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複素関数

複素関数の定数倍の極限(定数倍の法則)

目次

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点において収束する複素関数の定数倍の極限

複素数\(c\in \mathbb{C} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、それぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{equation*}\left( cf\right) \left( z\right) =cf\left( z\right)
\end{equation*}を値として定める複素関数\begin{equation*}
cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \end{equation*}が定義可能です。

複素関数\(f\)の定義域\(Z\)の集積点\(a\in \mathbb{C} \)が与えられたとき、\(z\rightarrow a\)の場合に複素関数\(f\)が複素数へ収束するならば、複素関数\(cf\)もまた\(z\rightarrow a\)の場合に複素数へ収束するとともに、両者の極限の間には以下の関係\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow a}\left( cf\right) \left( z\right) =c\lim_{z\rightarrow
a}f\left( z\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

したがって、何らかの複素関数\(f\)の定数倍の形をしている複素関数\(cf\)の収束可能性を検討する際には、複素関数の極限の定義にさかのぼって考える前に、まずは\(c\)と\(f\)を分けた上で、\(f\)が収束することを確認すればよいということになります。

命題(点において収束する複素関数の定数倍の極限)
複素数\(c\in \mathbb{C} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義する。\(f\)の定義域\(Z\)の集積点\(a\in \mathbb{C} \)が与えられているものとする。\(z\rightarrow a\)の場合に複素関数\(f\)が複素数へ収束するならば、\(z\rightarrow a\)の場合に複素関数\(cf\)もまた複素数へ収束するとともに、\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow a}\left( cf\right) \left( z\right) =c\lim_{z\rightarrow
a}f\left( z\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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例(点において収束する複素関数の定数倍の極限)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =-z
\end{equation*}を定めるものとします。点\(a\in \mathbb{C} \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\lim_{z\rightarrow a}f\left( z\right) &=&\lim_{z\rightarrow a}\left(
-z\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&-\lim_{z\rightarrow a}z\quad \because \text{定数倍の法則} \\
&=&-a\quad \because \text{恒等関数の極限}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。

 

無限大において収束する複素関数の定数倍の極限

無限大における極限についても同様の主張が成り立ちます。具体的には以下の通りです。

複素数\(c\in \mathbb{C} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義します。

無限大における極限をとるために、複素関数\(f\)が無限大の近傍において定義されている状況を想定します。つまり、\begin{equation*}\exists a\in \mathbb{R} :\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \left\vert z\right\vert >a\right\} \subset Z
\end{equation*}が成り立つということです。\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素関数\(f\)が複素数へ収束するならば、複素関数\(cf\)もまた\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素数へ収束するとともに、両者の極限の間には以下の関係\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow \infty }\left( cf\right) \left( z\right)
=c\lim_{z\rightarrow \infty }f\left( z\right)
\end{equation*}が成り立ちます。

命題(無限大において収束する複素関数の定数倍の極限)
複素数\(c\in \mathbb{C} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義する。また、\(f\)は無限大の近傍において定義されているものとする。\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素関数\(f\)が複素数へ収束するならば、\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素関数\(cf\)もまた複素数へ収束するとともに、\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow \infty }\left( cf\right) \left( z\right)
=c\lim_{z\rightarrow \infty }f\left( z\right)
\end{equation*}が成り立つ。

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例(無限大において収束する複素関数の定数倍の極限)
複素関数\(f:\mathbb{C} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =-\frac{1}{z}
\end{equation*}を定めるものとします。複素関数\(z\)に関して、\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow 0}z=0\quad \because \text{恒等複素関数の極限}
\end{equation*}が成り立つため、複素関数\(\frac{1}{z}\)に関して、\begin{equation}\lim_{z\rightarrow \infty }\frac{1}{z}=0 \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}
\lim_{z\rightarrow \infty }f\left( z\right) &=&\lim_{z\rightarrow \infty
}\left( -\frac{1}{z}\right) \quad \because f\text{の定義}
\\
&=&-\lim_{z\rightarrow \infty }\frac{1}{z}\quad \because \text{定数倍の法則} \\
&=&-0\quad \because \left( 1\right) \\
&=&0
\end{eqnarray*}が成り立ちます。

 

点において発散する複素関数の定数倍の極限

発散する複素関数についても同様の主張が成り立ちます。具体的には以下の通りです。

非ゼロの複素数\(c\in \mathbb{C} \backslash \left\{ 0\right\} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義します。

複素関数\(f\)の定義域\(Z\)の集積点\(a\in \mathbb{C} \)が与えられたとき、\(z\rightarrow a\)の場合に複素関数\(f\)が無限大へ発散するならば、複素関数\(cf\)もまた\(z\rightarrow a\)の場合に無限大へ発散します。

命題(点において収束する複素関数の定数倍の極限)
複素数\(c\in \mathbb{C} \backslash \left\{ 0\right\} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義する。\(f\)の定義域\(Z\)の集積点\(a\in \mathbb{C} \)が与えられているものとする。このとき、\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow a}f\left( z\right) =\infty \Rightarrow \lim_{z\rightarrow
a}\left( cf\right) \left( z\right) =\infty
\end{equation*}が成り立つ。

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例(点において発散する複素関数の定数倍の極限)
複素関数\(f:\mathbb{C} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =-\frac{1}{z}
\end{equation*}を定めるものとします。複素関数\(z\)に関して、\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow 0}z=0\quad \because \text{恒等複素関数の極限}
\end{equation*}が成り立つため、複素関数\(\frac{1}{z}\)に関して、\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow 0}\frac{1}{z}=\infty
\end{equation*}が成り立ちます。すると先の命題より、\begin{equation*}
\lim_{z\rightarrow 0}\left( -\frac{1}{z}\right) =\infty
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\lim_{z\rightarrow 0}f\left( z\right) =\infty
\end{equation*}が成り立ちます。

 

無限大において発散する複素関数の定数倍の極限

無限大において発散する複素関数についても同様の主張が成り立ちます。具体的には以下の通りです。

非ゼロの複素数\(c\in \mathbb{C} \backslash \left\{ 0\right\} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義します。

無限大における極限をとるために、複素関数\(f\)が無限大の近傍において定義されている状況を想定します。つまり、\begin{equation*}\exists a\in \mathbb{R} :\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \left\vert z\right\vert >a\right\} \subset Z
\end{equation*}が成り立つということです。\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素関数\(f\)が無限大へ発散するならば、複素関数\(cf\)もまた\(z\rightarrow \infty \)の場合に無限大へ発散します。

命題(無限大において収束する複素関数の定数倍の極限)
複素数\(c\in \mathbb{C} \backslash \left\{ 0\right\} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義する。また、\(f\)は無限大の近傍において定義されているものとする。\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素関数\(f\)が無限大へ発散するならば、\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素関数\(cf\)もまた無限大へ発散する。
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例(無限大において発散する複素関数の定数倍の極限)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =-z
\end{equation*}を定めるものとします。複素関数\(z\)に関して、\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow \infty }z=\infty \quad \because \text{恒等複素関数の極限}
\end{equation*}が成り立つため、先の命題より、\begin{equation*}
\lim_{z\rightarrow \infty }\left( -z\right) =\infty
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\lim_{z\rightarrow \infty }f\left( z\right) =\infty
\end{equation*}が成り立ちます。

 

演習問題

問題(複素関数の定数倍の極限)
以下の極限\begin{equation*}
\lim_{z\rightarrow i}\left( 3+i\right) z
\end{equation*}を評価してください。

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問題(複素関数の定数倍の極限)
以下の極限\begin{equation*}
\lim_{z\rightarrow 1+\sqrt{3}i}\left( -z\right)
\end{equation*}を評価してください。

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問題(点において収束する複素関数の定数倍の極限)
複素数\(c\in \mathbb{C} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義します。\(f\)の定義域\(Z\)の集積点\(a\in \mathbb{C} \)が与えられているものとします。\(z\rightarrow a\)の場合に複素関数\(f\)が複素数へ収束するならば、\(z\rightarrow a\)の場合に複素関数\(cf\)もまた複素数へ収束するとともに、\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow a}\left( cf\right) \left( z\right) =c\lim_{z\rightarrow
a}f\left( z\right)
\end{equation*}が成り立ちます。本文中では以上の事実を複素数列を用いて証明しましたが、同様の主張を、イプシロン・デルタ論法を用いて証明してください。

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問題(無限大において収束する複素関数の定数倍の極限)
複素数\(c\in \mathbb{C} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義します。また、\(f\)は無限大の近傍において定義されているものとします。\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素関数\(f\)が複素数へ収束するならば、\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素関数\(cf\)もまた複素数へ収束するとともに、\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow \infty }\left( cf\right) \left( z\right)
=c\lim_{z\rightarrow \infty }f\left( z\right)
\end{equation*}が成り立ちます。本文中では以上の事実を複素関数\(f\left( \frac{1}{z}\right) \)を用いて証明しましたが、同様の主張を、イプシロン・デルタ論法を用いて証明してください。
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問題(点において収束する複素関数の定数倍の極限)
複素数\(c\in \mathbb{C} \backslash \left\{ 0\right\} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義します。\(f\)の定義域\(Z\)の集積点\(a\in \mathbb{C} \)が与えられているものとします。このとき、\begin{equation*}\lim_{z\rightarrow a}f\left( z\right) =\infty \Rightarrow \lim_{z\rightarrow
a}\left( cf\right) \left( z\right) =\infty
\end{equation*}が成り立ちます。本文中では以上の事実を複素関数\(\frac{1}{\left( cf\right) \left(z\right) }\)を用いて証明しましたが、同様の主張を、イプシロン・デルタ論法を用いて証明してください。
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問題(無限大において収束する複素関数の定数倍の極限)
複素数\(c\in \mathbb{C} \backslash \left\{ 0\right\} \)と複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられたとき、そこから複素関数\(cf:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)を定義します。また、\(f\)は無限大の近傍において定義されているものとします。\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素関数\(f\)が無限大へ発散するならば、\(z\rightarrow \infty \)の場合に複素関数\(cf\)もまた無限大へ発散します。本文中では以上の事実を複素関数\(\frac{1}{\left( cf\right) \left( \frac{1}{z}\right) }\)を用いて証明しましたが、同様の主張を、イプシロン・デルタ論法を用いて証明してください。
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