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ユークリッド空間上のルベーグ測度

ユークリッド空間上の零集合とルベーグ可測集合族の完備性

目次

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零集合

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ外測度\(\mu ^{\ast }:2^{\mathbb{R} ^{n}}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\cup \left\{ +\infty \right\} \)が集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)に対して定める外測度が、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\right) =0
\end{equation*}である場合、すなわち、集合\(A\)の外測度が\(0\)である場合、\(A\)を零集合(null set)と呼びます。

例(空集合は零集合)
空集合は任意の集合の部分集合であるため\(\phi \subset \mathbb{R} ^{n}\)であり、したがってルベーグ外測度\(\mu ^{\ast }:2^{\mathbb{R} ^{n}}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\cup \left\{ +\infty \right\} \)は空集合に対しても外測度を定めますが、外測度の性質より、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( \phi \right) =0
\end{equation*}が成り立つため、空集合\(\phi \)は零集合であることが明らかになりました。
例(1点集合は零集合)
点\(\boldsymbol{x}\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだ上で、それだけを要素として持つ1点集合\begin{equation*}\left\{ \boldsymbol{x}\right\} \subset \mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}を構成します。正の実数\(\varepsilon >0\)を任意に選んだ上で、可算区間列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{+\infty }\)を、\begin{equation*}I_{k}=\left\{
\begin{array}{ll}
\prod\limits_{i=1}^{n}\left[ x_{i}-\dfrac{\varepsilon }{2n},x_{i}+\dfrac{\varepsilon }{2n}\right) & \left( k=1\right) \\
\phi & \left( k=2,3,\cdots \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}と定義します。\(\boldsymbol{x}\in I_{1}\)であるため、\begin{equation*}\left\{ \boldsymbol{x}\right\} \subset \bigcup\limits_{k=1}^{+\infty }I_{k}
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、この区間列\(\left\{I_{k}\right\} _{k=1}^{+\infty }\)は\(\left\{ \boldsymbol{x}\right\} \)を覆う可算区間列です。この区間列に含まれる区間の体積の総和は、\begin{eqnarray*}\sum\limits_{k=1}^{+\infty }m\left( I_{k}\right) &=&m\left( I_{1}\right)
+\sum\limits_{k=2}^{+\infty }m\left( I_{k}\right) \\
&=&m\left( \prod\limits_{i=1}^{n}\left[ x_{i}-\dfrac{\varepsilon }{2n},x_{i}+\dfrac{\varepsilon }{2n}\right) \right) +\sum\limits_{k=2}^{+\infty
}m\left( \phi \right) \quad \because \left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\text{の定義} \\
&=&\prod\limits_{i=1}^{n}\left[ \left( x_{i}+\dfrac{\varepsilon }{2n}\right) -\left( x_{i}-\dfrac{\varepsilon }{2n}\right) \right] +\sum\limits_{k=2}^{+\infty }0\quad \because m\text{の定義および}m\left( \phi \right) =0 \\
&=&n\cdot \frac{2\varepsilon }{2n} \\
&=&\varepsilon
\end{eqnarray*}であるため、ルベーグ外測度\(\mu ^{\ast }\)の定義より、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( \left\{ \boldsymbol{x}\right\} \right) \leq \varepsilon
\end{equation*}を得ます。任意の\(\varepsilon>0\)に対して同様の議論が成り立つため、\begin{equation}\forall \varepsilon >0:\mu ^{\ast }\left( \left\{ \boldsymbol{x}\right\}
\right) \leq \varepsilon \quad \cdots (1)
\end{equation}を得ます。一方、\(\mu ^{\ast }\)の非負性より\(\mu ^{\ast }\left( \left\{ \boldsymbol{x}\right\} \right) \geq 0\)です。\(\mu ^{\ast}\left( \left\{ \boldsymbol{x}\right\} \right) >0\)を仮定する場合、\begin{equation*}\frac{\mu ^{\ast }\left( \left\{ \boldsymbol{x}\right\} \right) }{2}>0
\end{equation*}となるため、これと\(\left( 1\right) \)より、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( \left\{ \boldsymbol{x}\right\} \right) \leq \frac{\mu
^{\ast }\left( \left\{ \boldsymbol{x}\right\} \right) }{2}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\frac{\mu ^{\ast }\left( \left\{ \boldsymbol{x}\right\} \right) }{2}\leq 0
\end{equation*}となり矛盾です。したがって背理法より、\begin{equation*}
\mu ^{\ast }\left( \left\{ \boldsymbol{x}\right\} \right) =0
\end{equation*}であることが示されました。つまり、1点集合\(\left\{ \boldsymbol{x}\right\} \)は零集合であるということです。

集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が零集合でないことは、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\right) \not=0
\end{equation*}が成り立つことを意味しますが、外測度\(\mu^{\ast }\)は非負性を満たすため、以上の命題は、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\right) >0
\end{equation*}と必要十分です。つまり、集合が零集合ではないことは、その集合の外測度が正であることを意味します。

例(区間は零集合ではない)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の区間\(I\in \mathfrak{S}_{m}\)が非空である場合には、\(a_{i}<b_{i}\)を満たす実数\(a_{i},b_{i}\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}I=\prod_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right)
\end{equation*}と表現されるとともに、その外測度は、\begin{eqnarray*}
\mu ^{\ast }\left( I\right) &=&\mu ^{\ast }\left( \prod_{i=1}^{n}\left[
a_{i},b_{i}\right) \right) \\
&=&\prod_{i=1}^{n}\left( b_{i}-a_{i}\right) \quad \because \mu ^{\ast }\text{は区間の体積}m\text{の拡張} \\
&>&0\quad \because a_{i}<b_{i}
\end{eqnarray*}を満たします。したがって、非空の区間は零集合ではないことが明らかになりました。

 

零集合の部分集合は零集合

零集合の部分集合は零集合であることが保証されます。つまり、集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\right) =0
\end{equation*}を満たす場合、\(B\subset A\)を満たす任意の集合\(B\subset \mathbb{R} ^{n}\)についても、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( B\right) =0
\end{equation*}が成り立つということです。

命題(零集合の部分集合は零集合)
集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が零集合であるならば、\(A\)の任意の部分集合もまた零集合である。
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例(空集合は零集合)
集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が零集合であるものとします。空集合は任意の集合の部分集合であるため\(\phi \subset A\)です。したがって先の命題より\(\phi \)は零集合です。

先の命題より、集合\(A\)が零集合ではない部分集合を持つ場合、\(A\)は零集合ではありません。

例(区間塊は零集合ではない)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の非空の区間塊\(A\in \mathfrak{R}\left( \mathfrak{S}_{m}\right) \)を任意に選びます。区間塊の定義より、互いに素な有限個の区間\(I_{1},\cdots,I_{n}\in \mathfrak{S}_{m}\)を用いて、\begin{equation*}A=\bigcup\limits_{k=1}^{n}I_{k}
\end{equation*}と表すことができます。このとき、任意の\(k\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} \)について、\begin{equation*}I_{k}\subset A
\end{equation*}が成り立ちます。\(A\)は非空であるため少なくとも1つの区間\(I_{k}\)は非空ですが、先に示したように非空な区間\(I_{k}\)は零集合ではないため、先の命題より\(A\)は零集合ではありません。以上より、非空の区間塊は零集合ではないことが明らかになりました。

 

零集合はルベーグ可測

零集合はルベーグ可測であることが保証されます。つまり、集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\right) =0
\end{equation*}を満たす場合には、任意の集合\(S\subset \mathbb{R} ^{n}\)に対して、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( S\right) \geq \mu ^{\ast }\left( S\cap A\right) +\mu
^{\ast }\left( S\cap A^{c}\right)
\end{equation*}が成り立つことが保証されるということです。

命題(零集合はルベーグ可測)
集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が零集合であるならば、\(A\)はルベーグ可測である。
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先の命題の逆は成り立ちません。つまり、ルベーグ可測集合は零集合であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(零集合ではない可測集合)
非空の区間\(I\in \mathfrak{S}_{m}\)を任意に選びます。区間の定義より、\(a_{i}<b_{i}\)を満たす実数\(a_{i},b_{i}\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}I=\prod_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right)
\end{equation*}と表すことができます。先に示したように\(I\)は零集合ではありません。その一方で、任意の区間はルベーグ可測であるため\(I\)はルベーグ可測です。

 

零集合どうしの和集合は零集合

可算個の零集合どうしの和集合もまた零集合になることが保証されます。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合を要素として持つ可算集合列\(\left\{ A_{k}\right\} _{k=1}^{+\infty }\)が、\begin{equation*}\forall k\in \mathbb{N} :\mu ^{\ast }\left( A_{k}\right) =0
\end{equation*}を満たす場合、\begin{equation*}
\mu ^{\ast }\left( \bigcup_{k=1}^{+\infty }A_{k}\right) =0
\end{equation*}が成り立つということです。

命題(可算個の零集合の和集合は零集合)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合を要素として持つ可算集合列\(\left\{ A_{k}\right\} _{k=1}^{+\infty }\)の要素がいずれも零集合であるならば、和集合\(\bigcup_{k=1}^{+\infty }A_{k}\)もまた零集合である。
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例(可算集合は零集合)
\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合であるような可算集合\begin{equation*}\left\{ \boldsymbol{x}_{1},\boldsymbol{x}_{2},\cdots \right\}
\end{equation*}を任意に選びます。先に示したように1点集合\(\left\{ \boldsymbol{x}_{k}\right\} \)は零集合であるため、\(\left\{ \boldsymbol{x}_{1},\boldsymbol{x}_{2},\cdots \right\} \)は可算個の零集合の和集合であり、したがって先の命題より\(\left\{ \boldsymbol{x}_{1},\boldsymbol{x}_{2},\cdots \right\} \)は零集合です。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)上の可算集合は零集合です。

先の命題を用いると、有限個の零集合どうしの和集合もまた零集合になることが保証されます。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合を要素として持つ有限集合列\(\left\{ A_{k}\right\} _{k=1}^{n}\)が、\begin{equation*}\forall k\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :\mu ^{\ast }\left( A_{k}\right) =0
\end{equation*}を満たす場合、\begin{equation*}
\mu ^{\ast }\left( \bigcup_{k=1}^{n}A_{k}\right) =0
\end{equation*}が成り立つということです。

命題(有限個の零集合の和集合は零集合)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合を要素として持つ有限集合列\(\left\{ A_{k}\right\} _{k=1}^{n}\)の要素がいずれも零集合であるならば、和集合\(\bigcup_{k=1}^{n}A_{k}\)もまた零集合である。
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例(有限集合は零集合)
\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合であるような有限集合\begin{equation*}\left\{ \boldsymbol{x}_{1},\cdots ,\boldsymbol{x}_{n}\right\}
\end{equation*}を任意に選びます。先に示したように1点集合\(\left\{ \boldsymbol{x}_{k}\right\} \)は零集合であるため、\(\left\{ \boldsymbol{x}_{1},\cdots ,\boldsymbol{x}_{n}\right\} \)は有限個の零集合の和集合であり、したがって先の命題より\(\left\{ \boldsymbol{x}_{1},\cdots ,\boldsymbol{x}_{n}\right\} \)は零集合です。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)上の有限集合は零集合です。

 

零集合との和集合

ある集合と零集合の和集合をとったとき、外測度は変化しません。つまり、集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)と零集合\(B\subset \mathbb{R} ^{n}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\cup B\right) =\mu ^{\ast }\left( A\right)
\end{equation*}が成り立つということです。

命題(零集合との和集合)
集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)と零集合\(B\subset \mathbb{R} ^{n}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\cup B\right) =\mu ^{\ast }\left( A\right)
\end{equation*}が成り立つ。

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零集合との差集合

ある集合と零集合の差集合をとったとき、外測度は変化しません。つまり、集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)と零集合\(B\subset \mathbb{R} ^{n}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\backslash B\right) =\mu ^{\ast }\left( A\right)
\end{equation*}が成り立つということです。

命題(零集合との差集合)
集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)と零集合\(B\subset \mathbb{R} ^{n}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\backslash B\right) =\mu ^{\ast }\left( A\right)
\end{equation*}が成り立つ。

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ルベーグ測度を用いた零集合の定義

集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が零集合であるものとします。つまり、ルベーグ外測度\(\mu ^{\ast }:2^{\mathbb{R} ^{n}}\rightarrow \mathbb{R} \)のもとで、\begin{equation}\mu ^{\ast }\left( A\right) =0 \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つということです。先に示したように零集合はルベーグ可測集合であるため、\begin{equation}
A\in \mathfrak{M}_{\mu } \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます。ただし、\(\mathfrak{M}_{\mu }\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ可測集合族です。すると、ルベーグ測度\(\mu :\mathfrak{M}_{\mu}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\cup \left\{ +\infty \right\} \)の定義および\(\left( 2\right) \)より、\begin{equation*}\mu \left( A\right) =\mu ^{\ast }\left( A\right)
\end{equation*}が成り立つため、これと\(\left( 1\right) \)より、\begin{equation*}\mu \left( A\right) =0
\end{equation*}を得ます。以上より、零集合はルベーグ可測であるとともに、そのルベーグ測度が\(0\)であることが明らかになりました。逆も成立するため以下を得ます。

命題(ルベーグ測度を用いた零集合の定義)
ルベーグ測度空間\(\left( \mathbb{R} ^{n},\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)が与えられているものとする。集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)について、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ A\in \mathfrak{M}_{\mu } \\
&&\left( b\right) \ \mu \left( A\right) =0
\end{eqnarray*}がともに成り立つことは、\(A\)が零集合であるための必要十分条件である。
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ルベーグ可測集合族の完備性

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ集合族\(\mathfrak{M}_{\mu }\)に属する零集合\(A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選びます。つまり、\begin{equation*}\mu \left( A\right) =0
\end{equation*}が成り立つということです。ルベーグ測度\(\mu \)の定義より、このとき、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\right) =0
\end{equation*}もまた成り立ちます。\(B\subset A\)を満たす集合\(B\subset \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだとき、ルベーグ外測度\(\mu ^{\ast }\)の単調性より、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( B\right) =0
\end{equation*}を得ます。つまり、\(B\)は零集合です。先の命題より、\(B\)が零集合であることと、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ B\in \mathfrak{M}_{\mu } \\
&&\left( b\right) \ \mu \left( B\right) =0
\end{eqnarray*}がともに成り立つことは必要十分であるため、\begin{equation*}
B\in \mathfrak{M}_{\mu }
\end{equation*}を得ます。

以上より、ルベーグ可測な零集合を任意に選んだとき、その任意の部分集合もまたルベーグ可測であることが明らかになりました。つまり、ルベーグ可測集合族\(\mathfrak{M}_{\mu }\)は以下の性質\begin{equation*}\forall A\in \mathfrak{M}_{\mu },\ \forall B\in 2^{\mathbb{R} ^{n}}:\left\{ \left[ \mu \left( A\right) =0\wedge B\subset A\right] \Rightarrow B\in \mathfrak{M}_{\mu }\right\}
\end{equation*}を満たすということです。このような事実を指して、ルベーグ可測集合族\(\mathfrak{M}_{\mu }\)は完備である(complete)と言います。

命題(ルベーグ可測集合族の完備性)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ可測集合族\(\mathfrak{M}_{\mu }\)は完備である。

 

ほとんどいたるところ

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上のルベーグ可測集合\(A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選んだ上で、以下の命題\begin{equation*}\forall \boldsymbol{x}\in A:P\left( \boldsymbol{x}\right)
\end{equation*}が成り立つかを検討している状況を想定します。つまり、可測集合の要素である任意の点\(\boldsymbol{x}\in A\)について命題\(P\left( \boldsymbol{x}\right) \)が成り立つかを検討しているということです。問題としている可測集合\(A\)の部分集合であるような零集合\(B\)が与えられた状況を想定します。つまり、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ B\subset A \\
&&\left( b\right) \ \mu \left( B\right) =0
\end{eqnarray*}をともに満たす集合\(B\subset \mathbb{R}^{n} \)に注目します。以上の状況のもと、以下の命題\begin{equation*}\forall \boldsymbol{x}\in A\backslash B:P\left( \boldsymbol{x}\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、命題\(P\left( \boldsymbol{x}\right) \)は\(A\)上のほとんどいたるところ(almost everywhere)で成り立つと言います。

例(ほとんどいたるところ)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\frac{1}{x^{2}+y^{2}}
\end{equation*}を定めるものとします。実数を\(0\)で割ることはできないため、この関数は点\(\left( 0,0\right) \)において定義されていません。ただし、ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{2}\)はルベーグ可測であり、1点集合\(\left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)は零集合であるため、この関数\(f\)は\(\mathbb{R} ^{2}\)上のほとんどいたるところで定義されています。

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