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複素級数

絶対収束複素級数と比較判定法

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絶対収束複素級数と比較判定法

複素級数\begin{equation*}
\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}=z_{1}+z_{2}+z_{3}+\cdots
\end{equation*}が絶対収束複素級数であることとは、この級数の絶対値級数\begin{equation*}
\sum_{n=1}^{+\infty }\left\vert z_{n}\right\vert =\left\vert
z_{1}\right\vert +\left\vert z_{2}\right\vert +\left\vert z_{3}\right\vert
+\cdots
\end{equation*}が実数へ収束することとして定義されます。絶対収束複素級数は複素数へ収束します。

以上を踏まえると、複素級数\(\sum z_{n}\)が複素数へ収束することを示す代わりに、実級数である絶対値級数\(\sum\left\vert z_{n}\right\vert \)が実数へ収束することを示してもよいということになります。さらに、絶対値級数\(\sum \left\vert z_{n}\right\vert \)が正項級数であるような実級数であるため、その収束可能性を判定する際に、正項級数を対象とした収束判定法を活用できます。

正項級数を対象とした収束判定の1つが比較判定法です。つまり、実数列\(\left\{ x_{n}\right\} ,\left\{y_{n}\right\} \)が以下の条件\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :0\leq x_{n}\leq y_{n}
\end{equation*}を満たす場合には、実級数\(\sum x_{n},\sum y_{n}\)について、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \sum_{n=1}^{+\infty }y_{n}\text{は収束する}\Rightarrow \sum_{n=1}^{+\infty }x_{n}\text{は収束する} \\
&&\left( b\right) \ \sum_{n=1}^{+\infty }x_{n}\text{は発散する}\Rightarrow \sum_{n=1}^{+\infty }y_{n}\text{は発散する}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。\(\left(a\right) \)に注目すると、実級数\(\sum x_{n}\)が収束することを示すためには、以下の条件\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :0\leq x_{n}\leq y_{n}
\end{equation*}を満たすとともに収束する実級数\(\sum y_{n}\)の具体例を提示すればよいということになります。

以上を踏まえると以下の命題が導かれます。

命題(絶対収束複素級数と比較判定法)
複素数列\(\left\{ z_{n}\right\} \)に対して、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall n\in \mathbb{N} :\left\vert z_{n}\right\vert \leq y_{n} \\
&&\left( b\right) \ \sum_{n=1}^{+\infty }y_{n}\text{は収束する}
\end{eqnarray*}を満たす実数列\(\left\{y_{n}\right\} \)が存在する場合には、複素級数\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}
\end{equation*}は絶対収束し、したがって収束する。

証明

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例(絶対収束複素級数と比較判定法)
以下の複素級数\begin{equation}
\sum_{n=1}^{+\infty }\frac{2\cos \left( n\theta \right) +2i\sin \left(
n\theta \right) }{n^{2}+3} \quad \cdots (1)
\end{equation}が与えられているものとします。任意の\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{eqnarray*}\left\vert \frac{2\cos \left( n\theta \right) +2i\sin \left( n\theta \right)
}{n^{2}+3}\right\vert &=&\frac{\left\vert 2\cos \left( n\theta \right)
+2i\sin \left( n\theta \right) \right\vert }{\left\vert n^{2}+3\right\vert }
\\
&=&\frac{2\left\vert \cos \left( n\theta \right) +i\sin \left( n\theta
\right) \right\vert }{n^{2}+3} \\
&=&\frac{2}{n^{2}+3} \\
&<&\frac{2}{n^{2}}
\end{eqnarray*}が成り立つため、以下の実級数\begin{equation}
\sum_{n=1}^{+\infty }\frac{2}{n^{2}} \quad \cdots (2)
\end{equation}に注目します。無限級数\(\sum \frac{1}{n^{2}}\)は\(p=2>1\)を満たすベキ級数であるため収束します。したがって定数倍の法則より\(\sum \frac{2}{n^{2}}\)すなわち\(\left( 2\right) \)は収束します。したがって、先の命題より\(\left( 1\right) \)は絶対収束し、ゆえに収束します。

 

演習問題

問題(比較判定法)
以下の複素級数\begin{equation*}
\sum_{n=0}^{+\infty }\frac{\cos \left( n\frac{\pi }{2}\right) +i\sin \left( n\frac{\pi }{2}\right) }{3^{n}}
\end{equation*}は絶対収束するでしょうか。判定してください。

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問題(比較判定法)
以下の複素級数\begin{equation*}
\sum_{n=1}^{+\infty }\frac{\left( \frac{3}{5}+\frac{4}{5}i\right) ^{n}}{n^{2}+in}
\end{equation*}は絶対収束するでしょうか。判定してください。

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