可測集合の和集合は可測
測度空間\(\left( X,\mathfrak{M},\mu \right) \)が与えられているものとします。つまり、可測集合族\(\mathfrak{M}\subset 2^{X}\)は可測空間の公理\begin{eqnarray*}&&\left( M_{1}\right) \ \mathfrak{M}\not=\phi \\
&&\left( M_{2}\right) \ \forall A\in \mathfrak{M}:A^{c}\in \mathfrak{M} \\
&&\left( M_{3}\right) \ \forall \left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty \
}\subset \mathfrak{M}:\bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathfrak{M}
\end{eqnarray*}を満たすとともに、測度\(\mu :\mathfrak{M}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)は測度の公理\begin{eqnarray*}&&\left( \mu _{1}\right) \ \forall A\in \mathfrak{M}:0\leq \mu \left(
A\right) \leq +\infty \\
&&\left( \mu _{2}\right) \ \mu \left( \phi \right) =0 \\
&&\left( \mu _{3}\right) \ \forall \text{互いに素な}\left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty \ }\subset \mathfrak{M}:\mu
\left( \bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\right) =\sum_{n=1}^{+\infty }\mu \left(
A_{n}\right)
\end{eqnarray*}を満たすということです。
互いに素な可算個の可測集合\(\left\{A_{n}\right\}_{n=1}^{+\infty \ } \subset \mathfrak{M} \)を任意に選びます。すると\(\left( M_{3}\right) \)より、\begin{equation*}\bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathfrak{M}
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、可算個の互いに素な可測集合の和集合は可測であるということです。したがって、測度\(\mu \)は和集合の測度\(\mu \left( \bigcup_{n=1}^{+\infty}A_{n}\right) \)を定めますが、\(\left( \mu _{3}\right) \)より、その値は、\begin{equation*}\mu \left( \bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\right) =\sum_{n=1}^{+\infty }\mu
\left( A_{n}\right)
\end{equation*}を満たします。可算個の互いに素な可測集合の和集合の測度は、個々の可測集合の測度からなる無限級数の和と一致するということです。
では、互いに素な有限個の可測集合\(\left\{A_{k}\right\} _{k=1}^{n\ }\subset \mathfrak{M}\)の和集合の測度についても同様の命題が成り立つのでしょうか。また、互いに素であるとは限らない可算個の可測集合の和集合の測度についても、何らかの命題を導くことができるのでしょうか。
以上の疑問に答える前に、有限個の可測集合の和集合が可測であることを確認します。
\end{equation*}が成り立つ。
可測集合族は和集合についても閉じています。
\end{equation*}が成り立つ。
以上より、2つの可測集合の和集合、有限個の可測集合の和集合、可算個の可測集合の和集合はいずれも可測であることが明らかになりました。したがって、測度\(\mu \)はこれらの和集合に対して測度を付与することが保証されます。
測度の有限加法性
可測集合族\(\mathfrak{M}\)は有限合併について閉じていることが明らかになりました。したがって、有限個の互いに素な可測集合\(\left\{A_{k}\right\} _{k=1}^{n\ }\subset \mathfrak{M}\)についても、\begin{equation*}\bigcup_{k=1}^{n}A_{k}\in \mathfrak{M}
\end{equation*}が成り立つため、測度\(\mu \)はその測度\(\mu \left(\bigcup_{k=1}^{n}A_{k}\right) \)を定めますが、その値に関して以下の関係\begin{equation*}\mu \left( \bigcup_{k=1}^{n}A_{k}\right) =\sum_{k=1}^{n}\mu \left(
A_{k}\right)
\end{equation*}が成り立ちます。有限個の互いに素な可測集合の和集合の測度は、個々の可測集合の測度の総和と一致するということです。測度\(\mu \)が満たす以上の性質を有限加法性(finite additivity)と呼びます。
A_{k}\right\} _{k=1}^{n\ }\subset \mathfrak{M}:\mu \left(
\bigcup_{k=1}^{n}A_{k}\right) =\sum_{k=1}^{n}\mu \left( A_{k}\right)
\end{equation*}が成り立つ。
可測集合族\(\mathfrak{M}\)は和集合について閉じているため、互いに素な可測集合\(A,B\in \mathfrak{M}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A\cup B\in \mathfrak{M}
\end{equation*}が成り立つため、測度\(\mu \)はその測度\(\mu \left( A\cup B\right) \)を定めますが、その値に関して以下の関係\begin{equation*}\mu \left( A\cup B\right) =\mu \left( A\right) +\mu \left( B\right)
\end{equation*}が成り立ちます。互いに素な2つの可測集合の和集合の測度は、個々の可測集合の測度の和と一致するということです。測度\(\mu \)が満たす以上の性質を加法性(additivity)と呼びます。
B\right) =\mu \left( A\right) +\mu \left( B\right) \right] \end{equation*}が成り立つ。
測度の単調性
\(A\subset B\)を満たす可測集合\(A,B\in \mathfrak{M}\)を任意に選びます。つまり、\(A\)は\(B\)の部分集合であるということです。この場合、\begin{equation*}\mu \left( A\right) \leq \mu \left( B\right)
\end{equation*}が成り立つことが保証されます。つまり、\(A\)が\(B\)の部分集合である場合、\(A\)の測度は\(B\)の測度以下になることが保証されます。測度\(\mu \)が満たす以上の性質を単調性(monotonicity)と呼びます。
\leq \mu \left( B\right) \right] \end{equation*}が成り立つ。
測度の強加法性
測度\(\mu \)の加法性は互いに素な可測集合どうしの和集合の測度に関する性質ですが、互いに素であるとは限らない可測集合どうしの和集合の測度に関して何らかの命題が成り立つのでしょうか。
互いに素な可測集合\(A,B\in \mathfrak{M}\)に関しては、測度\(\mu \)の加法性より、\begin{equation*}\mu \left( A\cup B\right) =\mu \left( A\right) +\mu \left( B\right)
\end{equation*}が成り立ちます。一方、\(A\)と\(B\)が互いに素であるとは限らない場合には、以下の関係\begin{equation*}\mu \left( A\cup B\right) +\mu \left( A\cap B\right) =\mu \left( A\right)
+\mu \left( B\right)
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、互いに素であるとは限らない2つの可測集合の和集合の測度と共通部分の測度の和は、個々の可測集合の測度の和と一致します。これを測度\(\mu \)に関する強加法性(strong additivity)と呼びます。
1点だけ注意が必要です。先に示したように、可測集合族\(\mathfrak{M}\)は和集合について閉じているため、強加法性の左辺中の\(\mu \left( A\cup B\right) \)は1つの拡大実数として定まります。一方、\(\mathfrak{M}\)が共通部分について閉じていることをまだ確認していないため、左辺中の\(\mu \left( A\cap B\right) \)が拡大実数として定まることは現時点において定まることは現時点において明らかではありません。ただ、後ほど示すように、可測集合族\(\mathfrak{M}\)は共通部分について閉じているため、実際には問題は発生しません。
共通部分\(A\cap B\)の測度が有限な実数である場合には、すなわち、\begin{equation*}0\leq \mu \left( A\cap B\right) <+\infty
\end{equation*}である場合には、強加法性を変形することにより、\begin{equation*}
\mu \left( A\cup B\right) =\mu \left( A\right) +\mu \left( B\right) -\mu
\left( A\cap B\right)
\end{equation*}を得ます。これは加法定理(addition theorem)に他なりません。
測度空間\(\left( X,\mathfrak{M},\mu \right) \)において、測度\(\mu :\mathfrak{M}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)は劣加法性を満たす。つまり、\begin{equation*}\forall A,B\in \mathfrak{M}:\mu \left( A\cup B\right) +\mu \left( A\cap
B\right) =\mu \left( A\right) +\mu \left( B\right)
\end{equation*}が成り立つ。
測度の劣加法性
互いに素であるとは限らない可測集合\(A,B\in \mathfrak{M}\)を任意に選ぶと、測度\(\mu \)の強加法性より、\begin{equation*}\mu \left( A\cup B\right) =\mu \left( A\right) +\mu \left( B\right) -\mu
\left( A\cap B\right)
\end{equation*}が成り立ちますが、これと測度\(\mu \)の非負性を踏まえると、\begin{equation*}\mu \left( A\cup B\right) \leq \mu \left( A\right) +\mu \left( B\right)
\end{equation*}が導かれます。つまり、互いに素であるとは限らない2つの可測集合の和集合の測度は、個々の可測集合の測度の和以下になります。以上の性質を測度\(\mu \)の劣加法性(subadditivity)と呼びます。
測度空間\(\left( X,\mathfrak{M},\mu \right) \)において、測度\(\mu :\mathfrak{M}\rightarrow \mathbb{R} \cup \left\{ +\infty \right\} \)は劣加法性を満たす。つまり、\begin{equation*}\forall A,B\in \mathfrak{M}:\mu \left( A\cup B\right) \leq \mu \left(
A\right) +\mu \left( B\right)
\end{equation*}が成り立つ。
劣加法性は有限個の可測集合に関しても拡張可能です。つまり、有限個の可測集合\(\left\{ A_{k}\right\} _{k=1}^{n\ }\subset \mathfrak{M}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\mu \left( \bigcup_{k=1}^{n}A_{k}\right) \leq \sum_{k=1}^{n}\mu \left(
A_{k}\right)
\end{equation*}が成り立ちます。以上の性質を測度\(\mu \)の有限劣加法性(finite subadditivity)と呼びます。
\bigcup_{k=1}^{n}A_{k}\right) \leq \sum_{k=1}^{n}\mu \left( A_{k}\right)
\end{equation*}が成り立つ。
劣加法性は可算個の可測集合に関しても拡張可能です。つまり、可算個の可測集合\(\left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty \ }\subset \mathfrak{M}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\mu \left( \bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\right) \leq \sum_{n=1}^{+\infty
}\mu \left( A_{n}\right)
\end{equation*}が成り立ちます。以上の性質を測度\(\mu \)の\(\sigma \)-劣加法性(\(\sigma \)-subadditivity)や可算劣加法性(countable subadditivity)などと呼びます。
\left( \bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\right) \leq \sum_{n=1}^{+\infty }\mu
\left( A_{n}\right)
\end{equation*}が成り立つ。
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