ユークリッド空間における点列から無限個の項を抜き出して順番を保ったまま並べてできる点列をもとの点列の部分列と呼びます。点列の部分列は数列の部分列を一般化した概念です。
部分列

部分列

ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)の点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)から無限個の項を抜き出した上で、順番を保ったままそれらを並べてできる点列をもとの点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の部分列(subsequence)と呼びます。

例(部分列)
ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)における点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の項を並べると、\begin{equation*}
x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},x_{5},x_{6},x_{7},x_{8},x_{9},x_{10},\cdots
\end{equation*}となりますが、ここから偶数番目の項だけを抜き出して順番を保ったまま並べると、\begin{equation*}
x_{2},x_{4},x_{6},x_{8},x_{10},x_{12},x_{14},x_{16},x_{18},x_{20},\cdots
\end{equation*}という部分列を得ます。
例(部分列)
ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)における点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の項を並べると、\begin{equation*}
x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},x_{5},x_{6},x_{7},x_{8},x_{9},x_{10},\cdots
\end{equation*}となります。これに対し、\begin{equation*}
x_{3},x_{4},x_{1},x_{8},x_{2},x_{3},\cdots
\end{equation*}は\(\left\{ x_{v}\right\} \)の部分列ではありません。項の相対的な順番が入れ替わってしまっているからです。

 

部分列の定式化

ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)における点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の項を順番に並べると、\begin{equation*}
x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},\cdots
\end{equation*}となります。この点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の部分列を任意に選んだ上で、その一般項、すなわち第\(v\)項を、\begin{equation*}
x_{l\left( v\right) }
\end{equation*}で表記します。ただし上の表記は、「部分列の第\(v\)項は、もとの点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の第\(l\left( v\right) \)項と一致する」ことを表すものとします。以上の表記のもとで、部分列そのものは\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)と表記されます。この部分列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)の項を順番に並べると、\begin{equation*}
x_{l\left( 1\right) },x_{l\left( 2\right) },x_{l\left( 3\right) },x_{l\left(
4\right) },\cdots
\end{equation*}となりますが、これは、部分列の第\(1\)項\(x_{l\left( 1\right) }\)はもとの点列の第\(l\left( 1\right) \)項と一致し、部分列の第\(2\)項\(x_{l\left( 2\right) }\)はもとの点列の第\(l\left( 2\right) \)項と一致し、\(\cdots \)などを表します。部分列の定義より、もとの点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の項の中から無限個の項を抜き出した上で順番を保って並べたものが部分列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)であるため、その項の添字\(l\left( 1\right) ,l\left( 2\right) ,l\left( 3\right) ,l\left( 4\right) ,\cdots \)は、\begin{equation*}
l\left( 1\right) <l\left( 2\right) <l\left( 3\right) <l\left( 4\right)
<\cdots
\end{equation*}を満たす自然数からなる狭義の単調増加数列であるはずです。そこで、点列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)の項の添字\(l\left( 1\right) ,l\left( 2\right) ,l\left( 3\right) ,l\left( 4\right) ,\cdots \)が上の条件を満たすとき、これを点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の部分列と呼びます。

復習になりますが、\(\mathbb{R}^{n}\)における点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)とは、それぞれの番号\(v\in \mathbb{N}\)に対して、その点列の第\(v\)項に相当する点\(x_{v}\in \mathbb{R}^{n}\)を定める写像\begin{equation*}
x:\mathbb{N} \rightarrow
\mathbb{R}^{n}
\end{equation*}として解釈可能です。点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の部分列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)もまた点列であるため、部分列もまた何らかの写像として定式化されるはずです。では、部分列はどのような写像として定式化できるでしょうか。以下の表を見ながら説明します。

\begin{array}{cccccc}
\hline
v & 1 & 2 & 3 & 4 & \cdots \\ \hline
\downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow
& \downarrow \\ \hline
l(v) & l\left( 1\right) & l\left( 2\right) & l\left( 3\right) & l\left( 4\right) & \cdots \\ \hline
\downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow & \downarrow
& \downarrow \\ \hline
x_{l\left( v\right) } & x_{l\left( 1\right) } & x_{l\left( 2\right) }
& x_{l\left( 3\right) } & x_{l\left( 4\right) } & \cdots \\ \hline
\end{array}

点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の部分列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)を構成するためには、まず、それぞれの番号\(v\in \mathbb{N}\)に対して、部分列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)の第\(v\)項がもとの点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の第\(l\left( v\right) \in \mathbb{N}\)項と一致するのかをそれぞれ明らかにする写像\begin{equation*}
l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{N}\end{equation*}を特定する必要があります。ただし、もとの点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の項の中から無限個の項を抜き出した上で順番を保って並べたものが部分列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)であるため、この写像\(l\)は狭義の単調増加関数でなければなりません。つまり、写像\(l\)は以下の条件\begin{equation*}
\forall k,h\in \mathbb{N}:\left( k<h\Rightarrow l(k)<l(h)\right)
\end{equation*}を満たす必要があるということです。その上で、合成写像\begin{equation*}
x\circ l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}^{n}
\end{equation*}を作ります。この合成写像がそれぞれの番号\(v\in \mathbb{N}\)に対して定める像は、\begin{equation*}
\left( x\circ l\right) \left( v\right) =x\left( l\left( v\right) \right)
\end{equation*}ですが、これはもとの点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の第\(l\left( v\right) \)項であり、したがって部分列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)の第\(v\)項\(x_{l\left( v\right) }\)に他なりません。つまり、上のような合成写像\(x\circ l\)が与えられれば部分列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)のすべての項を具体的に特定できるため、この合成写像を部分列と同一視できます。ただし、繰り返しになりますが、写像\(l\)は狭義単調増加でなければなりません。

例(部分列)
ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)における点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の項を並べると、\begin{equation*}
x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},x_{5},x_{6},x_{7},x_{8},x_{9},x_{10},\cdots
\end{equation*}となりますが、ここから偶数番目の項だけを抜き出して順番を保ったまま並べると、\begin{equation*}
x_{2},x_{4},x_{6},x_{8},x_{10},x_{12},x_{14},x_{16},x_{18},x_{20},\cdots
\end{equation*}という部分列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)を得ます。この部分列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)はどのような写像として定式化できるでしょうか。もとの点列\(\{x_{v}\}\)を写像\(x:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}^{n}\)と解釈するとき、この部分列は、\begin{equation*}
\forall v\in \mathbb{N}:l\left( v\right) =2v
\end{equation*}を満たす狭義の単調増加関数\(l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{N}\)と\(x\)の合成関数\(x\circ l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}^{n}\)として定式化可能です。実際、\begin{eqnarray*}
x_{l\left( 1\right) } &=&\left( x\circ l\right) \left( 1\right) =x_{2} \\
x_{l\left( 2\right) } &=&\left( x\circ l\right) \left( 2\right) =x_{4} \\
x_{l\left( 3\right) } &=&\left( x\circ l\right) \left( 3\right) =x_{6} \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などとなります。
例(部分列)
ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)における点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)は写像\(x:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}^{n}\)と同一視されます。関数\(l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{N}\)はそれぞれの番号\(v\in \mathbb{N}\)に対して、\begin{equation*}
l\left( v\right) =3v-1
\end{equation*}を像として定めるものとします。この\(l\)は狭義単調増加であるため、合成写像\(x\circ l:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R}^{n}\)と同一視される点列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)は点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の部分列です。具体的に、その項は、\begin{eqnarray*}
x_{l\left( 1\right) } &=&\left( x\circ l\right) \left( 1\right) =x_{2} \\
x_{l\left( 2\right) } &=&\left( x\circ l\right) \left( 2\right) =x_{5} \\
x_{l\left( 3\right) } &=&\left( x\circ l\right) \left( 3\right) =x_{8} \\
x_{l\left( 4\right) } &=&\left( x\circ l\right) \left( 4\right) =x_{11} \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などとなります。
例(部分列)
ユークリッド空間\(\mathbb{R}^{n}\)における点列\(\left\{ x_{v}\right\} \)の項を並べると、\begin{equation*}
x_{1},x_{2},x_{3},x_{4},x_{5},x_{6},x_{7},x_{8},x_{9},x_{10},\cdots
\end{equation*}となります。一方、点列\(\left\{ x_{l\left( v\right) }\right\} \)の項が、\begin{equation*}
x_{3},x_{2},x_{1},x_{6},x_{9},x_{11},\cdots
\end{equation*}であるとき、\(\{x_{l\left( v\right) }\}\)は\(\{x_{v}\}\)の部分列ではありません。実際、この2つの点列の間には、例えば、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&x_{l\left( 3\right) } \\
x_{3} &=&x_{l\left( 1\right) }
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{eqnarray*}
l\left( 3\right) &=&1 \\
l\left( 1\right) &=&3
\end{eqnarray*}という関係が成立していますが、これは\(l\)が狭義単調増加関数ではないことを示しています。\(\{x_{l\left( v\right) }\}\)が\(\{x_{v}\}\)の部分列であるためには\(l\)が狭義単調増加関数である必要があります。

次回はユークリッド空間における点列に関してボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理が成り立つことを確認します。

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