点における解析関数
複素平面\(\mathbb{C} \)もしくはその部分集合\(Z\)を定義域とし、複素数を値としてとる複素関数\begin{equation*}f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \end{equation*}が与えられているものとします。\(f\)の定義域の内点\(a\in Z^{i}\)を任意に選びます。つまり、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0:N_{\varepsilon }\left( a\right) \subset Z
\end{equation*}が成り立つということです。ただし、\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)は中心が\(a\)であり半径が\(\varepsilon \)であるような近傍であり、\begin{equation*}N_{\varepsilon }\left( a\right) =\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \left\vert z-a\right\vert <\varepsilon \right\}
\end{equation*}です。\(f\)が点\(a\)において微分可能であることとは、以下の極限\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right)
-f\left( a\right) }{h}
\end{equation*}が複素数として定まることとして定義されます。
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が定義域の内点\(a\in Z^{i}\)において微分可能であるものとします。内点の定義より、点\(a\)を中心とする何らかの近傍が\(f\)の定義域\(Z\)の部分集合になります。つまり、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0:N_{\varepsilon }\left( a\right) \subset Z
\end{equation*}が成り立つということです。したがって、\(f\)が近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)上において微分可能であるか検討できます。その上で、\(f\)が点\(a\)を中心とする何らかの近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)上の任意の点において微分可能である場合には、すなわち、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0,\ \forall z\in N_{\varepsilon }\left( a\right)
:f^{\prime }\left( z\right) =\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( z+h\right)
-f\left( z\right) }{h}\in \mathbb{C} \end{equation*}が成り立つ場合には、\(f\)は点\(a\)において解析的である(analytic at a point \(a\))とか正則である(holomorphic)、解析関数(analytic function)である、正則関数(holomorphic function)であるなどと言います。
\end{equation*}を定めるものとします。点\(a\in \mathbb{C} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)において微分可能であり、そこでの微分係数は、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right)
-f\left( a\right) }{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{\left( a+h\right) -a}{h}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{h}{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0}1 \\
&=&1
\end{eqnarray*}となります。半径\(\varepsilon>0\)を任意に選んだ上で点\(a\)の近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)をとります。この近傍上の点\(b\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(b\)において微分可能であり、そこでの微分係数は、先と同様に、\begin{equation*}f^{\prime }\left( b\right) =1
\end{equation*}であることが導かれます。\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)上の任意の点\(b\)において同様であるため、\(f\)は\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)上で微分可能です。したがって、\(f\)は点\(a\)において解析的です。
\end{equation*}を定めるものとします。点\(a\in \mathbb{C} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)において微分可能であり、そこでの微分係数は、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right)
-f\left( a\right) }{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{\left( a+h\right) ^{2}-a^{2}}{h}\quad \because
f\text{の定義} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{a^{2}+2ah+h^{2}-a^{2}}{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0}\frac{2ah+h^{2}}{h} \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0}\left( 2a+h\right) \\
&=&2a
\end{eqnarray*}となります。半径\(\varepsilon>0\)を任意に選んだ上で点\(a\)の近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)をとります。この近傍上の点\(b\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(b\)において微分可能であり、そこでの微分係数は、先と同様に、\begin{equation*}f^{\prime }\left( b\right) =2b
\end{equation*}であることが導かれます。\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)上の任意の点\(b\)において同様であるため、\(f\)は\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)上で微分可能です。したがって、\(f\)は点\(a\)において解析的です。
解析関数は微分可能
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が点\(a\in Z\)において解析的であるものとします。つまり、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0,\ \forall z\in N_{\varepsilon }\left( a\right)
:f^{\prime }\left( z\right) =\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( z+h\right)
-f\left( z\right) }{h}\in \mathbb{C} \end{equation*}が成り立つということです。近傍は中心を含むため\(a\in N_{\varepsilon }\left(a\right) \)であり、したがってこのとき、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( a+h\right)
-f\left( a\right) }{h}\in \mathbb{C} \end{equation*}が成り立ちます。つまり、点\(a\)において解析的な関数は点\(a\)において微分可能であるということです。
微分可能な関数は解析関数であるとは限らない
先の命題の逆は成り立つとは限りません。つまり、点\(a\)において微分可能な複素関数\(f\)は点\(a\)において解析的であるとは限りません。言い換えると、\(f\)が点\(a\)において微分可能である場合、点\(a\)を中心とする近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)としてどのようなものを選んだ場合でも、\(N_{\varepsilon }\left(a\right) \)の中には\(f\)が微分可能ではない点が必ず存在する状況が起こり得るということです。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は点\(0\)において微分可能である一方で、\(a\not=0\)を満たす任意の点\(a\in \mathbb{C} \)において微分可能ではありません(演習問題)。したがって、点\(0\)の近傍\(N_{\varepsilon }\left( 0\right) \)を任意に選んだとき、\(N_{\varepsilon }\left( 0\right) \)の中には\(f\)が微分可能ではない点が必ず存在するため、\(f\)は点\(0\)において解析的ではありません。
特異点
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が点\(a\in \mathbb{C} \)において解析的ではない場合には、つまり、\begin{equation*}\forall \varepsilon >0,\ \exists z\in N_{\varepsilon }\left( a\right)
:f^{\prime }\left( z\right) =\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f\left( z+h\right)
-f\left( z\right) }{h}\not\in \mathbb{C} \end{equation*}が成り立つ場合には、このような点\(a\)を\(f\)の特異点(singular point)と呼びます。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は点\(0\)において定義されていないため点\(0\)において微分可能ではなく、したがって点\(0\)を中心とする近傍\(N_{\varepsilon }\left( 0\right) \)を任意に選んだとき、この近傍の中には\(f\)は微分可能ではない点\(0\)が必ず存在します。したがって\(f\)は点\(0\)において解析的ではなく、点\(0\)は\(f\)の特異点です。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、\(f\)は点\(0\)において微分可能である一方で、\(a\not=0\)を満たす任意の点\(a\in \mathbb{C} \)において微分可能ではありません。したがって、点\(0\)の近傍\(N_{\varepsilon }\left( 0\right) \)を任意に選んだとき、\(N_{\varepsilon }\left( 0\right) \)の中には\(f\)が微分可能ではない点が必ず存在するため、\(f\)は点\(0\)において解析的ではなく、点\(0\)は\(f\)の特異点です。
整関数
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)の定義域\(Z\)が複素平面\(\mathbb{C} \)上の開集合であるものとします。開集合の定義より、点\(a\in Z\)を任意に選んだとき、\(a\)は\(Z\)の内点であるため、\(f\)が点\(a\)において解析的であるか検討できます。その上で、\(f\)が\(Z\)上の任意の点において解析的である場合には、\(f\)は\(Z\)上で解析的である(analytic in \(Z\))と言います。
特に、複素平面上に定義された複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)が定義域である\(\mathbb{C} \)上で解析的である場合には、すなわち、\(f\)が\(\mathbb{C} \)上の任意の点において解析的である場合には、\(f\)を整関数(entire function)と呼びます。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、点\(a\in \mathbb{C} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)において解析的であるため、\(f\)は整関数です。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、点\(a\in \mathbb{C} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)において解析的であるため、\(f\)は整関数です。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は点\(0\)において微分可能である一方で、\(f\)は点\(0\)において解析的ではないことを示してください。
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