WIIS

測度空間

σ-代数(完全加法族)の定義と具体例

目次

Mailで保存
Xで共有

σ-代数

集合\(X\)およびその部分集合族\(\mathfrak{R}\)が与えられているものとします。つまり、\begin{equation*}\mathfrak{A}\subset 2^{X}
\end{equation*}であるということです。ただし、\(2^{X}\)は\(X\)のベキ集合を表す記号です。集合族\(\mathfrak{A}\)が以下の3つの条件を満たす場合には、\(\mathfrak{A}\)を\(X\)の\(\sigma \)-代数(\(\sigma \)-algebra)や完全加法族(completely additive family of sets)、\(\sigma \)-加法族(\(\sigma \)-additive family)、または\(\sigma \)-集合代数(\(\sigma \)-set algebra)などと呼びます。

1つ目の条件は、\(\mathfrak{A}\)が非空であること、すなわち、\begin{equation*}\mathfrak{A}\not=\phi
\end{equation*}が成り立つということです。

2つ目の条件は、\(\mathfrak{A}\)が補集合について閉じていること、すなわち、\begin{equation*}\forall A\in \mathfrak{A}:A^{c}\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つということです。

3つ目の条件は、\(\mathfrak{A}\)が可算合併について閉じていること、すなわち、\begin{equation*}\forall \left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty \ }\subset \mathfrak{A}:\bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つということです。

改めて整理すると、集合族\(\mathfrak{A}\subset 2^{X}\)が\(\sigma \)-代数であることとは、以下の3つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( S_{1}\right) \ \mathfrak{A}\not=\phi \\
&&\left( S_{2}\right) \ \forall A\in \mathfrak{A}:A^{c}\in \mathfrak{A} \\
&&\left( S_{3}\right) \ \forall \left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty \
}\subset \mathfrak{A}:\bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathfrak{A}
\end{eqnarray*}が成り立つこととして定義されます。

例(ベキ集合)
集合\(X\)が与えられられたとき、そのベキ集合\begin{equation*}\mathfrak{A}=2^{X}
\end{equation*}は\(X\)の部分集合族です。以上のように定義される\(\mathfrak{A}\)は\(\sigma \)-代数です(演習問題)。
例(空集合と全体集合だけを要素として持つ集合族)
集合\(X\)が与えられられたとき、その部分集合族を、\begin{equation*}\mathfrak{A}=\left\{ \phi ,X\right\}
\end{equation*}と定義します。以上のように定義される\(\mathfrak{A}\)は\(\sigma \)-代数です(演習問題)。
例(一般の標本空間のもとでの事象空間)
ある試行に関する標本空間\(\Omega \)に対して、事象空間\(\mathcal{F}\subset 2^{\Omega }\)を以下の性質\begin{eqnarray*}&&\left( M_{1}\right) \ \mathcal{F}\not=\phi \\
&&\left( M_{2}\right) \ \forall A\in \mathcal{F}:A^{c}\in \mathcal{F} \\
&&\left( M_{3}\right) \ \forall \left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty
}\subset \mathcal{F}:\bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathcal{F}
\end{eqnarray*}を満たすものとして定義します。\(\mathcal{F}\)は\(\sigma \)-代数です。

 

σ-代数は全体集合を要素として持つ

集合\(X\)の部分集合族である\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\)は\(X\)を要素として持ちます。つまり、\begin{equation*}X\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つということです。

命題(σ-代数は全体集合を要素として持つ)
集合\(X\)の\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\subset2^{X}\)について、\begin{equation*}X\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

σ-代数は空集合を要素として持つ

\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\)は空集合を要素として持ちます。つまり、\begin{equation*}\phi \in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立ちます。

命題(σ-代数は空集合を要素として持つ)
集合\(X\)の\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\subset2^{X}\)について、\begin{equation*}\phi \in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

σ-代数は和集合について閉じている

\(\sigma \)-代数の定義より、\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\)は可算合併に閉じています。つまり、\begin{equation*}\forall \left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty }\subset \mathfrak{A}:\bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立ちます。

\(\sigma \)-代数は有限合併についても閉じています。

命題(σ-代数は有限合併について閉じている)
集合\(X\)の\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\subset2^{X}\)は有限合併について閉じている。つまり、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} ,\ \forall \left\{ A_{k}\right\} _{k=1}^{n}\subset \mathfrak{A}:\bigcup_{k=1}^{n}A_{k}\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

\(\sigma \)-代数は和集合についても閉じています。

命題(σ-代数は和集合について閉じている)
集合\(X\)の\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\subset2^{X}\)は和集合について閉じている。つまり、\begin{equation*}\forall A,B\in \mathfrak{A}:A\cup B\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

σ-代数は共通部分について閉じている

\(\sigma \)-代数は可算交叉について閉じています。

命題(σ-代数は可算交叉について閉じている)
集合\(X\)の\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\subset2^{X}\)は可算交叉について閉じている。つまり、\begin{equation*}\forall \left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty }\subset \mathfrak{A}:\bigcap_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

\(\sigma \)-代数は有限交叉についても閉じています。

命題(σ-代数は有限交叉について閉じている)
集合\(X\)の\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\subset2^{X}\)は有限交叉について閉じている。つまり、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} ,\ \forall \left\{ A_{k}\right\} _{k=1}^{n}\subset \mathfrak{A}:\bigcap_{k=1}^{n}A_{k}\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

\(\sigma \)-代数は共通部分についても閉じています。

命題(σ-代数は共通部分について閉じている)
集合\(X\)の\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\subset2^{X}\)は共通部分について閉じている。つまり、\begin{equation*}\forall A,B\in \mathfrak{A}:A\cap B\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

σ-代数は差集合について閉じている

\(\sigma \)-代数は差集合について閉じています。

命題(σ-代数は差集合について閉じている)
集合\(X\)の\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\subset2^{X}\)は対称差について閉じている。つまり、\begin{equation*}\forall A,B\in \mathfrak{A}:A\backslash B\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

σ-代数は対称差について閉じている

\(\sigma \)-代数は対称差について閉じています。

命題(σ-代数は対称差について閉じている)
集合\(X\)の\(\sigma \)-代数\(\mathfrak{A}\subset2^{X}\)は対称差について閉じている。つまり、\begin{equation*}\forall A,B\in \mathfrak{A}:A\triangle B\in \mathfrak{A}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

σ-代数の代替的な定義

\(\sigma \)-代数は全体集合を要素として持つとともに、補集合と可算合併について閉じていることが明らかになりました。逆の主張も成り立つため、\(\sigma \)-代数を以下のように定義することもできます。

命題(σ-代数の代替的な定義)
集合\(X\)の部分集合族\(\mathfrak{A}\subset 2^{X}\)について以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ X\in \mathfrak{A} \\
&&\left( b\right) \ \forall A\in \mathfrak{A}:A^{c}\in \mathfrak{A} \\
&&\left( c\right) \ \forall \left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty \ }\subset
\mathfrak{A}:\bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathfrak{A}
\end{eqnarray*}が成り立つことは、\(\mathfrak{A}\)が\(\sigma \)-代数であるための必要十分条件である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

\(\sigma \)-代数は全体集合を要素として持つとともに、差集合の可算合併について閉じていることが明らかになりました。逆の主張も成り立つため、\(\sigma \)-代数を以下のように定義することもできます。

命題(σ-代数の代替的な定義)
集合\(X\)の部分集合族\(\mathfrak{A}\subset 2^{X}\)について以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ X\in \mathfrak{A} \\
&&\left( b\right) \ \forall A,B\in \mathfrak{A}:A\backslash B\in \mathfrak{A}
\\
&&\left( c\right) \ \forall \left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty \ }\subset
\mathfrak{A}:\bigcup_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathfrak{A}
\end{eqnarray*}が成り立つことは、\(\mathfrak{A}\)が\(\sigma \)-代数であるための必要十分条件である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

σ-代数と集合環の関係

集合族\(\mathfrak{R}\subset 2^{X}\)が集合環であることとは、以下の3つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( R_{1}\right) \ \mathfrak{R}\not=\phi \\
&&\left( R_{2}\right) \ \forall A,B\in \mathfrak{R}:A\cap B\in \mathfrak{R}
\\
&&\left( R_{3}\right) \ \forall A,B\in \mathfrak{R}:A\triangle B\in
\mathfrak{R}
\end{eqnarray*}が成り立つこととして定義されます。

\(\sigma \)-代数は集合環でもあります。

命題(σ-代数は集合環)
集合\(X\)の部分集合族\(\mathfrak{A}\subset 2^{X}\)が\(\sigma \)-代数であるならば、\(\mathfrak{A}\)は集合環である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

\(\sigma \)-代数は集合環であることが明らかになりましたが、逆は成り立つとは限りません。集合環は\(\sigma \)-代数であるとは限らないということです。以下の例より明らかです。

例(σ-代数ではない集合環)
自然数集合\(\mathbb{N} \)の部分集合族\(\mathfrak{R}\subset 2^{\mathbb{N} }\)を、\begin{equation*}\mathfrak{R}=\left\{ A\in 2^{\mathbb{N} }\ |\ A\text{は有限集合}\right\}
\end{equation*}と定義します。これは集合環である一方で\(\sigma \)-代数ではありません(演習問題)。

集合環は和集合や有限合併について閉じている一方で、可算合併について閉じているとは限りません。そこで、可算合併についている集合環を\(\sigma \)-環(\(\sigma \)-ring)と呼びます。つまり、集合族\(\mathfrak{R}\subset 2^{X}\)が\(\sigma \)-環であることとは、以下の4つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( R_{1}\right) \ \mathfrak{R}\not=\phi \\
&&\left( R_{2}\right) \ \forall A,B\in \mathfrak{R}:A\cap B\in \mathfrak{R}
\\
&&\left( R_{3}\right) \ \forall A,B\in \mathfrak{R}:A\triangle B\in
\mathfrak{R} \\
&&\left( R_{4}\right) \ \left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty }\subset
\mathfrak{R}:\bigcap_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathfrak{R}
\end{eqnarray*}が成り立つこととして定義されます。

\(\sigma \)-代数は\(\sigma \)-環でもあります。

命題(σ-代数はσ-環)
集合\(X\)の部分集合族\(\mathfrak{A}\subset 2^{X}\)が\(\sigma \)-代数であるならば、\(\mathfrak{A}\)は\(\sigma \)-環である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

\(\sigma \)-代数は\(\sigma \)-環であることが明らかになりましたが、逆は成り立つとは限りません。\(\sigma \)-環は\(\sigma \)-代数であるとは限らないということです。以下の例より明らかです。

例(σ-代数ではないσ-環)
実数集合\(\mathbb{R} \)の部分集合族\(\mathfrak{R}\subset 2^{\mathbb{R} }\)を、\begin{equation*}\mathfrak{R}=\left\{ A\in 2^{\mathbb{R} }\ |\ A\text{は高々可算集合}\right\}
\end{equation*}と定義します。これは\(\sigma \)-環である一方で\(\sigma \)-代数ではありません(演習問題)。

\(\sigma \)-環は全体集合\(X\)を要素として持つとは限りません。\(\sigma \)-環が全体集合を要素として持つことは、すなわち、以下の5つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( R_{1}\right) \ \mathfrak{R}\not=\phi \\
&&\left( R_{2}\right) \ \forall A,B\in \mathfrak{R}:A\cap B\in \mathfrak{R}
\\
&&\left( R_{3}\right) \ \forall A,B\in \mathfrak{R}:A\triangle B\in
\mathfrak{R} \\
&&\left( R_{4}\right) \ \left\{ A_{n}\right\} _{n=1}^{+\infty }\subset
\mathfrak{R}:\bigcap_{n=1}^{+\infty }A_{n}\in \mathfrak{R} \\
&&\left( R_{5}\right) \ X\in \mathfrak{R}
\end{eqnarray*}が成り立つことは、\(\sigma \)-環が\(\sigma \)-代数であるための必要十分条件です。

命題(σ-代数の代替的な定義)
集合\(X\)の部分集合族\(\mathfrak{A}\subset 2^{X}\)が\(\sigma \)-環であるとともに、\begin{equation*}X\in \mathfrak{A}
\end{equation*}を満たすことは、\(\mathfrak{A}\)が\(\sigma \)-代数であるための必要十分条件である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

演習問題

問題(ベキ集合)
集合\(X\)に対して、その部分集合族\(\mathfrak{R}\subset 2^{X}\)を、\begin{equation*}\mathfrak{R}=2^{X}
\end{equation*}と定義します。\(\mathfrak{R}\)が\(\sigma \)-代数であることを証明してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(空集合と全体集合だけを要素として持つ集合族)
集合\(X\)に対して、その部分集合族\(\mathfrak{A}\subset 2^{X}\)を、\begin{equation*}\mathfrak{A}=\left\{ \phi ,X\right\}
\end{equation*}と定義します。\(\mathfrak{R}\)が\(\sigma \)-代数であることを証明してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(σ-代数ではないσ-環)
自然数集合\(\mathbb{N} \)の部分集合族\(\mathfrak{R}\subset 2^{\mathbb{N} }\)を、\begin{equation*}\mathfrak{R}=\left\{ A\in 2^{\mathbb{N} }\ |\ A\text{は有限集合}\right\}
\end{equation*}と定義します。これは集合環である一方で\(\sigma \)-代数ではないことを示してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(σ-代数ではないσ-環)
実数集合\(\mathbb{R} \)の部分集合族\(\mathfrak{R}\subset 2^{\mathbb{R} }\)を、\begin{equation*}\mathfrak{R}=\left\{ A\in 2^{\mathbb{R} }\ |\ A\text{は高々可算集合}\right\}
\end{equation*}と定義します。これは\(\sigma \)-環である一方で\(\sigma \)-代数ではないことを示してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録