WIIS

ルベーグ測度

区間の長さ

目次

前のページ:

区間の集合族

次のページ:

区間塊

Twitter
Mailで保存

区間の長さ

私たちの目標は数直線\(\mathbb{R} \)の部分集合、すなわち点集合の外延量を測定することですが、当面は点集合の中でも有界な右半開区間だけを外延量の測定対象とし、すべての有界な右半開区間を集めてできる\(\mathbb{R} \)の部分集合族を\(\mathfrak{S}\)で表記しました。つまり、この集合族\(\mathfrak{S}\)の要素であるそれぞれの区間は\(a\leq b\)を満たす有限な実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}\lbrack a,b)=\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x<b\right\}
\end{equation*}という形で表現されます。加えて、この集合族\(\mathfrak{S}\)は集合半環であることを示しました。つまり、\(\mathfrak{S}\)は空集合を要素として持ち、共通部分について閉じており、さらに、\(\mathfrak{S}\)の任意の2つの要素の差集合は、有限個の互いに素な\(\mathfrak{S}\)の要素の和集合として表すことができます。

外延量の測定対象となる区間からなる集合族\(\mathfrak{S}\)が与えられたとき、続いて問題になるのは、この集合族\(\mathfrak{S}\)に属するそれぞれの区間の外延量をどのように表現すべきかということです。区間の外延量を表す概念として私たちに馴染み深いものは長さ(length)です。具体的には、それぞれの区間\((a,b]\in \mathfrak{S}\)の長さは、\begin{equation*}b-a
\end{equation*}と定義されます。以降においても区間の外延量として「長さ」を採用した上で、区間の集合族に属するそれぞれの区間\(I\in \mathfrak{S}\)に対して、その長さ\(m\left( I\right) \)を定める関数\(m \)を定義し、これを長さ関数(length function)と呼びます。また、区間の集合族\(\mathfrak{S}\)上に長さ関数\(m\)が定義されていることを明示したい場合には、この集合族を、\begin{equation*}\mathfrak{S}_{m}
\end{equation*}と表記することとします。

例(区間の長さ)
区間\([0,1)\in \mathfrak{S}_{m}\)の長さは、\begin{equation*}m\left( [0,1)\right) =1-0=1
\end{equation*}です。区間\([-2,3)\in \mathfrak{S}_{m}\)の長さは、\begin{equation*}m\left( [-2,3)\right) =3-\left( -2\right) =5
\end{equation*}です。空集合\(\phi \)は区間ですが、これは\(a=b\)を満たす区間\([a,b)\)に相当するため、その長さは、\begin{equation*}m\left( \phi \right) =b-a=0
\end{equation*}となります。

 

区間の長さの有限性

区間の長さの性質を確認します。区間\([a,b)\in \mathfrak{S}_{m}\)を任意に選んだとき、その長さは、\begin{equation*}0\leq m\left( [a,b)\right) <+\infty
\end{equation*}を満たします。つまり、区間の長さは有限な非負の実数であるということです。言い換えると、長さ関数\(m\)は区間の集合族\(\mathfrak{S}_{m}\)を定義域とし、非負の実数からなる集合\(\mathbb{R} _{+}\)を終集合とする関数\begin{equation*}m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}
\end{equation*}であるということです。このような性質を指して、\(m\)は有限(finite)であるとか完全有限(totally finite)であるなどと言います。

命題(区間の長さの有限性)
区間の長さは有限である。すなわち、長さ関数は\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)と表現される。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(区間の長さの有限性)
例えば、\begin{eqnarray*}
m\left( [0,1)\right) &=&1-0=1 \\
m\left( [-1,1)\right) &=&1-\left( -1\right) =2 \\
m\left( [1,1)\right) &=&1-1=0
\end{eqnarray*}などが成り立ちますが、これらはいずれも有限な実数です。

 

区間の長さのσ-加法性

区間の集合族\(\mathfrak{S}_{m}\)の中から可算個の互いに素な区間を任意に選んだ上で、それらを要素とする集合列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)をとります。つまり、\(\left\{ I_{k}\right\}_{k=1}^{\infty }\)は互いに素な区間からなる可算集合列です。その上で、この集合列の和集合\begin{equation*}\bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}
\end{equation*}をとります。以前に確認したように、\(\mathfrak{S}_{m}\)は和集合については閉じていないため、この和集合は\(\mathfrak{S}_{m}\)の要素であるとは限りません。互いに素な可算個の区間の和集合は区間であるとは限らないということです。その一方で、\begin{equation*}\bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}\in \mathfrak{S}_{m}
\end{equation*}を満たす集合列\(\left\{I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)に対しては、つまり、互いに素な可算個の区間の和集合として表される区間に対しては、長さ関数が\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)はその長さ\begin{equation*}m\left( \bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}\right) \in \mathbb{R} _{+}
\end{equation*}を定めます。しかもこの場合、\(\left\{ I_{k}\right\}_{k=1}^{\infty }\)の和集合に相当する区間の長さと、\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)の要素である個々の区間の長さの間には、\begin{equation*}m\left( \bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}\right) =\sum_{k=1}^{\infty
}m\left( I_{k}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つことが保証されます。ただし、右辺は可算個の区間の長さから構成される無限級数の和であり、具体的には、部分和\begin{equation*}
S_{n}=\sum_{k=1}^{n}m\left( I_{k}\right)
\end{equation*}を項とする数列\(\left\{S_{n}\right\} \)の極限\(\lim\limits_{n\rightarrow \infty}S_{n}\)として定義されます。つまり、先の関係を正確に表現すると、\begin{equation*}m\left( \bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}\right) =\lim_{n\rightarrow
\infty }\left[ \sum_{k=1}^{n}m\left( I_{k}\right) \right] \end{equation*}となります。このような性質を指して、区間の長さ\(m\)は\(\sigma \)-加法性(\(\sigma \)-additivity)を満たすと言います。

命題(区間の長さのσ-加法性)
区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は\(\sigma \)-加法性を満たす。すなわち、互いに素な区間からなる可算区間列\(\left\{ I_{k}\right\}_{k=1}^{\infty }\subset \mathfrak{S}_{m}\)が、\begin{equation*}\bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}\in \mathfrak{S}_{m}
\end{equation*}を満たす場合には、\begin{equation*}
m\left( \bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}\right) =\sum_{k=1}^{\infty
}m\left( I_{k}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(区間の長さのσ-加法性)
可算区間列\(\left\{ I_{k}\right\}_{k=1}^{\infty }\)を、\begin{equation}I_{k}=\left[ \frac{1}{k+1},\frac{1}{k}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}と定義するとき、\(\left\{I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)は互いに素な\(\mathfrak{S}_{m}\)の区間からなる可算区間列であるとともに、\begin{equation}\bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}=\left[ 0,1\right) \in \mathfrak{S}_{m}
\quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます。さらに、\begin{eqnarray*}
m\left( \bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}\right) &=&m\left( \left[
0,1\right) \right) \quad \because \left( 2\right) \\
&=&1-0\quad \because m\text{の定義} \\
&=&1
\end{eqnarray*}である一方で、\begin{eqnarray*}
\sum_{k=1}^{\infty }m\left( I_{k}\right) &=&\lim_{n\rightarrow \infty }
\left[ \sum_{k=1}^{n}m\left( I_{k}\right) \right] \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\left[ \sum_{k=1}^{n}m\left( \left[ \frac{1}{k+1},\frac{1}{k}\right) \right) \right] \quad \because \left( 1\right) \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\left[ \sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k\left(
k+1\right) }\right] \quad \because m\text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }\left( \frac{n}{n+1}\right) \\
&=&1
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
m\left( \bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}\right) =\sum_{k=1}^{\infty
}m\left( I_{k}\right)
\end{equation*}が成り立ちます。この結果は先の命題の主張と整合的です。

繰り返しになりますが、先の命題は、

\begin{equation*}
\bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}\in \mathfrak{S}_{m}
\end{equation*}を満たすような可算区間列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)のみを対象とした主張です。つまり、上の命題は、「ある区間が可算個の互いに素な区間に分割可能であるとき、その区間の長さは、それを構成するそれぞれの区間の長さの合計になる」という主張です。一方、\begin{equation*}\bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}\not\in \mathfrak{S}_{m}
\end{equation*}を満たすような可算区間列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)に対して、上の命題は何も言っていません。つまり、「可算個の互いに素な区間の和集合が区間でない場合においても、全体の長さは、それを構成するそれぞれの区間の長さの合計である」とまでは先の命題は主張していません。

 

区間の長さはσ-加法測度

一般に、集合\(X\)の部分集合族\(\mathfrak{A}\)上に定義された関数\(m\)がそれぞれの集合\(A\in \mathfrak{A}\)に対して定める値が非負の実数もしくは正の無限大である場合には、すなわち、\begin{equation*}0\leq m\left( A\right) \leq +\infty
\end{equation*}が成り立つ場合には、この関数\(m\)は非負性(non-negativity)を満たすと言います。また、集合\(X\)の部分集合族\(\mathfrak{A}\)が集合半環であるとともに、関数\(m\)が非負性と\(\sigma \)-加法性をともに満たす場合、\(m\)を\(\sigma \)-加法測度(\(\sigma \)-additivemeasure)や可算測度(countable measure)などと呼び、\(m\)がそれぞれの集合\(A\in \mathfrak{A}\)に対して定める値\(m\left( A\right) \)を\(A\)の測度(measure)と呼びます。

これまでの議論から明らかになったように、区間の集合族\(\mathfrak{S}_{m}\)は集合半環であり、区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は有限性と\(\sigma \)-加法性を満たします。有限性は明らかに非負性を含意するため、結局、区間の長さ\(m\)は\(\sigma \)-加法測度であるということになります。

命題(区間の長さはσ-加法測度)
区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は\(\sigma \)-加法測度である。すなわち、区間の集合族\(\mathfrak{S}_{m}\)は集合半環であるとともに、\(m\)は非負性と\(\sigma \)-加法性を満たす。

以上の命題を踏まえた上で、以降では、区間の長さを区間の測度と呼びます。

 

区間の長さの有限加法性

区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)が\(\sigma \)-加法測度であることを示す際には区間の定義や\(\mathbb{R} \)の性質などを用いましたが、\(m\)が\(\sigma \)-加法測度であることが明らかになれば、\(m\)が満たすその他の性質はいずれも\(m\)が\(\sigma \)-加法測度であるという事実から導出可能であり、区間の定義や\(\mathbb{R} \)の性質などを再び参照する必要はありません。以下ではそのような性質をいくつか提示します。

区間の集合族\(\mathfrak{S}_{m}\)の中から有限個の互いに素な区間を任意に選んだ上で、それらを要素とする集合列\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{n}\)をとります。つまり、\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{n}\)は互いに素な区間からなる有限集合列です。その上で、この集合列の和集合\begin{equation*}\bigcup\limits_{k=1}^{n}I_{k}
\end{equation*}をとります。\(\mathfrak{S}_{m}\)は和集合については閉じていないため、この和集合は\(\mathfrak{S}_{m}\)の要素であるとは限りません。互いに素な有限個の区間の和集合は区間であるとは限らないということです。その一方で、\begin{equation*}\bigcup\limits_{k=1}^{n}I_{k}\in \mathfrak{S}_{m}
\end{equation*}を満たす集合列\(\left\{I_{k}\right\} _{k=1}^{n}\)に対しては、つまり、互いに素な有限個の区間の和集合として表される区間に対しては、長さ関数が\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)はその長さ\begin{equation*}m\left( \bigcup\limits_{k=1}^{n}I_{k}\right) \in \mathbb{R} _{+}
\end{equation*}を定めます。しかもこの場合、\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{n}\)の和集合に相当する区間の長さと、\(\left\{I_{k}\right\} _{k=1}^{n}\)の要素である個々の区間の長さの間には、\begin{equation*}m\left( \bigcup\limits_{k=1}^{n}I_{k}\right) =\sum_{k=1}^{n}m\left(
I_{k}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つことが保証されます。つまり、互いに素な有限個の区間の和集合が区間であるとき、その和集合に相当する区間の長さは、個々の区間の長さの総和と一致するということです。このような性質を指して、\(m\)は有限加法性(finite additivity)を満たすと言います。

命題(区間の長さの有限加法性)
区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は有限加法性を満たす。すなわち、互いに素な区間からなる有限区間列\(\left\{ I_{k}\right\}_{k=1}^{n}\subset \mathfrak{S}_{m}\)が、\begin{equation*}\bigcup\limits_{k=1}^{n}I_{k}\in \mathfrak{S}_{m}
\end{equation*}を満たす場合には、\begin{equation*}
m\left( \bigcup\limits_{k=1}^{n}I_{k}\right) =\sum_{k=1}^{n}m\left(
I_{k}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

区間の長さの一意性

区間の集合族\(\mathfrak{S}_{m}\)は集合半環であるため、区間\(I\in \mathfrak{S}_{m}\)を任意に選んだとき、これは互いに素な区間の和集合として表現可能です。つまり、互いに素な有限個の区間\(I_{1},\cdots ,I_{n}\in \mathfrak{S}_{m}\)を用いて、\begin{equation*}I=\bigcup\limits_{k=1}^{n}I_{k}
\end{equation*}と表現できるということです。さらに、区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)の有限加法性より、この区間\(I\)の長さは、\begin{equation}m\left( I\right) =\sum\limits_{k=1}^{n}m\left( I_{k}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}を満たします。ただ、区間を有限展開する方法は一意的であるとは限りません。つまり、先の区間\(I\)に対して、先ほどとは異なる互いに素な有限個の区間\(J_{1},\cdots ,J_{m}\in \mathfrak{S}_{m}\)が存在し、これらの間にも、\begin{equation*}I=\bigcup\limits_{l=1}^{m}J_{l}
\end{equation*}という関係が成立し得るということです。このとき、やはり\(m\)の有限加法性より、\begin{equation}m\left( I\right) =\sum\limits_{l=1}^{m}m\left( J_{l}\right) \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます。つまり、区間を異なる方法で有限展開したとき、その区間の長さは\(\left( 1\right) \)と\(\left( 2\right) \)のように異なる形で表されますが、実は、両者の値は常に一致することが保証されます。つまり、それぞれの区間の長さは有限展開の仕方によらず一定であるということです。言い換えると、区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は写像であるということです。

命題(区間の長さの一意性)
区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)がそれぞれの区間\(I\in \mathfrak{S}_{m}\)に対して定める長さ\(m\left( I\right) \in \mathbb{R} _{+}\)は、\(I\)の有限展開の方法によらず一意的に定まる。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

区間の長さの単調性

ある区間\(I\)が別の区間\(J \)の部分集合であるならば,\(I\)の長さは\(J\)の長さ以下になるというのは直感的に正しそうですが、これもまた区間の長さ\(m\)が\(\sigma \)-加法測度であることから導かれます。区間の長さが満たすこのような性質を単調性(monotonicity)と呼びます。

命題(区間の長さの単調性)
区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は単調性を満たす。すなわち、任意の区間\(I,J\in \mathfrak{S}_{m}\)に対して、\begin{equation*}I\subset J\Rightarrow m\left( I\right) \leq m\left( J\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

区間の長さの減法性

ある区間\(I\)が別の区間\(J \)の部分集合であるものとします。区間集合族\(\mathfrak{S}_{m}\)は集合半環である一方で差集合については閉じていないため、差集合\(J\backslash I\)は区間であるとは限りません。一方、\(J\backslash I\)が区間である場合、すなわち\(J\backslash I\in \mathfrak{S}_{m}\)が成り立つ場合、その長さは\(J\)の長さと\(I\)の長さの差になります。これもまた区間の長さ\(m\)が\(\sigma \)-加法測度であることから導かれます。区間の長さが満たすこのような性質を減法性(subtractivity)と呼びます。

命題(区間の長さの減法性)
区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は減法性を満たす。すなわち、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ I\subset J \\
&&\left( b\right) \ J\backslash I\in \mathfrak{S}_{m}
\end{eqnarray*}をともに満たす任意の区間\(I,J\in \mathfrak{S}_{m}\)に対して、\begin{equation*}m\left( J\backslash I\right) =m\left( J\right) -m\left( I\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

区間の長さのσ-劣加法性

区間の長さ\(m\)が満たす性質の1つである\(\sigma \)-加法性は、互いに素な可算個の区間の長さに関するものですが、互いに素であるとは限らない可算個の区間の長さについて何らかの性質を導くことができるのでしょうか。

区間の集合族\(\mathfrak{S}_{m}\)の中から可算個の区間を任意に選び、それらからなる集合列を\(\left\{ I_{k}\right\} _{k=1}^{\infty }\)で表記します。これまでの議論とは異なり、これらの区間は互いに素である必要はありません。このとき、ある区間\(I\in \mathfrak{S}_{m}\)が存在して、\begin{equation*}I\subset \bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}
\end{equation*}が成り立つ場合には、これらの測度の間に、\begin{equation*}
m\left( I\right) \leq \sum_{k=1}^{\infty }m\left( I_{k}\right)
\end{equation*}という関係が成り立つことが、区間の長さ\(m\)が\(\sigma \)-加法測度であることから導かれます。つまり、互いに素であるとは限らない可算個の区間の長さの総和は、それらによって覆われる区間の長さ以上であるということです。区間の長さが満たすこの性質を\(\sigma \)-劣加法性(\(\sigma \)-subadditivity)や可算劣加法性(countable subadditivity)などと呼びます。

命題(区間の長さの(protectsigma )-劣加法性)
区間の長さ\(m:\mathfrak{S}_{m}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)は\(\sigma \)-劣加法性を満たす。すなわち、\begin{equation*}I\subset \bigcup\limits_{k=1}^{\infty }I_{k}
\end{equation*}を満たす区間\(I\in \mathfrak{S}_{m}\)と可算区間列\(\left\{ I_{k}\right\}_{k=1}^{\infty }\subset \mathfrak{S}_{m}\)に対して、\begin{equation*}m\left( I\right) \leq \sum_{k=1}^{\infty }m\left( I_{k}\right)
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

演習問題

問題(集合半環上の集合関数)
集合\((0,1]\subset \mathbb{R} \)の部分集合族\(\mathfrak{S}\)として、\(0\leq a\leq 1\)かつ\(0\leq b\leq 1\)を満たす任意の実数\(a,b\)を用いて、\begin{equation*}(a,b]=\left\{ x\in (0,1]\ |\ a<x\leq b\right\}
\end{equation*}と表される半開区間をすべて集めたものものについて考えます。まず、この集合族\(\mathfrak{S}\)が集合半環であることを示してください。その上で、集合関数\(m:\mathfrak{S}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)を、\begin{equation*}m\left( (a,b]\right) =\left\{
\begin{array}{l}
0\quad \left( if\quad 0\leq b\leq a\leq 1\right) \\
b-a\quad \left( if\quad 0<a<b\leq 1\right) \\
+\infty \quad \left( if\quad 0=a<b\leq 1\right)\end{array}\right.
\end{equation*}と定義したとき、この\(m\)は有限加法性を満たす一方で\(\sigma \)-加法性を満たさないことを示してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

前のページ:

区間の集合族

次のページ:

区間塊

Twitter
Mailで保存

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

区間の集合族

区間の長さと、その区間を分割して得られる小区間の長さの関係は、数直線の部分集合どうしの外延量の関係として捉えることができます。つまり、「区間の長さ」という外延量は数直線の部分集合族に導入されるということです。この集合族は集合半環としての性質を満たします。