ボンフェローニの不等式

互いに排反とは限らない事象どうしの積事象の確率がとり得る値の範囲を絞り込むためには、ボンフェローニの不等式と呼ばれる不等式が役に立ちます。

ボンフェローニの不等式

和事象の確率については加法定理や劣加法性が成り立ちますが、積事象の確率に関してはどのようなことが言えるでしょうか。まずは、2 つの事象\(A,B\in \mathcal{F}\)の積事象の確率\(P\left( A\cap B\right) \)について考えます。ただし、\(A\)と\(B\)は互いに排反であるとは限りません。

それぞれの補集合\(A^{c},B^{c}\)をとると、劣加法性より、\begin{equation}
P\left( A^{c}\cup B^{c}\right) \leq P\left( A^{c}\right) +P\left(
B^{c}\right) \tag{1}
\end{equation}を得ます。ド・モルガンの法則などを用いると、\(\left( 1\right) \)の左辺は、\begin{eqnarray*}
P\left( A^{c}\cup B^{c}\right) &=&P\left( \left( A\cap B\right) ^{c}\right)
\\
&=&1-P\left( A\cap B\right)
\end{eqnarray*}と変形でき、\(\left( 1\right) \)の右辺は、\begin{equation*}
P\left( A^{c}\right) +P\left( B^{c}\right) =\left[ 1-P\left( A\right) \right] +\left[ 1-P\left( B\right) \right] \end{equation*}と変形できます。したがって、\(\left( 1\right) \)は、\begin{equation*}
1-P\left( A\cap B\right) \leq \left[ 1-P\left( A\right) \right] +\left[
1-P\left( B\right) \right] \end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
P\left( A\cap B\right) \geq P\left( A\right) +P\left( B\right) -1
\end{equation*}を得ます。これをボンフェローニの不等式(Bonferroni’s inequality)と呼びます。

命題(ボンフェローニの不等式)
確率空間\((\Omega ,\mathcal{F},P)\)において、事象\(A,B\in \mathcal{F}\)を任意に選ぶと、\begin{equation*}
P\left( A\cap B\right) \geq P\left( A\right) +P\left( B\right) -1
\end{equation*}が成り立つ。
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つまり、互いに排反であるとは限らない事象\(A,B\)の積事象\(A\cap B\)の確率は、\(A\)の確率と\(B\)の確率の和から\(1\)を引いて得られる値以上になります。

通常、事象\(A,B\)が同時に起こる確率の範囲は\(0\leq P\left( A\cap B\right) \leq 1\)とまでしか分かりませんが、個々の事象\(A,B\)の確率の値が判明している場合には、ボンフェローニの不等式より、事象\(A,B\)が同時に起こる確率の範囲を、\begin{equation*}
P\left( A\cap B\right) \geq P\left( A\right) +P\left( B\right) -1
\end{equation*}として狭めることができます。ただし、\(P\left( A\right) \)と\(P\left( B\right) \)の値が小さい場合には、不等式の右辺が負の値になってしまうため、この場合には不等式が役に立ちません。

 

ボンフェローニの不等式の拡張

ボンフェローニの不等式は 3 個以上の事象の積事象に関しても拡張可能です。証明では\(n\)に関する数学的帰納法を使います。

命題(ボンフェローニの不等式)
確率空間\((\Omega ,\mathcal{F},P)\)において、有限個の事象\(A_{1},A_{2},\cdots ,A_{n}\in \mathcal{F}\)を任意に選ぶと、\begin{equation*}
P\left( \bigcap_{i=1}^{n}A_{i}\right) \leq \sum_{i=1}^{n}P\left(
A_{i}\right) -\left( n-1\right)
\end{equation*}が成り立つ。
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このままでは分かりづらいため、\(n\)に具体的な数を入れてみましょう。

例(ボンフェローニの不等式)
3 個の事象\(A_{1},A_{2},A_{3}\)について、ボンフェローニの不等式より、\begin{eqnarray*}
P\left( A_{1}\cap A_{2}\cap A_{3}\right) &=&P\left( A_{1}\right) +P\left(
A_{2}\right) +P\left( A_{3}\right) -\left( 3-1\right) \\
&=&P\left( A_{1}\right) +P\left( A_{2}\right) +P\left( A_{3}\right) -2
\end{eqnarray*}が成り立つ。
例(ボンフェローニの不等式)
4 個の事象\(A_{1},A_{2},A_{3},A_{4}\)について、ボンフェローニの不等式より、\begin{eqnarray*}
P\left( A_{1}\cap A_{2}\cap A_{3}\cap A_{4}\right) &=&P\left( A_{1}\right)
+P\left( A_{2}\right) +P\left( A_{3}\right) +P\left( A_{4}\right) -\left(
4-1\right) \\
&=&P\left( A_{1}\right) +P\left( A_{2}\right) +P\left( A_{3}\right) +P\left(
A_{4}\right) -3
\end{eqnarray*}が成り立つ。

次回は~ついて解説します。

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