逆関数が微分可能であるための条件と、逆関数の微分係数ないし導関数を求める方法を解説します。
逆関数 微分
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逆関数の微分可能性

復習になりますが、関数\(f\)が全単射であることは、その逆関数\(f^{-1}\)が存在するための必要十分条件であり、なおかつ\(f^{-1}\)もまた全単射になります。関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R}\)が与えられたとき、その終集合\(\mathbb{R}\)を値域\(f\left( X\right) =\{f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in X\}\)に制限して\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)とすれば、この\(f\)は明らかに全射です。つまり、\begin{equation*}
\forall y\in f\left( X\right) ,\ \exists x\in X:y=f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立ちます。さらに、この\(f\)が単射であるならば、すなわち、\begin{equation*}
\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x\not=x\ \Rightarrow \ f\left( x\right) \not=f\left( x^{\prime }\right) \right] \end{equation*}を満たすならば\(f\)は全単射となるため、その逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)が存在します。この\(f^{-1}\)もまた全単射です。

逆関数について復習する

狭義単調関数は典型的な単射です。具体的には、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R}\)が狭義単調増加関数であることは、\begin{equation*}
\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x<x^{\prime }\ \Rightarrow \ f\left( x\right) <f\left( x^{\prime }\right) \right] \end{equation*}が成り立つことを意味し、\(f\)が狭義単調減少関数であることは、\begin{equation*}
\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x<x^{\prime }\ \Rightarrow \ f\left( x\right) >f\left( x^{\prime }\right) \right] \end{equation*}が成り立つことを意味します。これらの関数を総称して狭義単調増加関数と呼びます。狭義単調増加関数は単射であるため、その終集合を値域に制限した\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)は全単射であり、その逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)が存在します。

狭義単調関数について復習する

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)とその逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)が与えられたとき、任意の順序対\(\left( x,y\right) \in X\times f\left( X\right) \)に対して、\begin{equation}
y=f\left( x\right) \Leftrightarrow x=f^{-1}\left( y\right) \tag{1}
\end{equation}という関係が成り立ちます。つまり、関数\(f\)による\(x\)の像が\(y\)であることは、逆関数\(f^{-1}\)による\(y\)の像が\(x\)であるための必要十分条件です。関数\(f\)の終集合と逆関数\(f^{-1}\)の定義域はともに\(f\left( X\right) \)であるため、合成関数\(f^{-1}\circ f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow X\)が定義可能です。この合成関数\(f^{-1}\circ f\)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値は、\begin{eqnarray*}
\left( f^{-1}\circ f\right) \left( x\right) &=&f^{-1}\left( f\left( x\right) \right) \quad \because f^{-1}\circ f\text{の定義} \\
&=&f^{-1}\left( y\right) \quad \because y=f\left( x\right) \text{とおく} \\
&=&x\quad \because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\left( f^{-1}\circ f\right) \left( x\right) =x \tag{2}
\end{equation}となります。以上を踏まえた上で、この合成関数を微分します。ただし、合成関数の微分に関しては以下が成り立つことを思い出してください。

命題(合成関数の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ,\ g:\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R}\)から合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R}\)が定義可能であるものとする。\(a\in X^{i}\)かつ\(f\left( a\right) \in Y^{i}\)を満たす点\(a\in \mathbb{R}\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(a\)において微分可能であり、なおかつ\(g\)は\(f\left( a\right) \)において微分可能である場合には、\(g\circ f\)もまた\(a\)において微分可能であり、そこでの微分係数は、\begin{equation*}
\left( g\circ f\right) ^{\prime }\left( a\right) =g^{\prime }\left( f\left( a\right) \right) \cdot f^{\prime }\left( a\right)
\end{equation*}を満たす。
合成関数の微分について復習する

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)とその逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)が与えられたとき、\(a\in X^{i}\)かつ\(f\left( a\right) \in f\left( X\right) ^{i}\)を満たすような点\(a\in \mathbb{R}\)を任意に選びます。\(f\)が\(a\)において微分可能であり、なおかつ\(g\)が\(f\left( a\right) \)において微分可能である場合には、上の命題より、合成関数\(f^{-1}\circ f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow X\)もまた点\(a\)において微分可能であり、そこでの微分係数は、\begin{equation}
\left( f^{-1}\circ f\right) ^{\prime }\left( a\right) =\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( a\right) \right) \cdot f^{\prime }\left( a\right) \tag{3}
\end{equation}を満たします。一方で、\(\left( 2\right) \)より\(\left( f^{-1}\circ f\right) \left( a\right) =a\)であるため、\begin{equation}
\left( f^{-1}\circ f\right) ^{\prime }\left( a\right) =1 \tag{4}
\end{equation}もまた成り立ちます。\(\left( 3\right) ,\left( 4\right) \)が一致するため、\begin{equation*}
\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( a\right) \right) \cdot f^{\prime }\left( a\right) =1
\end{equation*}となります。特に、\(f^{\prime }\left( a\right) \not=0\)である場合には、\begin{equation*}
\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( a\right) \right) =\frac{1}{f^{\prime }\left( a\right) }
\end{equation*}となります。これが逆関数の微分公式です。

命題(逆関数の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)の逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)が存在するものとする。\(a\in X^{i}\)かつ\(f\left( a\right) \in f\left( X\right) ^{i}\)を満たす点\(a\in \mathbb{R}\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(a\)において微分可能であり、\(f^{-1}\)は\(f\left( a\right) \)において微分可能であり、なおかつ\(f^{\prime }\left( a\right) \not=0\)が成り立つ場合には、\(f^{-1}\)は\(f\left( a\right) \)において微分可能であり、そこでの微分係数は、\begin{equation*}
\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( a\right) \right) =\frac{1}{f^{\prime }\left( a\right) }
\end{equation*}を満たす。

ただし、上の命題では、関数\(f^{-1}\left( a\right) \)が点\(f\left( a\right) \)において微分可能性であることを示すために同じことを条件として要求しているため、このままではあまり役に立ちそうもありません。実は、上の命題が要求する条件のうち、\(f^{-1}\)が\(f\left( a\right) \)において「微分可能」であることを、\(f^{-1}\)が\(f\left( a\right) \)において「連続」であるという条件に弱めても、命題はそのまま成立します。

命題(逆関数の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)の逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)が存在するものとする。\(a\in X^{i}\)かつ\(f\left( a\right) \in f\left( X\right) ^{i}\)を満たす点\(a\in \mathbb{R}\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(a\)において微分可能であり、\(f^{-1}\)は\(f\left( a\right) \)において連続であり、なおかつ\(f^{\prime }\left( a\right) \not=0\)が成り立つ場合には、\(f^{-1}\)は\(f\left( a\right) \)において微分可能であり、そこでの微分係数は、\begin{equation*}
\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( a\right) \right) =\frac{1}{f^{\prime }\left( a\right) }
\end{equation*}を満たす。
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例(逆関数の微分)
関数\(f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow f\left( \mathbb{R} _{+}\right) \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}_{+}\)に対して\(f\left( x\right) =x^{2}\)を定めるものとします。ただし、\(\mathbb{R} _{+}\)はすべての非負の実数からなる集合です。\(f\left( \mathbb{R} _{+}\right) =\mathbb{R} _{+}\)です。この関数\(f\)は狭義単調増加関数であるため、逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R}_{+}\)が存在します。\(x\geq 0\)であることを踏まえた上で\(y=x^{2}\)を\(x\)について解くと\(x=\sqrt{y}\)となります。したがって、逆関数\(f^{-1}\)はそれぞれの\(y\in \mathbb{R} _{+}\)に対して\(f^{-1}\left( y\right) =\sqrt{y}\)を定めます。この逆関数\(f^{-1}\)は点\(y=1\)において微分可能でしょうか。\(1=f\left( x\right) \)すなわち\(1=x^{2}\)とおくと、\(x\geq 0\)より\(x=1\)であるため、\(\left( 1\right) \ f\left( x\right) \)が\(x=1\)において微分可能であり、\(\left( 2\right) \ f^{-1}\left( y\right) \)は\(y=1\)において連続であり、\(\left( 3\right) \ f^{\prime }\left( 1\right) \not=0\)であることが保証されるのであれば、先の逆関数の微分公式より\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( 1\right) \)を求めることができます。まず、\(f\left( x\right) =x^{2}\)は明らかに\(x=1\)において微分可能です。また、\begin{equation*}
\lim_{y\rightarrow 1}f^{-1}\left( y\right) =\lim_{y\rightarrow 1}\sqrt{y}=1=f^{-1}\left( 1\right)
\end{equation*}が成り立つため、\(f^{-1}\left( y\right) =\sqrt{y}\)は\(y=1\)において連続です。さらに\(f^{\prime }\left( 1\right) =1^{2}=1\)です。したがって、逆関数の微分公式より、\begin{eqnarray*}
\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( 1\right) &=&\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( 1\right) \right) \\
&=&\frac{1}{f^{\prime }\left( 1\right) } \\
&=&\frac{1}{2}\quad \because f^{\prime }\left( x\right) =2x
\end{eqnarray*}となります。
例(逆関数の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して\(f\left( x\right) =x^{3}\)を定めるものとします。\(f\left( \mathbb{R} \right) =\mathbb{R}\)です。この関数\(f\)は狭義単調増加関数であるため、逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)が存在します。\(y=x^{3}\)を\(x\)について解くと\(x=\sqrt[3]{y}\)となります。したがって、逆関数\(f^{-1}\)はそれぞれの\(y\in \mathbb{R}\)に対して\(f^{-1}\left( y\right) =\sqrt[3]{y}\)を定めます。この逆関数\(f^{-1}\)は点\(y=0\)において微分可能でしょうか。\(0=f\left( x\right) \)すなわち\(0=x^{3}\)とおくと\(x=0\)であるため、\(\left( 1\right) \ f\left( x\right) \)が\(x=0\)において微分可能であり、\(\left( 2\right) \ f^{-1}\left( y\right) \)は\(y=0\)において連続であり、\(\left( 3\right) \ f^{\prime }\left( 0\right) \not=0\)であることが保証されるのであれば、先の逆関数の微分公式より\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( 0\right) \)を求めることができます。まず、\(f\left( x\right) =x^{3}\)は明らかに\(x=0\)において微分可能です。また、\begin{equation*}
\lim_{y\rightarrow 0}f^{-1}\left( y\right) =\lim_{y\rightarrow 0}\sqrt[3]{y}=0=f^{-1}\left( 0\right)
\end{equation*}が成り立つため、\(f^{-1}\left( y\right) =\sqrt[3]{y}\)は\(y=1\)において連続です。しかし、\(f^{\prime }\left( 0\right) =3\cdot 0^{2}=0\)であるため、逆関数の微分公式を利用することはできません。ちなみに、この逆関数\(f^{-1}\)は\(1\)において微分可能ではありません。これは演習問題とします。

先の命題では、逆関数\(f^{-1}\)が微分可能な点の候補として、\(a\in X^{i}\)かつ\(f\left( a\right) \in f\left( X\right) ^{i}\)を満たす点\(a\in \mathbb{R}\)に話を限定しています。つまり、点\(a\)は関数\(f\)の定義域\(X\)の内点であるとともに、点\(f\left( a\right) \)は逆関数\(f^{-1}\)の定義域\(f\left( X\right) \)の内点です。このとき、\(f\)の\(a\)における通常の意味における微分可能性や、\(f^{-1}\)の\(f\left( a\right) \)における通常の意味での連続性を検討できます。その上で、\(f\)が\(a\)において微分可能であるとともにそこでの微分係数が非ゼロであり、なおかつ\(g\)が\(f\left( a\right) \)において連続である場合には、逆関数\(f^{-1}\)もまた点\(a\)において微分可能であることを先の命題は主張しています。

では、\(a\in X^{i}\)と\(f\left( a\right) \in f\left( X\right) ^{i}\)の少なくとも一方が成り立たないような点\(a\)が与えられたとき、点\(f\left( a\right) \)における\(f^{-1}\)の微分可能性ついてはどのようなことが言えるでしょうか。例えば、\(a\)が関数\(f\)の定義域\(X\)の境界点である場合や、\(f\left( a\right) \)が逆関数\(f^{-1}\)の定義域\(f\left( X\right) \)の境界点である場合などです。この場合、\(f\)が\(a\)において片側微分可能であったり、\(f^{-1}\)が\(f\left( a\right) \)において片側連続であるならば、上の命題において微分可能性を片側微分可能性に、連続性を片側連続性に置き換えた主張がそのまま成り立ちます。証明は演習問題とします。

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以上の事実を踏まえると、逆関数の導関数に関する以下の命題が得られます。

命題(逆関数の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)の逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)が存在するものとする。\(f\)は定義域上で微分可能であり、\(f^{-1}\)は定義域上で連続であるならば、\(f^{-1}\)は集合\(f\left( X\right) ^{\prime }=\{f\left( x\right) \in f\left( X\right) \ |\ f^{\prime }\left( x\right) \not=0\}\)上で微分可能であり、その導関数\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }:f\left( X\right) ^{\prime }\rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(f\left( x\right) \in f\left( X\right) ^{\prime }\)に対して、\begin{equation*}
\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( x\right) \right) =\frac{1}{f^{\prime }\left( x\right) }
\end{equation*}を定める。

それぞれの\(f\left( x\right) \in f\left( X\right) ^{\prime }\)に対して\(y=f\left( x\right) \)とおくと、逆関数の定義より\(x=f^{-1}\left( y\right) \)が成り立ちます。したがって、上の命題を以下のように表現することもできます。

命題(逆関数の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)の逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)が存在するものとする。\(f\)は定義域上で微分可能であり、\(f^{-1}\)は定義域上で連続であるならば、\(f^{-1}\)は集合\(f\left( X\right) ^{\prime }=\{y\in f\left( X\right) \ |\ f^{\prime }\left( f^{-1}\left( y\right) \right) \not=0\}\)上で微分可能であり、その導関数\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }:f\left( X\right) ^{\prime }\rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(y\in f\left( X\right) ^{\prime }\)に対して、\begin{equation*}
\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( y\right) =\frac{1}{f^{\prime }\left( f^{-1}\left( y\right) \right) }
\end{equation*}を定める。

以上の議論を踏まえた上で、逆関数を微分する手順を以下に整理します。

  1. 関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)が逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)を持つことを確認する。具体的には、\(f\)が単射であることを確認する。
  2. \(y=f\left( x\right) \)とおき、これを\(x\)について解くことで逆関数\(x=f^{-1}\left( y\right) \)を特定する。
  3. 関数\(f\)が定義域\(X\)上で微分可能であり、逆関数\(f^{-1}\)は定義域\(f\left( X\right) \)上で連続であることを確認する。
  4. 関数\(f\)を微分して導関数\(f^{\prime }\left( x\right) \)を特定し、その結果に\(x=f^{-1}\left( y\right) \)を代入した上で逆数をとり、\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( y\right) =\frac{1}{f^{\prime }\left( f^{-1}\left( y\right) \right) }\)を得る。
  5. 逆関数\(f^{-1}\)の導関数\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\)の定義域\(\{y\in f\left( X\right) \ |\ f^{\prime }\left( f^{-1}\left( y\right) \right) \not=0\}\)を確認する。

 
関数\(f\)の逆関数\(f^{-1}\)は\(f\)の逆関数であるため、上の命題において\(f\)と\(f^{-1}\)の立場を入れ替えれば、関数を微分する手段として逆関数の微分公式を利用することもできます。具体的な手順は以下の通りです。

  1. 関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)が逆関数\(f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X\)を持つことを確認する。具体的には、\(f\)が単射であることを確認する。
  2. \(y=f\left( x\right) \)とおき、これを\(x\)について解くことで逆関数\(x=f^{-1}\left( y\right) \)を特定する。
  3. 逆関数\(f^{-1}\)が定義域\(f\left( X\right) \)上で微分可能であり、関数\(f\)は定義域\(X\)上で連続であることを確認する。
  4. 逆関数\(f^{-1}\)を微分して導関数\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( y\right) \)を特定し、その結果に\(y=f\left( x\right) \)を代入した上で逆数をとり、\(f^{\prime }\left( x\right) =\frac{1}{\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( x\right) \right) }\)を得る。
  5. 関数\(f\)の導関数\(f^{\prime }\)の定義域\(\{x\in X\ |\ \left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( x\right) \right) \not=0\}\)を確認する。

 

区間上に定義された連続な狭義単調関数の逆関数

これまでは一般の点集合上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right) \)について考えてきましたが、ここからは定義域が区間であるような関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow f\left( I\right) \)を議論の対象とします。復習になりますが、区間上に定義された連続な狭義単調関数に関しては以下の命題が成り立ちます。

命題(区間上に定義された連続な狭義単調関数の逆関数)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow f\left( I\right) \)が連続な狭義単調増加関数であるならば、その逆関数\(f^{-1}:f\left( I\right) \rightarrow X\)が存在して、\(f^{-1}\)もまた連続な狭義単調増加関数となる。また、\(f\)が連続な狭義単調減少関数であるならば、その逆関数\(f^{-1}\)が存在して、\(f^{-1}\)もまた連続な狭義単調減少関数となる。
上の命題について復習する

区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow f\left( I\right) \)が連続な狭義単調増加関数であり、なおかつ微分可能であるものとします。このとき、上の命題より逆関数\(f^{-1}:f\left( I\right) \rightarrow X\)が存在して、\(f^{-1}\)も連続です。したがって、逆関数の微分公式が要求する条件がすべて満たされるため、\(f^{-1}\)の微分可能性に関する以下の命題を導くことができます。狭義単調減少関数についても同様です。

命題(区間上に定義された連続な狭義単調関数の逆関数の微分)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow f\left( I\right) \)が連続な狭義単調関数であり、なおかつ微分可能であるならば、逆関数\(f^{-1}:f\left( I\right) \rightarrow I\)が存在して、\(f^{-1}\)は集合\(f\left( I \right) ^{\prime }=\{f\left( x\right) \in f\left( I\right) \ |\ f^{\prime }\left( x\right) \not=0\}\)上で微分可能である。さらにその導関数\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }:f\left( I\right) ^{\prime }\rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(f\left( x\right) \in f\left( I\right) ^{\prime }\)に対して、\begin{equation*}
\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( x\right) \right) =\frac{1}{f^{\prime }\left( x\right) }
\end{equation*}を定める。

それぞれの\(f\left( x\right) \in f\left( I\right) ^{\prime }\)に対して\(y=f\left( x\right) \)とおくと、逆関数の定義より\(x=f^{-1}\left( y\right) \)が成り立ちます。したがって、上の命題を以下のように表現することもできます。

命題(区間上に定義された連続な狭義単調関数の逆関数の微分)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow f\left( I\right) \)が連続な狭義単調関数であり、なおかつ微分可能であるならば、逆関数\(f^{-1}:f\left( I\right) \rightarrow I\)が存在して、\(f^{-1}\)は集合\(f\left( I\right) ^{\prime }=\{y\in f\left( I\right) \ |\ f^{\prime }\left( f^{-1}\left( y\right) \right) \not=0\}\)上で微分可能である。さらにその導関数\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }:f\left( I\right) ^{\prime }\rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(y\in f\left( I\right) ^{\prime }\)に対して、\begin{equation*}
\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( y\right) =\frac{1}{f^{\prime }\left( f^{-1}\left( y\right) \right) }
\end{equation*}を定める。
例(区間上に定義された連続な狭義単調関数の逆関数の微分)
関数\(f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow f\left( \mathbb{R} _{+}\right) \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}\)に対して\(f\left( x\right) =x^{2}\)を定めるものとします。ただし、\(\mathbb{R} _{+}\)はすべての非負の実数からなる集合です。\(f\left( \mathbb{R} _{+}\right) =\mathbb{R} _{+}\)です。この関数\(f\)は連続な狭義単調増加関数であるため、逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)が存在します。具体的には、\(x\geq 0\)であることを踏まえた上で\(y=x^{2}\)を\(x\)について解くと\(x=\sqrt{y}\)となります。したがって、逆関数\(f^{-1}\)はそれぞれの\(y\in \mathbb{R} _{+}\)に対して\(f^{-1}\left( y\right) =\sqrt{y}\)を定めます。\(f\)は微分可能でもあるため、\(f^{-1}\)は集合\begin{eqnarray*}
f\left( \mathbb{R} _{+}\right) ^{\prime } &=&\{y\in \mathbb{R} _{+}\ |\ f^{\prime }\left( f^{-1}\left( y\right) \right) \not=0\} \\
&=&\{y\in \mathbb{R} _{+}\ |\ 2\sqrt{y}\not=0\} \\
&=&\mathbb{R} _{++}
\end{eqnarray*}上で微分可能であり、その導関数\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(y>0\)に対して、\begin{equation*}
\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( y\right) =\frac{1}{f^{\prime }\left( f^{-1}\left( y\right) \right) }=\frac{1}{2\sqrt{y}}
\end{equation*}を定めます。

以上の議論を踏まえた上で、区間上に定義された連続な狭義単調関数の逆関数を微分する手順を以下に整理します。

  1. 関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow f\left( I\right) \)の逆関数\(f^{-1}:f\left( I\right) \rightarrow I\)を特定する。具体的には、\(y=f\left( x\right) \)とおき、これを\(x\)について解くことで逆関数\(x=f^{-1}\left( y\right) \)を特定する。
  2. 関数\(f\)が定義域\(X\)上で微分可能であることを確認する。
  3. 関数\(f\)を微分して導関数\(f^{\prime }\left( x\right) \)を特定し、その結果に\(x=f^{-1}\left( y\right) \)を代入した上で逆数をとり、\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( y\right) =\frac{1}{f^{\prime }\left( f^{-1}\left( y\right) \right) }\)を得る。
  4. 逆関数\(f^{-1}\)の導関数\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\)の定義域\(\{y\in f\left( I\right) \ |\ f^{\prime }\left( f^{-1}\left( y\right) \right) \not=0\}\)を確認する。

 
関数を微分する手段として逆関数の微分公式を利用することもできます。具体的な手順は以下の通りです。

  1. 関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow f\left( I\right) \)の逆関数\(f^{-1}:f\left( I\right) \rightarrow I\)を特定する。具体的には、\(y=f\left( x\right) \)とおき、これを\(x\)について解くことで逆関数\(x=f^{-1}\left( y\right) \)を特定する。
  2. 逆関数\(f^{-1}\)が定義域\(f\left( I\right) \)上で微分可能であることを確認する
  3. 逆関数\(f^{-1}\)を微分して導関数\(\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( y\right) \)を特定し、その結果に\(y=f\left( x\right) \)を代入した上で逆数をとり、\(f^{\prime }\left( x\right) =\frac{1}{\left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( x\right) \right) }\)を得る。
  4. 関数\(f\)の導関数\(f^{\prime }\)の定義域\(\{x\in I\ |\ \left( f^{-1}\right) ^{\prime }\left( f\left( x\right) \right) \not=0\}\)を確認する。

次回は定数関数の微分について学びます。
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