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ユークリッド空間上のルベーグ測度

ユークリッド空間上の区間の集合族

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測度を導入する場としての部分集合族

数直線\(\mathbb{R} \)における区間の長さ、平面\(\mathbb{R} ^{2}\)における長方形の面積、空間\(\mathbb{R} ^{3}\)における直方体の体積などはいずれも同一種類の小さい量を加え合わせることでより大きな量を作り出すことができるという意味において外延的な量です。例えば、数直線\(\mathbb{R} \)上の区間を複数の小さい区間に分割した上で、得られた小区間の長さを足し合わせればもとの区間の長さが得られます。したがって、区間の長さは外延量を表す概念です。平面\(\mathbb{R} ^{2}\)における長方形の面積や、空間\(\mathbb{R} ^{3}\)における直方体の体積などについても同様です。ここでは、これらの空間\(\mathbb{R} ,\mathbb{R} ^{2},\mathbb{R} ^{3}\)を一般化したユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の対象とします。

では、一般に、外延量という概念をどのような数学的対象として表現できるでしょうか。数直線\(\mathbb{R} \)における区間の長さに話を戻すと、個々の区間は\(\mathbb{R} \)の部分集合であるため、ある区間の長さと、その区間を分割することにより得られる小区間の長さの関係は、\(\mathbb{R} \)の部分集合どうしの外延量の関係として捉えることができます。つまり、「区間の長さ」という外延量は\(\mathbb{R} \)の部分集合族上に導入される概念です。

以上の議論を一般化すると、私たちが外延量を測定しようとする対象は常に何らかの集合の部分集合であり、そのような部分集合を集めることにより得られる集合族において外延量は導入されるということです。一般に、外延量は測度(measure)と呼ばれる概念として定式化されます。本稿の目的はユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)における測度について解説することですが、まずは、測度を導入し得る\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合族の中でも最も基本的なものについて考えます。

 

区間および区間の集合族

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合には様々な種類がありますが、当面はその中でも区間(interval)だけを外延量の測定対象とします。さらに、区間にも様々な種類がありますが、ここでは有界な右半開区間(bounded right half open interval)を外延量の測定対象とします。具体的には、それぞれの番号\(i\ \left( =1,\cdots,n\right) \)に対して\(a_{i}\leq b_{i}\)を満たす実数\(a_{i},b_{i}\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{eqnarray*}I &=&\left[ a_{1},b_{1}\right) \times \cdots \times \left[
a_{n},b_{n}\right) \\
&=&\prod_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right) \\
&=&\left\{ \left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) \in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \forall i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :a_{i}\leq
x_{i}<b_{i}\right\}
\end{eqnarray*}と定義される\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合を考察対象にするということです。以降において区間や半開区間などと言うとき、特に断りのない場合、それは先のような有界な右半開区間を指すものとします。ユークリッド\(\mathbb{R} ^{n}\)では区間のことを直方体(rectangle)や超直方体(hyperrectangle)などとも呼びます。

考察対象である右半開区間\(I=\prod_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right) \)は有界なものに限定されます。つまり、この区間の端点\(a_{i},b_{i}\)は、\begin{equation*}\forall i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :-\infty <a_{i}\leq b_{i}<+\infty
\end{equation*}を満たす実数です。言い換えると、\(a_{i}\)は負の無限大ではない有限な実数であり、\(b_{i}\)は正の無限大\(+\infty \)ではない有限な実数であり、両者の間には\(a_{i}\leq b_{i}\)という関係が成り立ちます。

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の有界な右半開区間をすべて集めることにより得られる\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合族を、\begin{equation*}\mathfrak{S}=\left\{ \prod_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right) \subset \mathbb{R} ^{n}\ |\ \forall i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :-\infty <a_{i}\leq
b_{i}<+\infty \right\}
\end{equation*}で表記します。また、\(\mathfrak{S}\)の要素である個々の区間を、\begin{equation*}I,\quad I_{k}\ \left( k=1,2,\cdots \right)
\end{equation*}などで表記するものとします。集合族\(\mathfrak{S}\)に属するそれぞれの区間に対して外延量を与えることが当面の目標ですが、まずは\(\mathfrak{S}\)の性質を確認します。

例(空間における区間)
空間\(\mathbb{R} ^{3}\)における区間は、\(a_{i}\leq b_{i}\)を満たす実数\(a_{i},b_{i}\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}I=\left[ a_{1},b_{1}\right) \times \left[ a_{2},b_{2}\right) \times \left[
a_{3},b_{3}\right)
\end{equation*}と表現されます。したがって、区間の集合族は、\begin{equation*}
\mathfrak{S}=\left\{ \left[ a_{1},b_{1}\right) \times \left[
a_{2},b_{2}\right) \times \left[ a_{3},b_{3}\right) \subset \mathbb{R} ^{3}\ |\ \forall i\in \left\{ 1,2,3\right\} :-\infty <a_{i}\leq
b_{i}<+\infty \right\}
\end{equation*}となります。

例(平面における区間)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)における区間は、\(a_{i}\leq b_{i}\)を満たす実数\(a_{i},b_{i}\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}I=\left[ a_{1},b_{1}\right) \times \left[ a_{2},b_{2}\right)
\end{equation*}と表現されます。したがって、区間の集合族は、\begin{equation*}
\mathfrak{S}=\left\{ \left[ a_{1},b_{1}\right) \times \left[
a_{2},b_{2}\right) \subset \mathbb{R} ^{2}\ |\ \forall i\in \left\{ 1,2\right\} :-\infty <a_{i}\leq b_{i}<+\infty
\right\}
\end{equation*}となります。

例(数直線における区間)
数直線\(\mathbb{R} \)における区間は、\(a\leq b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}I=\left[ a,b\right)
\end{equation*}と表現されます。したがって、区間の集合族は、\begin{equation*}
\mathfrak{S}=\left\{ \left[ a,b\right) \subset \mathbb{R} \ |\ -\infty <a\leq b<+\infty \right\}
\end{equation*}となります。

 

空集合は区間

区間の集合族\(\mathfrak{S}\)が満たす1つ目の性質は、\begin{equation*}\phi \in \mathfrak{S}
\end{equation*}です。つまり、空集合は区間です。空集合もまた外延量の測定対象になるということです。

命題(空集合は区間)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の区間からなる集合族\(\mathfrak{S}\)は、\begin{equation*}\phi \in \mathfrak{S}
\end{equation*}を満たす。

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例(空集合は区間)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)において、\begin{eqnarray*}\left[ 0,0\right) \times \left[ 0,0\right) &=&\phi \\
\left[ 1,1\right) \times \left[ 1,1\right) &=&\phi \\
\left[ 0,0\right) \times \left[ 1,2\right) &=&\phi
\end{eqnarray*}などが成り立つため、先の命題より、これらはいずれも\(\mathfrak{S}\)の要素です。

 

区間どうしの共通部分は区間

区間集合族\(\mathfrak{S}\)が満たす2つ目の性質は、2つの区間\(I,I^{\prime }\in \mathfrak{S}\)を任意に選んだときに、\begin{equation*}I\cap I^{\prime }\in \mathfrak{S}
\end{equation*}が成り立つというものです。つまり、\(\mathfrak{S}\)は共通部分について閉じています。外延量の測定対象である2つの区間が任意に与えられたとき、それらの共通部分もまた外延量の測定対象になるということです。

命題(区間どうしの共通部分は区間)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の区間からなる集合族\(\mathfrak{S}\)は共通部分について閉じている。すなわち、\begin{equation*}\forall I,I^{\prime }\in \mathfrak{S}:I\cap I^{\prime }\in \mathfrak{S}
\end{equation*}が成り立つ。

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例(区間どうしの共通部分)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)において、以下の2つの区間\begin{eqnarray*}I_{1} &=&\left[ 0,1\right) \times \left[ 0,1\right) \\
I_{2} &=&\phi
\end{eqnarray*}の共通部分は、\begin{eqnarray*}
I_{1}\cap I_{2} &=&\phi \\
&\in &\mathfrak{S}\quad \because \phi \in \mathfrak{S}
\end{eqnarray*}を満たします。また、以下の2つの区間\begin{eqnarray*}
I_{3} &=&\left[ 0,2\right) \times \left[ 0,2\right) \\
I_{4} &=&\left[ 1,3\right) \times \left[ 1,3\right)
\end{eqnarray*}の共通部分は、\begin{eqnarray*}
I_{3}\cap I_{4} &=&\left[ 1,2\right) \times \left[ 1,2\right) \\
&\in &\mathfrak{S}\quad \because \mathfrak{S}\text{の定義}
\end{eqnarray*}を満たします。以上の結果は先の命題の主張と整合的です。

有限個の区間\(I_{1},\cdots ,I_{K}\in \mathfrak{S}\)を任意に選んだとき、先の命題を繰り返し適用することにより、\begin{equation*}\bigcap\limits_{k=1}^{K}I_{k}\in \mathfrak{S}
\end{equation*}が成り立つことが示されます。つまり、有限個の区間の共通部分もまた区間になるということです。この性質を指して、\(\mathfrak{S}\)は有限交叉について閉じている(closed with respect to finite intersections)と言います。逆に、\(\mathfrak{S}\)が有限交叉について閉じている場合、\(\mathfrak{S}\)は明らかに2つの区間の交叉についても閉じています。つまり、\(\mathfrak{S}\)は共通部分について閉じているということです。したがって以下の命題を得ます。

命題(有限個の区間の共通部分は区間)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の区間からなる集合族\(\mathfrak{S}\)が有限交叉について閉じていることと、\(\mathfrak{S}\)が共通部分について閉じていることは必要十分である。
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区間の集合族\(\mathfrak{S}\)は有限交叉について閉じていることが示されましたが、可算交叉については閉じていません。つまり、可算個の区間\(I_{1},I_{2},\cdots \in \mathfrak{S}\)に対して、\begin{equation*}\bigcap_{k=1}^{+\infty }I_{k}\in \mathfrak{S}
\end{equation*}は成り立つとは限らないということです。以下の例より明らかです。

例(区間の可算交叉)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)において、\(a<b\)かつ\(c<d\)を満たす実数\(a,b,c,d\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、それぞれの番号\(k\in \mathbb{N} \)に対して、\begin{equation*}I_{k}=\left[ a,b+\frac{1}{k}\right) \times \left[ c,d+\frac{1}{k}\right)
\end{equation*}と定義します。明らかに任意の\(k\in \mathbb{N} \)について\begin{equation*}I_{k}\in \mathfrak{S}
\end{equation*}が成り立ちます。その一方で、\begin{eqnarray*}
\bigcap_{k=1}^{+\infty }I_{k} &=&\left[ a,b\right] \times \left[ c,d\right] \\
&\not\in &\mathfrak{S}\quad \because \mathfrak{S}\text{の定義}
\end{eqnarray*}となります。

 

区間どうしの差集合は区間の有限非交和として表される

区間集合族\(\mathfrak{S}\)が満たす3つ目の性質は、2つの区間\(I,I^{\prime }\in \mathfrak{S}\)を任意に選んだとき、それに対して有限個の互いに素な区間\(I_{1},\cdots ,I_{K}\in \mathfrak{S}\)が存在して、\begin{equation*}I\backslash I^{\prime }=\bigcup\limits_{k=1}^{K}I_{k}
\end{equation*}が成り立つというものです。つまり、集合族\(\mathfrak{S}\)に属する2つの区間を任意に選んだとき、それらの差集合は、同じく\(\mathfrak{S}\)に属する互いに素な有限個の区間の和集合として表せるということです。

一般に、有限個の互いに素な集合どうしの和集合を直和(direct sum)や有限非交和(finite disjoint unions)などと呼びます。したがって、上の性質は、任意の2つの区間の差集合が区間の有限非交和として表現可能であることと端的に表現できます。ちなみに、区間そのものは1個の区間の非交和とみなされます。

命題(任意の2つの区間の差集合は区間の有限非交和として表される)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の区間からなる集合族\(\mathfrak{S}\)に属する任意の2つの区間の差集合は区間の有限非交和として表現可能である。すなわち、区間\(I,I^{\prime }\in \mathfrak{S}\)を任意に選んだとき、それらに対して、\begin{equation*}I\backslash I^{\prime }=\bigcup\limits_{k=1}^{K}I_{k}
\end{equation*}を満たす有限個の互いに素な区間\(I_{1},\cdots ,I_{K}\in \mathfrak{S}\)が存在する。
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例(区間どうしの差集合)
平面\(\mathbb{R} ^{2}\)において、以下の2つの区間\begin{eqnarray*}I_{1} &=&\left[ 0,1\right) \times \left[ 0,1\right) \\
I_{2} &=&\phi
\end{eqnarray*}の差集合は、\begin{equation*}
I_{1}\backslash I_{2}=I_{1}
\end{equation*}となるため、\(I_{1}\backslash I_{2}\)は1つの区間の非交和として表現されます。また、以下の2つの区間\begin{eqnarray*}I_{3} &=&\left[ 0,2\right) \times \left[ 0,2\right) \\
I_{4} &=&\left[ 1,3\right) \times \left[ 1,3\right)
\end{eqnarray*}の差集合は、\begin{equation*}
I_{3}\backslash I_{4}=\left( \left[ 0,2\right) \times \left[ 0,1\right)
\right) \cup \left( \left[ 0,1\right) \times \left[ 1,2\right) \right)
\end{equation*}となるため、\(I_{3}\backslash I_{4}\)は1つの区間の非交和として表現されます。以上の結果は先の命題の主張と整合的です。

以上の命題を用いると、\(\mathfrak{S}\)の要素である区間そのものもまた区間の有限非交和として表現可能であることを証明できます。実際、区間\(I\in \mathfrak{S}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}I=I\backslash \phi
\end{equation*}という関係が成り立ちますが、\(\phi \)もまた区間であることから\(I\backslash \phi \)は区間の差集合であるため、先の命題より、これは区間の有限非交和として表すことができます。したがって、\(I\backslash \phi \)に等しい\(I\)もまた区間の有限非交和として表されることが明らかになりました。

命題(区間は有限個の区間の非交和として表現可能)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の区間からなる集合族\(\mathfrak{S}\)に属する任意の区間は、区間の有限非交和として表現可能である。すなわち、区間\(I\in \mathfrak{S}\)を任意に選んだとき、それらに対して、\begin{equation*}I=\bigcup\limits_{k=1}^{K}I_{k}
\end{equation*}を満たす有限個の互いに素な区間\(I_{1},\cdots ,I_{K}\in \mathfrak{S}\)が存在する。

区間\(I,I_{1}\in \mathfrak{S}\)を任意に選んだとき、それらの間に\(I_{1}\subset I\)が成り立つものとします。2つの区間の差集合は区間の有限非交和として表現可能であることから、このとき、\begin{equation*}I/I_{1}=\bigcup\limits_{k=2}^{K}I_{k}
\end{equation*}を満たす有限個の互いに素な区間\(I_{2},\cdots ,I_{K}\in \mathfrak{S}\)が存在します。\(I_{1}\)は\(I_{2},\cdots ,I_{K}\)の中のいずれとも互いに素であるため、このとき、\begin{equation*}I=\bigcup\limits_{k=1}^{K}I_{k}
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、区間\(I\)が自身の部分集合であるような区間\(I_{1}\)を持つ場合、\(I\)は\(I_{1}\)を含む有限個の区間の非交和として表現できるということです。以上の主張の逆も成立するため、区間どうしの差集合が区間の有限非交和として表されるという性質は以下の形に言い換え可能です。

命題(区間は自身の部分集合を含む有限個の区間の非交和として表現可能)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の区間からなる集合族\(\mathfrak{S}\)について、以下の2つは必要十分である。

  1. 区間\(I\in \mathfrak{S}\)とその部分集合であるような区間\(I^{\prime }\in \mathfrak{S}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\(I\)は\(I^{\prime }\)を含めた\(\mathfrak{S}\)の有限個の区間の非交和として表現できる。
  2. 2つの区間\(I,I^{\prime }\in \mathfrak{S}\)を任意に選んだとき、差集合\(I\backslash I^{\prime }\)は\(\mathfrak{S}\)の有限個の区間の非交和として表現できる。
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区間の集合族は集合半環

一般に、集合\(X\)の部分集合族\(\mathfrak{A}\)が空集合を要素として持ち、共通部分について閉じており、さらに、\(\mathfrak{A}\)の任意の2つの要素の差集合が\(\mathfrak{A}\)の要素の有限非交和として表現できる場合、そのような\(\mathfrak{A}\)を集合半環(semiring of sets)と呼びます。先に示したように、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合族である区間の集合族\(\mathfrak{S}\)は以上の3つの性質を満たしますが、これは\(\mathfrak{S}\)が集合半環であることを意味します。

命題(区間集合族は集合半環)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の区間からなる集合族\(\mathfrak{S}\)は集合半環である。すなわち、\(\mathfrak{S}\)は空集合を要素として持ち、共通部分について閉じており、さらに、\(\mathfrak{S}\)の任意の2つの要素の差集合は\(\mathfrak{S}\)の要素の有限非交和として表すことができる。

 

区間の集合族は集合環ではない

一般に、集合\(X\)の部分集合族\(\mathfrak{A}\)が差集合と和集合の双方について閉じているとき、そのような\(\mathfrak{A}\)を集合環(ring of sets)と呼びます。先ほど、区間の集合族\(\mathfrak{S}\)が集合半環であることを示しましたが、その一方で\(\mathfrak{S}\)は集合環ではありません。以下の例から明らかです。

例(区間の集合族は差集合について閉じていない)
数直線\(\mathbb{R} \)において、以下の条件\begin{equation*}a\leq c<d\leq b
\end{equation*}を満たす実数\(a,b,c,d\in \mathbb{R} \)から区間\([a,b),[c,d)\in \mathfrak{S}\)を構成します。これらの区間の差集合をとると、\begin{equation*}\lbrack a,b)\backslash \lbrack c,d)=[a,c)\cup \lbrack d,b)
\end{equation*}となりますが、\(c<d\)ゆえに、上の集合は区間ではなく、したがって\(\mathfrak{S}\)の要素でもありません。したがって\(\mathfrak{S}\)は差集合について閉じていないため集合環ではありません。

区間の集合族\(\mathfrak{S}\)は和集合についても閉じていません。

例(区間の集合族は和集合について閉じていない)
数直線\(\mathbb{R} \)において、以下の条件\begin{equation*}a\leq b<c\leq d
\end{equation*}を満たす実数\(a,b,c,d\in \mathbb{R} \)から区間\([a,b),[c,d)\in \mathfrak{S}\)を構成します。これらの区間の和集合をとると、\begin{equation*}\lbrack a,b)\cup \lbrack c,d)
\end{equation*}となりますが、\(b<c\)ゆえに、上の集合は区間ではなく、したがって\(\mathfrak{S}\)の要素でもありません。したがって\(\mathfrak{S}\)は和集合について閉じていないため集合環ではありません。

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