複素合成関数の連続性
2つの複素関数\begin{eqnarray*}
f &:&\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \\
g &:&\mathbb{C} \supset W\rightarrow \mathbb{C} \end{eqnarray*}が与えられた状況を想定します。ただし、\(f\)の値域が\(g\)の定義域の部分集合であるものとします。つまり、\begin{equation*}f\left( Z\right) \subset W
\end{equation*}が成り立つということです。この場合には複素合成関数\begin{equation*}
g\circ f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \end{equation*}が定義可能であり、これはそれぞれの複素数\(z\in Z\)に対して、以下の複素数\begin{equation*}\left( g\circ f\right) \left( z\right) =g\left( f\left( z\right) \right)
\end{equation*}を値として定めます。
複素関数\(f\)が定義域上の点\(a\in Z\)において連続であるものとします。合成複素関数の定義より\(f\left( a\right) \in W\)ですが、さらにもう一方の複素関数\(g\)がこの点\(f\left(a\right) \)において連続であるものとします。以上の条件が満たされる場合には、複素合成関数\(g\circ f\)もまた点\(a\)において連続になることが保証されます。
&&\left( b\right) \ g\text{は点}f\left( a\right) \text{において連続である}
\end{eqnarray*}が成り立つ場合には、\(g\circ f\)もまた点\(a\)において連続である。
&&\left( b\right) \ g\text{は}W\text{上で連続である}
\end{eqnarray*}が成り立つものとします。点\(a\in Z\)を任意に選んだとき、\(\left( a\right) \)より\(f\)は点\(a\)において連続であり、\(f\left( a\right) \in W\)および\(\left( b\right) \)より\(g\)は点\(f\left( a\right) \)において連続です。したがって先の命題より\(g\circ f\)は点\(a\)において連続です。\(Z\)上の任意の点\(a\)について同様であるため、以上の条件のもとでは\(g\circ f\)は\(Z\)上で連続です。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は複素多項式関数である\(2z-1\)と\(z^{3}\)の複素合成関数であることに注意してください。点\(a\in \mathbb{C} \)を任意に選んだとき、複素多項式関数の連続性より\(2z-1\)は点\(a\)において連続です。複素多項式関数の連続性より\(z^{3}\)は点\(2a-1\)において連続です。したがって先の命題より\(f\)は点\(a\)において連続です。\(\mathbb{C} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で連続です。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は複素多項式関数\(z^{2}+1\)と複素有理関数\(\frac{1}{z}\)の合成関数であることに注意してください。点\(a\in \mathbb{C} \backslash \left\{ \pm i\right\} \)を任意に選んだとき、複素多項式関数の連続性より\(z^{2}+1\)は点\(a\)において連続です。\(a\in \mathbb{C} \backslash \left\{ \pm i\right\} \)ゆえに\(a^{2}+1\not=0\)であるため、複素有理関数の連続性より\(\frac{1}{z}\)は点\(a^{2}+1\)において連続です。したがって先の命題より\(f\)は点\(a\)において連続です。\(\mathbb{C} \backslash \left\{ \pm i\right\} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{C} \backslash \left\{ \pm i\right\} \)上で連続です。
先の命題が要求する条件の吟味
複素合成関数\(g\circ f\)の連続性に関する先の命題では2つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ f\text{は点}a\text{において連続である} \\
&&\left( b\right) \ g\text{は点}f\left( a\right) \text{において連続である}
\end{eqnarray*}を要求していますが、\(g\circ f\)が点\(a\)において連続であることを保証する上でこれらの条件は必須なのでしょうか。
複素関数\(f\)が点\(a\)において連続ではない場合、複素合成関数\(g\circ f\)が点\(a\)において連続であることを保証できません。以下の例より明らかです。
\begin{array}{cc}
0 & \left( if\ z\not=0\right) \\
i & \left( if\ z=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定め、複素関数\(g:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}g\left( z\right) =z
\end{equation*}を定める場合、複素合成関数\(g\circ f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)が定義可能であり、これはそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( z\right) &=&g\left( f\left( z\right) \right)
\quad \because g\circ f\text{の定義} \\
&=&f\left( z\right) \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めます。つまり、複素合成関数\(g\circ f\)は複素関数\(f\)と一致します。点\(0\)に注目したとき、この複素合成関数\(g\circ f\)は先の命題が要求する条件を満たしません。実際、複素関数\(f\)に関しては、\begin{eqnarray*}\lim_{z\rightarrow 0}f\left( z\right) &=&\lim_{z\rightarrow 0}0\quad
\because f\text{の定義} \\
&=&0 \\
&\not=&i \\
&=&f\left( 0\right) \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\(f\)は点\(0\)において連続ではありません。その一方で、点\(f\left( 0\right) =i\)において、\begin{eqnarray*}\lim_{z\rightarrow i}g\left( z\right) &=&\lim_{z\rightarrow i}z\quad
\because g\text{の定義} \\
&=&i \\
&=&g\left( i\right) \quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\(g\)は点\(i\)において連続です。複素合成関数\(g\circ f\)は複素関数\(f\)と一致するため、\(g\circ f\)もまた点\(0\)において連続ではありません。
複素関数\(g\)が点\(f\left( a\right) \)において連続ではない場合、複素合成関数\(g\circ f\)が点\(a\)において連続であることを保証できません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定め、複素関数\(g:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}g\left( z\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & \left( if\ z\not=0\right) \\
i & \left( if\ z=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める場合、複素合成関数\(g\circ f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)が定義可能であり、これはそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( z\right) &=&g\left( f\left( z\right) \right)
\quad \because g\circ f\text{の定義} \\
&=&g\left( z\right) \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めます。つまり、複素合成関数\(g\circ f\)は複素関数\(g\)と一致します。点\(0\)に注目したとき、この複素合成関数\(g\circ f\)は先の命題が要求する条件を満たしません。実際、複素関数\(f\)に関しては、\begin{eqnarray*}\lim_{z\rightarrow 0}f\left( z\right) &=&\lim_{z\rightarrow 0}z\quad
\because f\text{の定義} \\
&=&0 \\
&=&f\left( 0\right) \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\(f\)は点\(0\)において連続である一方で、点\(f\left( 0\right) =0\)において、\begin{eqnarray*}\lim_{z\rightarrow 0}g\left( z\right) &=&\lim_{z\rightarrow 0}0\quad
\because g\text{の定義} \\
&=&0 \\
&\not=&i \\
&=&g\left( 0\right) \quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\(g\)は点\(0\)において連続ではないからです。複素合成関数\(g\circ f\)は複素関数\(g\)と一致するため、\(g\circ f\)もまた点\(0\)において連続ではありません。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。この複素関数\(f\)が連続であるような点をすべて特定してください。
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