教材一覧
教材検索
SEQUENCE OF NUMBERS

コーシー列の収束定理

目次

< 前のページ
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有

コーシー列と有界性

コーシー列は有界です。

命題(コーシー列は有界)
コーシー列は有界である。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

後ほど解説しますが、コーシー列が有界であるという事実は、コーシー列の収束について考える際に重要な役割を果たします。

例(コーシー列は有界)
一般項が、\begin{equation*}
x_{n}=\frac{1}{2^{n}}
\end{equation*}で与えられる数式\(\left\{x_{n}\right\} \)はコーシー列です(確認してください)。したがって上の命題より、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は有界であるはずです。実際、任意の番号\(n\)に対して、\begin{equation*}0\leq x_{n}=\frac{1}{2^{n}}\leq \frac{1}{2}
\end{equation*}が成り立つため\(\left\{x_{n}\right\} \)は有界です。
例(コーシー列は有界)
一般項が、\begin{equation*}
x_{n}=\frac{1}{n^{2}}
\end{equation*}で与えられる数式\(\left\{x_{n}\right\} \)はコーシー列です(確認してください)。したがって上の命題より、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は有界であるはずです。実際、任意の番号\(n\)に対して、\begin{equation*}0\leq x_{n}=\frac{1}{n^{2}}\leq 1
\end{equation*}が成り立つため\(\left\{x_{n}\right\} \)は有界です。

先の命題の逆は成り立つとは限りません。つまり、有界な数列はコーシー列であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(有界な数列はコーシー列であるとは限らない)
一般項が、\begin{equation*}
x_{n}=\left( -1\right) ^{n}
\end{equation*}で与えられる数列\(\left\{x_{n}\right\} \)は、任意の番号\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{equation*}-1\leq x_{n}=\left( -1\right) ^{n}\leq 1
\end{equation*}を満たすため有界です。一方、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の任意の隣り合う2つの項の間の距離は\(2\)で一定であるため、これはコーシー列ではありません(確認してください)。したがって、有界な数列はコーシー列であるとは限らないことが明らかになりました。

 

コーシー列と極限

収束列とは項の番号を大きくしていくと項が一定の値に限りなく近づく数列ですが、項が一定の値に限りなく近づくならば項の変化がどこまでも小さくなっていきそうです。つまり、直感的に考えると、収束列はコーシー列でもありそうです。実際、収束列はコーシー列です。

命題(収束列はコーシー列)
収束列はコーシー列である。

証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

収束列はコーシー列であることが明らかになりましたが、逆に、コーシー列は収束するでしょうか。以下で順番に考えていきます。

復習になりますが、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が収束する場合には、その任意の部分列\(\left\{ x_{l\left( n\right)}\right\} \)もまた収束するとともに、それはもとの収束列\(\left\{ x_{n}\right\} \)と同じ極限へ収束します。一方、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が収束しない場合には、たとえその部分列の中に収束するものが存在する場合でも、もとの数列\(\left\{x_{n}\right\} \)は収束するとは限りません。以下の例より明らかです。

例(収束する部分列を持つ数列)
一般項が、\begin{equation*}
x_{n}=\left( -1\right) ^{n}
\end{equation*}で与えられる数列\(\left\{x_{n}\right\} \)について考えます。この数列は振動するため収束しません。一方、この数列の部分列\(\left\{ x_{l\left( n\right) }\right\} \)の中でも、一般項が、\begin{equation*}x_{l\left( n\right) }=1
\end{equation*}で与えられるものに注目します。この部分列は極限\(1\)へ収束します。したがって、収束する部分列を持つ数列は収束するとは限らないことが明らかになりました。

現状、コーシー列が収束することは明らかになっていないため(むしろ、コーシー列が収束することを示すことが現在の目標)、上の一般論にしたがうならば、仮にコーシー列が収束する部分列を持っている場合でも、もとのコーシー列が収束することを保証できないはずです。しかし、コーシー列に話を限定すると、それが収束するという事実を前提にせずとも、コーシー列の部分列の中に収束するものが存在する場合、そのコーシー列が収束することを保証できます。

命題(コーシー列と部分列)
コーシー列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が収束する部分列\(\left\{ x_{l\left(n\right) }\right\} \)を持ち、なおかつその部分列が有限な実数\(a\in \mathbb{R} \)へ収束するならば、コーシー列\(\left\{ x_{n}\right\} \)自身もまた\(a\)へ収束する。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

上の命題を踏まえると、コーシー列が収束することを示すためには、コーシー列が収束する部分列を持つことを示せばよいことになります。ただ、先に示したようにコーシー列は有界であるため、ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理よりコーシー列は収束する部分列を持ちます。したがって、コーシー列が収束することが明らかになりました。

命題(コーシー列の収束定理)
コーシー列は収束する。

コーシー列の定義はその極限については何も述べてはいません。項の番号を大きくしていくと項の変化がどこまでも小さくなっていく数列をコーシー列と定めているだけです。しかし、実数の連続性の公理から導かれるボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を認める場合には、コーシー列が収束することを保証できるというわけです。

収束列はコーシー列であるとともに、コーシー列は収束することが示されました。したがって以下が成り立ちます。

命題(コーシー列と収束列の関係)
数列がコーシー列であることと、その数列が有限な実数へ収束することは必要十分である。

この命題の意味を考えておきましょう。数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が与えられたとき、それが収束列であるかどうかを判定できない、もしくはその判定が難しい場合でも、その数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)がコーシー列であることさえ示すことができれば、上の命題より、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が収束列であることが保証されます。さらに、他の一般の収束列と同様に、コーシー列が収束する部分列を持つ場合には、コーシー列自身もまた部分列と同じ極限に収束します。したがって、コーシー列の部分列の極限さえ求められれば、もとのコーシー列の極限が判明します。

例(収束列であることの判定)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が以下の再帰式\begin{equation*}\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=1 \\
x_{n+1}=1+\dfrac{1}{x_{n}}\end{array}\right.
\end{equation*}によって定義されているものとします。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が収束することを示します。ただ、上の再帰式によって数列\(\left\{x_{n}\right\} \)の隣り合う2つの項どうしの関係が与えられているため、この数列が収束することを示すよりも、この数列がコーシー列であることを示すほうが簡単です。そこで、この数列がコーシー列であることを示します。具体的には、任意の番号\(n\)について、\begin{eqnarray}\left\vert x_{n+2}-x_{n+1}\right\vert &=&\left\vert \left( 1+\frac{1}{x_{n+1}}\right) -\left( 1+\frac{1}{x_{n}}\right) \right\vert \quad \because
\left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \notag \\
&=&\left\vert \frac{1}{x_{n+1}}-\frac{1}{x_{n}}\right\vert \notag \\
&=&\left\vert \frac{x_{n}-x_{n+1}}{x_{n+1}x_{n}}\right\vert \quad \cdots (1)
\end{eqnarray}となります。さらに、\(\left( 1\right) \)の分母について、\begin{eqnarray}\left\vert x_{n+1}x_{n}\right\vert &=&\left\vert \left( 1+\frac{1}{x_{n}}\right) x_{n}\right\vert \quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \notag \\
&=&\left\vert x_{n}+1\right\vert \notag \\
&\geq &2\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義}
\quad \cdots (2)
\end{eqnarray}が成り立ちます。このとき、\begin{eqnarray*}
\left\vert x_{n+2}-x_{n+1}\right\vert &=&\left\vert \frac{x_{n}-x_{n+1}}{x_{n+1}x_{n}}\right\vert \quad \because \left( 1\right) \\
&=&\frac{\left\vert x_{n}-x_{n+1}\right\vert }{\left\vert
x_{n+1}x_{n}\right\vert } \\
&\leq &\frac{1}{2}\left\vert x_{n}-x_{n+1}\right\vert \quad \because \left(
2\right)
\end{eqnarray*}が成り立ちます。したがって、コーシー列であるための判定条件より、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)はコーシー列です。さらに、先の命題より、これは数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が収束列であることと必要十分であるため目標が達成されました。

 

演習問題

問題(コーシー列の収束定理)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( -1\right) ^{n}
\end{equation*}で与えられているものとします。\(\left\{ x_{n}\right\} \)がコーシー列でないことを証明してください。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(コーシー列の収束定理)
コーシー列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を任意に選んだとき、その任意の部分列\(\left\{x_{l\left( n\right) }\right\} \)もまたコーシー列であることを証明してください。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(コーシー列の収束定理)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)がコーシー列であるものとします。このとき、一般項が、\begin{equation*}y_{n}=\left( x_{n}\right) ^{2}
\end{equation*}であるような数列\(\left\{y_{n}\right\} \)を定義します。\(\left\{ y_{n}\right\} \)もまたコーシー列であることを証明してください。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(コーシー列の収束定理)
上の問題の主張の逆は成立するとは限らないことを示してください。つまり、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が与えられたとき、そこから、一般項が、\begin{equation*}y_{n}=\left( x_{n}\right) ^{2}
\end{equation*}であるような数列\(\left\{y_{n}\right\} \)を定義します。\(\left\{ y_{n}\right\} \)がコーシー列であるとき、\(\left\{ x_{n}\right\} \)はコーシー列であるとは限らないことを示す例を挙げてください。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

次回はコーシー列と実数の連続性の関係について解説します。

< 前のページ
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有
RELATED KNOWLEDGE

関連知識

コーシー列

数列の極限

数列の項が先に進むにつれてある実数に限りなく近づく場合には、その数列は収束すると言い、その実数を数列の極限と呼びます。ただし、「限りなく近づく」という表現は曖昧ですので、イプシロン・デルタ論法を用いて収束列の概念を厳密に定義します。

コーシー列

コーシー列

項が先に進むにつれて項の変化がどこまでも小さくなっていく数列をコーシー列と呼びます。コーシー列の概念を厳密に定義した上で、コーシー列と収束列の関係を議論します。また、数列がコーシー列であるための判定条件について解説します。

コーシー列

コーシー列と実数の連続性

コーシー列の収束定理とアルキメデスの性質がともに成り立つことは、実数の連続性の公理と必要十分であることを示します。

コーシー列

ユークリッド空間におけるコーシー列

ユークリッド空間においても、実数空間と同様に、コーシー列(基本列)と呼ばれる点列を定義することができます。コーシー列は有界な点列です。

DISCUSSION

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

数列