複素双曲線余弦関数
双曲線正弦関数\begin{equation*}
\sinh \left( x\right) :\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}はそれぞれの実数\(x\in \mathbb{R} \)に対して、以下の実数\begin{equation}\sinh \left( x\right) =\frac{e^{x}+e^{-x}}{2} \quad \cdots (1)
\end{equation}を値として定める実変数の実数値関数として定義されますが、双曲線余弦関数の定義域を数直線\(\mathbb{R} \)から複素平面\(\mathbb{C} \)へ拡張して、\begin{equation*}\cosh \left( z\right) :\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \end{equation*}とするためにはどうすればよいでしょうか。これまで学んだ知識を動員しながら順番に考えます。
複素数\(z\in \mathbb{C} \)に対しても、\(\left( 1\right) \)と同様に、\begin{equation}\cosh \left( z\right) =\frac{e^{z}+e^{-z}}{2} \quad \cdots (2)
\end{equation}と定義します。複素指数関数\(e^{z}:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)の定義域は\(\mathbb{C} \)であるため、\(\left( 2\right) \)を構成する\(e^{z}\)および\(e^{-z}\)はそれぞれ複素数として定まることが保証されます。また、複素平面は加法と除法について閉じているため(\(0\)で割る場合を除く)、\(\left( 2\right) \)すなわち\(\cosh \left( z\right) \)が複素数として定まることが保証されます。このような事情を踏まえると、それぞれの複素数\(z\in \mathbb{C} \)に対して、以下の複素数\begin{equation*}\cosh \left( z\right) =\frac{e^{z}+e^{-z}}{2}
\end{equation*}を値として定める複素関数\begin{equation*}
\cosh \left( z\right) :\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \end{equation*}が定義可能です。これを複素双曲線余弦関数(complex hyperbolic cosine function)や複素ハイパボリックコサイン関数などと呼びます。
z\right) \text{の定義} \\
&=&\frac{1}{2}\left( e^{i}+\frac{1}{e^{i}}\right) \\
&\approx &0.5403
\end{eqnarray*}となります。
\because \cosh \left( z\right) \text{の定義} \\
&=&\frac{e^{2+i}+e^{-2-i}}{2} \\
&\approx &2.0327+3.0519i
\end{eqnarray*}となります。
複素双曲線余弦関数は双曲線余弦関数の一般化
実数\(x\in \mathbb{R} \)は複素数\(x+0i\in \mathbb{C} \)と同一視されますが、これを複素双曲線余弦関数\(\cosh \left( z\right) :\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)に入力すると、\begin{eqnarray*}\cosh \left( x+0i\right) &=&\frac{e^{x+0i}+e^{-\left( x+0i\right) }}{2}\quad \because \cosh \left( z\right) \text{の定義} \\
&=&\frac{e^{x+0i}+e^{-x-0i}}{2} \\
&=&\frac{e^{x}\left[ \cos \left( 0\right) +i\sin \left( 0\right) \right]
+e^{-x}\left[ \cos \left( -0\right) +i\sin \left( -0\right) \right] }{2} \\
&=&\frac{e^{x}\left( 1+i0\right) +e^{-x}\left( 1+i0\right) }{2} \\
&=&\frac{e^{x}+e^{x}}{2} \\
&=&\cosh \left( x\right)
\end{eqnarray*}が得られますが、これは双曲線余弦関数\(\cosh \left( x\right) :\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)に実数\(x\in \mathbb{R} \)を入力した場合に出力される値と一致します。以上より、複素双曲線余弦関数は双曲線余弦関数の一般化であることが明らかになりました。
\end{equation*}が成り立つ。
&\approx &11.592
\end{eqnarray*}となります。
複素双曲線余弦関数の実部と虚部
複素双曲線余弦関数の実部と虚部は以下の通りです。
\left( x\right) \sin \left( y\right)
\end{equation*}である。つまり、\(\cosh\left( z\right) \)の実部と虚部は、\begin{eqnarray*}\mathrm{Re}\left( \cosh \left( z\right) \right) &=&\cosh \left( x\right) \cos
\left( y\right) \\
\mathrm{Im}\left( \cosh \left( z\right) \right) &=&\sinh \left( x\right) \sin
\left( y\right)
\end{eqnarray*}である。ただし、\begin{eqnarray*}
\sinh \left( x\right) &=&\frac{e^{x}-e^{-x}}{2} \\
\cosh \left( x\right) &=&\frac{e^{x}+e^{-x}}{2}
\end{eqnarray*}である。
複素双曲線余弦関数の規則性
双曲線余弦関数\(\cosh \left(x\right) :\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は以下の性質\begin{equation*}\forall x\in \mathbb{R} :\cosh \left( -x\right) =\cosh \left( x\right)
\end{equation*}を満たしますが、複素双曲線余弦関数\(\cosh\left( z\right) :\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)も同様の性質\begin{equation*}\forall z\in \mathbb{C} :\cosh \left( -z\right) =\cosh \left( z\right)
\end{equation*}を満たします。
\end{equation*}を満たす。
複素双曲線余弦関数の定義域と値域
複素双曲線余弦関数の定義域と値域は以下の通りです。
複素双曲線余弦関数の絶対値
複素双曲線余弦関数の絶対値は以下の通りです。
x\right) +\cos ^{2}\left( y\right) }
\end{equation*}を満たす。ただし、\begin{equation*}
\sinh \left( x\right) =\frac{e^{x}-e^{-x}}{2}
\end{equation*}である。
複素双曲線余弦関数の値がゼロであるための条件
複素双曲線余弦関数の値がゼロであるための条件は以下の通りです。
演習問題
\end{equation*}を特定してください。
\end{equation*}の解を求めてください。
プレミアム会員専用コンテンツです
【ログイン】【会員登録】