有界な点列
復習になりますが、ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の空ではない部分集合\(A\)について、\(\mathbb{R} ^{n}\)ある点\(U\)が\(A\)の任意の点以上である場合には、つまり、\begin{equation*}\exists U\in \mathbb{R} ^{n},\ \forall x\in A:x\leq U
\end{equation*}が成り立つならば、\(U\)を\(A\)の上界と呼びます。また、\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A\)が上界を持つとき、\(A\)は上に有界であると言います。
\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)のすべての項からなる集合\begin{equation}\left\{ x_{v}\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ v\in \mathbb{N} \right\} \quad \cdots (1)
\end{equation}は\(\mathbb{R} ^{n}\)の空ではない部分集合であるため、上に有界であるか検討できます。\(\left( 1\right) \)が上に有界であるとき、すなわち、\begin{equation*}\exists U\in \mathbb{R} ^{n},\ \forall v\in \mathbb{N} :x_{v}\leq U
\end{equation*}が成り立つとき、この点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)は上に有界である(bounded from above)であると言います。また、\(\left( 1\right) \)の上界を点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の上界(upper bound)と呼びます。
\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列が上に有界であることは、そのすべての座標数列が上に有界であることと必要十分です。
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)が上に有界であることと、任意の\(k\ \left( =1,\cdots ,n\right) \)について、点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の第\(k\)座標数列\(\left\{ x_{v}^{\left(k\right) }\right\} \)が上に有界であることは必要十分である。
以上の命題より、ユークリッド空間上の上に有界な点列に関する議論は、上に有界な数列に関する議論に置き換えることができます。
=\left( 1+\frac{1}{2v},2-\frac{1}{2v}\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。\(\left\{ x_{v}\right\} \)の座標数列である\(\left\{x_{v}^{\left( 1\right) }\right\} \)と\(\left\{ x_{v}^{\left( 2\right)}\right\} \)は、任意の\(v\in \mathbb{N} \)に対して、\begin{eqnarray*}x_{1}^{\left( 1\right) } &=&1+\frac{1}{2v}\leq \frac{3}{2} \\
x_{2}^{\left( 2\right) } &=&2-\frac{1}{2v}\leq 2
\end{eqnarray*}を満たすため、これらはともに上に有界です。したがって先の命題より、点列\(\left\{x_{v}\right\} \)もまた上に有界です。
先の命題より、上に有界ではない座標数列を持つ点列は上に有界ではありません。
=\left( 1+\frac{1}{2v},2v\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。\(\left\{ x_{v}\right\} \)の第2座標数列\(\left\{ x_{v}^{\left(2\right) }\right\} \)の一般項は、\begin{equation*}x_{v}^{\left( 2\right) }=2v
\end{equation*}であり明らかに上に有界ではありません。したがって先の命題より、点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)は上に有界ではありません。
復習になりますが、ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の空ではない部分集合\(A\)について、\(\mathbb{R} ^{n}\)ある点\(L\)が\(A\)の任意の点以下である場合には、つまり、\begin{equation*}\exists L\in \mathbb{R} ^{n},\ \forall x\in A:L\leq x
\end{equation*}が成り立つならば、\(L\)を\(A\)の下界と呼びます。また、\(\mathbb{R} ^{n}\)の非空な部分集合\(A\)が下界を持つとき、\(A\)は下に有界であると言います。
\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)のすべての項からなる集合\begin{equation}\left\{ x_{v}\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ v\in \mathbb{N} \right\} \quad \cdots (1)
\end{equation}は\(\mathbb{R} ^{n}\)の空ではない部分集合であるため、下に有界であるか検討できます。\(\left( 1\right) \)が下に有界であるとき、すなわち、\begin{equation*}\exists L\in \mathbb{R} ^{n},\ \forall v\in \mathbb{N} :L\leq x_{v}
\end{equation*}が成り立つとき、この点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)は下に有界である(bounded from below)であると言います。また、\(\left( 1\right) \)の下界を点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の下界(lower bound)と呼びます。
\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列が下に有界であることは、そのすべての座標数列が下に有界であることと必要十分です。
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)が下に有界であることと、任意の\(k\ \left( =1,\cdots ,n\right) \)について、点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の第\(k\)座標数列\(\left\{ x_{v}^{\left(k\right) }\right\} \)が下に有界であることは必要十分である。
以上の命題より、ユークリッド空間上の下に有界な点列に関する議論は、下に有界な数列に関する議論に置き換えることができます。
=\left( 1+\frac{1}{2v},2-\frac{1}{2v}\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。\(\left\{ x_{v}\right\} \)の座標数列である\(\left\{x_{v}^{\left( 1\right) }\right\} \)と\(\left\{ x_{v}^{\left( 2\right)}\right\} \)は、任意の\(v\in \mathbb{N} \)に対して、\begin{eqnarray*}1 &\leq &1+\frac{1}{2v}=x_{1}^{\left( 1\right) } \\
\frac{3}{2} &\leq &2-\frac{1}{2v}=x_{2}^{\left( 2\right) }
\end{eqnarray*}を満たすため、これらはともに下に有界です。したがって先の命題より、点列\(\left\{x_{v}\right\} \)もまた下に有界です。
先の命題より、下に有界ではない座標数列を持つ点列は下に有界ではありません。
=\left( 1+\frac{1}{2v},-2v\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。\(\left\{ x_{v}\right\} \)の第2座標数列\(\left\{ x_{v}^{\left(2\right) }\right\} \)の一般項は、\begin{equation*}x_{v}^{\left( 2\right) }=-2v
\end{equation*}であり明らかに下に有界ではありません。したがって先の命題より、点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)は下に有界ではありません。
\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)が上に有界かつ下に有界であるとき、すなわち、\begin{equation*}\exists U\in \mathbb{R} ^{n},\ \exists L\in \mathbb{R} ^{n},\ \forall v\in \mathbb{N} :L\leq x_{v}\leq U
\end{equation*}が成り立つとき、この点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)は有界(bounded)であると言います。
先の2つの命題より、\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列が有界であることは、そのすべての座標数列が有界であることと必要十分です。
=\left( 1+\frac{1}{2v},2-\frac{1}{2v}\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。\(\left\{ x_{v}\right\} \)の座標数列である\(\left\{x_{v}^{\left( 1\right) }\right\} \)と\(\left\{ x_{v}^{\left( 2\right)}\right\} \)は、任意の\(v\in \mathbb{N} \)に対して、\begin{eqnarray*}1 &\leq &x_{1}^{\left( 1\right) }\leq \frac{3}{2} \\
\frac{3}{2} &\leq &x_{2}^{\left( 2\right) }\leq 2
\end{eqnarray*}を満たすため、これらはともに有界です。したがって先の命題より、点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)もまた有界です。
先の命題より、有界ではない座標数列を持つ点列は有界ではありません。
=\left( 1+\frac{1}{2v},2v\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。\(\left\{ x_{v}\right\} \)の第2座標数列\(\left\{ x_{v}^{\left(2\right) }\right\} \)の一般項は、\begin{equation*}x_{v}^{\left( 2\right) }=2v
\end{equation*}であり明らかに上に有界ではなく、したがって有界でもありません。したがって先の命題より、点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)は有界ではありません。
収束する点列は有界
\(\mathbb{R} ^{n}\)上の点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)が\(\mathbb{R} ^{n}\)の点へ収束するものとします。これは任意の座標数列\(\left\{ x_{v}^{\left(k\right) }\right\} \)が有限な実数へ収束することと必要十分です。一般に、有限な実数へ収束する数列は有界であるため、任意の座標数列\(\left\{ x_{v}^{\left( k\right) }\right\} \)もまた有界ですが、これは点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)が有界であることと必要十分です。したがって、収束する点列は上に有界であることが明らかになりました。
=\left( 1+\frac{1}{2v},2-\frac{1}{2v}\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。このとき、\begin{eqnarray*}
\lim_{v\rightarrow \infty }x_{v} &=&\left( \lim_{v\rightarrow \infty
}x_{v}^{\left( 1\right) },\lim_{v\rightarrow \infty }x_{v}^{\left( 2\right)
}\right) \\
&=&\left( \lim_{v\rightarrow \infty }\left( 1+\frac{1}{2v}\right)
,\lim_{v\rightarrow \infty }\left( 2-\frac{1}{2v}\right) \right) \\
&=&\left( 1,2\right)
\end{eqnarray*}となるため\(\left\{ x_{v}\right\} \)は\(\mathbb{R} ^{2}\)の点へ収束します。したがって、上の命題より、この点列\(\left\{x_{v}\right\} \)は有界です。実際、任意の\(v\in \mathbb{N} \)に対して、\begin{eqnarray*}1 &\leq &x_{1}^{\left( 1\right) }\leq \frac{3}{2} \\
\frac{3}{2} &\leq &x_{2}^{\left( 2\right) }\leq 2
\end{eqnarray*}が成り立つため\(\left\{x_{v}\right\} \)は確かに有界です。
=\left( \frac{v+1}{v},\frac{1}{v}\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。このとき、\begin{eqnarray*}
\lim_{v\rightarrow \infty }x_{v} &=&\left( \lim_{v\rightarrow \infty
}x_{v}^{\left( 1\right) },\lim_{v\rightarrow \infty }x_{v}^{\left( 2\right)
}\right) \\
&=&\left( \lim_{v\rightarrow \infty }\left( \frac{v+1}{v}\right)
,\lim_{v\rightarrow \infty }\left( \frac{1}{v}\right) \right) \\
&=&\left( \lim_{v\rightarrow \infty }\left( 1+\frac{1}{v}\right)
,\lim_{v\rightarrow \infty }\left( \frac{1}{v}\right) \right) \\
&=&\left( 1+0,0\right) \\
&=&\left( 1,0\right)
\end{eqnarray*}となるため\(\left\{ x_{v}\right\} \)は\(\mathbb{R} ^{2}\)の点へ収束します。したがって、上の命題より、この点列\(\left\{x_{v}\right\} \)は有界です。実際、任意の\(v\in \mathbb{N} \)に対して、\begin{eqnarray*}1 &\leq &x_{1}^{\left( 1\right) }\leq 2 \\
0 &\leq &x_{2}^{\left( 2\right) }\leq 1
\end{eqnarray*}が成り立つため\(\left\{x_{v}\right\} \)は確かに有界です。
有界な点列は収束するとは限らない
収束する点列は有界であることが明らかになりましたが、その逆は成立するとは限りません。つまり、有界な点列は収束するとは限りません。以下の例から明らかです。
=\left( \left( -1\right) ^{v},\frac{1}{v}\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。任意の\(v\in \mathbb{N} \)について、\begin{eqnarray*}-1 &\leq &x_{v}^{\left( 1\right) }\leq 1 \\
0 &\leq &x_{v}^{\left( 2\right) }\leq 1
\end{eqnarray*}が成り立つため、この点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)は有界です。一方、第1座標数列\(\left\{ x_{v}^{\left( 1\right) }\right\} \)は振動するため収束せず、したがって点列\(\left\{x_{v}\right\} \)は収束しません。
点列が収束しないことの証明
収束する点列は有界であることが明らかになりました。対偶より、有界ではない点列は収束しません。したがって、点列が有界でないことを証明できれば、その点列が収束しないことを示したことになります。
演習問題
=\left( \frac{1}{v},1+\frac{1}{v}\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。この点列の有界性および収束可能性について議論してください。
=\left( v,1+\frac{1}{v}\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。この点列の有界性および収束可能性について議論してください。
=\left( \frac{v+2}{3v},\frac{\left( -1\right) ^{v}}{2v}\right)
\end{equation*}で与えられているものとします。この点列の有界性および収束可能性について議論してください。
\end{equation*}が成り立つことは、\(\left\{ x_{v}\right\} \)が有界であるための必要十分条件であることを証明してください。
\end{equation*}が成り立つことは、\(\left\{ x_{v}\right\} \)が有界であるための必要十分条件であることを証明してください。
次回は収束する点列のスカラー倍として定義される点列もまた収束することを示します。
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