2つの未知数に関する連立1次方程式の解は、連立方程式の係数から行列式と呼ばれる値を計算することで求められます。それをクラーメルの公式と呼びます。

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連立2元1次方程式の解

\(x,y\)を未知数とする連立2元1次方程式(simultaneous linear equations with two unknowns)\begin{equation*}
\left\{
\begin{array}{c}
a_{1}x+b_{1}y=c_{1} \\
a_{2}x+b_{2}y=c_{2}\end{array}\right.
\end{equation*}の解を求めるために、未知数\(x,y\)の一方を消去します。

まずは、\(x\)を求めるために\(y\)を消去します。第 1 式に\(b_{2}\)をかけ、第 2 式に\(b_{1}\)をかけると、\begin{equation*}
\left\{
\begin{array}{c}
a_{1}b_{2}x+b_{1}b_{2}y=c_{1}b_{2} \\
a_{2}b_{1}x+b_{1}b_{2}y=c_{2}b_{1}\end{array}\right.
\end{equation*}を得ます。2 つの式を辺々引くと\(y\)の項が消えるため、\begin{equation*}
\left( a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}\right) x=c_{1}b_{2}-c_{2}b_{1}
\end{equation*}を得ます。したがって、仮に\(a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}\not=0\)が成り立つのであれば、\begin{equation*}
x=\frac{c_{1}b_{2}-c_{2}b_{1}}{a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}}
\end{equation*}となり、未知数\(x\)が明らかになりました。

続いて、\(y\)を求めるために\(x\)を消去します。第 1 式に\(a_{2}\)をかけ、第 2 式に\(a_{1}\)をかけると、\begin{equation*}
\left\{
\begin{array}{c}
a_{1}a_{2}x+b_{1}a_{2}y=c_{1}a_{2} \\
a_{1}a_{2}x+b_{2}a_{1}y=c_{2}a_{1}\end{array}\right.
\end{equation*}を得ます。2 つの式を辺々引くと\(x\)の項が消えるため、\begin{equation*}
\left( b_{1}a_{2}-b_{2}a_{1}\right) y=c_{1}a_{2}-c_{2}a_{1}
\end{equation*}を得ます。したがって、仮に\(b_{1}a_{2}-b_{2}a_{1}\not=0\)が成り立つのであれば、\begin{equation*}
y=\frac{c_{1}a_{2}-c_{2}a_{1}}{b_{1}a_{2}-b_{2}a_{1}}
\end{equation*}となり、未知数\(y\)も明らかになりました。このままでもよいのですが、分子と分母にマイナスを掛けて\(x\)と分母をそろえると、\begin{equation*}
y=\frac{a_{1}c_{2}-a_{2}c_{1}}{a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}}
\end{equation*}となります。

 

解の公式

議論をまとめましょう。\(x,y\)を未知数とする連立2元1次方程式\begin{equation}
\left\{
\begin{array}{c}
a_{1}x+b_{1}y=c_{1} \\
a_{2}x+b_{2}y=c_{2}\end{array}\right. \tag{1}
\end{equation}の解は、\(a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}\not=0\)という仮定のもとでは、\begin{equation}
x=\frac{c_{1}b_{2}-c_{2}b_{1}}{a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}},\quad y=\frac{a_{1}c_{2}-a_{2}c_{1}}{a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}} \tag{2}
\end{equation}となります。以降では、この解の構造を調べます。

連立方程式の係数と右辺の定数を、それが並んでいるままの位置関係を保つ形で抜き出すと、\begin{equation}
\begin{pmatrix}
a_{1} & b_{1} \\
a_{2} & b_{2}\end{pmatrix},\quad
\begin{pmatrix}
c_{1} \\
c_{2}\end{pmatrix}
\tag{3}
\end{equation}を得ます。実は、連立方程式の解\(x,y\)の分母や分子である、\begin{equation*}
a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1},\quad c_{1}b_{2}-c_{2}b_{1},\quad a_{1}c_{2}-a_{2}c_{1}
\end{equation*}などは、連立方程式の係数からなる表\(\left( 3\right) \)から一定のルールのもとで導出できます。

まず、解\(x,y\)の分母はともに\(a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}\)ですが、これは係数表\(\left( 3\right) \)中の\begin{pmatrix}
a_{1} & b_{1} \\
a_{2} & b_{2}\end{pmatrix}の中の係数だけから計算されています。具体的には、\begin{pmatrix}
a_{1} & b_{1} \\
a_{2} & b_{2}\end{pmatrix}の左上の\(a_{1}\)と右下の\(b_{2}\)の積である\(a_{1}b_{2}\)から、右上の\(b_{1}\)と左下の\(a_{2}\)の積\(a_{2}b_{1}\)を引いたものになっています。つまり、\begin{equation*}
\begin{vmatrix}
a_{1} & b_{1} \\
a_{2} & b_{2}\end{vmatrix}=\begin{pmatrix}
a_{1} & b_{1} \\
a_{2} & b_{2}\end{pmatrix}\text{の}\searrow \text{方向の積から}\swarrow \text{方向の積を引いたもの}
\end{equation*}という記号を導入すると、\begin{equation*}
a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}=\begin{vmatrix}
a_{1} & b_{1} \\
a_{2} & b_{2}\end{vmatrix}\end{equation*}となります。これを2次の行列式(two dimensional determinant)と呼びます。

続いて、解\(x\)の分子は\(c_{1}b_{2}-c_{2}b_{1}\)ですが、これは係数表\(\left( 3\right) \)中の\begin{pmatrix}
a_{1} & b_{1} \\
a_{2} & b_{2}\end{pmatrix}の1列目を\begin{pmatrix}
c_{1} \\
c_{2}\end{pmatrix}に置き換えて得られる\begin{pmatrix}
c_{1} & b_{1} \\
c_{2} & b_{2}\end{pmatrix}の中の係数から計算されており、具体的には、\begin{equation*}
c_{1}b_{2}-c_{2}b_{1}=\begin{vmatrix}
c_{1} & b_{1} \\
c_{2} & b_{2}\end{vmatrix}\end{equation*}という関係が成り立ちます。

最後に、解\(y\)の分子は\(a_{1}c_{2}-a_{2}c_{1}\)ですが、これはこれは係数表\(\left( 3\right) \)中の\begin{pmatrix}
a_{1} & b_{1} \\
a_{2} & b_{2}\end{pmatrix}の2列目を\begin{pmatrix}
c_{1} \\
c_{2}\end{pmatrix}に置き換えて得られる\begin{pmatrix}
a_{1} & c_{1} \\
a_{2} & c_{2}\end{pmatrix}の中の係数から計算されており、具体的には、\begin{equation*}
a_{1}c_{2}-a_{2}c_{1}=\begin{vmatrix}
a_{1} & c_{1} \\
a_{2} & c_{2}\end{vmatrix}\end{equation*}という関係が成り立ちます。

以上を踏まえると、連立方程式\(\left( 1\right) \)の解\(\left( 2\right) \)を以下のように表現できます。

命題(連立2元1次方程式の解)
\(x,y\)を未知数とする連立2元1次方程式\begin{equation*}
\left\{
\begin{array}{c}
a_{1}x+b_{1}y=c_{1} \\
a_{2}x+b_{2}y=c_{2}\end{array}\right.
\end{equation*}の解は、\(a_{1}b_{2}-a_{2}b_{1}\not=0\)の場合には、\begin{equation*}
x=\frac{\begin{vmatrix}
c_{1} & b_{1} \\
c_{2} & b_{2}\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}
a_{1} & b_{1} \\
a_{2} & b_{2}\end{vmatrix}},\quad y=\frac{\begin{vmatrix}
a_{1} & c_{1} \\
a_{2} & c_{2}\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}
a_{1} & b_{1} \\
a_{2} & b_{2}\end{vmatrix}}
\end{equation*}となる。

これはクラーメルの公式(Cramer’s rule)と呼ばれる解の公式です。公式中の\(x\)の分母の行列式において\(a_{1},a_{2}\)を\(c_{1},c_{2}\)にそれぞれ置き換えれば\(x\)の分子の行列式となり、\(y\)の分母の行列式において\(b_{1},b_{2}\)を\(c_{1},c_{2}\)にそれぞれ置き換えれば\(y\)の分子の行列式となります。

例(連立2元1次方程)
\(x,y\)を未知数とする連立2元1次方程式\begin{equation*}
\left\{
\begin{array}{c}
2x+3y=1 \\
5x+7y=3\end{array}\right.
\end{equation*}の解は、クラーメルの公式より、\begin{eqnarray*}
x &=&\frac{\begin{vmatrix}
1 & 3 \\
3 & 7\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}
2 & 3 \\
5 & 7\end{vmatrix}}=\frac{1\cdot 7-3\cdot 3}{2\cdot 7-3\cdot 5}=\frac{-2}{-1}=2 \\
y &=&\frac{\begin{vmatrix}
2 & 1 \\
5 & 3\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}
2 & 3 \\
5 & 7\end{vmatrix}}=\frac{2\cdot 3-1\cdot 5}{2\cdot 7-3\cdot 5}=\frac{1}{-1}=-1
\end{eqnarray*}となります。
例(連立2元1次方程)
\(x,y\)を未知数とする連立2元1次方程式\begin{equation*}
\left\{
\begin{array}{c}
4x-2y=5 \\
-6x+3y=1\end{array}\right.
\end{equation*}の解は、クラーメルの公式より、\begin{eqnarray*}
x &=&\frac{\begin{vmatrix}
5 & -2 \\
1 & 3\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}
4 & -2 \\
-6 & 3\end{vmatrix}}=\frac{5\cdot 3-\left( -2\right) \cdot 1}{4\cdot 3-\left( -2\right) \cdot
\left( -6\right) }=\frac{17}{0} \\
y &=&\frac{\begin{vmatrix}
4 & 5 \\
-6 & 1\end{vmatrix}}{\begin{vmatrix}
4 & -2 \\
-6 & 3\end{vmatrix}}=\frac{4\cdot 1-5\cdot \left( -6\right) }{4\cdot 3-\left( -2\right) \cdot
\left( -6\right) }=\frac{34}{0}
\end{eqnarray*}となるため、解は存在しません。

 

一般化

これまでは 2 つの未知数に関する連立2元1次方程式の解を求める方法を紹介しました。具体的には、連立方程式の係数の中からいくつかの文字を一定のルールのもとで選び行列式を作ることで、連立方程式の解を求めることができます。

実は、同様の手法は\(n\)個の未知数に関する連立1次方程式の解を求める方法としても拡張可能です。その場合には、\(n\)元1次連立方程式から係数をどのように選び、行列式をどのように定義するかが問題になります。そこで以降では、一般の連立方程式に関する解の公式を表現するために必要な概念について考えます。