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離散型の確率分布

離散型の確率変数

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離散型の確率変数

「コインを1回投げる」という試行標本空間が、\begin{equation*}
\Omega =\left\{ \text{表},\text{裏}\right\}
\end{equation*}であるように、試行において起こり得る標本点は数値であるとは限りません。確率に関して定量的な分析を行うためには、それぞれの標本点を数値として表現できれば何かと便利です。そこで、それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、実数\(X\left( \omega \right) \in \mathbb{R} \)を1つずつ定める写像\begin{equation*}X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を導入し、これを確率変数(random variable)と呼びます。

確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の取り得る値の個数が有限ないし可算である場合には、すなわち、\(X\)の値域\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left\{ X\left( \omega \right) \in \mathbb{R} \ |\ \omega \in \Omega \right\}
\end{equation*}が有限集合または可算集合である場合には、\(X\)を離散型の確率変数(discrete random variable)と呼びます。

例(離散型の確率変数)
「コインを1回投げて出た面を観察する」という試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\left\{ \text{表},\text{裏}\right\}
\end{equation*}となります。「表が出れば1万円をもらえる一方で裏が出れば1万円を支払う」というギャンブルを想定する場合、ギャンブルの結果を表現する確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( \omega \right) =\left\{
\begin{array}{cc}
10000 & \left( if\ \omega =\text{表}\right) \\
-10000 & \left( if\ \omega =\text{裏}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。この確率変数の値域は、\begin{equation*}
X\left( \Omega \right) =\left\{ 10000,-10000\right\}
\end{equation*}という有限集合であるため、\(X\)は離散型の確率変数です。
例(離散型の確率変数)
「コインを3回投げて表が出た回数を観察する」という試行において、1回目に出た面を\(x_{1}\)で、2回目に出た面を\(x_{2}\)で、3回目に出た面を\(x_{3}\)でそれぞれ表記するのであれば、問題としている試行の標本空間は、\begin{equation*}\Omega =\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \ |\ \forall i\in \left\{
1,2,3\right\} :x_{i}\in \left\{ \text{表},\text{裏}\right\}
\right\}
\end{equation*}となります。それぞれの標本点\(\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in\Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) =\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \text{において表が出た回数}
\end{equation*}を値として定める確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、例えば、\begin{eqnarray*}X\left( \text{表},\text{裏},\text{表}\right) &=&2 \\
X\left( \text{裏},\text{表},\text{裏}\right) &=&1 \\
X\left( \text{裏},\text{裏},\text{裏}\right) &=&0
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。この確率変数の値域は、\begin{equation*}
X\left( \Omega \right) =\left\{ 0,1,2,3\right\}
\end{equation*}という有限集合であるため、\(X\)は離散型の確率変数です。また、それぞれの標本点\(\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}Y\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) =\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \text{において表が連続で出た回数の最大値}
\end{equation*}を値として定める確率変数\(Y:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、例えば、\begin{eqnarray*}X\left( \text{表},\text{裏},\text{表}\right) &=&1 \\
X\left( \text{表},\text{表},\text{裏}\right) &=&2 \\
X\left( \text{裏},\text{裏},\text{裏}\right) &=&0
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。この確率変数の値域は、\begin{equation*}
Y\left( \Omega \right) =\left\{ 0,1,2,3\right\}
\end{equation*}という有限集合であるため、\(Y\)もまた離散型の確率変数です。以上の例が示唆するように、同一の試行に対して定義され得る確率変数は1種類だけであるとは限りません。上の例に関して言えば、表が出た回数に興味があれば確率変数\(X\)を採用し、表が連続で出る回数に興味があれば確率変数\(Y\)を採用することになります。目的に応じて適切な確率変数を導入することが重要です。
例(離散型の確率変数)
「表が出るまでコインを投げ続ける」という試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\{\text{表},\text{裏表},\text{裏裏表},\text{裏裏裏表},\cdots \}
\end{equation*}となります。それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( \omega \right) =\omega \text{において初めて表が出た回数}
\end{equation*}を値として定める確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、例えば、\begin{eqnarray*}X\left( \text{表}\right) &=&1 \\
X\left( \text{裏表}\right) &=&2 \\
X\left( \text{裏裏表}\right) &=&3
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。この確率変数の値域は、\begin{equation*}
X\left( \Omega \right) =\left\{ 1,2,3,\cdots \right\}
\end{equation*}という可算集合であるため、\(X\)は離散型の確率変数です。また、それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}Y\left( \omega \right) =\omega \text{において裏が連続で出た回数}
\end{equation*}を値として定める確率変数\(Y:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、例えば、\begin{eqnarray*}X\left( \text{表}\right) &=&0 \\
X\left( \text{裏表}\right) &=&1 \\
X\left( \text{裏裏表}\right) &=&2
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。この確率変数の値域は、\begin{equation*}
Y\left( \Omega \right) =\left\{ 0,1,2,\cdots \right\}
\end{equation*}という可算集合であるため、\(Y\)もまた離散型の確率変数です。
例(離散型の確率変数)
「あるディーラーにおいて1カ月間で売れた車の台数を観察する」という試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\left\{ 0,1,2,\cdots \right\}
\end{equation*}です。それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、売れた車の台数\begin{equation*}X\left( \omega \right) =\omega
\end{equation*}を値として定める確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、その値域は、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left\{ 0,1,2,\cdots \right\}
\end{equation*}という可算集合であるため、\(X\)は離散型の確率変数です。
例(定数確率変数)
確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)と離散型の確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられており、なおかつ\(X\)は定数関数であるものとします。つまり、ある\(c\in \mathbb{R} \)が存在して、任意の\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( \omega \right) =c
\end{equation*}が成り立つということです。このような確率変数を定数確率変数(constant random variable)と呼びます。その値域は、\begin{equation*}
X\left( \Omega \right) =\left\{ c\right\}
\end{equation*}という有限集合であるため、これは離散型の確率変数です。

確率変数は離散型であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(離散型ではない確率変数)
「ある電球の寿命を測定する」という試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =[0,+\infty )
\end{equation*}となります。それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、電球の寿命が切れた時点\begin{equation*}X\left( \omega \right) =\omega
\end{equation*}を値として定める確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、例えば、\begin{eqnarray*}X\left( 0\right) &=&0 \\
X\left( 10\right) &=&10 \\
X\left( 111\right) &=&111
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。この確率変数の値域は、\begin{equation*}
X\left( \Omega \right) =[0,+\infty )
\end{equation*}ですが、これは非可算集合であるため、\(X\)は離散型の確率変数ではありません。

以上の例のように、確率変数の値域が区間のような非可算集合である場合、それを連続型の確率変数と呼びます。連続型の確率変数については後ほど扱うこととし、以降では離散型の確率変数のみを考察対象とします。

 

演習問題

問題(確率変数)
「コインを\(10\)回投げて表が出た回数を数える」という試行において、表が出た回数を与える確率変数を定式化してください。また、その値域を明らかにしてください。
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問題(確率変数)
「5人の学生の成績を観察する」という試行において、5人の成績の平均を与える確率変数を定式化してください。また、その値域を明らかにしてください。ただし、成績は\(1,2,3,4,5\)の5段階評価であるものとします。
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問題(確率変数)
スタジアムで2つのチーム\(A,B\)が試合を行っています。それぞれの観客はどちらか一方のチームを応援しているものとします。以上の仮定のもと、「3人の観客をランダムに選んだ上でどちらのチームを応援しているか確認する」という試行において、チーム\(A\)を応援している人数を与える確率変数を定式化してください。また、その値域を明らかにしてください。
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問題(確率変数)
ルーレットは\(1\)から\(36\)までのすべての整数に加えて\(0\)と\(00\)の合計\(38\)マスに入るボールを予想するゲームです。「ボールが\(36\)のマスに入るまでルーレットを繰り返しまわす」という試行において、はじめてボールが\(36\)のマスに入った回数を与える確率変数を定式化してください。また、その値域を明らかにしてください。
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