多変数関数のルベーグ積分に関する比較判定法

ユークリッド空間上に存在するルベーグ可測集合上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数に対して、その絶対値関数が定める値以上の値をとるルベーグ積分可能な関数が存在する場合、もとの関数もまたルベーグ積分可能です。

ルベーグ積分に関する比較判定法

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)および\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ可測集合族\(\mathfrak{M}_{\mu }\)に加えてルベーグ測度\(\mu :\mathfrak{M}_{\mu }\rightarrow \mathbb{R} _{+}\cup \left\{ +\infty \right\} \)からなる測度空間\begin{equation*}\left( \mathbb{R} ^{n},\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right)
\end{equation*}が与えられているものとします。さらに、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された多変数の拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。これに対して、以下の3つの条件を満たす拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}
g:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が存在する状況を想定します。

1つ目の条件は、\(g\)が非負値をとるということです。つまり、以下の条件\begin{equation*}\forall \boldsymbol{x}\in X:0\leq g\left( \boldsymbol{x}\right) \leq +\infty
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
0\leq g\leq +\infty
\end{equation*}が成り立つということです。

2つ目の条件は、\(g\)が\(X\)上においてルベーグ積分可能であるということ、つまり、\begin{equation*}\int_{X}gd\mu <+\infty
\end{equation*}が成り立つということです。

3つ目の条件は、\(X\)上において\(g\)が定める値が\(f\)が定める値の絶対値以上であること、\begin{equation*}\forall \boldsymbol{x}\in X:\left\vert f\left( \boldsymbol{x}\right)
\right\vert \leq g\left( \boldsymbol{x}\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\left\vert f\right\vert \leq g
\end{equation*}が成り立つということです。

拡大実数値関数\(f\)に対して以上の3つの条件を満たす拡大実数値関数\(g\)が存在する場合、\(f\)は\(X\)上においてルベーグ積分可能であることが保証されます。つまり、\begin{equation*}\int_{X}fd\mu <+\infty
\end{equation*}が成り立つということです。これをルベーグ積分に関する比較判定法(integral comparison test)と呼びます。

命題(ルベーグ積分に関する比較判定法)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられているものとする。これに対して、非負値をとるとともに\(X\)上でルベーグ積分可能であり、なおかつ、\begin{equation*}\forall \boldsymbol{x}\in X:\left\vert f\left( \boldsymbol{x}\right)
\right\vert \leq g\left( \boldsymbol{x}\right)
\end{equation*}を満たす拡大実数値ルベーグ可測関数\(g:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が存在するならば、\(f\)は\(X\)上でルベーグ積分可能である。
証明

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例(ルベーグ積分に関する比較判定法)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\supset \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ 0\leq x<\frac{1}{2}\wedge 0\leq y<\frac{1}{2}\right) \\
1 & \left( if\ 0\leq x<\frac{1}{2}\wedge \frac{1}{2}<y\leq 1\right) \\
2 & \left( if\ \frac{1}{2}\leq x\leq 1\wedge 0\leq y<\frac{1}{2}\right) \\
3 & \left( if\ \frac{1}{2}\leq x\leq 1\wedge \frac{1}{2}<y\leq 1\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は単関数であるため\(\left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \)上でルベーグ積分可能ですが、同じことを比較判定法を用いて示します。関数\(g:\mathbb{R} ^{2}\supset \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}g\left( x,y\right) =3
\end{equation*}を定めるものとします。\(g\)は定数関数であるためルベーグ可測です。また、\(f\)は非負値をとるとともに、\(\left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \)上において、\begin{equation*}\left\vert f\right\vert \leq g
\end{equation*}が成り立ちます。さらに、\begin{eqnarray*}
\int_{\left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] }gd\mu &=&\int_{\left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] }3d\mu \quad \because g\text{の定義} \\
&=&3\cdot \mu \left( \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \right) \\
&=&3\left( 1-0\right) \left( 1-0\right) \\
&=&3 \\
&<&+\infty
\end{eqnarray*}が成り立つため、\(g\)は\(\left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \)上でルベーグ積分可能です。したがって、比較判定法より\(f\)は\(\left[ 0,1\right] \times \left[0,1\right] \)上でルベーグ積分可能です。
例(ルベーグ積分に関する比較判定法)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。その上で、関数\begin{equation*}
\left\vert f\right\vert :\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}を定義します。ルベーグ可測関数の絶対値として定義される関数はルベーグ可測であるため\(\left\vert f\right\vert \)はルベーグ可測です。さらに、以下の条件\begin{equation}\int_{X}\left\vert f\right\vert d\mu <+\infty \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つことは\(f\)が\(X\)上でルベーグ積分可能であるための必要十分条件です。その一方で、\(\left\vert f\right\vert \)は非負値をとるとともに、\begin{equation*}\left\vert f\right\vert \leq \left\vert f\right\vert
\end{equation*}が成り立つため、比較判定法より、\(\left\vert f\right\vert \)が\(X\)上でルベーグ積分可能であるならば、\(f\)は\(X\)上でルベーグ積分可能です。ただし、\(\left\vert f\right\vert \)は非負値をとるため、\(\left\vert f\right\vert \)が\(X\)上でルベーグ積分可能であることは\(\left( 1\right) \)が成り立つことを意味します。以上より、比較判定法が要求する条件は\(\left(1\right) \)の一般化であることが明らかになりました。

 

演習問題

問題(部分集合におけるルベーグ積分可能性)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとします。\(A\subset X\)を満たすルベーグ可測集合\(A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選んだとき、\(f\)は\(A\)上でルベーグ積分可能であることを比較判定法を用いて示してください。
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