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DERIVATIVES OF MULTIVARIABLE FUNCTIONS

合成関数の偏微分(合成関数の勾配ベクトル)

目次

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多変数関数と1変数関数の合成関数の偏微分

多変数関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の値域と1変数関数\(g:\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R} \)の定義域の間に、\begin{equation*}f\left( X\right) \subset Y
\end{equation*}という関係が成り立つ場合には、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) =g\left( f\left( x\right) \right) \in \mathbb{R} \end{equation*}を定める多変数の合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。

関数\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)の周辺の任意の点において定義されているとともに、その点\(a\)において変数\(x_{k}\)に関して偏微分可能であるならば、そこでの偏微分係数に相当する有限な実数\begin{equation*}f_{x_{k}}\left( a\right) \in \mathbb{R} \end{equation*}が存在します。加えて、関数\(g\)が点\(f\left( a\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとともに、その点\(f\left( a\right) \)において微分可能であるならば、そこでの微分係数に相当する有限な実数\begin{equation*}g^{\prime }\left( f\left( a\right) \right) \in \mathbb{R} \end{equation*}が存在します。以上の条件が成り立つとき、合成関数\(g\circ f\)もまた点\(a\)において変数\(x_{k}\)に関して偏微分可能であることが保証されるとともに、そこでの偏微分係数が、\begin{equation*}\left( g\circ f\right) _{x_{k}}\left( a\right) =g^{\prime }\left( f\left(
a\right) \right) \cdot f_{x_{k}}\left( a\right)
\end{equation*}として定まることが保証されます。

命題(多変数関数と1変数関数の合成関数の偏微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と\(g:\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R} \)の間に\(f\left( X\right) \subset Y\)という関係が成り立つ場合には合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能である。\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)において変数\(x_{k}\ \left( k=1,\cdots ,n\right) \)に関して偏微分可能であるとともに、\(g\)が点\(f\left( a\right) \)において微分可能である場合には、\(g\circ f\)もまた点\(a\)において変数\(x_{k}\)に関して偏微分可能であり、そこでの偏微分係数は、\begin{equation*}\left( g\circ f\right) _{x_{k}}\left( a\right) =g^{\prime }\left( f\left(
a\right) \right) \cdot f_{x_{k}}\left( a\right)
\end{equation*}を満たす。

証明

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つまり、点\(a\)において変数\(x_{k}\)に関して偏微分可能な多変数関数\(f\)と、点\(f\left( a\right) \)において微分可能な1変数関数\(g\)の合成関数であるような多変数関数\(g\circ f\)が与えられたとき、\(g\circ f\)もまた点\(a\)において変数\(x_{k}\)に関して偏微分可能であることが保証されるとともに、\(f\)の偏微分係数と\(g\)の微分係数の積をとれば\(g\circ f\)の偏微分係数が得られることを上の命題は保証しています。したがって、2つの関数\(f,g\)の合成関数\(g\circ f\)の偏微分可能性を判定する際には、偏微分の定義にさかのぼって考える前に、まずは\(f\)と\(g\)に分けた上で、それらがそれぞれ必要な点において偏微分・微分可能であることを確認すればよいということになります。

例(合成関数の偏微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\frac{1}{x^{2}+y^{2}+1}
\end{equation*}を定めるものとします。点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)において変数\(x\)に関して偏微分可能でしょうか。\(f\)は多変数の多項式関数\(x^{2}+y^{2}+1\)と1変数関数\(\frac{1}{x}\)の合成関数であることに注意してください。関数\(x^{2}+y^{2}+1\)は点\(\left(a,b\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとともに、\begin{eqnarray*}\left. \frac{\partial }{\partial x}\left( x^{2}+y^{2}+1\right) \right\vert
_{\left( x,y\right) =\left( a,b\right) } &=&\left. 2x\right\vert _{\left(
x,y\right) =\left( a,b\right) } \\
&=&2a
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\left. \frac{\partial }{\partial x}\left( x^{2}+y^{2}+1\right) \right\vert
_{\left( x,y\right) =\left( a,b\right) }=2a \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。関数\(\frac{1}{x}\)は点\(a^{2}+b^{2}+1\)の周辺の任意の点において定義されているとともに、\begin{eqnarray*}\left. \frac{d}{dx}\left( \frac{1}{x}\right) \right\vert _{x=a^{2}+b^{2}+1}
&=&\left. -\frac{1}{x^{2}}\right\vert _{x=a^{2}+b^{2}+1} \\
&=&-\frac{1}{\left( a^{2}+b^{2}+1\right) ^{2}}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\left. \frac{d}{dx}\left( \frac{1}{x}\right) \right\vert _{x=2a}=-\frac{1}{\left( a^{2}+b^{2}+1\right) ^{2}} \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます。したがって先の命題より、関数\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)において変数\(x\)に関して偏微分可能であり、そこでの偏微分係数は、\begin{eqnarray*}f_{x}\left( a,b\right) &=&\left. \frac{\partial }{\partial x}\left( \frac{1}{x^{2}+y^{2}+1}\right) \right\vert _{\left( x,y\right) =\left( a,b\right)
}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dx}\left( \frac{1}{x}\right) \right\vert _{x=2a}\cdot
\left. \frac{\partial }{\partial x}\left( x^{2}+y^{2}+1\right) \right\vert
_{\left( x,y\right) =\left( a,b\right) }\quad \because \text{合成関数の偏微分} \\
&=&-\frac{1}{\left( a^{2}+b^{2}+1\right) ^{2}}\cdot 2a\quad \because \left(
1\right) ,\left( 2\right) \\
&=&-\frac{2a}{\left( a^{2}+b^{2}+1\right) ^{2}}
\end{eqnarray*}となります。任意の\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)について同様であるため、\(f\)の変数\(x\)に関する偏導関数\(f_{x}\)の定義域は\(\mathbb{R} ^{2}\)であり、これはそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f_{x}\left( x,y\right) =-\frac{2x}{\left( x^{2}+y^{2}+1\right) ^{2}}
\end{equation*}を定めることが明らかになりました。変数\(y\)に関する偏導関数\(f_{x}\)の導出は演習問題にします。
例(合成関数の偏微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\sin \left( x^{2}y^{2}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)において変数\(x\)に関して偏微分可能でしょうか。\(f\)は多変数の単項式関数\(x^{2}y^{2}\)と1変数関数\(\sin \left(x\right) \)の合成関数であることに注意してください。関数\(x^{2}y^{2}\)は点\(\left(a,b\right) \)の周辺の任意の点において定義されているとともに、\begin{eqnarray*}\left. \frac{\partial }{\partial x}\left( x^{2}y^{2}\right) \right\vert
_{\left( x,y\right) =\left( a,b\right) } &=&\left. 2xy^{2}\right\vert
_{\left( x,y\right) =\left( a,b\right) } \\
&=&2ab^{2}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\left. \frac{\partial }{\partial x}\left( x^{2}y^{2}\right) \right\vert
_{\left( x,y\right) =\left( a,b\right) }=2ab^{2} \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。関数\(\sin \left( x\right) \)は点\(a^{2}b^{2}\)の周辺の任意の点において定義されているとともに、\begin{eqnarray*}\left. \frac{d}{dx}\left( \sin \left( x\right) \right) \right\vert
_{x=a^{2}b^{2}} &=&\left. \cos \left( x\right) \right\vert _{x=a^{2}b^{2}} \\
&=&\cos \left( a^{2}b^{2}\right)
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\left. \frac{d}{dx}\left( \sin \left( x\right) \right) \right\vert
_{x=a^{2}b^{2}}=\cos \left( a^{2}b^{2}\right) \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます。したがって先の命題より、関数\(f\)は点\(\left( a,b\right) \)において変数\(x\)に関して偏微分可能であり、そこでの偏微分係数は、\begin{eqnarray*}f_{x}\left( a,b\right) &=&\left. \frac{\partial }{\partial x}\left( \sin
\left( x^{2}y^{2}\right) \right) \right\vert _{\left( x,y\right) =\left(
a,b\right) }\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dx}\left( \sin \left( x\right) \right) \right\vert
_{x=a^{2}b^{2}}\cdot \left. \frac{\partial }{\partial x}\left(
x^{2}y^{2}\right) \right\vert _{\left( x,y\right) =\left( a,b\right) }\quad
\because \text{合成関数の偏微分} \\
&=&\cos \left( a^{2}b^{2}\right) \cdot 2ab^{2}\quad \because \left( 1\right)
,\left( 2\right) \\
&=&2ab^{2}\cos \left( a^{2}b^{2}\right)
\end{eqnarray*}となります。任意の\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)について同様であるため、\(f\)の変数\(x\)に関する偏導関数\(f_{x}\)の定義域は\(\mathbb{R} ^{2}\)であり、これはそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f_{x}\left( x,y\right) =2xy^{2}\cos \left( x^{2}y^{2}\right)
\end{equation*}を定めることが明らかになりました。変数\(y\)に関する偏導関数\(f_{x}\)の導出は演習問題にします。

 

合成関数の勾配ベクトル

先の命題より、勾配ベクトルに関する以下の命題が得られます。

命題(合成関数の勾配ベクトル)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)と\(g:\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R} \)の間に\(f\left( X\right) \subset Y\)という関係が成り立つ場合には合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能である。\(f\)が点\(a\in X\)において偏微分可能であり、\(g\)が点\(f\left( a\right) \)において微分可能である場合には、\(g\circ f\)もまた点\(a\)において偏微分可能であり、そこでの勾配ベクトルは、\begin{equation*}\nabla \left( g\circ f\right) \left( a\right) =g^{\prime }\left( f\left(
a\right) \right) \cdot \nabla f\left( a\right)
\end{equation*}を満たす。

証明

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例(合成関数の勾配ベクトル)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \)と\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)からは合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。\(f\)が偏微分可能かつ\(g\)が微分可能である場合には勾配ベクトル場\(\nabla f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} ^{n}\)と導関数\(g^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれ存在します。このとき、上の命題より\(g\circ f\)もまた偏微分可能であり、勾配ベクトル場\(\nabla \left( g\circ f\right) :\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} ^{n}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}\nabla \left( g\circ f\right) \left( x\right) =g^{\prime }\left( f\left(
x\right) \right) \cdot \nabla f\left( x\right)
\end{equation*}を定めます。

 

連鎖公式

合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)を変数\(x_{k}\)に関して偏微分する場合、通常は、問題としている点\(a\in X\)において\(f\)が偏微分可能であることを確認し、なおかつ\(g\)が点\(f\left( a\right) \)において微分可能であることを確認した上で、\begin{equation*}\left( g\circ f\right) _{x_{k}}\left( a\right) =g^{\prime }\left( f\left(
a\right) \right) \cdot f_{x_{k}}\left( a\right)
\end{equation*}という関係式を利用して偏微分係数\(\left( g\circ f\right) _{x_{k}}\left( a\right) \)を求めることになります。一方、\(g\circ f\)の偏導関数\(\left( g\circ f\right) _{x_{k}}\left( x\right) \)が与えられている場合には、その変数\(x\)に\(a\)を代入すれば偏微分係数\(\left( g\circ f\right) _{x_{k}}\left( a\right) \)がただちに得られるため簡単です。したがって、偏導関数\(\left( g\circ f\right) _{x_{k}}\)を特定できるのであればより望ましいということになります。ここで役に立つのが先の命題です。つまり、\(f\)が偏微分可能かつ\(g\)が微分可能である場合には\(g\circ f\)もまた偏微分可能であり、その偏導関数\(\left( g\circ f\right) _{x_{k}}:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( g\circ f\right) _{x_{k}}\left( x\right) =g^{\prime }\left( f\left(
x\right) \right) \cdot f_{x_{k}}\left( x\right)
\end{equation*}を定めることが保証されます。この命題を具体的にどのように利用すればよいでしょうか。以下で解説します。

ある多変数関数が与えられており、それを変数\(x_{k}\)について偏微分しようとしている状況を想定します。もし、その関数が何らかの2つの関数\(f,g\)の合成関数\(g\circ f\)であることに気が付くことができれば、\(f\)が偏微分可能かつ\(g\)が微分可能であるという条件のもと、合成関数の偏微分公式\begin{equation}\left( g\circ f\right) _{x_{k}}\left( x\right) =g^{\prime }\left( f\left(
x\right) \right) \cdot f_{x_{k}}\left( x\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}を利用することで、もとの関数を偏微分できるはずです。

合成関数の定義より\(\left( g\circ f\right) \left( x\right) =g\left( f\left( x\right) \right) \)となるため、合成関数とは、最初に入力した\(x\)に対して合成関数の「内側」の関数\(f\)が値\(y=f\left( x\right) \)を定め、さらにその値\(y\)に対して合成関数の「外側」の関数\(g\)が値\(g\left( y\right) \)を定めるという2段階構造になっています。言い換えると、合成関数\(\left( g\circ f\right) \left( x\right) \)は「外側」の関数\(g\left( y\right) \)と「内側」の関数\(y=f\left( x\right) \)に分離可能であるということです。これらの表記を利用して\(\left( 1\right) \)を言い換えると、\begin{equation}\frac{\partial }{\partial x_{k}}\left( g\circ f\right) \left( x\right) =\frac{d}{dy}g\left( y\right) \cdot \frac{\partial }{\partial x_{k}}f\left(
x\right) \quad \cdots (2)
\end{equation}となります。つまり、偏微分しようとしている関数が2つの関数\(f,g\)の合成関数\(g\circ f\)であることに気が付いた場合には、\(f\)が偏微分可能かつ\(g\)が微分可能であることを確認した上で、\(f,g\)をそれぞれ偏微分ないし微分し、得られた結果の積をとれば良いということになります。ただし、\(\left( 2\right) \)の右辺中の\(\frac{dg\left( y\right) }{dy}\)すなわち\(g^{\prime }\left( y\right) \)は変数\(y\)に関する関数であるため、\(\left( 1\right) \)のようにこれを\(g^{\prime }\left( f\left( x\right) \right) \)にするためには\(\frac{dg\left( y\right) }{dy}\)の変数に\(y=f\left( x\right) \)を代入する必要があります。このような代入を明示的に表現するのであれば、\(\left( 2\right) \)は、\begin{equation*}\frac{\partial }{\partial x_{k}}\left( g\circ f\right) \left( x\right)
=\left. \frac{d}{dy}g\left( y\right) \right\vert _{y=f\left( x\right) }\cdot
\frac{\partial }{\partial x_{k}}f\left( x\right)
\end{equation*}となります。これを連鎖公式(chain rule)と呼びます。

例(連鎖公式)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\frac{1}{x^{2}+y^{2}+1}
\end{equation*}を定めるものとします。先ほど、それぞれの点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)における変数\(x\)に関する偏微分係数\(f_{x}\left(a,b\right) \)を求めることを通じて偏導関数\(f_{x}\)を求めましたが、以下では連鎖公式を利用して\(f_{x}\)を求めます。\(f\)は多変数の多項式関数\(x^{2}+y^{2}+1\)と1変数関数\(\frac{1}{x}\)の合成関数であることに注意してください。\(x^{2}+y^{2}+1\)は変数\(x\)に関して偏微分可能であり、\(\frac{1}{x}\)は任意の点\(x^{2}+y^{2}+1\ \left( \not=0\right) \)において微分可能であるため\(f\)は変数\(x\)に関して偏微分可能であり、偏導関数\(f_{x}:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*}f_{x}\left( x,y\right) &=&\frac{\partial }{\partial x}\left( \frac{1}{x^{2}+y^{2}+1}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dz}\left( \frac{1}{z}\right) \right\vert
_{y=x^{2}+y^{2}+1}\cdot \frac{\partial }{\partial x}\left(
x^{2}+y^{2}+1\right) \quad \because \text{連鎖公式}
\\
&=&\left. -\frac{1}{z^{2}}\right\vert _{y=x^{2}+y^{2}+1}\cdot 2x \\
&=&-\frac{1}{\left( x^{2}+y^{2}+1\right) ^{2}}\cdot 2x \\
&=&-\frac{2x}{\left( x^{2}+y^{2}+1\right) ^{2}}
\end{eqnarray*}を定めます。

例(連鎖公式)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\sin \left( x^{2}y^{2}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。先ほど、それぞれの点\(\left( a,b\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)における変数\(x\)に関する偏微分係数\(f_{x}\left(a,b\right) \)を求めることを通じて偏導関数\(f_{x}\)を求めましたが、以下では連鎖公式を利用して\(f_{x}\)を求めます。\(f\)は多変数の単項式関数\(x^{2}y^{2}\)と1変数関数\(\sin \left( x\right) \)の合成関数であることに注意してください。\(x^{2}y^{2}\)は変数\(x\)に関して偏微分可能であり、\(\sin \left( x\right) \)は任意の点\(x^{2}y^{2}\)において微分可能であるため\(f\)は変数\(x\)に関して偏微分可能であり、偏導関数\(f_{x}:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{eqnarray*}f_{x}\left( x,y\right) &=&\frac{\partial }{\partial x}\left( \sin \left(
x^{2}y^{2}\right) \right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dz}\left( \sin \left( z\right) \right) \right\vert
_{y=x^{2}y^{2}}\cdot \frac{\partial }{\partial x}\left( x^{2}y^{2}\right)
\quad \because \text{連鎖公式} \\
&=&\left. \cos \left( z\right) \right\vert _{y=x^{2}y^{2}}\cdot 2xy^{2} \\
&=&\cos \left( x^{2}y^{2}\right) \cdot 2xy^{2} \\
&=&2xy^{2}\cos \left( x^{2}y^{2}\right)
\end{eqnarray*}を定めます。

 

3つ以上の関数の合成

3つ以上の関数を合成して得られる関数の微分についても同様の議論が成立します。関数\(f,g,h\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}f &:&\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \\
g &:&\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R} \\
h &:&\mathbb{R} \supset Z\rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}で与えられているとともに、これらの間に、\begin{eqnarray*}
f\left( X\right) &\subset &Y \\
g\left( Y\right) &\subset &Z
\end{eqnarray*}という関係が成り立つのであれば、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( h\circ g\circ f\right) (x)=h\left( g\left( f\left( x\right) \right)
\right)
\end{equation*}を定める合成関数\(h\circ g\circ f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。\(f\)が変数\(x_{k}\)に関して偏微分可能かつ\(g,h\)が微分可能であるならば\(h\circ g\circ f\)もまた変数\(x_{k}\)に関して偏微分可能であり、その偏導関数\(\left( h\circ g\circ f\right) _{x_{k}}:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( \left( h\circ g\circ f\right) \right) _{x_{k}}\left( x\right)
=h^{\prime }(g\left( f\left( x\right) \right) )\cdot g^{\prime }\left(
f\left( x\right) \right) \cdot f_{x_{k}}\left( x\right)
\end{equation*}を定めます。この場合、連鎖公式をどのように整理すればよいでしょうか。

ある多変数関数が与えられており、それを変数\(x_{k}\)に関して偏微分しようとしている状況を想定します。もし、その関数が何らかの3つの関数\(f,g,h\)の合成関数\(h\circ g\circ f\)であることに気が付くことができれば、\(f\)が偏微分可能かつ\(g,h\)が微分可能であるという条件のもと、合成関数の偏微分公式\begin{equation}\left( \left( h\circ g\circ f\right) \right) _{x_{k}}\left( x\right)
=h^{\prime }(g\left( f\left( x\right) \right) )\cdot g^{\prime }\left(
f\left( x\right) \right) \cdot f_{x_{k}}\left( x\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}を利用することで、もとの関数を偏微分できるはずです。

合成関数の定義より\(\left( h\circ g\circ f\right) (x)=h\left( g\left( f\left( x\right) \right)\right) \)となるため、合成関数とは、最初に入力した\(x\)に対して合成関数の「内側」の関数\(f\)が値\(y=f\left( x\right) \)を定め、さらにその値\(y\)に対して合成関数の「中央」の関数\(g\)が値\(z=g\left(y\right) \)を定め、さらにその値\(z\)に対して合成関数の「外側」の関数\(h\)が値\(h\left( z\right) =h\left( g\left( f\left( x\right) \right)\right) \)を定めるという3重構造になっています。言い換えると、合成関数\(\left( h\circ g\circ f\right) (x)\)は「外側」の関数\(h\left( z\right) \)と「中央」の関数\(z=g\left( y\right) \)と「内側」の関数\(y=f\left(x\right) \)とに分離可能であるということです。これらの表記を利用して\(\left( 1\right) \)を言い換えると、\begin{equation}\frac{\partial }{\partial x_{k}}\left( h\circ g\circ f\right) \left(
x\right) =\frac{d}{dz}h(z)\cdot \frac{d}{dy}g\left( y\right) \cdot \frac{\partial }{\partial x_{k}}f\left( x\right) \quad \cdots (2)
\end{equation}となります。つまり、偏微分しようとしている関数が3つの関数\(f,g,h\)の合成関数\(h\circ g\circ f\)であることに気が付いた場合には、\(f\)が偏微分可能かつ\(g,h\)が微分可能であることを確認した上で、\(f,g,h\)をそれぞれ偏微分ないし微分し、得られた結果の積をとればよいということになります。ただし、\(\left( 2\right) \)を\(\left( 1\right) \)のような\(x\)に関する関数として表現するためには、\(h\)の導関数\(\frac{d}{dz}h\left( z\right) \)を\(z=g\left( f\left( x\right)\right) \)で、\(g\)の導関数\(\frac{d}{dy}g\left( y\right) \)を\(y=f\left( x\right) \)でそれぞれ評価する必要があります。つまり、\begin{equation*}\frac{\partial }{\partial x_{k}}\left( h\circ g\circ f\right) \left(
x\right) =\left. \frac{d}{dz}h\left( z\right) \right\vert _{z=g\left(
f\left( x\right) \right) }\cdot \left. \frac{d}{dy}g\left( y\right)
\right\vert _{y=f\left( x\right) }\cdot \frac{\partial }{\partial x_{k}}f\left( x\right)
\end{equation*}とする必要があります。以上が3つの関数の合成関数に関する連鎖公式です。4つ以上の関数の合成についても同様です。

例(連鎖公式)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\frac{1}{\left\Vert x\right\Vert }
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(\left\Vert x\right\Vert \)は点\(x\)のノルムであり、\begin{equation*}\left\Vert x\right\Vert =\sqrt{\sum_{i=1}^{n}x_{i}^{2}}=\left(
\sum_{i=1}^{n}x_{i}^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}
\end{equation*}と定義されるため、\begin{equation*}
f\left( x\right) =\frac{1}{\left( \sum_{i=1}^{n}x_{i}^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。これは多変数関数\(\sum_{i=1}^{n}x_{i}^{2}\)と1変数関数\(x^{\frac{1}{2}}\)と1変数関数\(\frac{1}{x}\)の合成関数です。\(x\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)であることを踏まえると、\(\sum_{i=1}^{n}x_{i}^{2}\)は任意の変数\(x_{k}\)に関して偏微分可能であり、\(x^{\frac{1}{2}}\)は任意の点\(\sum_{i=1}^{n}x_{i}^{2}=\left\Vert x\right\Vert ^{2}\)において微分可能であり、\(\frac{1}{x}\)は任意の点\(\left( \sum_{i=1}^{n}x_{i}^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}=\left\Vert x\right\Vert \)において微分可能であるため\(f\)は変数\(x_{k}\)に関して偏微分可能であり、偏導関数\(f_{x}:\mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{eqnarray*}f_{x_{k}}\left( x\right) &=&\frac{\partial }{\partial x}\left( \frac{1}{\left\Vert x\right\Vert }\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\frac{\partial }{\partial x}\left( \frac{1}{\left(
\sum_{i=1}^{n}x_{i}^{2}\right) ^{\frac{1}{2}}}\right) \\
&=&\left. \frac{d}{dz}\left( \frac{1}{z}\right) \right\vert _{z=\left\Vert
x\right\Vert }\cdot \left. \frac{d}{dy}y^{\frac{1}{2}}\right\vert
_{y=\left\Vert x\right\Vert ^{2}}\cdot \frac{\partial }{\partial x_{k}}\left( \sum_{i=1}^{n}x_{i}^{2}\right) \quad \because \text{連鎖公式} \\
&=&\left. -\frac{1}{z^{2}}\right\vert _{z=\left\Vert x\right\Vert }\cdot
\left. \frac{1}{2}y^{-\frac{1}{2}}\right\vert _{y=\left\Vert x\right\Vert
^{2}}\cdot 2x_{k} \\
&=&-\frac{1}{\left\Vert x\right\Vert ^{2}}\cdot \frac{1}{2}\left( \left\Vert
x\right\Vert ^{2}\right) ^{-\frac{1}{2}}\cdot 2x_{k}\quad \because \text{ノルムの定義} \\
&=&-\frac{x_{k}}{\left\Vert x\right\Vert ^{3}}
\end{eqnarray*}を定めます。

 

演習問題

問題(合成関数の偏微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\frac{1}{x^{2}+y^{2}+1}
\end{equation*}を定めるものとします。変数\(y\)に関する偏導関数\(f_{y}\)を特定してください。
証明

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問題(合成関数の偏微分)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\sin \left( x^{2}y^{2}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。変数\(y\)に関する偏導関数\(f_{y}\)を特定してください。
証明

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RELATED KNOWLEDGE

関連知識

偏微分
多変数関数の偏微分

多変数関数が与えられたとき、1つの変数以外のすべての変数の値を固定し、あたかも1変数関数であるかのようにみなした上で定義される微分概念を偏微分と呼びます。

偏微分
勾配ベクトル(グラディエント)

多変数関数が定義域上の点においてすべての変数に関して偏微分可能である場合、その点におけるそれぞれの変数に関する偏微分係数を成分とするベクトルが存在します。これを勾配ベクトル(グラディエント)と呼びます。

合成関数
合成関数

関数 f の値域が関数 g の定義域の部分集合である場合には、f の定義域のそれぞれの値 x に対して g(f(x)) を定めるような関数が定義可能であり、これを f と g の合成写像と呼びます。

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偏微分可能性と連続性

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偏微分
高階の偏微分

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ヘッセ行列
ヘッセ行列

多変数関数が任意の2つの変数の組み合わせに関して2階偏微分可能である場合には、2階偏微分係数を成分として持つ正方行列が定義可能です。これをヘッセ行列と呼びます。

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多変数関数の連続微分可能性

多変数関数が偏微分可能であることに加えてすべての変数に関する偏導関数が連続である場合、その関数は連続微分可能であると言います。

偏微分
偏微分の順序(クレローの定理)

開集合上に定義されたn階連続微分可能な多変数関数に関しては、n個の変数の順序によらず、n階偏導関数はすべて一致します。これをクレローの定理と呼びます。

合成写像
合成写像

集合 A から集合 B への写像 f:A→B と、集合 B から集合 C への写像 g:B→C が与えられたとき、A のそれぞれの要素 a に対して C の要素である g(f(a)) を像として定める写像を作ることができるため、これを f と g の合成写像と呼びます。

関数の商
関数の商の微分

微分可能な関数どうしの商として定義される関数もまた微分可能です。

スカラー場の微分