対応による集合の上逆像や下逆像はともに、写像による集合の逆像を一般化した概念です。しかし、対応について議論している際には上逆像と下逆像を異なる概念として区別する必要があります。そこで今回は両者の違いや両者の関係について掘り下げた議論を行います。

対応による集合の下逆像 対応による集合の弱逆像

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2019年6月9日:公開

上逆像は下逆像の部分集合

復習になりますが、対応\(f:X\twoheadrightarrow Y\)による集合\(B\subset Y\)の上逆像は、\begin{equation*}
f^{+}\left( B\right) =\left\{ x\in X\ |\ f\left( x\right) \subset B\right\}
\end{equation*}と定義される一方、集合\(B\)の下逆像は、\begin{equation*}
f^{-}\left( B\right) =\left\{ x\in X\ |\ f\left( x\right) \cap B\not=\phi \right\}
\end{equation*}と定義されます。これらの概念は写像による集合の逆像を一般化した概念であることはすでに指摘した通りです。つまり、写像\(f:X\rightarrow Y\)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して\(f\left( x\right) \)を要素として持つ集合\(g\left( x\right) =\left\{ f\left( x\right) \right\} \)を像として定める対応\(g:X\twoheadrightarrow Y\)を定義すると、任意の\(B\subset Y\)について、\begin{equation*}
g^{+}\left( B\right) =g^{-}\left( B\right) =f^{-1}\left( B\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。とは言え、対応について議論している際には上逆像と下逆像を異なる概念として区別する必要があります。そこで以下では両者の違いや両者の関係について掘り下げた議論を行います。

上逆像について復習する 下逆像について復習する

まず、上逆像\(f^{+}\left( B\right) \)を特徴づける条件である\(f\left( x\right) \subset B\)は、下逆像\(f^{-}\left( B\right) \)を特徴づける条件である\(f\left( x\right) \cap B\not=\phi \)を含意する一方で、その逆は成立するとは限りません。したがって、上逆像は下逆像よりも広い概念であると言えます。

命題(上逆像は下逆像の部分集合)
対応\(f:X\twoheadrightarrow Y\)と任意の集合\(B\subset Y\)に対して、\begin{equation*}
f^{+}\left( B\right) \subset f^{-}\left( B\right)
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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上逆像と下逆像の関係

次の命題は上逆像と下逆像の関係を描写しています。やや複雑ですが何かと有用な命題です。

命題(上逆像と下逆像の関係)
対応\(f:X\twoheadrightarrow Y\)と任意の集合\(B\subset Y\)に対して、\begin{eqnarray*}
\left( a\right) \ f^{+}\left( B\right) &=&X\backslash f^{-}\left( Y\backslash B\right) =\left( f^{-}\left( B^{c}\right) \right) ^{c} \\
\left( b\right) \ f^{-}\left( B\right) &=&X\backslash f^{+}\left( Y\backslash B\right) =\left( f^{+}\left( B^{c}\right) \right) ^{c}
\end{eqnarray*}という関係が成り立つ。
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共通部分の上逆像・下逆像

部分集合族の共通部分の上逆像ないし下逆像に関しては、以下のような綺麗な関係が成り立ちます。

命題(共通部分の逆像)

対応\(f:X\twoheadrightarrow Y\)と\(Y\)の部分集合族\(\{B_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)に対して、\begin{eqnarray*}
\left( a\right) \ f^{+}\left( \bigcap\limits_{\lambda \in \Lambda }B_{\lambda }\right) &=&\bigcap\limits_{\lambda \in \Lambda }f^{+}\left( B_{\lambda }\right) \\
\left( b\right) \ f^{-}\left( \bigcap\limits_{\lambda \in \Lambda }B_{\lambda }\right) &=&\bigcap\limits_{\lambda \in \Lambda }f^{-}\left( B_{\lambda }\right)
\end{eqnarray*}が成り立つ。

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性質\(\left( a\right) \)は共通部分の上逆像は上逆像の共通部分と一致することを、性質\(\left( b\right) \)は共通部分の下逆像は下逆像の共通部分と一致することをそれぞれ意味します。

 

和集合の上逆像・下逆像

部分集合族の和集合の上逆像ないし下逆像に関しても同様の関係が成立します。

命題(和集合の逆像)
対応\(f:X\twoheadrightarrow Y\)と\(Y\)の部分集合族\(\{B_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)に対して、\begin{eqnarray*}
\left( a\right) \ f^{+}\left( \bigcup\limits_{\lambda \in \Lambda }B_{\lambda }\right) &=&\bigcup\limits_{\lambda \in \Lambda }f^{+}\left( B_{\lambda }\right) \\
\left( b\right) \ f^{-}\left( \bigcup\limits_{\lambda \in \Lambda }B_{\lambda }\right) &=&\bigcup\limits_{\lambda \in \Lambda }f^{-}\left( B_{\lambda }\right)
\end{eqnarray*}が成り立つ。
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性質\(\left( a\right) \)は和集合の上逆像は上逆像の和集合と一致することを、性質\(\left( b\right) \)は和集合の下逆像は下逆像の和集合と一致することをそれぞれ意味します。

次回から逆対応について学びます。
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