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拡大実数系

拡大実数値関数の定義と具体例

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拡大実数系

拡大実数系について簡単に復習します。正の無限大\(+\infty \)と負の無限大\(+\infty \)をそれぞれ、任意の実数\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}-\infty <x<+\infty
\end{equation*}を満たす概念として定義します。つまり、負の無限大\(-\infty \)は任意の実数より小さく、正の無限大\(+\infty \)は任意の実数よりも大きいということです。ただし、正負の無限大はいずれも実数ではなく、上の関係を満たす形式的な記号にすぎないことに注意してください。なお、正の無限大を\(\infty \)で表記することもできます。

\(\mathbb{R} \)に属するすべての実数と正負の無限大\(+\infty,-\infty \)からなる集合を、\begin{equation*}\overline{\mathbb{R} }=\mathbb{R} \cup \left\{ -\infty ,+\infty \right\}
\end{equation*}で表し、これを拡大実数系(extended real number system)と呼びます。拡大実数系\(\overline{\mathbb{R} }\)について考えているとき、その要素\(x\in \overline{\mathbb{R} }\)が正負の無限大ではなく実数であることを強調したい場合には、すなわち\(x\in \mathbb{R} \)であることを強調したい場合には、\(x\)を有限な実数(finite real number)と呼びます。

拡大実数系\(\overline{\mathbb{R} }\)においては、任意の実数\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( +\infty \right) +\left( +\infty \right) &=&x+\left( +\infty \right)
=\left( +\infty \right) +x=+\infty \\
\left( -\infty \right) +\left( -\infty \right) &=&x+\left( -\infty \right)
=\left( -\infty \right) +x=-\infty
\end{eqnarray*}が成り立つものと定めます。つまり、正の無限大どうしの和や、有限な実数と正の無限大の和をいずれも正の無限大と定め、負の無限大どうしの和や、有限な実数と負の無限大の和をいずれも負の無限大と定めるということです。一方、符号が異なる無限大どうしの和である、\begin{equation*}
\left( +\infty \right) +\left( -\infty \right) ,\quad \left( -\infty \right)
+\left( +\infty \right)
\end{equation*}などはいずれも定義不可能であるものと定めます。これらを不定形(indeterminate forms)と呼びます。

拡大実数系\(\overline{\mathbb{R} }\)においては、\begin{eqnarray*}\left( +\infty \right) \cdot \left( +\infty \right) &=&+\infty \\
\left( -\infty \right) \cdot \left( -\infty \right) &=&+\infty \\
\left( +\infty \right) \cdot \left( -\infty \right) &=&-\infty \\
\left( -\infty \right) \cdot \left( +\infty \right) &=&-\infty
\end{eqnarray*}などが成り立つものと定めます。つまり、正の無限大どうしの積や負の無限大どうしの積はいずれも正の無限大であり、正の無限大と負の無限大の積を負の無限大と定めるということです。また、\(0\)とは異なる任意の実数\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{eqnarray*}&&x\cdot \left( +\infty \right) =\left( +\infty \right) \cdot x=\left\{
\begin{array}{ll}
+\infty & \left( if\quad x>0\right) \\
-\infty & \left( if\quad x<0\right)
\end{array}\right. \\
&&x\cdot \left( -\infty \right) =\left( -\infty \right) \cdot x=\left\{
\begin{array}{ll}
-\infty & \left( if\quad x>0\right) \\
+\infty & \left( if\quad x<0\right)
\end{array}\right.
\end{eqnarray*}などが成り立つものと定めます。つまり、無限大に正の実数をかけてもそのままですが、無限大に負の実数をかけると無限大の符号が変わります。また、\(0\)と無限大の積については、\begin{eqnarray*}0\cdot \left( +\infty \right) &=&\left( +\infty \right) \cdot 0=0 \\
0\cdot \left( -\infty \right) &=&\left( -\infty \right) \cdot 0=0
\end{eqnarray*}などが成り立つものと定めます。つまり、\(0\)と無限大の積は\(0\)です。また、任意の実数\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}\dfrac{x}{+\infty }=\dfrac{x}{-\infty }=0
\end{equation*}が成り立つものと定めます。つまり、実数を無限大で割ると\(0\)になります。一方、無限大どうしの商である、\begin{equation*}\frac{+\infty }{+\infty },\quad \frac{+\infty }{-\infty },\quad \frac{-\infty }{+\infty },\quad \frac{-\infty }{-\infty }
\end{equation*}などはいずれも定義不可能であるものと定めます。これらも不定形です。また、正負の無限大の絶対値を、\begin{equation*}
\left\vert +\infty \right\vert =\left\vert -\infty \right\vert =+\infty
\end{equation*}と定めます。

 

1変数の拡大実数値関数

実数空間\(\mathbb{R} \)もしくはその部分集合\(X\)のそれぞれの要素に対して実数を1つずつ定める写像\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を実変数の実数値関数(real-valued function of a real variable)や1変数の実数値関数(real-valued function of single real variable)などと呼びます。一方、関数\(f\)が正の無限大\(+\infty \)や負の無限大\(-\infty \)を値としてとり得ることを認める場合には、すなわち、拡大実数系\begin{equation*}\overline{\mathbb{R} }=\mathbb{R} \cup \left\{ -\infty ,+\infty \right\}
\end{equation*}を終集合とする写像\begin{equation*}
f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}については、これを実変数の拡大実数値関数(extended real-valued function of a real variable)や1変数の拡大実数値関数(extended real-valued function of single real variable)などと呼びます。拡大実数値関数との対比で、実数値関数を有限な関数(finite function)と呼ぶ場合もあります。

実数値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の終集合である実数空間\(\mathbb{R} \)は拡大実数系\(\overline{\mathbb{R} }\)の部分集合であるため、実数値関数は拡大実数値関数でもあります。このような事情を踏まえた上で、拡大実数値関数をシンプルに関数(function)と呼ぶこともできます。

例(拡大実数値関数)
関数\(f:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\frac{1}{x}
\end{equation*}を定めるものとします。これは実数値関数です。\(f\)は点\(0\)において定義されませんが、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow 0+}f\left( x\right) =+\infty
\end{equation*}であることを踏まえた上で、それぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{1}{x} & \left( if\ x>0\right) \\
+\infty & \left( if\ x=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める関数\(f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)を定義すれば、これは拡大実数値関数になります。また、それぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\frac{1}{x} & \left( if\ x\not=0\right) \\
+\infty & \left( if\ x=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)もまた拡大実数値関数です。
例(拡大実数値関数)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left( -\frac{\pi }{2},\frac{\pi }{2}\right) \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left( -\frac{\pi }{2},\frac{\pi }{2}\right) \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\tan \left( x\right)
\end{equation*}を定めるものとします。これは実数値関数です。\(f\)は点\(-\frac{\pi }{2},\frac{\pi }{2}\)において定義されませんが、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow -\frac{\pi }{2}}f\left( x\right) &=&-\infty \\
\lim_{x\rightarrow \frac{\pi }{2}}f\left( x\right) &=&+\infty
\end{eqnarray*}であることを踏まえた上で、それぞれの\(x\in \left[ -\frac{\pi }{2},\frac{\pi }{2}\right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\tan \left( x\right) & \left( if\ x\in \left( -\frac{\pi }{2},\frac{\pi }{2}\right) \right) \\
-\infty & \left( if\ x=-\frac{\pi }{2}\right) \\
+\infty & \left( if\ x=\frac{\pi }{2}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ -\frac{\pi }{2},\frac{\pi }{2}\right] \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)を定義すれば、これは拡大実数値関数になります。
例(拡大実数値関数)
集合\(A\subset \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、それぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
+\infty & \left( if\ x\in A\right) \\
1 & \left( if\ x\not\in A\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)を定義すれば、これは拡大実数値関数になります。

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