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凸関数・凹関数

凸関数や凹関数であるような拡大実数値関数

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凸関数であるような拡大実数値関数

正の無限大\(+\infty \)を値としてとる拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)に関しては、それが凸関数であることを、\begin{equation*}\forall x_{1},x_{2}\in X,\ \forall \lambda \in \left( 0,1\right) :\lambda
f\left( x_{1}\right) +\left( 1-\lambda \right) f\left( x_{2}\right) \geq
f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right)
\end{equation*}が成り立つこととして定義します。

例(凸関数であるような拡大実数値関数)
拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
x & \left( if\ x\in \left( 0,1\right) \right) \\
+\infty & \left( if\ x\in \left\{ 0,1\right\} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。点\(x_{1},x_{2}\in \left[ 0,1\right] \)を任意に選びます。\(x_{1},x_{2}\in\left( 0,1\right) \)である場合には、任意の\(\lambda \in \left( 0,1\right) \)に対して、\begin{equation}\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\in \left( 0,1\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}となるため、\begin{eqnarray*}
\lambda f\left( x_{1}\right) +\left( 1-\lambda \right) f\left( x_{2}\right)
&=&\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\quad \because x_{1},x_{2}\in
\left( 0,1\right) \\
&\geq &f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \quad
\because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。それ以外の場合には、すなわち、\(x_{1}\)と\(x_{2}\)の少なくとも一方が\(0\)または\(1\)である場合には、\begin{eqnarray*}\lambda f\left( x_{1}\right) +\left( 1-\lambda \right) f\left( x_{2}\right)
&=&+\infty \quad \because \\
&\geq &f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。したがって\(f\)が凸関数であることが示されました。

定義域が\(\mathbb{R} ^{n}\)であるような拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)に関しては、その有効領域(effective domain)を、\begin{equation*}\mathrm{dom}\left( f\right) =\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ f\left( x\right) <+\infty \right\}
\end{equation*}と定義します。\(f\)が凸関数である場合、その有効領域が凸集合であることが保証されます。

命題(凸な拡大実数値関数の有効領域は凸集合)
拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)が凸関数であるならば、その有効領域\(\mathrm{dom}\left( f\right) \)は凸集合である。
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例(凸な拡大実数値関数の有効領域は凸集合)
拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
x & \left( if\ x\in \left( 0,1\right) \right) \\
+\infty & \left( if\ x\in \left\{ 0,1\right\} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この\(f\)は凸関数です。\(f\)の有効領域は、\begin{equation*}\mathrm{dom}\left( f\right) =\left( 0,1\right)
\end{equation*}ですが、これは凸集合です。

拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)の有効領域\(\mathrm{dom}\left( f\right) \)は凸集合であるため、\(f\)の定義域を\(\mathbb{R} ^{n}\)から\(\mathrm{dom}\left( f\right) \)に制限して得られる関数\(f:\mathrm{dom}\left( f\right) \rightarrow \mathbb{R} \)が凸であることを検討できます。この関数が凸関数であることは、もとの拡大実数値関数が凸関数であるための必要十分条件です。

命題(拡大実数値関数が凸関数であるための必要十分条件)
拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)に対して、\begin{equation*}\forall x_{1},x_{2}\in \mathrm{dom}\left( f\right) ,\ \forall \lambda \in
\left( 0,1\right) :\lambda f\left( x_{1}\right) +\left( 1-\lambda \right)
f\left( x_{2}\right) \geq f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right)
x_{2}\right)
\end{equation*}が成り立つことは、\(f\)が凸関数であるための必要十分条件である。
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例(凸関数の定義域の拡大)
拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
f\left( x\right) & \left( if\quad x\in X\right) \\
+\infty & \left( if\quad x\not\in X\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)が定義可能です。\(f\)の有効領域は、\begin{equation*}\mathrm{dom}\left( f\right) =X
\end{equation*}を満たすため、上の命題より、\(f\)が凸関数であるならば\(g\)もまた凸関数です。この例は、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合上に定義された凸関数から\(\mathbb{R} ^{n}\)上に定義された凸関数を常に生成できることを意味します。

 

凹関数であるような拡大実数値関数

負の無限大\(-\infty \)を値としてとる拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ -\infty \right\} \)に関しては、それが凹関数であることを、\begin{equation*}\forall x_{1},x_{2}\in X,\ \forall \lambda \in \left( 0,1\right) :\lambda
f\left( x_{1}\right) +\left( 1-\lambda \right) f\left( x_{2}\right) \leq
f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right)
\end{equation*}が成り立つこととして定義します。

例(凹関数であるような拡大実数値関数)
拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
x & \left( if\ x\in \left( 0,1\right) \right) \\
-\infty & \left( if\ x\in \left\{ 0,1\right\} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。点\(x_{1},x_{2}\in \left[ 0,1\right] \)を任意に選びます。\(x_{1},x_{2}\in\left( 0,1\right) \)である場合には、任意の\(\lambda \in \left( 0,1\right) \)に対して、\begin{equation}\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\in \left( 0,1\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}となるため、\begin{eqnarray*}
\lambda f\left( x_{1}\right) +\left( 1-\lambda \right) f\left( x_{2}\right)
&=&\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\quad \because x_{1},x_{2}\in
\left( 0,1\right) \\
&\leq &f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \quad
\because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。それ以外の場合には、すなわち、\(x_{1}\)と\(x_{2}\)の少なくとも一方が\(0\)または\(1\)である場合には、\begin{eqnarray*}\lambda f\left( x_{1}\right) +\left( 1-\lambda \right) f\left( x_{2}\right)
&=&-\infty \quad \because \\
&\leq &f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。したがって\(f\)が凹関数であることが示されました。

定義域が\(\mathbb{R} ^{n}\)であるような拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ -\infty \right\} \)に関しては、その有効領域(effective domain)を、\begin{equation*}\mathrm{dom}\left( f\right) =\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ -\infty <f\left( x\right) \right\}
\end{equation*}と定義します。\(f\)が凹関数である場合、その有効領域が凸集合であることが保証されます。

命題(凹な拡大実数値関数の有効領域は凸集合)
拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ -\infty \right\} \)が凹関数であるならば、その有効領域\(\mathrm{dom}\left( f\right) \)は凸集合である。
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例(凹な拡大実数値関数の有効領域は凸集合)
拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ -\infty \right\} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
x & \left( if\ x\in \left( 0,1\right) \right) \\
-\infty & \left( if\ x\in \left\{ 0,1\right\} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この\(f\)は凹関数です。\(f\)の有効領域は、\begin{equation*}\mathrm{dom}\left( f\right) =\left( 0,1\right)
\end{equation*}ですが、これは凸集合です。

拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)の有効領域\(\mathrm{dom}\left( f\right) \)は凸集合であるため、\(f\)の定義域を\(\mathbb{R} ^{n}\)から\(\mathrm{dom}\left( f\right) \)に制限して得られる関数\(f:\mathrm{dom}\left( f\right) \rightarrow \mathbb{R} \)が凹であることを検討できます。この関数が凹関数であることは、もとの拡大実数値関数が凹関数であるための必要十分条件です。

命題(拡大実数値関数が凹関数であるための必要十分条件)
拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ -\infty \right\} \)に対して、\begin{equation*}\forall x_{1},x_{2}\in \mathrm{dom}\left( f\right) ,\ \forall \lambda \in
\left( 0,1\right) :\lambda f\left( x_{1}\right) +\left( 1-\lambda \right)
f\left( x_{2}\right) \leq f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right)
x_{2}\right)
\end{equation*}が成り立つことは、\(f\)が凹関数であるための必要十分条件である。
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例(凹関数の定義域の拡大)
拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ -\infty \right\} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
f\left( x\right) & \left( if\quad x\in X\right) \\
-\infty & \left( if\quad x\not\in X\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ -\infty \right\} \)が定義可能です。\(f\)の有効領域は、\begin{equation*}\mathrm{dom}\left( f\right) =X
\end{equation*}を満たすため、上の命題より、\(f\)が凹関数であるならば\(g\)もまた凹関数です。この例は、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合上に定義された凹関数から\(\mathbb{R} ^{n}\)上に定義された凹関数を常に生成できることを意味します。

次回は狭義凸関数および狭義凹関数について解説します。

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