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複素関数の微分

複素双曲線正接関数(複素tanh関数)の微分

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複素双曲線正接関数の微分

複素双曲線正接関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が与えられているものとします。つまり、\(f\)がそれぞれの\(z\in Z\)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( z\right) =\tanh \left( z\right)
\end{equation*}であるということです。ただし、\(f\)の定義域は、\begin{eqnarray*}Z &=&\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \cosh \left( z\right) \not=0\right\} \\
&=&\mathbb{C} \backslash \left\{ \frac{\pm \pi }{2},\frac{\pm 3\pi }{2},\frac{\pm 5\pi }{2},\cdots \right\}
\end{eqnarray*}です。

定義域上の点\(a\in Z\)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)において微分可能であるとともに、そこでの微分係数は、\begin{equation*}
f^{\prime }\left( a\right) =\frac{1}{\cosh ^{2}\left( a\right) }
\end{equation*}となります。

命題(複素双曲線正接関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\tanh \left( z\right)
\end{equation*}を定めるものとする。ただし、\begin{equation*}
Z=\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \cosh \left( z\right) \not=0\right\}
\end{equation*}である。点\(a\in Z\)を任意に選んだとき、\(f\)は点\(a\)において微分可能であるとともに、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) =\frac{1}{\cosh ^{2}\left( a\right) }
\end{equation*}が成り立つ。したがって、\(f\)の導関数\(f^{\prime }:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( z\right) =\frac{1}{\cosh ^{2}\left( z\right) }
\end{equation*}を定める。

証明

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例(複素双曲線正接関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\tanh \left( -z\right)
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\begin{equation*}
Z=\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \cosh \left( -z\right) \not=0\right\}
\end{equation*}です。\(f\)は複素多項式関数\(-z\)と複素双曲線正接関数\(\tanh \left( z\right) \)の合成関数であることに注意してください。\(f\)は\(Z\)上で微分可能であり、導関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( z\right) &=&\frac{d}{dz}\tanh \left( -z\right) \quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dw}\tanh \left( w\right) \right\vert _{w=-z}\cdot \frac{d}{dz}\left( -z\right) \quad \because \text{複素合成関数の微分} \\
&=&\left. \frac{1}{\cosh ^{2}\left( w\right) }\right\vert _{w=-z}\cdot
\left( -1\right) \\
&=&-\frac{1}{\cosh ^{2}\left( -z\right) }
\end{eqnarray*}を定めます。

例(複素双曲線正接関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\tanh \left( z^{2}+z+1\right)
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\begin{equation*}
Z=\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \cosh \left( z^{2}+z+1\right) \not=0\right\}
\end{equation*}です。\(f\)は複素多項式関数\(z^{2}+z+1\)と複素双曲線正接関数\(\tanh \left( z\right) \)の合成関数であることに注意してください。\(f\)は\(Z\)上で微分可能であり、導関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( z\right) &=&\frac{d}{dz}\tanh \left( z^{2}+z+1\right)
\quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left. \frac{d}{dw}\tanh \left( w\right) \right\vert _{w=z^{2}+z+1}\cdot
\frac{d}{dz}\left( z^{2}+z+1\right) \quad \because \text{複素合成関数の微分} \\
&=&\left. \frac{1}{\cosh ^{2}\left( w\right) }\right\vert
_{w=z^{2}+z+1}\cdot \left( 2z+1\right) \\
&=&\frac{2z+1}{\cosh ^{2}\left( z^{2}+z+1\right) }
\end{eqnarray*}を定めます。

 

複素双曲線正接関数は解析関数

複素双曲線正接関数は定義域上において解析関数です。

命題(複素双曲線正接関数は解析関数)
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\tanh \left( z\right)
\end{equation*}を定めるものとする。ただし、\begin{equation*}
Z=\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \cosh \left( z\right) \not=0\right\}
\end{equation*}である。\(f\)は\(Z\)上の解析関数である。
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例(解析関数)
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\tanh \left( -z\right)
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\begin{equation*}
Z=\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \cosh \left( -z\right) \not=0\right\}
\end{equation*}です。先に示したように\(f\)は\(Z\)上で微分可能です。しかも\(Z\)は\(\mathbb{C} \)上の開集合であるため、\(f\)は\(Z\)上の解析関数です。
例(解析関数)
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\tanh \left( z^{2}+z+1\right)
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\begin{equation*}
Z=\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \cosh \left( z^{2}+z+1\right) \not=0\right\}
\end{equation*}です。先に示したように\(f\)は\(Z\)上で微分可能です。しかも\(Z\)は\(\mathbb{C} \)上の開集合であるため、\(f\)は\(Z\)上の解析関数です。

 

演習問題

問題(複素双曲線正接関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in Z\)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\tanh \left( z-i\right)
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\begin{equation*}
Z=\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \cosh \left( z-i\right) \not=0\right\}
\end{equation*}です。\(f\)の導関数を求めてください。
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問題(複素双曲線正接関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \backslash \left\{ 1\right\} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \backslash \left\{ 1\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\tanh \left( \frac{1}{z-1}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\begin{equation*}
Z=\left\{ z\in \mathbb{C} \ |\ \cosh \left( \frac{1}{z-1}\right) \not=0\right\}
\end{equation*}です。\(f\)の導関数を求めてください。
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