数列
無限個の実数を順番に並べたもの\begin{equation*}
x_{1},x_{2},\cdots ,x_{n},\cdots
\end{equation*}を数列(sequence of number)や実数列(sequence of real number)などと呼びます。数学では有限個の実数を並べたものを数列として扱いません。数列は無限に続く数の列です。
2,4,6,8,10,\cdots
\end{equation*}となりますが、これは数列です。また、すべての正の奇数を小さい順に並べると、\begin{equation*}
1,3,5,7,9,\cdots
\end{equation*}となりますが、これも数列です。また、すべての正の整数を小さい順に並べると、\begin{equation*}
1,2,3,4,5,\cdots
\end{equation*}となりますが、これも数列です。
数列をフォーマルな形で表現します。繰り返しになりますが、数列とは無限個の実数を順番に並べたものであるため、それを総体的に表現するためには数列を構成する1番目の実数\(x_{1}\)、2番目の実数\(x_{2}\)、3番目の実数\(x_{3}\)、\(\cdots \)などをすべて特定する必要があります。ただ、数列は無限個の実数の並びであるため、このような作業を実際に無限回行うことは不可能です。とは言え、このような作業を「それぞれの自然数\(n\in \mathbb{N} \)に対して実数\(x_{n}\in \mathbb{R} \)を1つずつ定めること」として一般化できるため、数列を表現することとは、\(\mathbb{N} \)から\(\mathbb{R} \)への写像を与えることと実質的に同じです。そのようなこともあり、数列を写像\begin{equation*}x:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}として定義することもできます。この写像\(x\)がそれぞれの自然数\(n\)に対して定める像\(x\left( n\right) \)は数列を構成する\(n\)番目の実数です。
通常、写像\(f:A\rightarrow B\)が定義域の値\(a\in A\)に対して定める像を\(f\left( a\right) \in B\)と表記しますが、数列に相当する写像\(x:\mathbb{N} \rightarrow \mathbb{R} \)が自然数\(n\in \mathbb{N} \)に対して定める像\(x\left(n\right) \in \mathbb{R} \)に関しては、これを、\begin{equation*}x_{n}
\end{equation*}と表記し、数列の項(term)と呼びます。数列そのものを\(\left\{x_{n}\right\} _{n=1}^{\infty }\)や\(\left\{ x_{n}\right\} _{n\in \mathbb{N} }\)、もしくはよりシンプルに\(\left\{ x_{n}\right\} \)と表現することもできます。
自然数を\(1\)から始まる整数と定義するのであれば、数列を構成する前から\(n\)番目の項は\(x_{n}\)であり、これを数列の第\(n\)項(\(n\)-thterm)と呼びます。特に、数列の最初の項\(x_{1}\)を初項(first term)と呼びます。
数列の第\(n\)項\(x_{n}\)が具体的な形で与えられているならば、\(x_{n}\)中の\(n\)に具体的な自然数を代入することによりすべての項を具体的な形で特定できます。つまり、\(x_{n}\)は数列のすべての項を一般的に表現したものであるため、これを数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項(general term)と呼ぶこともあります。数列\(\left\{x_{n}\right\} \)の一般項\(x_{n}\)の形が分かっている場合には、その数列を「一般項が\(x_{n}\)の数列」と呼ぶこともできます。
\end{equation*}として与えられているとき、それぞれの項を具体的に列挙すると、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&3\cdot 1+2=5 \\
x_{2} &=&3\cdot 2+2=8 \\
x_{3} &=&3\cdot 3+2=11 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などとなります。
\end{equation*}として与えられてるとき、それぞれの項を具体的に列挙すると、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&2\left( 3^{0}\right) =2 \\
x_{2} &=&2\left( 3^{1}\right) =6 \\
x_{3} &=&2\left( 3^{2}\right) =18 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などとなります。
\end{equation*}となります。
\end{equation*}となります。
数列の表現方法(明示式と再帰式)
繰り返しになりますが、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項\(x_{n}\)が具体的な形で与えられれば、\(x_{n}\)中の\(n\)に具体的な自然数を代入することにより、この数列のそれぞれの項を具体的に特定できます。このような文脈において数列の一般項を明示式(explicit formula)と呼び、明示式を通じて数列を表現することを数列の明示的な表現(explicit expression)と呼びます。
\end{equation*}によって明示的に表現されているとき、この数列の各項を、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&3\cdot 1-4=-1 \\
x_{2} &=&3\cdot 2-4=2 \\
x_{3} &=&3\cdot 3-4=5 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}という形で特定できます。
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項\(x_{n}\)が明らかである場合には、\(x_{n}\)中の\(n\)に自然数を代入することによりその数列の任意の項をすぐに特定できます。ただ、数列の一般項が明らかでない状況においても、その数列の項の間に成立する関係式が与えられている場合には、その関係式を用いて数列の項を次々と再帰的に計算できることがあります。そこで、そのような性質を満たす関係式を再帰式(recursionformula)や漸化式(recurrence relation)などと呼び、再帰式を通じて数列を表現することを数列の再帰的な表現(recursive expression)と呼びます。
\begin{array}{l}
x_{1}=2 \\
x_{n}=2+x_{n-1}\end{array}\right.
\end{equation*}によって表現されているとき、この数列の各項を、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&2 \\
x_{2} &=&2+x_{1}=2+2=4 \\
x_{3} &=&2+x_{2}=2+4=6 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}という形で次々に計算できます。
以下は明示式と再帰式がともに容易に導かれるような数列の例です。
\end{equation*}をとることができます。これを\(\left\{ x_{n}\right\} \)の第\(n\)部分和(partial sum)と呼びます。部分和は実数であるため、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の第\(n\)部分和\(s_{n}\)を第\(n\)項とする新たな数列\(\left\{ s_{n}\right\} \)が定義可能です。つまり、この数列\(\left\{ s_{n}\right\} \)の各項は、\begin{eqnarray*}s_{1} &=&x_{1} \\
s_{2} &=&x_{1}+x_{2} \\
s_{3} &=&x_{1}+x_{2}+x_{3} \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}です。このような数列\(\left\{ s_{n}\right\} \)をもとの数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の級数(series)や部分和の列(sequence of partial sums)などと呼びます。数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の級数\(\left\{ s_{n}\right\} \)を明示的に表現すると、\begin{equation*}s_{n}=x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{n}
\end{equation*}となり、再帰的に表現すると、\begin{equation*}
\left\{
\begin{array}{l}
s_{1}=x_{1} \\
s_{n}=s_{n-1}+x_{n}\end{array}\right.
\end{equation*}となります。
明示式を再帰式に変換する
明示的に表現された数式を再帰的に表現しなおす(一般項から再帰式を求める)のは容易です。いくつか具体例を提示します。
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項\(x_{n}\)が与えられたとき、\(n=1\)を代入すれば初項\(x_{1}\)が得られます。加えて、例えば、\begin{equation*}x_{n}=\left( x_{n}-x_{n-1}\right) +x_{n-1}
\end{equation*}という関係が成り立つため、\(x_{n}\)から\(x_{n}-x_{n-1}\)を計算し、それを上の関係式に代入すれば数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の再帰式が得られます。
\end{equation*}で与えられているものとします。このとき、\begin{equation}
x_{n}=\left( x_{n}-x_{n-1}\right) +x_{n-1} \quad \cdots (1)
\end{equation}という関係が明らかに成り立ちます。\(x_{1}=4\)であるとともに、\(x_{n}\)の定義より、\begin{equation*}x_{n}-x_{n-1}=\left( 3n+1\right) -\left[ 3\left( n-1\right) +1\right] =3
\end{equation*}を得ます。これを\(\left(1\right) \)に代入すると、\begin{equation*}x_{n}=3+x_{n-1}
\end{equation*}を得ます。つまり、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は以下の再帰式\begin{equation*}\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=4 \\
x_{n}=3+x_{n-1}\end{array}\right.
\end{equation*}として表現できます。
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項\(x_{n}\)が与えられたとき、\(n=1\)を代入すれば初項\(x_{1}\)が得られます。加えて、仮に\(x_{n}\not=0\)であるならば、\begin{equation*}x_{n}=\frac{x_{n}}{x_{n-1}}\cdot x_{n-1}
\end{equation*}という関係が成り立つため、\(x_{n}\)から\(\frac{x_{n}}{x_{n-1}}\)を計算し、それを上の関係式に代入すれば数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の再帰式が得られます。
\end{equation*}で与えられているものとします。\(x_{n}\not=0\)であるため、\begin{equation}x_{n}=\frac{x_{n}}{x_{n-1}}\cdot x_{n-1} \quad \cdots (1)
\end{equation}という関係が明らかに成り立ちます。\(x_{1}=3\)であるとともに、\(x_{n}\)の定義より、\begin{equation*}\frac{x_{n}}{x_{n-1}}=\frac{3^{n}}{3^{n-1}}=3
\end{equation*}を得ます。これを\(\left(1\right) \)に代入すると、\begin{equation*}x_{n}=3x_{n-1}
\end{equation*}を得ます。つまり、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を以下の再帰式\begin{equation*}\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=3 \\
x_{n}=3x_{n-1}\end{array}\right.
\end{equation*}として表現できます。
以上の2つの例では、\begin{eqnarray*}
x_{n} &=&\left( x_{n}-x_{n-1}\right) +x_{n-1} \\
x_{n} &=&\frac{x_{n}}{x_{n-1}}\cdot x_{n-1}
\end{eqnarray*}などの関係式を利用して数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項から再帰式を生成しましたが、上のような関係式はいくらでも作ることができるため、その関係式の形状に応じて、数列の一般項から様々な再帰式を作ることができます。
再帰式を明示式に変換する
再帰的に表現された数式を明示的な形に表現しなおす(再帰式から一般項を求める)ことは必ずしも容易ではありません。ただ、いくつか例外もあります。
\begin{array}{l}
x_{1}=a \\
x_{n}=x_{n-1}+d\end{array}\right.
\end{equation*}と表すことができます。この再帰式を利用すると、等差数列のそれぞれの項を、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&a \\
x_{2} &=&x_{1}+d=a+d \\
x_{3} &=&x_{2}+d=\left( a+d\right) +d=a+2d \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}と次々に計算できます。等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を表す再帰式を言い換えると、\begin{equation*}\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=a \\
x_{n}-x_{n-1}=d\end{array}\right.
\end{equation*}を得ます。つまり、等差数列とは隣り合う項が共通の差\(d\)を持つ数列であり、この\(d\)を公差(common difference)と呼びます。等差数列は初項\(a\)と公差\(d\)によって特徴づけられるということです。等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は明示的に表現することもでき、その一般項は、\begin{equation*}x_{n}=a+\left( n-1\right) d
\end{equation*}となります(演習問題にします)。この一般項\(x_{n}\)を変数\(n\)に関する関数とみなすとき、これは線型式です。したがって、横軸を\(n\)、縦軸を\(x_{n}\)とする平面上に等差数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の項をプロットすると、それらの点はすべて傾きが\(d\)であるような直線上に位置します。
\begin{array}{l}
x_{1}=a \\
x_{n}=rx_{n-1}\end{array}\right.
\end{equation*}と表すことができます。この再帰式を利用すると、等比数列のそれぞれの項を、\begin{eqnarray*}
x_{1} &=&a \\
x_{2} &=&rx_{1}=ra \\
x_{3} &=&rx_{2}=r\left( ra\right) =r^{2}a \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}と次々に計算できます。特に、各項が\(0\)ではない場合、等比数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)を表す再帰式を言い換えると、\begin{equation*}\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=a \\
\dfrac{x_{n}}{x_{n-1}}=r\end{array}\right.
\end{equation*}を得ます。つまり、等比数列とは隣り合う項の比\(r\)が一定であるような数列であり、この\(r\)を公比(commonratio)と呼びます。等比数列は初項\(a\)と公比\(r\)によって特徴づけられるということです。等比数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は明示的に表現することもでき、その一般項は、\begin{equation*}x_{n}=ar^{n-1}
\end{equation*}となります(演習問題にします)。この一般項\(x_{n}\)を変数\(n\)に関する関数とみなすとき、これは指数関数です。したがって、横軸を\(n\)、縦軸を\(x_{n}\)とする平面上に等比数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の項をプロットすると、それらの点はすべて指数関数のグラフ上に位置します。
演習問題
\end{equation*}で与えられているものとします。この数列の最初の3つの項を具体的に明らかにしてください。
\end{equation*}で与えられているものとします。この数列の最初の3つの項を具体的に明らかにしてください。
2,4,6,8
\end{equation*}で与えられる異なる2つの数列を具体的に挙げてください。その際、それらの数列の一般項を提示してください。
\begin{array}{l}
x_{1}=a \\
x_{n}=x_{n-1}+d\end{array}\right.
\end{equation*}によって定義されます。この数列の一般項は、\begin{equation*}
x_{n}=a+\left( n-1\right) d
\end{equation*}であることを証明してください。
\begin{array}{l}
x_{1}=a \\
x_{n}=rx_{n-1}\end{array}\right.
\end{equation*}によって定義されます。この数列の一般項は、\begin{equation*}
x_{n}=ar^{n-1}
\end{equation*}であることを証明してください。
x_{10} &=&37
\end{eqnarray*}だけが明らかになっているとき、この\(\left\{x_{n}\right\} \)を表現する明示式と再帰式をそれぞれ明らかにしてください。
x_{4} &=&192
\end{eqnarray*}だけが明らかになっているとき、この\(\left\{x_{n}\right\} \)を表現する明示式と再帰式をそれぞれ明らかにしてください。
\end{equation*}と定めます。\(a\in X\)すなわち\(x_{1}\in X\)であるため、\(f\)による\(x_{1}\)の像をとることができます。そこで、\begin{equation*}x_{2}=f\left( x_{1}\right) =f\left( a\right)
\end{equation*}と定めます。仮に\(x_{2}\in X\)が成り立つならば、\(f\)による\(x_{2}\)の像をとることができます。そこで、そのような仮定のもとで、\begin{equation*}x_{3}=f\left( x_{2}\right) =f\left( f\left( x_{1}\right) \right) =f\left(
f\left( a\right) \right)
\end{equation*}と定めます。\(x_{3},x_{4},\cdots \)についても同様に考えることにより1つの数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が得られます。このような数列を反復(iteration)と呼びます。より正確には、反復とは、与えられた関数\(\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)から作られる、\begin{equation*}\left\{
\begin{array}{l}
x_{1}=a \\
x_{n}=f\left( x_{n-1}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}という再帰式として定義される数列\(\left\{x_{n}\right\} \)のことです。ただし、この数列を生成するためには、以下の条件\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :x_{n}\in X
\end{equation*}が満たされる必要があります。以上を踏まえたとき、等差数列や等比数列はいずれも反復であることを証明してください。
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