実数の乗法逆元の乗法逆元はもとの実数と等しくなります。また、乗法単位元やそれぞれの実数の乗法逆元は一意的に定まります。

乗法逆元の逆元

乗法に関しても加法と同様の性質が成り立ちます。まず、乗法逆元の定義より、\(0\)ではない実数\(x\)の乗法逆元\(x^{-1}\)もまた実数ですが、この\(x^{-1}\)もまた\(0\)ではありません。なぜなら、\(x^{-1}=0\)と仮定すると乗法逆元の定義より\(x\cdot 0=1\)となりますが、後に示すように実数\(y\)に対して\(y\cdot 0=0\)であることから\(0=1\)となり、これは\(0\not=1\)と矛盾するからです。

\(x^{-1}\)が\(0\)でなければ、やはり乗法逆元の定義より、\(x^{-1}\)に対する乗法逆元\((x^{-1})^{-1}\)が存在します。この\((x^{-1})^{-1}\)がもとの実数\(x\)と一致するというのが以下の命題の主張です。つまり、\(0\)ではない実数の乗法逆元の乗法逆元はもとの実数と等しくなります。

命題(乗法に関する逆の逆)
任意の実数\(x\in \mathbb{R}\backslash \{0\}\)に関して以下が成り立つ。\begin{equation*}
\left( x^{-1}\right) ^{-1}=x
\end{equation*}
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乗法の簡約法則

\( \mathbb{R}\)は乗法\(\cdot \)について閉じているため、\(0\)ではない実数\(x\)と実数\(y,z\)について、\(x\)に\(y\)を掛けた結果\(x\cdot y\)とやはり\(x\)に\(z\)を掛けた結果\(x\cdot z\)はともに実数です。この 2 つの積が等しければ、\(x\)にそれぞれ掛けた 2 つの実数\(y,z\)も等しいというのが以下の命題の主張です。これを乗法に関する簡約法則(cancellation law)と呼びます。

後に示すように、任意の実数\(a\)と\(0\)の積は\(0\)です。したがって、\(x=0\)の場合には任意の\(y,z\)に対して\(x\cdot y=x\cdot z=0\)が成り立つため、この場合には\(y=z\)は成り立つとは限りません。

命題(乗法の簡約法則)
任意の\(x\in \mathbb{R}\backslash \{0\}\)と任意の\(y,z\in \mathbb{R}\)に関して以下が成り立つ。\begin{equation*}
\ x\cdot y=x\cdot z\ \Rightarrow \ y=z
\end{equation*}
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乗法単位元・逆元の一意性

乗法に関する簡約法則を用いると、乗法単位元が一意的であることや、\(0\)ではない実数の乗法逆元が一意的に定まることが示されます。

命題(乗法単位元・逆元の一意性)
\( \mathbb{R}\)において以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \text{乗法単位元}1\text{は一意的である。} \\
&&\left( b\right) \ \text{任意の}x\in \mathbb{R}\backslash \left\{ 0\right\} \text{に対して、その乗法逆元}x^{-1}\text{は一意的である。}
\end{eqnarray*}
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次回は加法と乗法の関係について解説します。
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