複素双曲線余弦関数の微分
複素双曲線余弦関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)が与えられているものとします。つまり、\(f\)がそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( z\right) =\cosh \left( z\right)
\end{equation*}であるということです。
点\(a\in \mathbb{C} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)において微分可能であるとともに、そこでの微分係数は、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\frac{e^{a}-e^{-a}}{2}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a\right) =\sinh \left( a\right)
\end{equation*}となります。
命題(複素双曲線余弦関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\cosh \left( z\right)
\end{equation*}を定めるものとする。点\(a\in \mathbb{C} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)において微分可能であるとともに、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\sinh \left( a\right)
\end{equation*}が成り立つ。したがって、\(f\)の導関数\(f^{\prime }:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( z\right) =\sinh \left( z\right)
\end{equation*}を定める。
\end{equation*}を定めるものとする。点\(a\in \mathbb{C} \)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)において微分可能であるとともに、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\sinh \left( a\right)
\end{equation*}が成り立つ。したがって、\(f\)の導関数\(f^{\prime }:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( z\right) =\sinh \left( z\right)
\end{equation*}を定める。
例(複素双曲線余弦関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\cosh \left( -z\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は複素多項式関数\(-z\)と複素双曲線余弦関数\(\cosh \left( z\right) \)の合成関数であることに注意してください。\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( z\right) &=&\frac{d}{dz}\cosh \left( -z\right) \quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dw}\cosh \left( w\right) \right\vert _{w=-z}\cdot \frac{d}{dz}\left( -z\right) \quad \because \text{複素合成関数の微分} \\
&=&\left. \sinh \left( w\right) \right\vert _{w=-z}\cdot \frac{d}{dz}\left(
-z\right) \quad \because \text{複素双曲線余弦関数の微分} \\
&=&\sinh \left( -z\right) \cdot \left( -1\right) \\
&=&-\sinh \left( -z\right)
\end{eqnarray*}を定めます。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は複素多項式関数\(-z\)と複素双曲線余弦関数\(\cosh \left( z\right) \)の合成関数であることに注意してください。\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( z\right) &=&\frac{d}{dz}\cosh \left( -z\right) \quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dw}\cosh \left( w\right) \right\vert _{w=-z}\cdot \frac{d}{dz}\left( -z\right) \quad \because \text{複素合成関数の微分} \\
&=&\left. \sinh \left( w\right) \right\vert _{w=-z}\cdot \frac{d}{dz}\left(
-z\right) \quad \because \text{複素双曲線余弦関数の微分} \\
&=&\sinh \left( -z\right) \cdot \left( -1\right) \\
&=&-\sinh \left( -z\right)
\end{eqnarray*}を定めます。
例(複素双曲線余弦関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\cosh \left( z^{2}+z+1\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は複素多項式関数\(z^{2}+z+1\)と複素双曲線余弦関数\(\cosh \left( z\right) \)の複素合成関数であることに注意してください。\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( z\right) &=&\frac{d}{dz}\cosh \left( z^{2}+z+1\right)
\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dw}\cosh \left( w\right) \right\vert _{w=z^{2}+z+1}\cdot
\frac{d}{dz}\left( z^{2}+z+1\right) \quad \because \text{複素合成関数の微分} \\
&=&\left. \sinh \left( w\right) \right\vert _{w=z^{2}+z+1}\cdot \left(
2z+1\right) \quad \because \text{複素双曲線余弦関数と複素多項式関数の微分} \\
&=&\left( 2z+1\right) \sinh \left( z^{2}+z+1\right)
\end{eqnarray*}を定めます。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は複素多項式関数\(z^{2}+z+1\)と複素双曲線余弦関数\(\cosh \left( z\right) \)の複素合成関数であることに注意してください。\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( z\right) &=&\frac{d}{dz}\cosh \left( z^{2}+z+1\right)
\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dw}\cosh \left( w\right) \right\vert _{w=z^{2}+z+1}\cdot
\frac{d}{dz}\left( z^{2}+z+1\right) \quad \because \text{複素合成関数の微分} \\
&=&\left. \sinh \left( w\right) \right\vert _{w=z^{2}+z+1}\cdot \left(
2z+1\right) \quad \because \text{複素双曲線余弦関数と複素多項式関数の微分} \\
&=&\left( 2z+1\right) \sinh \left( z^{2}+z+1\right)
\end{eqnarray*}を定めます。
複素双曲線余弦関数は整関数
複素双曲線余弦関数は整関数です。
命題(複素双曲線余弦関数は整関数)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\cosh \left( z\right)
\end{equation*}を定めるものとする。\(f\)は整関数である。
\end{equation*}を定めるものとする。\(f\)は整関数である。
例(整関数)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\cosh \left( -z\right)
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で微分可能であるため、\(f\)は整関数です。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で微分可能であるため、\(f\)は整関数です。
例(整関数)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\cosh \left( z^{2}+z+1\right)
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で微分可能であるため、\(f\)は整関数です。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で微分可能であるため、\(f\)は整関数です。
演習問題
問題(複素双曲線余弦関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\cosh \left( z-i\right)
\end{equation*}を定めるものとします。導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
\end{equation*}を定めるものとします。導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
問題(複素双曲線余弦関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \backslash \left\{ 1\right\} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \backslash \left\{ 1\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\cosh \left( \frac{1}{z-1}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
\end{equation*}を定めるものとします。導関数\(f^{\prime }\)を求めてください。
問題(コーシー・リーマンの方程式と複素双曲線余弦関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\cosh \left( z\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( z\right) =\sinh \left( z\right)
\end{equation*}を定めます。本文中では以上の事実を複素微分の定義にもとづいて証明しましたが、同様の主張をコーシー・リーマンの方程式を用いて証明してください。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は\(\mathbb{C} \)上で微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( z\right) =\sinh \left( z\right)
\end{equation*}を定めます。本文中では以上の事実を複素微分の定義にもとづいて証明しましたが、同様の主張をコーシー・リーマンの方程式を用いて証明してください。
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