形で表現可能です。ここでは高位の無限小という概念を使って関数の微分可能性を表現します。

2019年3月14日:公開

高位の無限小

区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)が内点\(a\in I^{i}\)において、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =0
\end{equation*}を満たす場合には、\(f\)は\(a\)において無限小(infinitesimal)であると言います。

内点について復習する 関数の極限について復習する

同一の区間上に定義された2つの関数\(f,g:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)がともに内点\(a\in I^{i}\)において無限小であるとします。また、\(f\)は\(a\)に十分近い任意の点において非ゼロであるものとします。つまり、\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0,\ \forall \in U_{\varepsilon }\left( a\right) \backslash \{a\}:f\left( x\right) \not=0
\end{equation*}が成り立つということです。このとき、\(f\)と\(g\)の間に、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow a}\frac{g\left( x\right) }{f\left( x\right) }=0
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(a\)において\(g\)は\(f\)よりも高位の無限小(infinitesimal of higher order)であると言い、このことを、\begin{equation*}
g\left( x\right) =o\left( f\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow a\right)
\end{equation*}で表現します。なお、\(o\)をランダウのオー(Landau’s little o)と呼びます。

関数\(f,g\)がともに点\(a\)において無限小であることは、変数\(x\)の値が\(a\)に限りなく近づくにつれて\(f\left( x\right) \)や\(g\left( x\right) \)の値が\(0\)に限りなく近づくことを意味します。このとき、これらの関数の値が\(0\)へ近づく速さは同じであるとは限りませんが、\(x\)が\(a\)に限りなく近づくにつれて\(\frac{g\left( x\right) }{g\left( x\right) }\)の値が\(0\)に限りなく近づくならば\(g\left( x\right) \)は\(f\left( x\right) \)よりも小さい無限小と考えられるため、\(g\)のほうが\(f\)よりも速く\(0\)へ近づくと考えられます。つまり、\(a\)において\(g\)が\(f\)よりも高位の無限小であるとは、\(x\rightarrow a\)のときに\(g\left( x\right) \)と\(f\left( x\right) \)はともに\(0\)へ限りなく近づくが、\(g\left( x\right) \)のほうが\(f\left( x\right) \)よりも速く\(0\)へ近づくことを意味します。

 

高位の無限小の表記に関する約束

ある点において関数\(f\)より高位の無限小であるような関数が存在する場合、それは一意的に定まるとは限りません。例えば、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0}\frac{x^{2}}{x}=\lim_{x\rightarrow 0}\frac{x^{3}}{x}=0
\end{equation*}が成り立つことは\(x^{2}\)や\(x^{3}\)などの関数がともに\(0\)において関数\(x\)よりも高位の無限小であることを意味します。そこで、\begin{equation*}
g\left( x\right) =o\left( f\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow a\right)
\end{equation*}という表記中の右辺\(o\left( f\left( x\right) \right) \ \left( x\rightarrow a\right) \)を、\(a\)において\(f\)よりも高位の無限小であるような代表的な関数を表すものと解釈し、上の等式が成り立つことは、\(g\)は\(a\)において\(f\)よりも高位の無限小であるような関数の1つであることを表すものと解釈します。したがって、\begin{eqnarray*}
x^{2} &=&o\left( x\right) \quad \left( x\rightarrow a\right) \\
x^{3} &=&o\left( x\right) \quad \left( x\rightarrow a\right)
\end{eqnarray*}などの表記が可能です。

同一の区間上に定義された3つの関数\(f,g,h:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)が与えられたとき、内点\(a\in I^{i}\)において\(g-h\)が\(f\)よりも高位の無限小であるならば、すなわち、\begin{equation*}
g\left( x\right) -h\left( x\right) =o\left( f\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow a\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、このことを、\begin{equation*}
g\left( x\right) =h\left( x\right) +o\left( f\left( x\right) \right) \quad \left( x\rightarrow a\right)
\end{equation*}と表記できるものとします。

 

高位の無限小による微分可能性の表現

関数が点において微分可能であることを高位の無限小の概念を使って表現できます。まずは以下の補題を示します。

補題(微分可能性であるための必要十分条件)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)と内点\(a\in I^{i}\)が与えられたとき、\begin{equation*}
\exists c\in \mathbb{R} :\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) -c\cdot h}{h}=0
\end{equation*}が成り立つことは\(f\)が\(a\)において微分可能であるための必要十分条件であり、さらにこのとき、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a\right) =c
\end{equation*}が成り立つ。
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変数\(h\)に関する関数\(f\left( a+h\right) -f\left( a\right) -c\cdot h\)は、\begin{eqnarray*}
\lim_{h\rightarrow 0}\left[ f\left( a+h\right) -f\left( a\right) -c\cdot h\right] &=&\lim_{h\rightarrow 0}f\left( a+h\right) -\lim_{h\rightarrow 0}f\left( a\right) -\lim_{h\rightarrow 0}c\cdot h \\
&=&f\left( a\right) -f\left( a\right) -0 \\
&=&0
\end{eqnarray*}を満たすため、これは点\(0\)における無限小です。また、変数\(h\)に関する関数\(h\)もまた、\begin{equation*}
\lim_{h\rightarrow 0}h=0
\end{equation*}を満たすため、これも点\(0\)における無限小です。上の補題中の条件は、関数\(f\left( a+h\right) -f\left( a\right) -c\cdot h\)が点\(0\)において関数\(h\)よりも高位の無限小であること、すなわち、\begin{equation*}
f\left( a+h\right) -f\left( a\right) -c\cdot h=o\left( h\right) \quad \left( h\rightarrow 0\right)
\end{equation*}が成り立つことと表現できますが、これは、\begin{equation*}
f\left( a+h\right) =f\left( a\right) +c\cdot h+o\left( h\right) \quad \left( h\rightarrow 0\right)
\end{equation*}と言い換え可能です。したがって、上の補題から以下の命題が導かれます。

系(高位の無限小と微分可能性)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)と内点\(a\in I^{i}\)が与えられたとき、\begin{equation*}
f\left( a+h\right) =f\left( a\right) +c\cdot h+o\left( h\right) \quad \left( h\rightarrow 0\right)
\end{equation*}が成り立つことは\(f\)が\(a\)において微分可能であるための必要十分条件であり、さらにこのとき、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a\right) =c
\end{equation*}が成り立つ。

 

微分と接線

これまでの議論から明らかになったように、区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R}\)が内点\(a\in I^{i}\)において微分可能な場合には、\begin{equation*}
f\left( a+h\right) =f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \cdot h+o\left( h\right) \quad \left( h\rightarrow 0\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。ここで\(x=a+h\)とおくと\(h\rightarrow 0\)は\(x\rightarrow a\)を含意するため、このとき、\begin{equation}
f\left( x\right) =f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \cdot \left( x-a\right) +o\left( x-a\right) \quad \left( x\rightarrow a\right) \tag{1}
\end{equation}が成り立ちます。

図:微分の解釈

高位の無限小の定義より、\(x\rightarrow a\)のときに\(o\left( x-a\right) \)は\(x-a\)よりも速く\(0\)へ収束します。ゆえに\(\left( 1\right) \)より、\(a\)に十分近い\(x\)においては、\begin{equation*}
f\left( x\right) \approx f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \left( x-a\right)
\end{equation*}という近似式が成り立ちます。つまり、関数\(f\)を点\(a\)で微分することとは、\(a\)の近傍において\(f\)を\(x\)に関する1次式\begin{equation*}
y=f\left( a\right) +f^{\prime }\left( a\right) \left( x-a\right)
\end{equation*}で近似することを意味します。言い換えると、関数\(f\)が点\(a\)において微分可能であるとき、\(a\)の近傍において\(f\)のグラフは点\(\left( a,f\left( a\right) \right) \)を通過し傾きが\(f^{\prime }\left( a\right) \)の直線と近似的に等しくなります。そこでこの直線を\(f\)のグラフの点\(a\)における接線(tangent line)と呼びます。

次回は微分商と呼ばれる概念について解説します。
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