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複素関数の微分

複素逆関数の微分(複素関数に関する逆関数定理)

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複素関数に関する逆関数定理

複素平面\(\mathbb{C} \)もしくはその部分集合\(Z\)を定義域とし、複素数を値としてとる複素関数\begin{equation*}f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \end{equation*}が与えられているものとします。つまり、\(f\)はそれぞれの複素数\(z\in Z\)に対して、複素数\begin{equation*}f\left( z\right) \in \mathbb{C} \end{equation*}を値として定めるということです。

複素関数\(f\)が単射である場合、\(f\)の終集合を値域\(f\left( Z\right) \)に制限して、\begin{equation*}f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow f\left( Z\right)
\end{equation*}とすれば全単射になるため、その複素逆関数\begin{equation*}
f^{-1}:f\left( Z\right) \rightarrow Z
\end{equation*}が存在することを保証できます。複素逆関数の定義より、点\(\left( z,w\right) \in Z\times f\left( Z\right) \)を任意に選んだとき、以下の関係\begin{equation*}w=f\left( z\right) \Leftrightarrow z=f^{-1}\left( w\right)
\end{equation*}が成り立つことに注意してください。では、複素逆関数\(f^{-1}\)はどのような条件のもとで微分可能であることが保証されるのでしょうか。また、複素逆関数\(f^{-1}\)が微分可能である場合、微分係数をどのように特定できるのでしょうか。順番に考えます。

複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が一定の条件を満たす場合、その定義域を適切な形で制限することにより、複素関数\(f\)の局所的な複素逆関数\(f^{-1}\)の存在を保証できるとともに、\(f^{-1}\)が微分可能であることも保証できます。

1つ目の条件は、複素関数\(f\)の定義域\(Z\)が複素平面\(\mathbb{C} \)上の開集合であるということです。

2つ目の条件は、複素関数\(f\)は定義域\(Z\)上において解析関数であるということです。以上の事実は、\(f\)が\(Z\)上の任意の点において微分可能であることと必要十分です。もしくは、\(f\)の実部\(u:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{R} \)と虚部\(v:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{R} \)が\(Z\)上において\(C^{1}\)級であるとともに、\(Z\)上においてコーシー・リーマンの方程式\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall \left( x,y\right) \in Z:\frac{\partial u\left(
x,y\right) }{\partial x}=\frac{\partial v\left( x,y\right) }{\partial y} \\
&&\left( b\right) \ \forall \left( x,y\right) \in Z:\frac{\partial u\left(
x,y\right) }{\partial y}=-\frac{\partial v\left( x,y\right) }{\partial x}
\end{eqnarray*}が成り立つということです。さらにこの場合、導関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z=x+yi\in Z\)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( z\right) =\frac{\partial u\left( x,y\right) }{\partial x}+i\frac{\partial v\left( x,y\right) }{\partial x}
\end{equation*}を定めます。

3つ目の条件は、定義域上の点\(a\in Z\)における\(f\)の微分係数が、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) \not=0
\end{equation*}を満たすということです。

以上の諸条件が満たされる場合には、以下の条件\begin{eqnarray*}
&&\left( A\right) \ a\in V\subset Z \\
&&\left( B\right) \ f\left( a\right) \in W \\
&&\left( C\right) \ f:V\rightarrow W\text{は全単射である} \\
&&\left( D\right) \ \text{複素逆関数}f^{-1}:W\rightarrow V\text{は}W\text{上の解析関数である}
\end{eqnarray*}を満たす開集合\(V,W\subset \mathbb{C} \)が存在することを保証できます。さらに、複素逆関数\(f^{-1}\)の導関数\(\frac{df^{-1}}{dw}:W\rightarrow V\)はそれぞれの\(w\in W\)に対して、\begin{equation*}\frac{df^{-1}\left( w\right) }{dw}=\frac{1}{\left. \dfrac{df\left( z\right)
}{dz}\right\vert _{z=f^{-1}\left( w\right) }}
\end{equation*}を定めます。証明ではベクトル変数のベクトル値関数に関する逆関数定理を利用します。

命題(複素関数に関する逆関数定理)
複素平面上の開集合\(Z\subset \mathbb{C} \)上に定義された複素関数\(f:\mathbb{C} \supset Z\rightarrow \mathbb{C} \)が\(Z\)上の解析関数であるものとする。さらに、点\(a\in Z\)において、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) \not=0
\end{equation*}が成り立つものとする。このとき、以下の諸条件\begin{eqnarray*}
&&\left( A\right) \ a\in V\subset Z \\
&&\left( B\right) \ f\left( a\right) \in W \\
&&\left( C\right) \ f:V\rightarrow W\text{は全単射である} \\
&&\left( D\right) \ \text{複素逆関数}f^{-1}:W\rightarrow V\text{は}W\text{上の解析関数である}
\end{eqnarray*}を満たす開集合\(V,W\subset \mathbb{C} \)が存在する。さらに、複素逆関数\(f^{-1}\)の導関数\(\frac{df^{-1}}{dw}:W\rightarrow V\)はそれぞれの\(w\in W\)に対して、\begin{equation*}\frac{df^{-1}\left( w\right) }{dw}=\frac{1}{\left. \dfrac{df\left( z\right)
}{dz}\right\vert _{z=f^{-1}\left( w\right) }}
\end{equation*}を定める。

証明

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例(複素逆関数の微分)
複素関数\(f:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f\left( z\right) =\frac{z}{i}+1
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は複素多項式関数であるため整関数であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{C} \rightarrow \mathbb{C} \)はそれぞれの\(z\in \mathbb{C} \)に対して、\begin{equation*}f^{\prime }\left( z\right) =\frac{1}{i}
\end{equation*}を定めます。点\(a\in \mathbb{C} \)を任意に選べば、\begin{equation*}f^{\prime }\left( a\right) \not=0
\end{equation*}を満たすため、先の命題より、\begin{eqnarray*}
&&\left( A\right) \ a\in V\subset \mathbb{C} \\
&&\left( B\right) \ f\left( a\right) \in W \\
&&\left( C\right) \ f:V\rightarrow W\text{は全単射である} \\
&&\left( D\right) \ \text{複素逆関数}f^{-1}:W\rightarrow V\text{は}W\text{上の解析関数である}
\end{eqnarray*}を満たす開集合\(V,W\subset \mathbb{C} \)が存在します。具体的には、\begin{equation*}w=f\left( z\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
w=\frac{z}{i}+1
\end{equation*}とおけば、\begin{equation*}
z=\left( w-1\right) i
\end{equation*}となるため、\begin{equation*}
f^{-1}\left( w\right) =\left( w-1\right) i
\end{equation*}であり、したがって、導関数\(\frac{df^{-1}}{dw}:W\rightarrow V\)はそれぞれの\(w\in W\)に対して、\begin{eqnarray*}\frac{df^{-1}\left( w\right) }{dw} &=&\frac{1}{\left. \dfrac{df\left(
z\right) }{dz}\right\vert _{z=f^{-1}\left( w\right) }} \\
&=&\frac{1}{\left. \dfrac{d}{dz}\left( \frac{z}{i}+1\right) \right\vert
_{z=\left( w-1\right) i}} \\
&=&\frac{1}{\left. \frac{1}{i}\right\vert _{z=\left( w-1\right) i}} \\
&=&\frac{1}{\frac{1}{i}} \\
&=&i
\end{eqnarray*}を定めます。

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