単調数列(単調増加数列と単調減少数列)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の項に関して、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :x_{n}\leq x_{n+1}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
x_{1}\leq x_{2}\leq x_{3}\leq \cdots
\end{equation*}が成り立つ場合、この数列を単調増加数列(monotonically increasing sequence)と呼びます。単調増加数列の項は先へ行くにつれて大きくなることはあっても小さくなることはありません。
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が単調増加であることを示すための最もシンプルな方法は、隣り合う任意の2つの項を比較するというものです。つまり、番号\(n\in \mathbb{N} \)を任意に選んだ上で、\begin{equation*}x_{n}\leq x_{n+1}
\end{equation*}が成り立つことを示せば\(\left\{ x_{n}\right\} \)が単調増加であることを示したことになります。逆に、少なくとも1つの番号\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{equation*}x_{n}>x_{n+1}
\end{equation*}が成り立つことを示せば\(\left\{ x_{n}\right\} \)が単調増加ではないことを示したことになります。
\end{equation*}であるものとします。番号\(n\in \mathbb{N} \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&n^{2}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&\leq &\left( n+1\right) ^{2}\quad \because n\in \mathbb{N} \\
&=&x_{n+1}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、この数列は単調増加です。
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の項に関して、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :x_{n}\geq x_{n+1}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
x_{1}\geq x_{2}\geq x_{3}\geq \cdots
\end{equation*}が成り立つ場合、この数列を単調減少数列(monotonically decreasing sequence)と呼びます。単調減少数列の項は先へ行くにつれて小さくなることはあっても大きくなることはありません。
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が単調減少であることを示す方法は単調増加の場合と同様です。つまり、番号\(n\in \mathbb{N} \)を任意に選んだ上で、\begin{equation*}x_{n}\geq x_{n+1}
\end{equation*}が成り立つことを示せば\(\left\{ x_{n}\right\} \)が単調減少であることを示したことになります。逆に、少なくとも1つの番号\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{equation*}x_{n}<x_{n+1}
\end{equation*}が成り立つことを示せば\(\left\{ x_{n}\right\} \)が単調減少ではないことを示したことになります。
\end{equation*}であるものとします。番号\(n\in \mathbb{N} \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&\frac{1}{n}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&\geq &\frac{1}{n+1}\quad \because n\in \mathbb{N} \\
&=&x_{n+1}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、この数列は単調減少です。
単調増加数列と単調減少数列を総称して単調数列(monotone sequence)と呼びます。言い換えると、ある数列が単調数列であることとは、その数列が単調増加もしくは単調減少の少なくとも一方であることを意味します。ちなみに、以下の例のように、単調増加かつ単調減少であるような単調数列も存在します。
\end{equation*}として与えられているとき、任意の番号\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&c\leq c=x_{n+1} \\
x_{n} &=&c\geq c=x_{n+1}
\end{eqnarray*}がともに成り立つため、この数列は単調増加かつ単調減少です。
\end{equation*}で与えられているものとします。最初の3つの項\(x_{1},x_{2},x_{3}\)に注目すると、\(\left\{ x_{n}\right\} \)の定義より、\begin{eqnarray*}x_{1} &=&-1<1=x_{2} \\
x_{2} &=&1>-1=x_{3}
\end{eqnarray*}が成り立つため、\(\left\{x_{n}\right\} \)は単調増加と単調減少のどちらでもありません。
狭義単調数列(狭義単調増加数列と狭義単調減少数列)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の項に関して、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :x_{n}<x_{n+1}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
x_{1}<x_{2}<x_{3}<\cdots
\end{equation*}が成り立つ場合、この数列を狭義単調増加数列(strictly monotonically increasing sequence)と呼びます。狭義単調増加数列の項は先へ行くにつれて大きくなり続けます。
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が狭義単調増加であることを示すためには、番号\(n\in \mathbb{N} \)を任意に選んだ上で、\begin{equation*}x_{n}<x_{n+1}
\end{equation*}が成り立つことを示すことになります。逆に、少なくとも1つの番号\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{equation*}x_{n}\geq x_{n+1}
\end{equation*}が成り立つ場合には\(\left\{ x_{n}\right\} \)が狭義単調増加ではありません。
\end{equation*}であるものとします。先ほど、この数列が単調増加であることを示しましたが、これは狭義単調増加でもあります。実際、番号\(n\in \mathbb{N} \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&n^{2}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&<&\left( n+1\right) ^{2} \\
&=&x_{n+1}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義}
\end{eqnarray*}が成り立つからです。
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の項に関して、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :x_{n}>x_{n+1}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
x_{1}>x_{2}>x_{3}>\cdots
\end{equation*}が成り立つ場合、この数列を狭義単調減少数列(strictly monotonically decreasing sequence)と呼びます。狭義単調減少数列の項は先へ行くにつれて小さくなり続けます。
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が狭義単調減少であることを示すためには、番号\(n\in \mathbb{N} \)を任意に選んだ上で、\begin{equation*}x_{n}>x_{n+1}
\end{equation*}が成り立つことを示すことになります。逆に、少なくとも1つの番号\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{equation*}x_{n}\leq x_{n+1}
\end{equation*}が成り立つ場合には\(\left\{ x_{n}\right\} \)が狭義単調減少ではありません。
\end{equation*}であるものとします。先ほど、この数列が単調減少であることを示しましたが、これは狭義単調減少でもあります。実際、番号\(n\in \mathbb{N} \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&\frac{1}{n}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&>&\frac{1}{n+1} \\
&=&x_{n+1}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義}
\end{eqnarray*}が成り立つからです。
狭義単調増加数列と狭義単調減少数列を総称して狭義単調数列(strictly monotone sequence)と呼びます。狭義単調数列との対比で、先に解説した単調数列を広義単調数列(weakly monotone sequence)と呼ぶことがあります。狭義単調増加かつ狭義単調減少であるような数列は存在しないため(演習問題)、ある数列が狭義単調数列であることとは、その数列が狭義単調増加もしくは狭義単調減少のどちらか一方であることを意味します。
単調数列と狭義単調数列の関係
狭義単調増加数列は単調増加であり、狭義単調減少数列は単調減少です。
上の命題の対偶より、単調増加ではない数列は狭義単調増加ではなく、単調減少ではない数列は狭義単調減少ではありません。
先の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、単調増加数列は狭義単調増加であるとは限りませんし、単調減少数列は狭義単調減少であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}として与えられているものとします。任意の\(n\in \mathbb{R} \)について、\begin{eqnarray*}x_{n} &=&c\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&\leq &c \\
&=&x_{n+1}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義}
\end{eqnarray*}が成り立つため、\(\left\{x_{n}\right\} \)は単調増加です。一方で、例えば、\begin{eqnarray*}x_{1} &=&c\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義} \\
&\geq &c \\
&=&x_{2}\quad \because \left\{ x_{n}\right\} \text{の定義}
\end{eqnarray*}が成り立つため、\(\left\{x_{n}\right\} \)は狭義単調増加ではありません。\(\left\{x_{n}\right\} \)が単調減少である一方で狭義単調減少でないことの証明も同様です。
演習問題
\end{equation*}で表されているものとします。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が狭義単調増加であることを示してください。
\end{equation*}で与えられているものとします。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は単調数列や狭義単調数列でしょうか。議論してください。
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