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ベクトル空間

部分ベクトル空間どうしの直和

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部分ベクトル空間どうしの直和

体\(K\)上のベクトル空間\(V\)が与えられたとき、2つの部分ベクトル空間\(X_{1},X_{2}\subset V\)を任意に選びます。これらの和は、\begin{equation*}X_{1}+X_{2}=\left\{ x_{1}+x_{2}\in V\ |\ x_{1}\in X_{1}\wedge x_{2}\in
X_{2}\right\}
\end{equation*}と定義されます。部分ベクトル空間の定義より\(X_{1},X_{2}\)はともにゼロベクトル\(0\)を要素として持つため、\begin{equation*}0\in X_{1}\cap X_{2}
\end{equation*}が常に成り立ちます。以降では、ゼロベクトル\(0\)だけを共通の要素として持つ部分ベクトル空間\(X_{1},X_{2}\)に注目します。つまり、\begin{equation*}X_{1}\cap X_{2}=\left\{ 0\right\}
\end{equation*}を満たす\(X_{1},X_{2}\subset V\)について考えるということです。以上の条件を満たす部分ベクトル空間\(X_{1},X_{2}\)の\(X_{1}+X_{2}\)に関しては、これを直和(direct sum)と呼び、\begin{equation*}X_{1}\oplus X_{2}
\end{equation*}で表記します。

和は部分ベクトル空間であるため、特別な和である直和もまた部分ベクトル空間です。

命題(部分ベクトル空間どうしの直和)
体\(K\)上のベクトル空間\(V\)が与えられたとき、\begin{equation*}X_{1}\cap X_{2}=\left\{ 0\right\}
\end{equation*}を満たす部分ベクトル空間\(X_{1},X_{2}\subset V\)を任意に選ぶ。これらの直和\begin{equation*}X_{1}\oplus X_{2}
\end{equation*}もまた\(V\)の部分ベクトル空間である。
例(部分ベクトル空間どうしの直和)
3次元の実ベクトル空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{3}\right) \)について考えます。これはベクトル空間です。以下のような\(\mathbb{R} ^{3}\)の部分集合\begin{eqnarray*}X_{1} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{2}=x_{3}=0\right\} \\
X_{2} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{1}=x_{3}=0\right\}
\end{eqnarray*}に注目します。これらはともに\(\left( \mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{3}\right) \)の部分ベクトル空間です。和は、\begin{equation*}X_{1}+X_{2}=\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{2}=0\right\}
\end{equation*}ですが、\begin{equation*}
X_{1}\cap X_{2}=\left\{ \left( 0,0,0\right) \right\}
\end{equation*}であるため、\begin{equation*}
X_{1}\oplus X_{2}=X_{1}+X_{2}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

例(部分ベクトル空間どうしの直和)
体として実数体\(\mathbb{R} \)を採用した上で、\(\mathbb{R} \)の要素を成分として持つ次数\(2\)の正方行列からなる集合\(M_{2,2}\left( \mathbb{R} \right) \)を定義します。ベクトル加法として行列加法を、スカラー乗法として行列のスカラー乗法を採用すれば\(\left( \mathbb{R} ,M_{2,2}\left( \mathbb{R} \right) \right) \)はベクトル空間になります。以下のような\(M_{2,2}\left( \mathbb{R} \right) \)の部分集合\begin{eqnarray*}X_{1} &=&\left\{ \left.
\begin{pmatrix}
a & b \\
0 & 0\end{pmatrix}\ \right\vert \ a,b\in \mathbb{R} \right\} \\
X_{2} &=&\left\{ \left.
\begin{pmatrix}
a & 0 \\
c & 0\end{pmatrix}\ \right\vert \ a,c\in \mathbb{R} \right\}
\end{eqnarray*}に注目します。これらはともに\(\left( \mathbb{R} ,M_{2,2}\left( \mathbb{R} \right) \right) \)の部分ベクトル空間です。和は、\begin{equation*}X_{1}+X_{2}=\left\{ \left.
\begin{pmatrix}
a & b \\
c & 0\end{pmatrix}\ \right\vert \ a,b,c\in \mathbb{R} \right\}
\end{equation*}であるため、\begin{equation*}
X_{1}\oplus X_{2}=X_{1}+X_{2}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

 

和が直和であるための必要十分条件

体\(K\)上のベクトル空間\(V\)が与えられたとき、2つの部分ベクトル空間\(X_{1},X_{2}\subset V\)を任意に選びます。これらの和\(X_{1}+X_{2}\)が与えられたとき、これが直和であること、すなわち\(X_{1}\cap X_{2}=\phi \)であることを何らかの形で判定できるのでしょうか。以下の命題がこの問いに対する答えを与えます。

命題(和が直和であるための必要十分条件)
体\(K\)上のベクトル空間\(V\)が与えられたとき、2つの部分ベクトル空間\(X_{1},X_{2}\subset V\)を任意に選ぶ。これらの和の要素であるようなベクトル\(x\in X_{1}+X_{2}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}x=x_{1}+x_{2}
\end{equation*}を満たすベクトルの組\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X_{1}\times X_{2}\)がそれぞれ一意的に定まることは、\begin{equation*}X_{1}\oplus X_{2}=X_{1}+X_{2}
\end{equation*}が成り立つための必要十分条件である。

証明

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直和としてのベクトル空間

体\(K\)上のベクトル空間\(V\)が与えられたとき、2つの部分ベクトル空間\(X_{1},X_{2}\subset V\)について、\begin{equation*}V=X_{1}\oplus X_{2}
\end{equation*}という関係が成り立つ場合には、すなわち\(V\)が部分ベクトル空間\(X_{1},X_{2}\)の直和として表すことができる場合には、\(V\)は\(X_{1}\)と\(X_{2}\)の直和(direct sum of \(X_{1}\) and \(X_{2}\))であると言います。直和の定義より、これは以下の2つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ V=X_{1}+X_{2} \\
&&\left( b\right) \ X_{1}\cap X_{2}=\left\{ 0\right\}
\end{eqnarray*}がともに成り立つことを意味します。つまり、ベクトル空間\(V\)が部分ベクトル空間\(X_{1},X_{2}\)の直和であることとは、ゼロベクトル以外に共通のベクトルを持たない\(X_{1},X_{2}\)の和として表現できることを意味します。

直和に関する先の命題を踏まえると以下を得ます。

命題(直和としてのベクトル空間)
体\(K\)上のベクトル空間\(V\)が与えられたとき、\begin{equation*}V=X_{1}+X_{2}
\end{equation*}を満たす部分ベクトル空間\(X_{1},X_{2}\subset V\)を任意に選ぶ。ベクトル\(x\in V\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}x=x_{1}+x_{2}
\end{equation*}を満たすベクトルの組\(\left( x_{1},x_{2}\right) \in X_{1}\times X_{2}\)がそれぞれ一意的に定まることは、\begin{equation*}V=X_{1}\oplus X_{2}
\end{equation*}が成り立つための必要十分条件である。

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例(直和としてのベクトル空間)
2次元の実ベクトル空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{2}\right) \)について考えます。これはベクトル空間です。以下のような\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合\begin{eqnarray*}X_{1} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x_{1}=0\right\} \\
X_{2} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ x_{2}=0\right\}
\end{eqnarray*}に注目します。これらはともに\(\left( \mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{2}\right) \)の部分ベクトル空間です。ベクトル\(\left(x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\left( x_{1},x_{2}\right) =\left( 0,x_{2}\right) +\left( x_{1},0\right)
\end{equation*}を満たす\(\left( 0,x_{2}\right) \in X_{1}\)と\(\left( x_{1},0\right) \in X_{2}\)の組がそれぞれ一意的に定まるため、先の命題より、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{2}=X_{1}\oplus X_{2}\end{equation*}が成り立ちます。つまり、2次元空間\(\mathbb{R} ^{2}\)は\(x_{2}\)軸\(X_{1}\)と\(x_{1}\)軸\(X_{2}\)の直和として表すことができます。
例(直和としてのベクトル空間)
3次元の実ベクトル空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{3}\right) \)について考えます。これはベクトル空間です。以下のような\(\mathbb{R} ^{3}\)の部分集合\begin{eqnarray*}X_{1} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{1}=x_{2}=0\right\} \\
X_{2} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{3}=0\right\}
\end{eqnarray*}に注目します。これらはともに\(\left( \mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{3}\right) \)の部分ベクトル空間です。ベクトル\(\left(x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) =\left( 0,0,x_{3}\right) +\left(
x_{1},x_{2},0\right)
\end{equation*}を満たす\(\left( 0,0,x_{3}\right) \in X_{1}\)と\(\left( x_{1},x_{2},0\right) \in X_{2}\)の組がそれぞれ一意的に定まるため、先の命題より、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{3}=X_{1}\oplus X_{2}\end{equation*}が成り立ちます。つまり、3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)は\(x_{3}\)軸\(X_{1}\)と\(x_{1}x_{2}\)平面\(X_{2}\)の直和として表すことができます。
例(ベクトル空間の直和ではない和)
3次元の実ベクトル空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{3}\right) \)について考えます。これはベクトル空間です。以下のような\(\mathbb{R} ^{3}\)の部分集合\begin{eqnarray*}X_{1} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{1}=0\right\} \\
X_{2} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{2}=0\right\}
\end{eqnarray*}に注目します。これらはともに\(\left( \mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{3}\right) \)の部分ベクトル空間です。和の定義より、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{3}=X_{1}+X_{2}\end{equation*}が成り立ちます。その一方で、例えば、ベクトル\(\left( 3,7,5\right) \in \mathbb{R} ^{3}\)に注目したとき、\begin{eqnarray*}\left( 3,7,5\right) &=&\left( 0,7,4\right) +\left( 3,0,1\right) \\
\left( 3,7,5\right) &=&\left( 0,7,9\right) +\left( 3,0,-4\right)
\end{eqnarray*}を満たす異なる組\(\left(\left( 0,7,4\right) ,\left( 3,0,1\right) \right) \in X_{1}\times X_{2}\)および\(\left( \left( 0,7,9\right) ,\left( 3,0,-4\right)\right) \in X_{1}\times X_{2}\)が存在するため、\(\mathbb{R} ^{3}\)は\(X_{1}\)と\(X_{2}\)の直和ではありません。つまり、3次元空間\(\mathbb{R} ^{3}\)は\(x_{2}x_{3}\)平面\(X_{1}\)と\(x_{1}x_{3}\)平面\(X_{2}\)の直和として表すことはできません。

 

演習問題

問題(直和としてのベクトル空間)
3次元の実ベクトル空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{3}\right) \)について考えます。これはベクトル空間です。以下のような\(\mathbb{R} ^{3}\)の部分集合\begin{eqnarray*}X_{1} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{1}=x_{2}=x_{3}\right\} \\
X_{2} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{1}=0\right\}
\end{eqnarray*}に注目します。このとき、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{3}=X_{1}\oplus X_{2}
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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問題(ベクトル空間の直和ではない和)
3次元の実ベクトル空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{3}\right) \)について考えます。これはベクトル空間です。以下のような\(\mathbb{R} ^{3}\)の部分集合\begin{eqnarray*}X_{1} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{1}+x_{2}+x_{3}=0\right\} \\
X_{2} &=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ x_{1}-x_{2}-x_{3}=0\right\}
\end{eqnarray*}に注目します。このとき、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{3}=X_{1}\oplus X_{2}
\end{equation*}が成り立たないことを示してください。

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