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ルベーグ測度

カラテオドリ拡張とルベーグ外測度

目次

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区間塊の長さ

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ルベーグ可測集合

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区間の長さのカラテオドリ拡張(ルベーグ外測度)

私たちの目標は数直線\(\mathbb{R} \)の部分集合、すなわち点集合の外延量を測定することですが、まずは\(\mathbb{R} \)上の有界な右半開区間だけを外延量の測定対象とし、そのような区間をすべて集めてできる\(\mathbb{R} \)の部分集合族を\(\mathfrak{S}_{m}\)で表しました。さらに、区間の外延量を表す概念として区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)を導入した上で、これが\(\sigma \)-加法測度としての性質を満たすことを示しました。

ただ、数直線\(\mathbb{R} \)上には有界な区間というクラスには属さない点集合が存在します。そこで、区間よりも広い点集合の概念として、互いに素な有限個の区間の和集合として定義される区間塊と呼ばれるものを定義し、区間塊をすべて集めてできる\(\mathbb{R} \)の部分集合族を\(\mathfrak{R}\left( \mathfrak{S}_{m}\right) \)で表しました。\(\mathfrak{S}_{m}\)は集合半環ですが、そこから生成された\(\mathfrak{R}\left( \mathfrak{S}_{m}\right) \)は集合環であり、両者の間には、\begin{equation*}\mathfrak{S}_{m}\subset \mathfrak{R}\left( \mathfrak{S}_{m}\right)
\end{equation*}が成り立ちます。しかも、\(\mathfrak{R}\left( \mathfrak{S}_{m}\right) \)は\(\mathfrak{S}_{m}\)を部分集合として持つ最小環です。区間の長さ\(m\)はそれぞれの区間\(I\in \mathfrak{S}_{m}\)に対してその測度\(m\left( I\right) \)を定めますが、区間塊の中には区間ではないものが存在するため、区間の長さ\(m\)では区間塊\(A\in \mathfrak{R}\left( \mathfrak{S}_{m}\right) \)の測度を測定できるとは限りません。そこで、\(m\)を拡張する形で、区間塊の外延量を表す概念である区間塊の長さ\(\hat{m}:\mathfrak{R}\left( \mathfrak{S}_{m}\right) \rightarrow \mathbb{R} _{+}\)を導入し、これもまた\(\sigma \)-加法測度としての性質を満たすことを示しました。

区間の長さ\(m\)を区間塊の長さ\(\hat{m}\)へ拡張することにより、外延量を測定可能な点集合の範囲は拡大したものの、数直線\(\mathbb{R} \)上には区間塊というクラスに属さない点集合が存在するため、区間塊の長さ\(\hat{m}\)では外延量を測定できないような点集合が存在します。つまり、区間塊ではない\(\mathbb{R} \)の部分集合に関しては、その外延量を\(m\)や\(\hat{m}\)を用いて測定することはできません。そこで本節では、区間の長さ\(m\)を別の形で拡張することにより、\(\mathbb{R} \)の任意の部分集合の外延量を測定できるような測度概念を定義します。

区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)が与えられているものとします。点集合\(A\subset \mathbb{R} \)を任意に選びます。この点集合\(A\)は区間や区間塊でなくてもよく、\(\mathbb{R} \)の任意の部分集合でかまいません。\(A\)が有界である場合、それを可算個の区間によって覆うことを考えます。つまり、可算個の有界な右半区間からなる列\(\left\{ I_{k}\right\}_{k=1}^{\infty }\subset \mathfrak{S}_{m}\)の中でも、\begin{equation*}A\subset \bigcup_{k=1}^{\infty }I_{k}
\end{equation*}を満たすものを選ぶということです。以下の議論により、このような区間列\(\left\{I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)は必ず存在します。

点集合\(A\subset \mathbb{R} \)が有界である場合には、有界性の定義より、\begin{equation*}A\subset \left[ a,b\right] \end{equation*}を満たす有界な閉区間\(\left[ a,b\right] \subset \mathbb{R} \)が存在します。そこで、正の実数\(\varepsilon >0\)を任意に選べば、\begin{equation*}A\subset \left[ a,b\right] \subset \lbrack a,b+\varepsilon )
\end{equation*}が成り立つため、\(A\)を覆う有界な右半開区間\([a,b+\varepsilon )\in \mathfrak{S}_{m}\)が存在することが明らかになりました。以上を踏まえた上で、区間列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)を、\begin{eqnarray*}I_{1} &=&[a,b+\varepsilon ) \\
I_{k} &=&\phi \quad \left( k\geq 2\right)
\end{eqnarray*}と定義すれば、この区間列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)の和集合は\([a,b+\varepsilon )\)と一致するため\(A\)を覆います。

点集合\(A\subset \mathbb{R} \)が有界である場合、それを覆う可算区間列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)が必ず存在することが明らかになりました。ただ、点集合\(A\)を覆う可算区間列は1つだけであるとは限りません。そこで、\(A\)を覆うそれぞれの可算区間列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)に対して、そこに含まれる区間の長さの総和\begin{equation*}\sum_{k=1}^{\infty }m\left( I_{k}\right) =\lim_{n\rightarrow \infty }\left[
\sum_{k=1}^{n}m\left( I_{k}\right) \right] \end{equation*}を導出します。得られた総和どうしを比較し、その中の下限を\(A\)の外延量として採用し、それを、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\right) =\inf \left\{ \sum_{k=1}^{\infty }m\left(
I_{k}\right) \left\vert A\subset \bigcup_{k=1}^{\infty }I_{k},\ I_{k}\in
\mathfrak{S}_{m}\right. \right\}
\end{equation*}で表記します。

有界な点集合\(A\subset \mathbb{R} \)について、上のように定義される値\(\mu ^{\ast }\left(A\right) \)は常に定まるのでしょうか。先に確認したように、有界な点集合\(A\)を覆う可算区間列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)は必ず存在するため、以下の集合\begin{equation}\left\{ \sum_{k=1}^{\infty }m\left( I_{k}\right) \left\vert A\subset
\bigcup_{k=1}^{\infty }I_{k},\ I_{k}\in \mathfrak{S}_{m}\right. \right\}
\quad \cdots (1)
\end{equation}は\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合です。さらに、区間の長さ\(m\)の非負性より、\(A \)を覆う任意の区間列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)に対して、\begin{equation*}\sum_{k=1}^{\infty }m\left( I_{k}\right) \geq 0
\end{equation*}が成り立つため、\(\left(1\right) \)は下に有界(\(0\)が下界の1つ)な\(\mathbb{R} \)の部分集合です。したがって、\(\mathbb{R} \)の連続性より、\(\left( 1\right) \)には下限が必ず存在します。しかも、\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合が下限を持つとき、それは必ず1つの実数として定まるとともに、その実数は任意の下界以上です。したがって、\(\left( 1\right) \)の下限は\(0\)以上の1つの実数として常に定まることが明らかになりました。結論をまとめると、有界な点集合\(A\)を任意に選んだとき、\(\mu^{\ast }\left( A\right) \)は1つの非負の実数として必ず定まるということです。

一方、点集合\(A\subset \mathbb{R} \)が有界ではない場合には、その外延量を、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\right) =+\infty
\end{equation*}と定義します。

以上を踏まえた上で、それぞれの点集合\(A\in 2^{\mathbb{R} }\)に対して、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\right) =\left\{
\begin{array}{ll}
\inf \left\{ \sum\limits_{k=1}^{\infty }m\left( I_{k}\right) \left\vert
A\subset \bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k},\ I_{k}\in \mathfrak{S}_{m}\right. \right\} & \left( if\ A\text{が有界}\right) \\
+\infty & \left( if\ A\text{が非有界}\right)\end{array}\right.
\end{equation*}を値として定める関数\begin{equation*}
\mu ^{\ast }:2^{\mathbb{R} }\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。ただし、\(2^{\mathbb{R} }\)は\(\mathbb{R} \)のベキ集合です。つまり、\(\mu ^{\ast }\)は区間や区間塊であるとは限らない\(\mathbb{R} \)上の任意の点集合\(A\)に対してその外延量\(\mu ^{\ast}\left( A\right) \)を定めます。この関数\(\mu ^{\ast }\)を区間の長さ\(m\)のカラテオドリ拡張(Carathéodory extension)やルベーグ外測度(Lebesgue outer measure)、またはカラテオドリ外測度(Carathéodory outer measure)などと呼びます。その上で、\(\mu ^{\ast }\)が点集合\(A\)に対して定める外延量\(\mu^{\ast }\left( A\right) \)を\(A\)のルベーグ外測度(Lebesgue outer measure)やカラテオドリ外測度(Carathéodory outer measure)などと呼びます。以降では\(\mu ^{\ast }\)をルベーグ外測度と呼びます。

ルベーグ外測度\(\mu ^{\ast }\)の定義より、\(\mu ^{\ast }\)は\(\mathbb{R} \)上の任意の点集合\(A\)に対してその外測度\(\mu ^{\ast}\left( A\right) \)を定めるため、\(\mu ^{\ast }\)の定義域は\(\mathbb{R} \)のべき集合\(2^{\mathbb{R} }\)です。また、\(\mu ^{\ast }\)の定義より、有界な点集合\(A\)の外測度\(\mu ^{\ast }\left(A\right) \)は非負の実数であり、有界ではない点集合\(A\)の外測度\(\mu ^{\ast }\left(A\right) \)は正の無限大であるため、\(\mu ^{\ast }\)の終集合は\(\mathbb{R} _{+}\cup \left\{ +\infty \right\} \)です。つまり、ルベーグ外測度\(\mu^{\ast }\)は非負性(non-negativity)を満たします。

命題(ルベーグ外測度の非負性)
ルベーグ外測度\(\mu ^{\ast }\)は非負性を満たす。つまり、ルベーグ外測度\(\mu ^{\ast }\)は、\begin{equation*}\mu ^{\ast }:2^{\mathbb{R} }\rightarrow \mathbb{R} _{+}\cup \left\{ +\infty \right\}
\end{equation*}と表現される。

ルベーグ外測度の定義を踏まえた上で、代表的な点集合の外測度を以下で特定します。

例(1点集合の外測度)
点\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、それだけを要素として持つ1点集合\begin{equation*}\left\{ x\right\} \subset \mathbb{R} \end{equation*}について考えます。正の実数\(\varepsilon >0\)を任意に選んだ上で、可算区間列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)を、\begin{equation*}I_{k}=\left\{
\begin{array}{ll}
\left[ x-\dfrac{\varepsilon }{2},x+\dfrac{\varepsilon }{2}\right) & \left(
k=1\right) \\
\phi & \left( k=2,3,\cdots \right)\end{array}\right.
\end{equation*}と定義します。\(x\in I_{1}\)であるため、\begin{equation*}\left\{ x\right\} \subset \bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、この区間列\(\left\{I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)は\(\left\{ x\right\} \)を覆う可算区間列です。この区間列に含まれる区間の長さの総和は、\begin{eqnarray*}\sum\limits_{k=1}^{\infty }m\left( I_{k}\right) &=&m\left( I_{1}\right)
+\sum\limits_{k=2}^{\infty }m\left( I_{k}\right) \\
&=&m\left( \left[ x-\dfrac{\varepsilon }{2},x+\dfrac{\varepsilon }{2}\right)
\right) +\sum\limits_{k=2}^{\infty }m\left( \phi \right) \quad \because
\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\text{の定義} \\
&=&\left( x+\frac{\varepsilon }{2}\right) -\left( x-\frac{\varepsilon }{2}\right) +\sum\limits_{k=2}^{\infty }0\quad \because m\text{の定義および}m\left( \phi \right) =0 \\
&=&\varepsilon
\end{eqnarray*}であるため、ルベーグ外測度\(\mu ^{\ast }\)の定義より、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( \left\{ x\right\} \right) \leq \varepsilon
\end{equation*}を得ます。任意の\(\varepsilon>0\)に対して同様の議論が成り立つため、\begin{equation}\forall \varepsilon >0:\mu ^{\ast }\left( \left\{ x\right\} \right) \leq
\varepsilon \quad \cdots (1)
\end{equation}を得ます。一方、\(\mu ^{\ast} \)の非負性より\(\mu ^{\ast }\left(\left\{ x\right\} \right) \geq 0\)です。\(\mu ^{\ast }\left(\left\{ x\right\} \right) >0\)を仮定する場合、\begin{equation*}\frac{\mu ^{\ast }\left( \left\{ x\right\} \right) }{2}>0
\end{equation*}となるため、これと\(\left( 1\right) \)より、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( \left\{ x\right\} \right) \leq \frac{\mu ^{\ast }\left(
\left\{ x\right\} \right) }{2}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\frac{\mu ^{\ast }\left( \left\{ x\right\} \right) }{2}\leq 0
\end{equation*}となり矛盾です。したがって背理法より、\begin{equation*}
\mu ^{\ast }\left( \left\{ x\right\} \right) =0
\end{equation*}であることが示されました。つまり、\(\mathbb{R} \)上の1点集合の外測度は\(0\)です。ちなみに、外測度が\(0\)であるような\(\mathbb{R} \)の部分集合を零集合(null set)と呼びます。\(\mathbb{R} \)上の任意の1点集合は零集合であるということです。
例(有限集合の外測度)
\(\mathbb{R} \)の部分集合であるような有限集合\begin{equation*}\left\{ x_{1},\cdots ,x_{n}\right\} \subset \mathbb{R} \end{equation*}を任意に選んだとき、その外測度は、\begin{equation*}
\mu ^{\ast }\left( \left\{ x_{1},\cdots ,x_{n}\right\} \right) =0
\end{equation*}になります(演習問題)。\(\mathbb{R} \)上の任意の有限集合もまた零集合であるということです。したがって、\begin{eqnarray*}\mu ^{\ast }\left( \left\{ 1,2,\cdots ,n\right\} \right) &=&0 \\
\mu ^{\ast }\left( \left\{ \frac{1}{1},\frac{1}{2},\cdots ,\frac{1}{n}\right\} \right) &=&0 \\
\mu ^{\ast }\left( \left\{ -1,-2,\cdots ,-n\right\} \right) &=&0 \\
\mu ^{\ast }\left( \left\{ 2,4,\cdots ,2n\right\} \right) &=&0 \\
\mu ^{\ast }\left( \left\{ 1,3,\cdots ,2n-1\right\} \right) &=&0
\end{eqnarray*}などがいずれも成り立ちます。なぜなら、これらはいずれも有限集合の外測度だからです。

例(可算集合の外測度)
\(\mathbb{R} \)の部分集合であるような可算集合\begin{equation*}\left\{ x_{1},x_{2},\cdots \right\}
\end{equation*}を任意に選んだとき、その外測度は、\begin{equation*}
\mu ^{\ast }\left( \left\{ x_{1},\cdots ,x_{n}\right\} \right) =0
\end{equation*}になります(演習問題)。\(\mathbb{R} \)上の任意の可算集合もまた零集合であるということです。したがって、\begin{eqnarray*}\mu ^{\ast }\left( \mathbb{N} \right) &=&0 \\
\mu ^{\ast }\left( \mathbb{Z} \right) &=&0 \\
\mu ^{\ast }\left( \mathbb{Q} \right) &=&0
\end{eqnarray*}などがいずれも成り立ちます。なぜなら、これらはいずれも可算集合の外測度だからです。

 

ルベーグ外測度は区間の長さの拡張

区間の長さ\(m\)のカラテオドリ拡張、すなわちルベーグ外測度\(\mu ^{\ast} \)を用いることにより、\(\mathbb{