WIIS

代表的な確率分布

連続型の一様分布

目次

前のページ:

ポアソン分布

次のページ:

指数分布

Twitter
Mailで保存

連続型の一様分布

確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)に対して確率変数\(X:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)が定義されており、その値域\(X\left( \Omega \right) \)が\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間\begin{eqnarray*}X\left( \Omega \right) &=&\left[ a,b\right] \\
&=&\left\{ X\in \mathbb{R} \ |\ a\leq X\leq b\right\}
\end{eqnarray*}であるものとします。つまり、\(X\)は連続型の確率変数です。その上で、\(X\)の確率分布を描写する確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値が、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\frac{1}{b-a} & \left( if\ x\in X\left( \Omega \right) \right) \\
0 & \left( otherwise\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}であるものとします。以上の定義は、\(f_{X}\)は\(X\left( \Omega \right) \)上において一定の値\(\frac{1}{b-a}\)をとる定数関数であることを意味します。以上の条件が満たされる場合、確率変数\(X\)はパラメータ\(a,b\)の連続型一様分布(continuous uniform distribution with parameter \(a,b\))にしたがうといい、そのことを、\begin{equation*}X\sim U\left( a,b\right)
\end{equation*}で表記します。

例(標準一様分布)
確率変数\(X\)がパラメータ\(0,1\)の連続型一様分布にしたがう場合、すなわち、\begin{equation*}X\sim U\left( 0,1\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(X\)は標準一様分布(standard uniform distribution)にしたがうと言います。この場合、\(X\)の値域は、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left[ 0,1\right] \end{equation*}であり、確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値は、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x\in X\left( \Omega \right) \right) \\
0 & \left( otherwise\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}となります。

例(連続型一様分布)
「エレベータが到着するのを待つ」という試行において、待ち時間が\(0\)秒以上\(60\)秒以下であるならば、標本空間は、\begin{equation*}\Omega =\left[ 0,60\right] \end{equation*}となります。待ち時間を与える確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( \omega \right) =\omega
\end{equation*}を定めるため、その値域は、\begin{equation*}
X\left( \Omega \right) =\Omega =\left[ 0,60\right] \end{equation*}です。したがって\(X\)は連続型の確率変数です。エレベータの現在位置を知る術がなく、確率変数\(X\)はパラメータ\(0,60\)の一様分布にしたがうものと仮定します。つまり、\begin{equation*}X\sim U\left( 0,60\right)
\end{equation*}を仮定します。この場合、確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値は、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\frac{1}{60} & \left( if\ x\in X\left( \Omega \right) \right) \\
0 & \left( otherwise\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}となります。したがって、例えば、待ち時間が\(30\)秒以下である確率は、\begin{eqnarray*}P\left( 0\leq X\leq 30\right) &=&\int_{0}^{30}f_{X}\left( x\right) dx \\
&=&\int_{0}^{30}\frac{1}{60}dx\quad \because f_{X}\text{の定義} \\
&=&\left[ \frac{x}{60}\right] _{0}^{30}\quad \because \text{定数関数の積分} \\
&=&\frac{30}{60}-\frac{0}{60} \\
&=&\frac{1}{2}
\end{eqnarray*}となります。また、待ち時間が\(15\)秒以上\(30\)秒以下である確率は、\begin{eqnarray*}P\left( 15\leq X\leq 30\right) &=&\int_{15}^{30}f_{X}\left( x\right) dx \\
&=&\int_{15}^{30}\frac{1}{60}dx\quad \because f_{X}\text{の定義} \\
&=&\left[ \frac{x}{60}\right] _{15}^{30}\quad \because \text{定数関数の積分} \\
&=&\frac{30}{60}-\frac{15}{60} \\
&=&\frac{1}{4}
\end{eqnarray*}となります。

連続型の一様分布にしたがう確率変数の確率密度関数が確率密度関数としての性質を満たすことを確認しておきます。

命題(連続型一様分布の確率密度関数)
確率変数\(X\)がパラメータ\(a,b\)の連続型一様分布にしたがう場合には、すなわち、\begin{equation*}X\sim U\left( a,b\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(X\)の確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \forall x\in \mathbb{R} :f_{X}\left( x\right) \geq 0 \\
&&\left( b\right) \ \int_{-\infty }^{+\infty }f_{X}\left( x\right) dx=1
\end{eqnarray*}をともに満たす。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

連続型一様分布にしたがう確率変数の分布関数

確率変数\(X\)が連続型一様分布にしたがう場合の分布関数は以下の通りです。

命題(連続型一様分布の分布関数)
確率変数\(X\)がパラメータ\(a,b\)の連続型一様分布にしたがう場合には、すなわち、\begin{equation*}X\sim U\left( a,b\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(X\)の分布関数\(F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<a\right) \\
\frac{x-a}{b-a} & \left( if\ a\leq x\leq b\right) \\
1 & \left( if\ x>b\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(標準一様分布の分布関数)
確率変数\(X\)が標準一様分布にしたがう場合、すなわち、\begin{equation*}X\sim U\left( 0,1\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、上の命題より、\(X\)の分布関数\(F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<0\right) \\
x & \left( if\ 0\leq x\leq 1\right) \\
1 & \left( if\ x>1\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。

例(連続型一様分布の分布関数)
確率変数\(X\)はパラメータ\(0,60\)の連続型一様分布にしたがうものとします。つまり、\begin{equation*}X\sim U\left( 0,60\right)
\end{equation*}です。上の命題より、\(X\)の分布関数\(F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<0\right) \\
\frac{x}{60} & \left( if\ 0\leq x\leq 60\right) \\
1 & \left( if\ x>60\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。したがって、例えば、待ち時間が\(30\)秒以下である確率は、\begin{eqnarray*}P\left( 0\leq X\leq 30\right) &=&F\left( 30\right) \\
&=&\frac{30}{60} \\
&=&\frac{1}{2}
\end{eqnarray*}であり、また、待ち時間が\(15\)秒以上\(30\)秒以下である確率は、\begin{eqnarray*}P\left( 15\leq X\leq 30\right) &=&F\left( 30\right) -F\left( 15\right) \\
&=&\frac{30}{60}-\frac{15}{60} \\
&=&\frac{1}{4}
\end{eqnarray*}となります。

 

連続型一様分布にしたがう確率変数の期待値

確率変数\(X\)が連続型一様分布にしたがう場合の期待値は以下の通りです。

命題(連続型一様分布の期待値)
確率変数\(X\)がパラメータ\(a,b\)の連続型一様分布にしたがう場合には、すなわち、\begin{equation*}X\sim U\left( a,b\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(X\)の期待値は、\begin{equation*}E\left( X\right) =\frac{a+b}{2}
\end{equation*}となる。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(標準一様分布の期待値)
確率変数\(X\)が標準一様分布にしたがう場合、すなわち、\begin{equation*}X\sim U\left( 0,1\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、上の命題より、\(X\)の期待値は、\begin{equation*}E\left( X\right) =\frac{1}{2}
\end{equation*}となります。

例(連続型一様分布の期待値)
確率変数\(X\)はパラメータ\(0,60\)の連続型一様分布にしたがうものとします。つまり、\begin{equation*}X\sim U\left( 0,60\right)
\end{equation*}です。上の命題より、\(X\)の期待値は、\begin{eqnarray*}E\left( X\right) &=&\frac{0+60}{2} \\
&=&30
\end{eqnarray*}となります。

 

連続型一様分布にしたがう確率変数の分散

確率変数\(X\)が連続型一様分布にしたがう場合の分散は以下の通りです。

命題(連続型一様分布の分散)
確率変数\(X\)がパラメータ\(a,b\)の連続型一様分布にしたがう場合には、すなわち、\begin{equation*}X\sim U\left( a,b\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(X\)の分散は、\begin{equation*}\mathrm{Var}\left( X\right) =\frac{\left( b-a\right) ^{2}}{12}
\end{equation*}となる。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(標準一様分布の分散)
確率変数\(X\)が標準一様分布にしたがう場合、すなわち、\begin{equation*}X\sim U\left( 0,1\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、上の命題より、\(X\)の分散は、\begin{eqnarray*}\mathrm{Var}\left( X\right) &=&\frac{\left( 1-0\right) ^{2}}{12} \\
&=&\frac{1}{12}
\end{eqnarray*}となります。

例(連続型一様分布の分散)
確率変数\(X\)はパラメータ\(0,60\)の連続型一様分布にしたがうものとします。つまり、\begin{equation*}X\sim U\left( 0,60\right)
\end{equation*}です。上の命題より、\(X\)の分散は、\begin{eqnarray*}\mathrm{Var}\left( X\right) &=&\frac{\left( 60-0\right) ^{2}}{12} \\
&=&300
\end{eqnarray*}となります。

 

連続型一様分布にしたがう確率変数のモーメント母関数

確率変数\(X\)が連続型一様分布にしたがう場合のモーメント母関数は以下の通りです。

命題(連続型一様分布にしたがう確率変数のモーメント母関数)
確率変数\(X\)がパラメータ\(a,b\)の連続型一様分布にしたがう場合には、すなわち、\begin{equation*}X\sim U\left( a,b\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、モーメント母関数\(M_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が存在して、それぞれの\(t\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}M_{X}\left( t\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\dfrac{e^{tb}-e^{ta}}{t\left( b-a\right) } & \left( if\ t\not=0\right) \\
1 & \left( if\ t=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(標準一様分布にしたがう確率変数のモーメント母関数)
確率変数\(X\)が標準一様分布にしたがう場合、すなわち、\begin{equation*}X\sim U\left( 0,1\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、上の命題より、モーメント母関数\(M_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が存在して、それぞれの\(t\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}M_{X}\left( t\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\dfrac{e^{t}-1}{t} & \left( if\ t\not=0\right) \\
1 & \left( if\ t=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。

例(連続型一様分布にしたがう確率変数のモーメント母関数)
確率変数\(X\)はパラメータ\(0,60\)の連続型一様分布にしたがうものとします。つまり、\begin{equation*}X\sim U\left( 0,60\right)
\end{equation*}です。上の命題より、モーメント母関数\(M_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が存在して、それぞれの\(t\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}M_{X}\left( t\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\dfrac{e^{60t}-1}{60t} & \left( if\ t\not=0\right) \\
1 & \left( if\ t=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。

 

演習問題

問題(連続型一様分布)
エレベーターを呼び出すボタンを押すと、その時点から数えて\(10\)秒以上かつ\(30\)秒以下の間にエレベーターが到着することが判明しているものとします。加えて、エレベーターが到着するまでの時間は連続型の一様分布にしたがうものとします。以上を前提とした上で、エレベーターが到着するまでの待ち時間の期待値と標準偏差をともに求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(連続型一様分布)
あなたがバス停が到着した時点を出発点として、そこから\(15\)分以内にバスが到着することは分かっているものとします。ただし、正確な待ち時間は分かりません。バスが到着するまでの時間は連続型の一様分布にしたがうものとします。以上を前提とした上で、待ち時間が\(8\)分より長い確率を求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

前のページ:

ポアソン分布

次のページ:

指数分布

Twitter
Mailで保存

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

離散型の一様分布

離散型の確率変数がすべての値を等しい確率でとる場合、そのような確率変数は離散型の一様分布にしたがうと言います。離散型一様分布にしたがう確率変数を定義するとともに、その期待値と分散を求めます。

離散型確率変数の期待値

確率変数がとり得るそれぞれの値に対して、その値が実現する確率との積をとった上で、得られた積の総和をとると期待値と呼ばれる指標が得られます。

離散型確率変数の分散と標準偏差

離散型の確率変数がとり得るそれぞれの値に対して、その値と期待値の差の平方をとった上で、得られた平方の総和をとると分散と呼ばれる指標が得られます。分散の正の平方根を標準偏差と呼びます。

離散型確率変数の中央化・標準化・正規化

期待値が0になるように確率変数を変換する操作を中央化と呼び、期待値が0で分散が1になるように確率変数を変換する操作を標準化と呼び、確率変数がとり得る値の範囲が0以上1以下になるように確率変数を変換する操作を正規化と呼びます。

確率変数の分布関数

それぞれの実数に対して、確率変数がその実数以下の値をとる確率を特定する関数を分布関数と呼びます。分布関数の概念を定義するとともに、その基本的な性質について解説します。

指数分布

何らかの出来事が起こるまでの経過時点を表す連続型の確率変数の確率分布を指数分布と呼びます。指数分布を定義するとともに、その基本的な性質について解説します。

離散型同時確率変数の期待値

離散型の同時確率変数の期待値を定義するとともに、同時確率変数と2変数関数の合成関数として定義される確率変数の期待値を求める方法を解説します。また、独立な確率変数の積の期待値は個々の確率変数の期待値の積と一致することを示します。

離散型同時確率変数の分散と標準偏差

離散型の同時確率変数の分散を定義するとともに、同時確率変数と2変数関数の合成関数として定義される確率変数の分散を求める方法を解説します。また、独立な確率変数の和の分散は個々の確率変数の分散の和と一致することを示します。

連続型の確率変数

それぞれの標本点に対して実数を1つずつ割り当てる写像を確率変数と呼びます。値域が区間もしくは互いに素な区間の和集合であるような確率変数を連続型の確率変数と呼びます。

連続型確率変数の期待値

連続型の確率変数の値と確率密度関数の値の積を全区間上で積分することにより得られる値を確率変数の期待値と呼びます。期待値は確率変数の実現値の見込みの値を表す指標です。

連続型確率変数の分散と標準偏差

連続型の確率変数がとり得るそれぞれの値と期待値の差の平方をとった上で、得られた平方を積分すると分散と呼ばれる指標が得られます。分散の正の平方根を標準偏差と呼びます。