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複素級数

複素級数の共役の収束可能性

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収束する複素級数の共役の和

複素数列\(\left\{ z_{n}\right\} \)が与えられたとき、その一般項\(z_{n}\)の共役複素数\begin{equation*}\overline{z_{n}}
\end{equation*}を一般項とする新たな複素数列\(\left\{ \overline{z_{n}}\right\} \)が定義可能です。

複素数列\(\left\{ z_{n}\right\} \)の項の無限級数\(\sum z_{n}\)が複素数へ収束する場合には複素数列\(\left\{ \overline{z_{n}}\right\} \)の項の無限級数\(\sum \overline{z_{n}}\)もまた複素数へ収束し、両者の和の間には以下の関係\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{z_{n}}=\overline{\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}}
\end{equation*}が成り立ちます。

つまり、収束する無限級数\(\sum z_{n}\)の共役複素数の形をしている無限級数\(\sum \overline{z_{n}}\)が与えられたとき、\(\sum \overline{z_{n}}\)もまた収束することが保証されるとともに、\(\sum z_{n}\)の和の共役複素数をとれば\(\sum \overline{z_{n}}\)の和が得られます。したがって、何らかの無限級数\(\sum z_{n}\)の共役複素数の形をしている無限級数\(\sum \overline{z_{n}}\)の収束可能性を検討する際には、複素級数の和の定義にさかのぼって考える前に、\(\sum z_{n}\)が収束することを確認すればよいということになります。

命題(収束する複素級数の共役の和)
複素数列\(\left\{ z_{n}\right\} \)が与えられたとき、そこから複素数列\(\left\{ \overline{z_{n}}\right\} \)を定義する。無限級数\(\sum z_{n}\)が収束するならば無限級数\(\sum \overline{z_{n}}\)もまた収束し、それらの和の間には以下の関係\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{z_{n}}=\overline{\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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例(収束する複素級数の共役の和)
複素数列\(\left\{ z_{n}\right\} \)から複素数列\(\left\{ \overline{z_{n}}\right\} \)を定義します。無限級数\(\sum z_{n}\)が収束する場合には、その和は、\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}=\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Re}\left( z_{n}\right)
+i\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Im}\left( z_{n}\right)
\end{equation*}となります。さらに先の命題より、この場合には無限級数\(\sum \overline{z_{n}}\)もまた収束するとともに、\begin{eqnarray*}\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{z_{n}} &=&\overline{\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}} \\
&=&\overline{\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Re}\left( z_{n}\right)
+i\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Im}\left( z_{n}\right) } \\
&=&\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Re}\left( z_{n}\right) -i\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Im}\left( z_{n}\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。

例(収束する複素級数の共役の和)
複素数列\(\left\{ z_{n}\right\} \)から複素数列\(\left\{ \overline{z_{n}}\right\} \)を定義します。複素数列\(\left\{ z_{n}\right\} \)が実数列であるとともに無限級数\(\sum z_{n}\)が収束する場合には、その和は、\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}=\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Re}\left( z_{n}\right)
\end{equation*}となります。さらに先の命題より、この場合には無限級数\(\sum \overline{z_{n}}\)もまた収束するとともに、\begin{eqnarray*}\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{z_{n}} &=&\overline{\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}} \\
&=&\overline{\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Re}\left( z_{n}\right) } \\
&=&\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Re}\left( z_{n}\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。

例(収束する複素級数の共役の和)
複素数列\(\left\{ z_{n}\right\} \)から複素数列\(\left\{ \overline{z_{n}}\right\} \)を定義します。複素数列\(\left\{ z_{n}\right\} \)が純虚数列であるとともに無限級数\(\sum z_{n}\)が収束する場合には、その和は、\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}=i\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Im}\left(
z_{n}\right)
\end{equation*}となります。さらに先の命題より、この場合には無限級数\(\sum \overline{z_{n}}\)もまた収束するとともに、\begin{eqnarray*}\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{z_{n}} &=&\overline{\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}} \\
&=&\overline{i\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Im}\left( z_{n}\right) } \\
&=&-i\sum_{n=1}^{+\infty }\mathrm{Im}\left( z_{n}\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。

 

共役複素数を用いた複素級数の収束可能性の特徴づけ

複素級数\(\sum z_{n}\)が収束する場合には複素級数\(\sum \overline{z_{n}}\)もまた収束することが明らかになりました。逆に、複素級数\(\sum \overline{z_{n}}\)が収束する場合、共役の共役はもとの複素数と一致することから、\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{\left( \overline{z_{n}}\right) }=\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}
\end{equation*}を得るため、\(\sum z_{n}\)と一致する\(\sum \overline{\left( \overline{z_{n}}\right) }\)は収束します。以上より、\(\sum z_{n}\)が収束することと\(\sum \overline{z_{n}}\)が収束することは必要十分であることが明らかになりました。

命題(共役複素数を用いた複素級数の収束可能性の特徴づけ)
複素数列\(\left\{ z_{n}\right\} \)が与えられたとき、そこから複素数列\(\left\{ \overline{z_{n}}\right\} \)を定義する。無限級数\(\sum z_{n}\)が収束することと無限級数\(\sum \overline{z_{n}}\)が収束することは必要十分であるとともに、それらの和の間には以下の関係\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{z_{n}}=\overline{\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}}
\end{equation*}が成り立つ。

複素級数\(\sum z_{n}\)が収束することと複素級数\(\sum \overline{z_{n}}\)が収束することは必要十分であることが明らかになりました。したがって、複素級数\(\sum z_{n}\)が収束しないことと複素級数\(\sum \overline{z_{n}}\)が収束しないことは必要十分です。

 

演習問題

問題(複素級数の共役の和)
複素級数\(\sum z_{n}\)が収束するとともに、その和が実数である場合には、複素級数\(\sum \overline{z_{n}}\)もまた収束するとともに、\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }z_{n}=\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{z_{n}}
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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問題(複素級数の定数倍の共役の和)
複素級数\(\sum z_{n}\)と複素数\(c\in \mathbb{C} \)が与えられたとき、\(\sum z_{n}\)が収束する場合には\(\sum \overline{cz_{n}}\)も収束するとともに、\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{cz_{n}}=\overline{c}\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{z_{n}}
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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問題(複素級数の定数倍の共役の和)
複素級数\(\sum z_{n},\sum w_{n}\)がともに収束する場合には\(\sum \overline{z_{n}+w_{n}}\)も収束するとともに、\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{z_{n}+w_{n}}=\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{z_{n}}+\sum_{n=1}^{+\infty }\overline{w_{n}}
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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