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1変数のベクトル値関数

点列を用いたベクトル値関数の片側連続性の判定

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ベクトル値関数の右側連続性と点列の極限の関係

実数空間\(\mathbb{R} \)もしくはその部分集合\(X\)を定義域とし、ベクトルを値としてとるベクトル値関数\begin{equation*}\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}
\end{equation*}が与えられているものとします。このようなベクトル値関数が定義域上の点\(a\in X\)において右側連続であることをイプシロン・デルタ論法を用いて表現すると、\begin{equation*}\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall x\in X:\left( 0\leq
x-a<\delta \Rightarrow d\left( \boldsymbol{f}\left( x\right) ,\boldsymbol{f}\left( a\right) \right) <\varepsilon \right)
\end{equation*}となります。ただし、\(d:\mathbb{R} ^{m}\times \mathbb{R} ^{m}\rightarrow \mathbb{R} \)はユークリッド距離です。ただ、以上の定義にもとづいてベクトル値関数が右側連続であることを証明するのは面倒です。ベクトル値関数の右側連続性は点列を用いて表現することもでき、そちらの定義を利用したほうがベクトル値関数が右側連続であることを容易に示すことができる場合もあります。順番に解説します。

ベクトル値\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義域上の点\(a\in X\)において右側連続であるものとします。このとき、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :\left( x_{v}\in X\wedge x_{v}\geq a\right) \\
&&\left( b\right) \ \lim_{v\rightarrow +\infty }x_{v}=a
\end{eqnarray*}をともに満たす数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選びます。つまり、\(a\)以上の\(X\)上の点を項とするとともに\(a\)へ収束する数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選ぶということです。

この数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の任意の項\(x_{v}\)は\(\boldsymbol{f}\)の定義域\(X\)の要素であるため、それに対して\(\boldsymbol{f}\)は像\(\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \)を定めます。\(\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \)は\(\mathbb{R} ^{m}\)上の点であるため、これを項とする新たな点列\begin{equation*}\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\}
\end{equation*}を構成できます。\(\boldsymbol{f}\)は点\(a\)において定義されているため\(\boldsymbol{f}\left( a\right) \)は\(\mathbb{R} ^{m}\)上の点ですが、先の点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)は\(\boldsymbol{f}\left( a\right) \)へ収束することが保証されます。

命題(ベクトル値関数の右側連続性と収束数列)
ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義域上の点\(a\in X\)において右側連続であるものとする。\(a\)以上の\(X\)の点を項とするとともに\(a\)へ収束する数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、そこから新たな点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left(x_{v}\right) \right\} \)をつくる。このように定義された任意の点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left(x_{v}\right) \right\} \)について、\begin{equation*}\lim\limits_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) =\boldsymbol{f}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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先の命題の逆もまた成立します。つまり、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられたとき、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :\left( x_{v}\in X\wedge x_{v}\geq a\right) \\
&&\left( b\right) \ \lim_{v\rightarrow +\infty }x_{v}=a
\end{eqnarray*}をともに満たす数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、さらにそこから点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right)\right\} \)を定義します。このようにして得られた任意の点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)が\(\boldsymbol{f}\left( a\right) \)へ収束する場合には、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}\)は点\(a\)において右側連続であることが保証されます。

命題(ベクトル値関数の右側連続性と収束数列)
ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられているものとする。\(a\)以上の\(X\)の点を項とするとともに\(a\)へ収束する数列\(\left\{x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、そこから新たな点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)をつくる。このように定義された任意の点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)について、\begin{equation*}\lim\limits_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) =\boldsymbol{f}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つならば、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}\)は点\(a\)において右側連続である。
証明

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以上の2つの命題により、ベクトル値関数の右側連続性という概念は点列の収束概念を用いて以下のように特徴づけられることが明らかになりました。

命題(点列を用いた右側連続ベクトル値関数の定義)
ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられているものとする。\(a\)以上の\(X\)の点を項とするとともに\(a\)へ収束する数列\(\left\{x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、そこから新たな点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)をつくる。このように定義された任意の点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)について、\begin{equation*}\lim\limits_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) =\boldsymbol{f}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つことは、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}\)が点\(a\)において右側連続であるための必要十分条件である。

この命題が要求していることは、\(a\)以上の\(X\)の点を項とするとともに\(a\)へ収束する「任意の」数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)に対して、そこから構成される点列\(\{\boldsymbol{f}\left(x_{v}\right) \}\)が\(\boldsymbol{f}\left( a\right) \)へ収束しなければならないということです。したがって、このような性質を満たす数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)が「存在する」ことを示しただけでは、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}\)が点\(a\)において右側連続であることを示したことにはなりません。

 

ベクトル値関数の左側連続性と点列の極限の関係

左側連続性についても同様の議論が成り立ちます。具体的には以下の通りです。

実数空間\(\mathbb{R} \)もしくはその部分集合\(X\)を定義域とし、ベクトルを値としてとるベクトル値関数\begin{equation*}\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}
\end{equation*}が与えられているものとします。このようなベクトル値関数が定義域上の点\(a\in X\)において左側連続であることをイプシロン・デルタ論法を用いて表現すると、\begin{equation*}\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall x\in X:\left( -\delta
<x-a\leq 0\Rightarrow d\left( \boldsymbol{f}\left( x\right) ,\boldsymbol{f}\left( a\right) \right) <\varepsilon \right)
\end{equation*}となります。ただし、\(d:\mathbb{R} ^{m}\times \mathbb{R} ^{m}\rightarrow \mathbb{R} \)はユークリッド距離です。ただ、以上の定義にもとづいてベクトル値関数が左側連続であることを証明するのは面倒です。ベクトル値関数の左側連続性は点列を用いて表現することもでき、そちらの定義を利用したほうがベクトル値関数が左側連続であることを容易に示すことができる場合もあります。順番に解説します。

ベクトル値\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義域上の点\(a\in X\)において左側連続であるものとします。このとき、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :\left( x_{v}\in X\wedge x_{v}\leq a\right) \\
&&\left( b\right) \ \lim_{v\rightarrow +\infty }x_{v}=a
\end{eqnarray*}をともに満たす数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選びます。つまり、\(a\)以下の\(X\)上の点を項とするとともに\(a\)へ収束する数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選ぶということです。

この数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の任意の項\(x_{v}\)は\(\boldsymbol{f}\)の定義域\(X\)の要素であるため、それに対して\(\boldsymbol{f}\)は像\(\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \)を定めます。\(\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \)は\(\mathbb{R} ^{m}\)上の点であるため、これを項とする新たな点列\begin{equation*}\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\}
\end{equation*}を構成できます。\(\boldsymbol{f}\)は点\(a\)において定義されているため\(\boldsymbol{f}\left( a\right) \)は\(\mathbb{R} ^{m}\)上の点ですが、先の点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)は\(\boldsymbol{f}\left( a\right) \)へ収束することが保証されます。

命題(ベクトル値関数の左側連続性と収束数列)
ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義域上の点\(a\in X\)において左側連続であるものとする。\(a\)以上の\(X\)の点を項とするとともに\(a\)へ収束する数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、そこから新たな点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left(x_{v}\right) \right\} \)をつくる。このように定義された任意の点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left(x_{v}\right) \right\} \)について、\begin{equation*}\lim\limits_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) =\boldsymbol{f}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つ。

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先の命題の逆もまた成立します。つまり、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられたとき、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :\left( x_{v}\in X\wedge x_{v}\leq a\right) \\
&&\left( b\right) \ \lim_{v\rightarrow +\infty }x_{v}=a
\end{eqnarray*}をともに満たす数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、さらにそこから点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right)\right\} \)を定義します。このようにして得られた任意の点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)が\(\boldsymbol{f}\left( a\right) \)へ収束する場合には、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}\)は点\(a\)において左側連続であることが保証されます。

命題(ベクトル値関数の左側連続性と収束数列)
ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられているものとする。\(a\)以下の\(X\)の点を項とするとともに\(a\)へ収束する数列\(\left\{x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、そこから新たな点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)をつくる。このように定義された任意の点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)について、\begin{equation*}\lim\limits_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) =\boldsymbol{f}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つならば、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}\)は点\(a\)において左側連続である。
証明

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以上の2つの命題により、ベクトル値関数の左側連続性という概念は点列の収束概念を用いて以下のように特徴づけられることが明らかになりました。

命題(点列を用いた左側連続ベクトル値関数の定義)
ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられているものとする。\(a\)以下の\(X\)の点を項とするとともに\(a\)へ収束する数列\(\left\{x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、そこから新たな点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)をつくる。このように定義された任意の点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)について、\begin{equation*}\lim\limits_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) =\boldsymbol{f}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つことは、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}\)が点\(a\)において左側連続であるための必要十分条件である。

この命題が要求していることは、\(a\)以下の\(X\)の点を項とするとともに\(a\)へ収束する「任意の」数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)に対して、そこから構成される点列\(\{\boldsymbol{f}\left(x_{v}\right) \}\)が\(\boldsymbol{f}\left( a\right) \)へ収束しなければならないということです。したがって、このような性質を満たす数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)が「存在する」ことを示しただけでは、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}\)が点\(a\)において左側連続であることを示したことにはなりません。

 

ベクトル値関数が片側連続であることの証明

先の諸命題より、ベクトル値関数の片側連続性に関する議論を点列の収束に関する議論に置き換えられることが明らかになりました。つまり、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられたとき、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :\left( x_{v}\in X\wedge x_{v}\geq a\right) \\
&&\left( b\right) \ \lim_{v\rightarrow +\infty }x_{v}=a
\end{eqnarray*}をともに満たす数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、それに対して、\begin{equation*}\lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) =\boldsymbol{f}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つことを示せば、先の命題より\(\boldsymbol{f}\)が点\(a\)において右側連続であることを示したことになります。

左側連続性についても同様です。つまり、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられたとき、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :\left( x_{v}\in X\wedge x_{v}\leq a\right) \\
&&\left( b\right) \ \lim_{v\rightarrow +\infty }x_{v}=a
\end{eqnarray*}をともに満たす数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、それに対して、\begin{equation*}\lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) =\boldsymbol{f}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つことを示せば、先の命題より\(\boldsymbol{f}\)が点\(a\)において左側連続であることを示したことになります。

例(点列を用いたベクトル値関数の片側連続性の定義)
関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}\boldsymbol{f}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\left(
\begin{array}{c}
1 \\
0\end{array}\right) & \left( if\ x\geq 0\right) \\
\left(
\begin{array}{c}
0 \\
0\end{array}\right) & \left( if\ x<0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(\boldsymbol{f}\)が点\(0\)において右側連続であることを点列を用いて示します。\(0\)以上の実数を項とするとともに\(0\)へ収束する数列を任意に選びます。つまり、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :x_{v}\geq 0 \\
&&\left( b\right) \ \lim_{v\rightarrow +\infty }x_{v}=0
\end{eqnarray*}をともに満たす数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)を任意に選ぶということです。このとき、点列\(\left\{ \boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \right\} \)の極限について、\begin{eqnarray*}\lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right)
&=&\lim_{v\rightarrow +\infty }\left(
\begin{array}{c}
1 \\
0\end{array}\right) \quad \because \left( a\right) \text{および}\boldsymbol{f}\text{の定義} \\
&=&\left(
\begin{array}{c}
1 \\
0\end{array}\right) \\
&=&\boldsymbol{f}\left( 0\right)
\end{eqnarray*}が成り立つため、\(\boldsymbol{f}\)が点\(0\)において右側連続であることが示されました。

 

ベクトル値関数が片側連続ではないことの証明

先の諸命題は、ベクトル値関数が片側連続ではないことを示す際にも有用です。つまり、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられたとき、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :\left( x_{v}\in X\wedge x_{v}\geq a\right) \\
&&\left( b\right) \ \lim_{v\rightarrow +\infty }x_{v}=a
\end{eqnarray*}をともに満たす何らかの具体的な数列\(\left\{x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、それに対して、\begin{equation*}\lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \not=\boldsymbol{f}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つことを示せば、\(\boldsymbol{f}\)が点\(a\)において右側連続ではないことを示したことになります。

左側連続性についても同様です。つまり、ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられたとき、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall v\in \mathbb{N} :\left( x_{v}\in X\wedge x_{v}\leq a\right) \\
&&\left( b\right) \ \lim_{v\rightarrow +\infty }x_{v}=a
\end{eqnarray*}をともに満たす何らかの具体的な数列\(\left\{x_{v}\right\} \)を任意に選んだ上で、それに対して、\begin{equation*}\lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) =\boldsymbol{f}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つことを示せば、\(\boldsymbol{f}\)が点\(a\)において左側連続ではないことを示したことになります。

例(ベクトル値関数が片側連続ではないことの証明)
関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}\boldsymbol{f}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\left(
\begin{array}{c}
1 \\
0\end{array}\right) & \left( if\ x\geq 0\right) \\
\left(
\begin{array}{c}
0 \\
0\end{array}\right) & \left( if\ x<0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(\boldsymbol{f}\)が点\(0\)において左側連続ではないことを点列を用いて示します。一般項が、\begin{equation*}x_{v}=-\frac{1}{v}
\end{equation*}で与えられる数列\(\{x_{v}\}\)に注目します。この数列の任意の項は\(0\)以下の実数であり、なおかつこの数列は\(0\)へ収束します。任意の\(v\in \mathbb{N} \)について\(x_{v}<0\)であるため、数列\(\{\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) \}\)の一般項は、\begin{equation*}\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right) =\left(
\begin{array}{c}
0 \\
0\end{array}\right)
\end{equation*}であり、その極限は、\begin{eqnarray*}
\lim_{v\rightarrow +\infty }\boldsymbol{f}\left( x_{v}\right)
&=&\lim_{v\rightarrow +\infty }\left(
\begin{array}{c}
0 \\
0\end{array}\right) \\
&=&\left(
\begin{array}{c}
0 \\
0\end{array}\right) \\
&\not=&\left(
\begin{array}{c}
1 \\
0\end{array}\right) \\
&=&\boldsymbol{f}\left( 0\right) \quad \because \boldsymbol{f}\text{の定義}
\end{eqnarray*}となります。先の命題より、このような数列\(\left\{ x_{v}\right\} \)が存在することは\(\boldsymbol{f}\)が点\(0\)において左側連続でないことを意味します。

 

演習問題

問題(ベクトル値関数の片側連続性)
関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}\boldsymbol{f}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\left(
\begin{array}{c}
x \\
1\end{array}\right) & \left( if\ x\not=0\right) \\
\left(
\begin{array}{c}
0 \\
2\end{array}\right) & \left( if\ x=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(\boldsymbol{f}\)が点\(0\)において右側連続や左側連続ではないことを点列を用いて証明してください。
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問題(ベクトル値関数の片側連続性の特徴づけ)
ベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられているものとします。以下の問いに答えてください。

  1. \(\boldsymbol{f}\)のすべての成分関数\(f_{i}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \ \left( i=1,\cdots ,m\right) \)が点\(a\)において右側連続である場合には、\(\boldsymbol{f}\)もまた点\(a\)において右側連続であることを点列を用いて証明してください。
  2. \(\boldsymbol{f}\)が点\(a\)において右側連続である場合には、\(\boldsymbol{f}\)のすべての成分関数\(f_{i}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \ \left( i=1,\cdots ,m\right) \)もまた点\(a\)において右側連続であることを点列を用いて証明してください。
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