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多変数関数のルベーグ積分

多変数関数のルベーグ積分の単調性

目次

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非負値関数のルベーグ積分の非負性

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)および\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ可測集合族\(\mathfrak{M}_{\mu }\)に加えてルベーグ測度\(\mu :\mathfrak{M}_{\mu }\rightarrow \mathbb{R} _{+}\cup \left\{ +\infty \right\} \)からなる測度空間\begin{equation*}\left( \mathbb{R} ^{n},\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right)
\end{equation*}が与えられているものとします。さらに、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された非負値をとる多変数の拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。つまり、\begin{equation*}
\forall \boldsymbol{x}\in X:0\leq f\left( \boldsymbol{x}\right) \leq +\infty
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
0\leq f\leq +\infty
\end{equation*}が成り立つということです。加えて、\(f\)が\(X\)上でルベーグ積分可能である場合には、ルベーグ積分に関しても以下の大小関係\begin{equation*}0\leq \int_{X}fd\mu <+\infty
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、非負値をとるルベーグ可測関数がルベーグ積分可能である場合、ルベーグ積分の値は非負の有限な実数になります。

命題(非負値関数のルベーグ積分の非負性)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された非負値をとる拡大実数値ルベーグ可測関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が\(X\)上でルベーグ積分可能であるならば、\begin{equation*}0\leq \int_{X}fd\mu <+\infty
\end{equation*}が成り立つ。

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ルベーグ積分の単調性

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された2つの拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{eqnarray*}f &:&\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} } \\
g &:&\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{eqnarray*}が与えられているものとします。加えて、これらの関数は以下の条件\begin{equation*}
\forall \boldsymbol{x}\in X:f\left( \boldsymbol{x}\right) \leq g\left(
\boldsymbol{x}\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
f\leq g
\end{equation*}を満たすものとします。さらに、\(f,g\)が\(X\)上でルベーグ積分可能である場合、これらの関数のルベーグ積分の間にも同様の大小関係\begin{equation*}\int_{X}fd\mu \leq \int_{X}gd\mu
\end{equation*}が成り立ちます。以上の性質をルベーグ積分に関する単調性(monotonicity)と呼びます。

命題(ルベーグ積分の単調性)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\(f,g:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられているものとする。さらに、\begin{equation*}\forall \boldsymbol{x}\in X:f\left( \boldsymbol{x}\right) \leq g\left(
\boldsymbol{x}\right)
\end{equation*}が成り立つものとする。\(f,g\)がともに\(X\)上でルベーグ積分可能である場合には、\begin{equation*}\int_{X}fd\mu \leq \int_{X}gd\mu
\end{equation*}が成り立つ。

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絶対値関数のルベーグ積分

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が\(X\)上においてルベーグ積分可能である場合には、\begin{equation*}\int_{X}fd\mu <+\infty
\end{equation*}が成り立つため、その絶対値についても、\begin{equation*}
\left\vert \int_{X}fd\mu \right\vert <+\infty
\end{equation*}が成り立ちます。

以上の状況において関数\begin{equation*}
\left\vert f\right\vert :\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}を定義すると、これはそれぞれの\(\boldsymbol{x}\in X\)に対して、\begin{equation*}\left\vert f\right\vert \left( \boldsymbol{x}\right) =\left\vert f\left(
\boldsymbol{x}\right) \right\vert
\end{equation*}を定めます。ルベーグ可測関数の絶対値として定義される関数はルベーグ可測関数であるため\(\left\vert f\right\vert \)もまた\(X\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数ですが、以上の状況のもとでは\(\left\vert f\right\vert \)もまた\(X\)上においてルベーグ積分可能になることが保証されます。つまり、\begin{equation*}\int_{X}\left\vert f\right\vert d\mu <+\infty
\end{equation*}が成り立ちます。加えて、関数\(\left\vert f\right\vert \)のルベーグ積分ともとの関数\(f\)のルベーグ積分の間には以下の関係\begin{equation*}\left\vert \int_{X}fd\mu \right\vert \leq \int_{X}\left\vert f\right\vert
d\mu
\end{equation*}が成り立つことが保証されます。つまり、関数\(\left\vert f\right\vert \)のルベーグ積分は、もとの関数\(f\)のルベーグ積分の絶対値以上になります。

命題(絶対値関数のルベーグ積分)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられているものとする。関数\(\left\vert f\right\vert :\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} \)もまた\(X\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数である。\(f\)が\(X\)上でルベーグ積分可能であるならば\(\left\vert f\right\vert \)もまた\(X\)上でルベーグ積分可能であるとともに、以下の関係\begin{equation*}\left\vert \int_{X}fd\mu \right\vert \leq \int_{X}\left\vert f\right\vert
d\mu
\end{equation*}が成り立つ。

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演習問題

問題(ほとんどいたるところで非負値をとる関数のルベーグ積分)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が非負値をとるとともに\(X\)上においてルベーグ積分可能である場合には、\begin{equation*}0\leq \int_{X}fd\mu <+\infty
\end{equation*}が成り立つことを本文中で示しました。実際には、\(X\)上のほとんどいたるところで\(f\)が非負値をとる場合にも同様の主張が成り立つことを示してください。
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問題(ほとんどいたるところで大小関係が成立する場合の単調性)
ルベーグ集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された2つの拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{eqnarray*}f &:&\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} } \\
g &:&\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{eqnarray*}が\(X\)上において\(f\leq g\)を満たすとともに\(f,g\)がともに\(X\)上でルベーグ積分可能である場合には、\begin{equation*}\int_{X}fd\mu \leq \int_{X}gd\mu
\end{equation*}が成り立つことを本文中で示しました。実際には、\(X\)上のほとんどいたるところで\(f\leq g\)が成り立つ場合にも同様の主張が成り立つことを示してください。
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問題(ほとんどいたるところで等しい関数のルベーグ積分)
ルベーグ集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{eqnarray*}f &:&\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} } \\
g &:&\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{eqnarray*}が\(X\)上のほとんどいたるところで等しいものとします。加えて、\(f,g\)はともに\(X\)上でルベーグ積分可能であるものとします。この場合には、\begin{equation*}\int_{X}fd\mu =\int_{X}gd\mu
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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関連知識

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