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漸近理論

確率変数列の定義

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確率変数の列

「コインを1回投げる」という試行の標本空間が、\begin{equation*}
\Omega =\left\{ \text{表},\text{裏}\right\}
\end{equation*}であるように、試行において起こり得る標本点は数値であるとは限りません。確率に関して定量的な分析を行うためには、それぞれの標本点を数値として表現できれば何かと便利です。このような事情を踏まえた上で、問題としている試行に関する確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)が与えられたとき、それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、実数\(X\left( \omega \right) \in \mathbb{R} \)を1つずつ定める写像\begin{equation*}X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を導入し、これを確率変数(random variable)と呼びました。

定義域である標本空間\(\Omega \)を共有する無限個の確率変数を順番に並べたもの\begin{equation*}X_{1},X_{2},\cdots ,X_{n},\cdots
\end{equation*}を確率変数の列(sequence of random variables)と呼びます。

例(確率変数列)
「コインを無限回投げる」という試行の個々の標本点は、\begin{equation*}
\left( \text{表},\text{裏},\text{裏},\text{表},\cdots \right)
\end{equation*}のような「表」と「裏」から構成される無限列として表されます。\(n\)回目のコイン投げの結果を、\begin{equation*}\omega _{n}\in \left\{ \text{表},\text{裏}\right\}
\end{equation*}と表記するのであれば、それぞれの標本点を、\begin{equation*}
\omega =\left( \omega _{1},\omega _{2},\cdots \right)
\end{equation*}と定式化できます。この試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\left\{ \text{表},\text{裏}\right\} ^{\mathbb{N} }
\end{equation*}です。自然数\(n\in \mathbb{N} \)を任意に選んだ上で、それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X_{n}\left( \omega \right) =\left\{
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ \omega _{n}=\text{表}\right) \\
0 & \left( if\ \omega _{n}=\text{裏}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める確率変数\begin{equation*}
X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。つまり、\(X_{n}\)は問題としている試行のもとで「\(n\)回目のコイン投げの結果が表ならば\(1\)を値としてとり、裏ならば\(0\)を値としてとる」確率変数です。それぞれの自然数\(n\)には確率変数\(X_{n}\)が1つずつ対応するため、\begin{equation*}X_{1},X_{2},\cdots ,X_{n},\cdots
\end{equation*}は確率変数列であり、これらの確率変数がそれぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して定める値は、\begin{eqnarray*}X_{1}\left( \omega \right) &=&\left\{
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ \omega _{1}=\text{表}\right) \\
0 & \left( if\ \omega _{1}=\text{裏}\right)
\end{array}\right. \\
X_{2}\left( \omega \right) &=&\left\{
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ \omega _{2}=\text{表}\right) \\
0 & \left( if\ \omega _{2}=\text{裏}\right)
\end{array}\right. \\
&&\vdots \\
X_{n}\left( \omega \right) &=&\left\{
\begin{array}{cc}
1 & \left( if\ \omega _{n}=\text{表}\right) \\
0 & \left( if\ \omega _{n}=\text{裏}\right)
\end{array}\right. \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}です。

例(確率変数列)
「ある街の人口を毎年観察し続ける」という試行の個々の標本点は、\begin{equation*}
\left( 875403,873411,882123,889063,\cdots \right)
\end{equation*}のような無限個の自然数の列として表されます。\(n\)年目の人口の観測値を、\begin{equation*}\omega _{n}\in \mathbb{N} \end{equation*}と表記するのであれば、それぞれの標本点を、\begin{equation*}
\omega =\left( \omega _{1},\omega _{2},\cdots \right)
\end{equation*}と定式化できます。この試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\mathbb{N} ^{\mathbb{N} }
\end{equation*}です。自然数\(n\in \mathbb{N} \)を任意に選んだ上で、それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X_{n}\left( \omega \right) =\omega _{n}
\end{equation*}を定める確率変数\begin{equation*}
X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。つまり、\(X_{n}\)は問題としている試行のもとでの「\(n\)年目の人口の観測値」を特定する確率変数です。それぞれの自然数\(n\)には確率変数\(X_{n}\)が1つずつ対応するため、\begin{equation*}X_{1},X_{2},\cdots ,X_{n},\cdots
\end{equation*}は確率変数列であり、これらの確率変数がそれぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して定める値は、\begin{eqnarray*}X_{1}\left( \omega \right) &=&\omega _{1} \\
X_{2}\left( \omega \right) &=&\omega _{2} \\
&&\vdots \\
X_{n}\left( \omega \right) &=&\omega _{n} \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}です。

確率変数列をフォーマルな形で表現します。繰り返しになりますが、確率変数列とは標本空間を共有する無限個の確率変数を順番に並べたものです。定義域である標本空間を\(\Omega \)とする関数からなる集合を、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{\Omega }\end{equation*}で表記します。標本空間\(\Omega \)上に定義された確率変数からなる列を総体的に表現するためには確率変数列を構成する1番目の確率変数\(X_{1}\)、2番目の確率変数\(X_{2}\)、3番目の確率変数\(X_{3}\)、\(\cdots \)などをすべて特定する必要があります。ただ、確率変数列は無限個の確率変数の並びであるため、このような作業を実際に無限回行うことは不可能です。とは言え、このような作業を「それぞれの自然数\(n\in \mathbb{N} \)に対して確率変数\(X_{n}\in \mathbb{R} ^{\Omega }\)を1つずつ定めること」として一般化できるため、確率変数列を表現することとは、\(\mathbb{N} \)から\(\mathbb{R} ^{\Omega }\)への写像を与えることと実質的に同じです。そのようなこともあり、確率変数列を写像\begin{equation*}X:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R} ^{\Omega }
\end{equation*}として定義することもできます。この写像\(X\)がそれぞれの自然数\(n\)に対して定める像\(X\left( n\right) \)は確率変数列を構成する\(n\)番目の確率変数です。

通常、写像\(f:A\rightarrow B\)が定義域の値\(a\in A\)に対して定める像を\(f\left( a\right) \in B\)と表記しますが、確率変数列に相当する写像\(X:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R} ^{\Omega }\)が自然数\(n\in \mathbb{N} \)に対して定める確率変数\(X\left( n\right) \in \mathbb{R} ^{\Omega }\)に関しては、これを、\begin{equation*}X_{n}
\end{equation*}と表記し、確率変数列の(term)と呼びます。確率変数列そのものを\(\left\{ X_{n}\right\} _{n=1}^{\infty }\)や\(\left\{ X_{n}\right\} _{n\in \mathbb{N} }\)、もしくはよりシンプルに\(\left\{ X_{n}\right\} \)と表現することもできます。

自然数を\(1\)から始まる整数と定義するのであれば、確率変数列を構成する前から\(n\)番目の項は\(X_{n}\)であり、これを確率変数列の\(n\)(\(n\)-th term)と呼びます。特に、確率変数列の最初の項\(X_{1}\)を初項(first term)と呼びます。

確率変数列の第\(n\)項\(X_{n}\)が具体的な形で与えられているならば、\(X_{n}\)中の\(n\)に具体的な自然数を代入することによりすべての項を具体的な形で特定できます。つまり、\(X_{n}\)は確率変数列のすべての項を一般的に表現したものであるため、これを確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項(general term)と呼ぶこともあります。確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項\(X_{n}\)の形が分かっている場合には、その関数列を「一般項が\(X_{n}\)の関数列」と呼ぶこともできます。

例(確率変数列)
標本空間\begin{equation*}
\Omega =\left[ 0,1\right] \end{equation*}上に定義された確率変数の列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項は、それぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X_{n}\left( \omega \right) =\omega ^{n}
\end{equation*}を定める確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)であるものとします。この確率変数列\(\left\{X_{n}\right\} \)の項である確率変数\(X_{1},X_{2},X_{3},\cdots \)がそれぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して定める値は、\begin{eqnarray*}X_{1}\left( \omega \right) &=&\omega \\
X_{2}\left( \omega \right) &=&\omega ^{2} \\
X_{3}\left( \omega \right) &=&\omega ^{3} \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などとなります。

 

確率変数列から定義される数列

確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}であるものとします。この確率変数列\(\left\{X_{n}\right\} \)の項であるすべての確率変数\begin{equation*}X_{1},X_{2},X_{3},\cdots
\end{equation*}は定義域である標本空間\(\Omega \)を共有するため、標本点\(\omega \in \Omega \)を選んで固定すると、これらの確率変数\(X_{1},X_{2},X_{3},\cdots \)が先の標本点\(\omega \)に対して定める値を項とする数列\begin{equation*}X_{1}\left( \omega \right) ,X_{2}\left( \omega \right) ,X_{3}\left( \omega
\right) ,\cdots
\end{equation*}を得ることができます。つまり、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)と標本点\(\omega \in \Omega \)が与えられれば、\begin{equation*}X_{n}\left( \omega \right)
\end{equation*}を一般項として持つ数列\begin{equation*}
\left\{ X_{n}\left( \omega \right) \right\}
\end{equation*}が定義可能です。

例(確率変数列から定義される数列)
標本空間\begin{equation*}
\Omega =\left[ 0,1\right] \end{equation*}上に定義された確率変数の列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項は、それぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X_{n}\left( \omega \right) =\omega ^{n}
\end{equation*}を定める確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)であるものとします。標本点\(0\in \Omega \)に注目すると、これと先の確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)からは以下の数列\begin{equation*}\left\{ X_{n}\left( 0\right) \right\} =\left\{ 0^{n}\right\} =\left\{
0\right\}
\end{equation*}が得られます。また、標本点\(\frac{1}{2}\in \Omega \)に注目すると、これと先の確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)からは以下の数列\begin{equation*}\left\{ X_{n}\left( \frac{1}{2}\right) \right\} =\left\{ \left( \frac{1}{2}\right) ^{n}\right\}
\end{equation*}が得られます。また、標本点\(1\in \Omega \)に注目すると、これと先の確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)からは以下の数列\begin{equation*}\left\{ X_{n}\left( 1\right) \right\} =\left\{ 1^{n}\right\} =\left\{
1\right\}
\end{equation*}が得られます。

 

演習問題

問題(確率変数列)
標本空間\begin{equation*}
\Omega =\left[ 0,1\right] \end{equation*}上に定義された確率変数の列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項は、それぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X_{n}\left( \omega \right) =\frac{\omega }{2n}
\end{equation*}を定める確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)であるものとします。この確率変数列\(\left\{X_{n}\right\} \)の最初の3項\(X_{1},X_{2},X_{3}\)を具体的に特定してください。
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問題(確率変数列)
標本空間\begin{equation*}
\Omega =\left[ 0,1\right] \end{equation*}上に定義された確率変数の列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項は、それぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X_{n}\left( \omega \right) =\left( 1+\frac{\omega }{n}\right) ^{n}
\end{equation*}を定める確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)であるものとします。この確率変数列\(\left\{X_{n}\right\} \)の最初の3項\(X_{1},X_{2},X_{3}\)を具体的に特定してください。
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